
『カブト』の世界はこれからも続いていく――Vシネクスト『仮面ライダーカブト20th 天を継ぐもの』脚本・米村正二さんインタビュー
人間とワームの未来を結ぶ、新世代キャラクターたち
──今作で新たに登場する加賀美結、天道ヒカルについてお聞かせください。彼らを物語に登場させるにあたっての意図や、設定面でのこだわりはありますか?
米村:まず「継承」という本作の根幹にある大きなテーマを考えた時に、「仮面ライダー」を継承すべき存在として最もふさわしいのは、やはり彼の息子だろう、という発想がありました。物語の始まりでは、ちょっとダメな父親である新に対して、冷めきった態度を取っている結くんが過酷な試練に直面し、二人の和解を経て、真の戦士へと成長していく。そういう親子の成長のビジョンを、最初はぼんやりと持っていたんです。
──天道ヒカルは、不敵なセリフ回しや凛とした佇まいから天道総司を想起させますが、このヒカルというキャラクターはどのような経緯で誕生したのでしょうか。
米村:作品として『カブト』の遺伝子がしっかりと生き続け、ファンの皆さんに満足してもらえるアイデアはないか。そうやって頭をひねって考え抜いた時に、かつてテレビシリーズの加賀美新というキャラクターが「完璧な天道総司の逆張り(対照)」として生まれたように、今回の新主人公である加賀美結の逆張り・対照の立場として、不敵な女の子「天道ヒカル」という存在を作ろうと思いついたんです。天道と加賀美の対比を、そのまま次の世代であるヒカルと結の二人に継承させたわけですね。
ヒカルに関しては、結と加賀美新を主役にしたこともあって、あえて劇中でも謎や秘密、バックボーンを隠したまま、ベールに包まれた存在として描いています。すべてを語りすぎず、あえて謎が多いままに描ききれていない部分を残したことが、逆に彼女の持つ底知れなさやカリスマ性をより引き立ててくれたと感じています。
──結とヒカルの関係性は魅力的で、この二人の行く末をもっと見てみたいと思いました。
米村:結とヒカルは、セリフを書いていても、どんどん自然に言葉が生まれて、勝手に転がって動き出すような、エネルギーを持ったキャラクターたちでした。彼らがこの後、どんな未来を切り拓いて進んでいくのか。観た方に「気になる」と言っていただけるのは、脚本家として非常に嬉しいです。
セリフの力、言葉のキレを大切に
──オリジナルキャストのドラマと新世代の葛藤など多くの要素を、限られた上映時間に収めるのは大変だったのではないでしょうか。
米村:執筆の後半における最大の命題であり、最も頭を悩ませて苦労した部分は、「いかにして尺を短くするか、いかに構成をスマートに削ぎ落としてドラマを凝縮するか」という削りの作業でした。普通にキャラクターたちのドラマを順序立ててエピソードを広げていってしまうと、あっという間に90分や100分を軽く超えてしまう。もっと描ける部分はあったけれど、泣く泣く削ぎ落としたところもありました。
引き締まった構成を模索し続けた結果、なんとかこの美しい形に収めることができたと思っています。元々のテレビシリーズの『仮面ライダーカブト』自体が、1話あたりの情報量が多くて、とにかくハイスピードで濃厚な展開が最大の持ち味の作品でしたから。TVシリーズの感覚をそのまま体感していただける仕上がりになったと実感しています。
──久しぶりに『仮面ライダーカブト』の世界観のシナリオを執筆されて、セリフ作りなどの手応えはいかがでしたか?
米村:僕は『カブト』のテレビシリーズを書いていた当時から、シナリオにおける「セリフの力、言葉のキレ」というものを何よりも大切にしてきました。それはカブトに限らず、僕のすべての仕事において一貫している作家としてのスタンスなのですが、特に『カブト』の執筆中は、常に自分のアンテナを最大限にビンビンに張り巡らせていましたね。
「キャラクターにどんな尖った、耳に残るセリフを言わせたら最もカッコよく決まるか」と、自分の中で何度も何度も繰り返しセリフを削り、練り直していきました。取材前に今回の台本を読み返してみたのですが、「ヒカルのセリフ、不敵で面白いことを言っているな」と自分で感心していました(笑)。特に、結が父親に見せる、思春期特有の乾いた空気感が個人的にすごく好きなんです。結とヒカルは書いていても、確かな手応えを感じました。
『カブト』の世界はこれからも続いていく
──『カブト』にはクセの強い魅力的なキャラクターが多数登場しますが、米村先生ご自身の一番お気に入りのキャラクターは誰でしょうか。
米村:大前提として、僕は自分が手がけた登場人物全員が大好きで、みんなを愛しています。そのうえで色々考えたんですけど、いつも最後には「加賀美新」という答えにたどり着くんですよ。加賀美の「誰よりも一生懸命に頑張っているのに、どうしても報われない、でも絶対にめげない」というキャラクター性は、僕自身にとってすごく投影しやすい存在なんです。
──今年で仮面ライダーシリーズは55周年を迎えました。シリーズ全体への思い入れや、脚本家として携わるやりがいについてお聞かせください。
米村:僕は年齢的に「第1世代」なんです。1971年に最初の『仮面ライダー』をリアルタイムでテレビにかじりついて観ていましたし、当時、カルビーの「仮面ライダースナック」に付いていた仮面ライダーカードを必死になって集めていました。
子供の頃は、まさか自分が将来、大人になって仮面ライダーの脚本を執筆する人間になるなんて、夢にも思っていませんでした。『仮面ライダー響鬼』への参加から始まり、『仮面ライダーカブト』のメイン、さらに2009年の『仮面ライダーディケイド』や映画作品なども書かせていただいて。仮面ライダーという創作の場は、僕にとって「お話作りの面白さ、構成の難しさ」というものを、極限まで突き詰めさせてくれた大切な場所です。毎回毎回、逃げ出したいほどのプレッシャーの中で、脳をフル回転させて、スタッフ全員で必死に面白いものを築き上げていく。そうやって濃密に駆け抜けた時間というのは、自分の人生の中でも他には代えがたいものになっています。
──最後に、テレビシリーズから20年間ずっと『仮面ライダーカブト』を愛し、応援し続けてきたファンの方々に向けて、熱いメッセージをお願いします。
米村:きっと『仮面ライダーカブト』という世界は、20年という時を経た今でも変わらず、今この瞬間も時を刻んで、続いていくのだろうと感じました。ファンの皆さんには「『カブト』の世界は、これからも彼らの進む先でずっと続いていく」と、そう思っていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。ぜひ、劇場で彼らの新たな物語、そしてバトンが繋がれる瞬間を見届けてください。
[インタビュー/小川賢人]
インタビューバックナンバー
作品情報
あらすじ
キャスト
矢車想/仮面ライダーザビー:徳山秀典
風間大介/仮面ライダードレイク:加藤和樹
加賀美結:荒木飛羽
天道ヒカル:小寺結花
ゴン:馬場ふみか
三島正人:弓削智久
田所修一:山口祥行
加賀美陸:本田博太郎
町田悠宇
高岩成二
(C)2026 石森プロ・バンダイ・東映ビデオ・東映(C)石森プロ・東映

































