人ならざる者が訪れる居酒屋、不良坊主×見習い女子高生が悪霊退治!?　小説投稿サイト「E★エブリスタ」注目の2作品の魅力に迫る

　小説投稿サイト“E★エブリスタ”で公開されている『居酒屋まるの千夜一夜物語』(上下巻)、『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド』の2作品が書籍化され、2015年4月30日にリリース！　『居酒屋まるの千夜一夜物語』は、E★エブリスタの「スマホ小説大賞2014エンタメ文芸部門」で1位を獲得しており、連載中から多くのファンがいる人気作品です。書籍版は上下巻の構成となっており、2冊同時に発売となります。『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド』も、これまでの投稿作品がいくつも書籍化されている実力派の著者によるものとあって、大きな注目を集めています。そんな2作品の魅力をレビュー形式でお届けしたいと思います。

　常連客の中には、男性でありながら男性の泉実に求婚する吸血鬼のオズワルド・ミハイ、普段はキャリアウーマンとして過ごす猫又の珠美、生に近い肉をキログラム単位で食べる狼男の木戸など、個性的なキャラクターばかりが登場します。そんな彼ら彼女らのリクエストに応えた料理の数々や、店主と客人としてのやり取りが描かれていきます。

　異世界の住人は和洋折衷どころか、グリム童話や北欧神話、日本書紀、怪談や伝説などさまざまです。キャラクターの性格は本作オリジナルで色付けされていて、元となった設定を活かしつつも、現代風にアレンジしたエピソードの数々も面白く仕上がっています。

　例えば、酒天童子といえば酒好きの鬼として有名ですよね。本作に登場する酒天童子は普段は人間に扮して生活しているため、健康診断を受けたりしています。当然、酒好きとあって肝臓の数値がよくないのですが、その数値がなんと基準の10倍以上！　「ヤバイなんてものじゃない！」とツッコミたくなるのですが、さすがは鬼、一ヶ月もお酒を断てば元気になるそうで。

　それでもお酒をやめられず、泉実のお店まで飲みに来た酒天童子を叱り飛ばす茨木童子なんかも登場したりします。茨木童子は酒天童子の家来だったとか、息子だったとか、恋人だったとか諸説ありますが、本作では奥さんのような存在で現れ、酒断ちできない酒天童子を容赦なくしばき倒します。

　お酒を飲めず、茨木童子に叱られてしょぼくれる酒天童子に向けて酒粕を使った粕汁を振舞ったりと、店主である泉実のできる男っぷりも魅力です。

　お話だけではなく、この泉実が作る料理のバリエーションも素晴らしいの一言です。毎回毎回お通しのメニューが変わり、文章なのにまるで“飯テロ”のように食欲を刺激されますし、異世界の住人に合わせた料理が次々と出てくるので、読んでいて飽きさせないつくりになっています。

　みにくいあひるの子と白鳥が訪れた際には、アヒルの食料であるマコモダケの素焼きと味噌田楽、白鳥にはワイルドライスを使ったコロッケなど、なかなか耳にしない食材が簡単な解説と共に使われるので、エピソードごとに新しい発見と出会えることも。

　店主とお客としてのやり取りも、はっちゃけた性格の多い異世界の住人たちを相手に、泉実がテンポよく心の中でツッコミを入れ、表面上は店主らしく振舞うギャップも見ていて楽しく、サクサクと読んでいけます。作品は一貫して温かみに溢れているので、大人の方であれば「こんな居酒屋あったらいいな」と感じる部分もあるでしょう。

　優しさが染みる真っ直ぐな物語、緻密かつコミカルに描かれたキャラクター同士の掛け合い、そして居酒屋らしさを存分に活かした内容は、読み手に笑いと癒しを与えてくれる、そんな作品になっています。


●『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド』
　　ときにスリリング、ときに涙、ときにロマンス。人と霊が織り成す感動の物語

　『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド』は、霊的な現象とゆかりの深い“祀町（まつりまち）”を舞台にしたホラーエンターテイメント小説です。祀町に引っ越してきた霊引き寄せてしまう“バキューム体質”の女子高生・栞と、祀町にある寺で除霊を請け負う口も目つきも悪い坊主・徹が出会うところから物語が始まります。

　波乱を含んだ出会いから一転、アルバイトを探していて高時給に惹かれた栞は、徹が住まう“浄光寺”にてアルバイトを開始。除霊のアシスタントとして、悪霊や生霊、地縛霊など、さまざまな霊が引き起こす事件の解決を目指し、除霊修行の日々を繰り広げていきます。

　霊感が強いだけの栞が霊による事件に関わるというだけあって、金縛りにあったり、取り憑かれてしまったりと、ピンチに陥ることもしばしば。悪霊との戦いはスリル溢れる展開が多く、ありきたりな言葉ながら、ドキドキ・ハラハラとさせてくれます。

　栞は霊たちのエピソードに感化されやすい性格のせいか、どんどん悪いことに巻き込まれていくのですが、人に対しても霊に対しても優しさを持つ彼女の姿は、見ていて心打たれます。そんな純粋な栞の心だけでなく、ときには生きた人間の憎悪といった負の感情が絡んだエピソードも出てきます。

　霊と人の感情は切っても切り離せないものですし、そうした心情がしっかりと描かれているのも本作のポイントでしょう。普段は態度が悪く、金にならない内容は無頓着でパチスロ通いという徹も、栞のピンチに駆けつけて頼りがいある姿を見せてくれたりと、登場するキャラクター全員、しっかりとした味を持っているのも見どころです。

　主要キャラクターで言えば、徹以外の浄光寺のメンバーたちも個性も光ります。徹の兄であり住職を務めている修一は、マッキーでお札を書いたり、水道水を原料に聖水を作ったりと、インチキ臭さ抜群なのですが、本人はクールキャラで除霊グッズも効果抜群というギャップが見ていて面白いところ。

　守護霊と会話できるため霊視を担当している祥子は、栞のよき理解者としてなくてはならない存在になっていきます。栞の愛犬であるゴールデンレトリバーのクロも、事件の最中に活躍してくれたり、普段からお利口だったり、かなりのモフモフ具合なのかいろんな人に撫でられたりと、誰が欠けても困るほどの存在感です。

　ほかにも霊視で事件の調査をしている最中で、緊迫感がある一方、おばちゃんの霊が出てきて世間話をしてくるといった、オカルトを題材にした作品らしいシュールなネタで笑わせてくれる場面もあります。モブキャラでさえ、存在感を放っているキャラクターばかりです。

　物語は悪霊との戦いや人の思惑が複雑に絡んだ事件が中心に描かれるため、シリアスな場面が多いのですが、こうしたキャラクターの魅力をうまく挟んでいるため、重すぎると感じないバランスになっています。そうして読み進めていくと、今度は終盤に向かって物語がどう収束していくのか展開が気になり、栞に引き寄せられる霊のように、グイグイと作品に引き込まれていることでしょう。

●アニメイトだけの特典を要チェック！

　今回レビューをお届けした2作品ですが、どちらにもアニメイトでの購入特典が用意されています。『居酒屋まるの千夜一夜物語』の特典は小冊子となっており、主人公・泉実への一問一答や、料理研究家が再現した作中のレシピなど、より本作の世界を堪能できる情報が詰まっています。材料も作り方も載っているので、特典を参考に自分で料理に挑戦することも出来ちゃいます！

　一方の『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド 祀町 オカルト事件簿』には、キャラクターデザインを手がけたスオウ先生による描き下ろしのイラストカードが付いてきます。イラストカードには書籍の表紙デザインとはまた違った栞と徹のツーショットが描かれていますので、こちらもお見逃しなく！


＜リリース情報＞
■居酒屋まるの千夜一夜物語 上・下
著：千冬
イラスト：牧
発売日：2015年4月30日
価格：各 本体1200円＋税
発行：株式会社ＫＡＤＯＫＡＷＡ

[購入ページはこちら]
□居酒屋まるの千夜一夜物語 上
□居酒屋まるの千夜一夜物語 下


■不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド 祀町 オカルト事件簿
著：竹村優希
イラスト：スオウ
発売日：2015年4月30日
定価：本体1200円＋税
発行：株式会社ＫＡＤＯＫＡＷＡ

[購入ページはこちら]
□不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド 祀町 オカルト事件簿


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