2016/1/22 17:00

【祝★CD化】「やっぱり“飽きない”ことがいちばん重要」 ゲームアプリ『アイ★チュウ』伊藤ディレクター&早川音楽Pが語る制作秘話

 2015年6月にリリースされた『アイ★チュウ』。リズムゲームと乙女ゲームに加え育成の要素もあり、若い女性ユーザーを中心に人気となっているゲームアプリです。

 そんな『アイ★チュウ』が支持される理由のひとつといえば、“楽曲の多さ”。リリース時点ですでに16もの楽曲が実装されていたのも驚きですが、以降も毎月1曲以上は追加されていて、ユーザーをよろこばせています。現在の実装曲数はなんと30曲以上!!

 では、この膨大な楽曲はどのように制作されてきたのでしょう? 前回インタビューに応じてくれた伊藤 舞ディレクター(参考:前編後編)と、『アイ★チュウ』の音楽プロデューサー・早川大地さんを直撃! ふたりに制作の裏話を伺いました。


■ 30曲一気に制作スタート! それに対して早川音楽Pは……?

――以前のインタビューで、伊藤さんが「『リズムゲームにしよう』と決めて、2014年6月に本格的に始動した」と言っていましたが、早川さんにお願いしたのはいつ頃なのでしょうか?

伊藤 舞ディレクター(以下、伊藤):2014年の9月頃ですね。紹介していただいてはじめてお会いしたので、まずはどんな楽曲を作ってこられたのか伺ったり、ラフを聴かせていただいたりしました。で、その後正式に依頼したという流れです。


――早川さんにしたい!と思った決め手はどこだったんですか?

伊藤:ラフとして聴かせていただいた曲が、どれもキャッチーだったんです。耳にスッと入ってくる曲というか。それがなによりも大きかったですね。


――一方の早川さんは、このお話を聞いたときいかがでしたか?

早川大地音楽プロデューサー(以下、早川):当時、ちょうど「ゲーム音楽をやりたい」ってまわりに言っていた時期で。まさに「やりたいものがきた!」という感じでした。偶然というか運命を感じましたね。なので、というわけでもないですけど、気合いを入れてデモを出させていただきました。


――もともとゲーム音楽に魅力を感じていたんですね。

早川:そうなんですよ。ゲームにおける音楽の使われ方って、通常の楽曲とは違って“新しくて良い使われ方”をしているなと思っていて。


――自発的に聴こうと思って聴く通常の音楽と違い、ゲーム音楽はプレイすれば必然と聴けることになりますもんね。形態が違う。

早川:そう。だから何回も聴いてもらえる。そういう意味でも興味があったんです。今回、偶然にもお話をいただけたので、「『やりたい』って言っていれば、こういうことが起こるんだな」って思いました(笑)。


――では、実際に制作を開始してからのお話を。現在30曲実装されていますが、初期に作っていたのは何曲?

伊藤:あ、最初から30曲ですね。

――えっ! そうなんですか!?

伊藤:ええ。なので、早川さんにも最初に「まず、30曲作ってもらえませんか?」とお願いしました。そうしたら、早川さんもすぐに「いいですよ」と言ってくださって。


――えぇ! それもまたすごい……!!

早川:確かに最初はビックリしましたよ(笑)。でも、言ってしまえばこの曲数ってゲームならではなんですよね。通常のCDアルバムって、1枚作るにも10曲ちょっとくらいだけど、ゲームはそうではないんだというか。だから僕としては燃えました。あと、伊藤さんからいただいた楽曲イメージがすごい具体的だったので、あまり迷うことがなかったのも大きいですね。とはいえ、30曲を世に出すために30曲だけを作るわけじゃないので。実際にはその倍くらいの曲数を作って、伊藤さんとの打ち合わせに臨んでいました。

伊藤:正式に制作をお願いしてからは、毎週弊社に来ていただいて打ち合わせをしていたんですよね。そこで、私のイメージをもとに作ってくださったラフを聴いて、「この曲がイメージに近いですね」「じゃあこれで進めましょう」と話し合っていました。


――素人からすると、気が遠くなりそうな工程ですが……そうしてイメージをすりあわせつつ、楽曲を洗練させていったんですね。

早川:そうですね。メロディが良いものって、言ってみれば数撃ちゃ当たる的なところもあるんですよ。「良い曲ができた!」と思っても、時間をおくと「あんまり良くないな」ってなったりするので。それに対応するために候補を多くして、より良い物を選んでいきました。

伊藤:あと、同時期にキャラクターデザインのアイドル衣装の制作も進んでいたので、それを見てイメージを膨らませてもらったりもしました。

早川:新たなパートを加えたりしましたね。

伊藤:本当にこまかく打ち合わせできたので、音楽全体のイメージをすごく共有できたと思います。


■ 「『アイ★チュウ』の「チュウ」は「中毒性」の「チュウ」だと思ってる」(早川さん)

――では、制作過程についてさらに踏み込んでいきましょう。キャラに関してはビジュアルを共有していたとのことですが、性格など内面の設定については?

早川:もちろん共有しましたよ。一人ひとりについて、かなりの時間を割いて説明してもらいました。設定資料にも書かれていないようなところまで、詳しく。


――キャラクターの性格や心情が表れる歌詞には、とくに影響がありそうですよね。

早川:伊藤さんには、「このキャラって、こういうこと言いますかね?」ってよく聞いてましたよね。

伊藤:そうそう。印象的だったのが、Twinkle Bellの曲の歌詞に入っていた「たまにケンカもするけど」っていうフレーズを、「すみません、睦月たちはケンカはしないんです」って伝えたことです(笑)。

早川:あー、ありましたね(笑)。あと、心ちゃん(華房心/POP'N STAR)の視点が“どこまで女のコなのか”という話もしました。POP'N STARの『オレンジピールと恋の味』に〈いい女には 余裕がなくちゃ〉という歌詞があるんですけど、これって心ちゃんが自分のことをいい女だと思っているかによって変わるじゃないですか。「男の娘だし、そこまで思わないのかな……?」とも思っていたんですけど、伊藤さんが「言います!」と教えてくれた(笑)。この工程も、イメージを具体化させるために欠かせなかったですね。


――綿密な話し合いが行われていたんですね……!

伊藤:確かに大変ではあったんですけど、やりとりしているとすごく楽しいんですよ。早川さんに「○○さんみたいな曲がイメージに近いんですよね」とアーティスト名を挙げると、だいたいわかってくださったり。

早川:「I♥Bは、▲▲みたいな雰囲気が良いんですよね」とか。


――音楽の趣味が合ったんですね。確かに、そこが合致するとイメージを共有しやすそうです。

伊藤:あとは、楽曲から浮かぶ“風景”を共有したりもしました。例えばLancelotなら、「ステージのバックがオレンジ色に光っていて、スポットライトが当たっていて……」など抽象的な表現を使って伝える事もありました。


――本当にじっくり話し合っていたんですね! 抜かりなくすりあわせできている印象ですが……そんななかで難儀した部分ってあるんでしょうか?

早川:RE:BERSERKの曲かなあ。あのユニットは“厨二病”ですけど、厨二病っていろんな解釈があるじゃないですか。


――確かに。人によってバラバラ、という印象はあります。

早川:僕のまわりの人たちにも聞いてみたんですけど、やっぱりみんな言うことが違うんですよ。だから当初はそこの共通認識が持ちにくくて、試行錯誤しました。でも、そんなときにアイドル衣装のビジュアルが仕上がって、見せてもらえて。「あ、こういうことか!」となったんです。

伊藤:彼らって、いわゆる「左目が疼く」みたいな“自分が特別な何かになりきっている状態”なんですよね。

早川: “耽美的”というか。それがわかってからは、制作も捗りました。

伊藤:『裏切りの果実』は、完全になりきってますよね。

――曲中にセリフまで入ってますもんね!

伊藤:あの楽曲は、「役者になりきってる彼らが、まるで舞台上に立ってるような雰囲気の曲に」と言って出来上がった曲なので、まさにRE:BERSERK的厨二曲ですね。

早川:あれは傑作ですよね。レコーディングも面白かった。

伊藤:歌詞のセリフ部分はもともと下地があったんですけど、レコーディングのときに下野 紘さん(エヴァ・アームストロング役)が「もっとこうしたほうが厨二になるんじゃないか」と積極的に考えてくださったんですよね。それもあって、結果的にすごく良い楽曲になりました。


――では逆に、比較的苦労が少なかった曲はありますか?

早川:サクサク決まっていったのは、ArSの曲ですかね。

伊藤:そうですね。彼らの楽曲テーマは懐メロなんですが、80年代のポップスについて私と早川さんの趣味がとくに合ったんです。なので、インスピレーションがわきやすかったです。私自身も、早川さんが作ってくださったラフの中から「ArSの曲はこれとこれとこれだ!」「あの衣装の6人が歌っていそう」ってすぐにひらめきました。とくに『手を伸ばせ!』が一番イメージ通りの彼らの姿が思い浮かびます。

――共通認識を持つ工程の重要度がわかるエピソードですね。ちなみに、膨大な曲を同時に作るうえで、メロディやフレーズがカブることはなかったんでしょうか? 例えば、「カブりそうだからこの音を使うのはやめよう」と措置をとったとか。

早川:いや、「やめよう」といった発想はなかったですね。むしろ「もっといろんなものを使っていこう」と思って作っていました。8組もいるから、いろいろできるんですよ。


――引き算ではなく、足し算で各曲に個性を与えていったんですね。

早川:例えばF∞Fの『Viva! Carnival!!』は、ジャンベを使って民族音楽っぽくしてみたり、RE:BERSERKの楽曲はオルガンを使って耽美的な雰囲気を出してみたり。あとI♥Bは、バンドなのでギタリストやドラマーを呼んできて生演奏を取り入れてみるとか。いろんなチャレンジをしました。

――そうしてできあがったのが今私たちがプレイしている楽曲だと。確かに、一曲一曲が個性的なんですよね。それにメロディがキャッチーで、一度プレイするとしばらく頭から離れない。

早川:やっぱり“飽きない”ことがいちばん重要なんですよね。僕は、『アイ★チュウ』の「チュウ」は「中毒性」の「チュウ」だと思ってるんで(笑)。何回も何回も聴いてもらえるものにしなければいけなかったんです。


――とはいえ、キャッチーな曲ってそもそも作ることが難しそうな気がします。早川さんは、どんなふうに作り上げているんでしょう?

早川:……この話、詳しく言うと長くなるんですけど(笑)、簡単に言うと“安心と破壊”というか。耳馴染みがあるメロディと、耳馴染みがない斬新なメロディの組み合わせだと僕は思っています。


――それが一曲の中に集約されていると、キャッチーになり得ると。

早川:そう。音楽って、ありきたりすぎるとつまらないし、全部が新しすぎるとついていけないものなんですよね。だからその間をねらう。ポップスでヒットするっていうのは、そこが大事だと思ってます。


――『アイ★チュウ』の楽曲が粒ぞろいな理由がわかってきた気がします……!


■「作り手にとってはやっぱり、聴いてもらってなんぼなんです」(早川さん)

――楽曲が固まったら、次はレコーディングですよね。各ユニットの曲を27人もの声優陣が代わる代わるレコーディングするとなると、こちらもまた大変そうです。

伊藤:レコーディングがはじまってからは、終日スタジオにこもりきりでしたよね(笑)。

早川:毎日スタジオ出勤でしたね(笑)。トータルでかなりの時間をかけて収録しています。今あらためて振り返ってみると、我ながらすごいな!って思うなあ。


――そんなレコーディングで、こだわった部分から伺えればと。

伊藤:やはり、キャラクターの声で歌っていただくというところですかね。そのために、人数の多いユニットはそれぞれのキャラクターの声に合うところを把握して、上ハモにするか下ハモにするか決めていきました。


――そうか……「このキーより下だとキャラクターの声が出にくい」ということもありますもんね。

伊藤:もちろん事前にデモとかは聴いてるんですけど、微妙な声のニュアンスはその場で気づくことが多かったんです。そういうときは「じゃあ、もうひとつ上のパートを歌ってもらいましょうか」といった感じで、よりキャラにあった声にしていきました。

早川:そんななかで、村瀬 歩さん(POP'N STAR 華房心役)のレコーディングは印象的でしたよね。事前にこちらで作っていたキーは、男性ボーカルが歌えるいちばん高いキーだったんですけど、実際には「もう少しキーを上げてください」って言われて(笑)。


――えっ!!

伊藤:あれは衝撃でしたよね(笑)。

早川:びっくりしましたね。あとは、平川大輔さん(ArS・若王子楽役)の場合は低めのボイスが魅力的でキャラにも合っていたので、想定していたキーのひとつ下に入ってもらいました。


――そうして、臨機応変に進めていったんですね。

伊藤:私たちもはじめてのことばかりだったので、録りながら「こうしていけばいいのか」と気づくことが多くありました。だからその場での柔軟な対応は必要だったんです。


――では、レコーディング後のミックス作業については?

伊藤:よく覚えているのが、天上天下の『十六夜の空』ですね。

早川:そうだ。ミックスの段階でサウンドを重めにしたんですけど、イメージが変わってしまって。

伊藤:重くなったことで、天上天下の楽曲テーマである和の雰囲気が弱まってしまったんです。天上天下に関しては、そこを強めたいので。やりとりしながら詰めていきましたよね。結果的に、この曲もすごく良い雰囲気になりました。小野友樹さん(竜胆椿役)は、お腹の底から出る声がかっこよくて、まさに椿そのものでした。ハマり役だなあと思いながら聴いていましたね。他のメンバーを演じてくださっている木村良平さん(杜若葵役)は色気があって耳に残る声だし、峰岸佳さん(朴木十夜役)はほんわかとした優しい声だし、斉藤壮馬さん(斑尾巽役)は低いところから高いところまで出る方なので。

早川:声の相性もバッチリでしたよね。

伊藤:鳥肌がたちましたよね! 天上天下は一期生なので、先輩らしいという意味でも素晴らしい曲ができたなと思います。


――納得のできばえになったわけですね。では、30曲を仕上げるのにどのくらいかかったんですか?

早川:2014年の9月に打ち合わせがスタートして、ラフが全部終わったのが翌年の6月くらいですかね。だからすべての曲が固まるまでに9か月かかってる。レコーディングは、その途中の3月くらいからはじめていたんですけど、それも全部終わったのが7月末なんですよね。

――『アイ★チュウ』のリリースが2015年6月だから……その間も制作されていたんですね。

伊藤:レコーディング真っ最中でした。

早川:あとは、ラフのブラッシュアップ作業とかもしてましたよね。

伊藤:当時は会社の人の次に早川さんに会ってました(笑)。


――では、今後のお話も。このたび、晴れてCD化が決まりましたよね?

伊藤:お待たせしましたという感じですね。「ユーザーさんたちにどういう形で提供するのがいちばん良いのか?」っていう議論を重ねて、アルバムという形になりました。入りきらなかった曲もあるので、そこは今後のお楽しみということで……。とりあえず、今度発売されるアルバムの曲を楽しんでいただけると嬉しいです。

――そう、今回は全ユニットの曲を2曲ずつ収録しているんですよね。かなりお得感がありそうです。

伊藤:『アイ★チュウ』の曲は、「30曲を一気に作る」っていうところからはじまったので。まずは、できる限りまとめて出したかったんです。次はシングルということもあるかもしれませんが、今後もいろんな形を考えて、今まさにアイ★チュウをあそんでくれている方、ゲームをプレイした事ないけど気になってくれている方といったように、いろんな方に手に取っていただければと思っています。


――ということは、この先も定期的に増えていく?

伊藤:もちろんです。今(インタビュー時)、全グループ1曲ずつ全8曲録っているので。1月も1曲追加されますし、今後も毎月増えていきます。やっぱり音ゲーというからには、常に新しい曲は聴いていてもらいたいんです。

早川:今回の8曲も本当にバラエティ豊かというか。今までの30曲とはまた違う8曲なので。ぜひ期待してもらえればと。


――では、その8曲の後はどうでしょう?

伊藤:例えば“ソロ”とか“混合ユニット”とか。これは開発側だけで話している夢の段階なので、ひとまずやりたいことを自由に言い合ってます(笑)。一番重要なのはユーザーの方に楽しんでいただけるような取り組みを考える事だと思いますので、常に新しい事をご提案していければと思っております。


――夢は大きくですね!

早川:最初にも話しましたけど“何度も聴けること”がゲーム音楽の醍醐味であり、僕ら作り手の喜びなんですよ。やっぱり、聴いてもらってなんぼなので。この先もいろんな曲を作っていきますので、楽しんでもらえれば。個人的には、男性ユーザーにも遊んでもらいたいですね。僕自身めちゃくちゃやってるんですけど、やれば音楽とキャラクターを通じてアイチュウの学園生活に入り込めるんですよね。ぜひやってみてもらいたいです。

 常に前向きに、高い熱量をもって答えてくださった今回のインタビュー。いかがだったでしょうか? このあとでプレイする『アイ★チュウ』の楽曲は、少し見え方が違うかもしれませんね。


[文・松本まゆげ/撮影・アニメイトTV編集部]


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価格:基本プレイ無料(一部アイテム課金制)
カテゴリー:恋愛リズムアドベンチャー
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