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『クビキリサイクル』悠木碧さん、ヒロインへの抜擢は喜びより驚き

OVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』声優・悠木碧さん、ヒロイン・玖渚友への抜擢は喜びより驚き

 『〈物語〉シリーズ』や『忘却探偵シリーズ』でお馴染み、西尾維新さんのデビュー作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』が全8巻のOVAシリーズとして2016年10月26日(水)より順次発売となります。

 本作の舞台は、日本海に浮かぶ孤島、鴉の濡れ羽島。そこに建つ屋敷の中で発見された首斬り死体。その事件の真相解明に迫るミステリー色が強い本作を、シャフトがどうアニメーションとして仕上げたのか……

 それも気になるところですが、今回は本作のヒロイン・玖渚友を演じる、声優・悠木碧さんにインタビュー。物語のキーとも言えるひとりの天才を演じた感想をはじめ、西尾維新さん、シャフトが手掛ける作品に対する印象などについても語っていただきました。

 

アフレコ現場で重要視しているのが一語一句間違えないことなんです
――玖渚友という役は、オーディションがあったんでしょうか?

悠木碧さん(以下:悠木):いえ、違います。


――そうだったんですね! すごく合っていると思いました。玖渚役の話が来たときはどう思いましたか?

悠木:高校の時、友達に「面白いから」と原作を勧められたんですけど、当時、西尾維新さんの書く「ぼく」の心情というかモノローグが、思春期の自分に非常に刺さるというか。この人見えてるんじゃないかってくらい共感できる部分が多くて、すごく怖くなってしまったんです。だから「私にはまだ早いわ……」って返して、途中までしか読めていなかったんです。つまり当時の私は『クビキリサイクル』という作品から逃げていたんですが、こんな形で立ち向かわないといけない時が来るとはって、びっくりしました。

――喜びよりも驚き?

悠木:もちろん嬉しかったです! それこそ、オーディションではなく呼んでいただけるというのは、イメージに合っていると思ってくださったどなたか……今回は新房総監督がご指名くださったという事を耳にしているのですが、やっぱり嬉しかったです。新房さんが、また全然違うキャラクターをやる機会をくださったことも、大人になってからもう一度この作品に出会う機会を与えてくださったことも、嬉しかったですね。


――もう原作は読まれたんですか?

悠木:実はまだアフレコがすべて終わっていないので読んでないんです。できれば読まないほうがいいかもと周りの方から言われたので(笑)。


――自分が演技をするスタンスとしては、全部知っていたほうがいいんですか?

悠木:どちらもありますね。制作サイドの方々が、どちらのほうが私たちを誘導しやすいかによると思います。もちろん、キャラクターにもよりますね。


――確かに刺さるというのはわかるのですが、それ以外に文体も独特だと思います。西尾維新作品の印象を聞かせてください。

悠木:アフレコ現場で重要視していることが、一語一句間違えないことなんです。原作から削っている部分もあるのですが、ほとんどそのまま持ってきている文章なので。それと、昔読んだ記憶から思うことは、文章のリズムが良くて、語感がすごく良いってことですね。なんて言ったらいいんでしょう、書き言葉なんだけど、口にしたときのリズムがいい。だからこそ、当時怖いと感じました。ただでさえ自分を知られているようで怖いのに、スルスル読めちゃうから、いつの間にかワールドに引き込まれる感じ……ものすごい文字の引力を感じました。

――じゃあ、アフレコでも今までにない感覚を味わっている?

悠木:お芝居の方向性が(他の作品とは)ちょっと違うな、とは思っていて。具体的に言うと、アフレコをみんなで録っている理由って、空気を共有しているからこそのナチュラルな人間同士のトークができるからだと思うんです。でも『クビキリサイクル』は、感情を共有するというよりは、リズムを共有するつもりでやっています。「ぼく」がモノローグでリズムを刻んでいるところに音を乗っけていく。リズムよく皆さんの耳に入るようにというのは意識しています。ギャグものだとテンポが重要だったりするんですけど、通してリズムを気にする作品は特殊だと思います。


――セッションみたいな感じですね。それには新たな技術が必要なんですか?

悠木:今までやってきた定説ではない部分を使っていく感じですね。新しい何か、というより、持っているものをどう角度を付けて使っていくかになると思います。玖渚友でいうと、私は役者なので、セリフとセリフの間に何があったのか、この表情をする理由は何かなって、やっぱり考えるんです。

でも玖渚の場合は、それが全然関係なくて、次のセリフでいきなり違う表情になっていても、彼女の中では筋が通っている。頭の回転が速いっていうのも申し訳ないくらいの天才なので、一瞬で別の感情を表現できてしまうんですね。凡才な私が思う以上に一瞬で感情が整理できているから、私はこれまでやってきたキャラクターたちの、行間を読むという作業を捨てて、彼女のリズムで考えていったので、そういう意味では新しいことをしているかなと思います。


「ぼく」=いーちゃんだけ特別であとは全部同じを心掛けています

――玖渚友の話が出たので、キャラクターの話を。原作をあえて読まれていない中での役作りは、どういうところからスタートするんですか?

悠木:なんとなく知っていた原作と、台本の中からキャラクターを作っていく感じでした。玖渚って、西尾さんが「女の子ってわからない生き物だな」って思っている象徴みたいなキャラクターだと思ったんです。かわいくて何でもできるのに、「ぼく」を好きって言っていて、自分ルールで生きていて、全然理解できないけど放っておけないみたいな、そういう存在なのかなと。

役作りについては、表情がくるくる変わる子なので、現場では小動物にならないようにと言われています。動きがポップだし、言動も一番口語体だし、マスコットキャラ的な存在になりやすいんですけど、あくまで人間にしてくれと音響監督の鶴岡(陽太)さんから言われています。私たちって、ひと言セリフがあると、そこにいかに表情を詰められるかみたいなことにこだわりだすんですけど(笑)、それを入れすぎると小動物になりやすいんです。

――セリフだけで、すべてを表現してしまうところはありますよね。

悠木:実際に、いかにセリフに表情を込めてあげられるかが重要な役のほうが多いんですけど、この現場では引き算をしてくれと。つまり行間を読むなっていうことですよね。このセリフには、このひと言しかシンプルに詰めてないよ、という。淡白と言うのも違うのかもしれないけど、セリフの外郭と芯しかないみたいな感じにしていくイメージですね。


――確かに。「髪が濡れちゃうでしょ?」っていうセリフの言い回しがすごく好きなんですけど、普通は出てこないような言い方だなと思ったんです。引き算という指示があったんですね。

悠木:ありがとうございます(笑)。引き算をすることで、なるほどと思ったのは、たぶん玖渚自身、凡人にもわかるように説明しているんですね。だってこうすればいいじゃんって答えを出していると私は捉えたんです。シンプルにすることで、言いたいことを明確にしていくってことなのかなと。だから事実を伝えるときは感情を入れないし、逆に感情だけ伝えたいときは感情だけを込める。それでいて人間っていうのが、彼女の魅力的な部分かなって。

――「ぼく」に対する感情は、他とは違いますか?

悠木:そうですね。「ぼく」=いーちゃんだけ特別にしていて、あとは全部同じを心掛けています。いーちゃんにしかキュートなところは見せない、いーちゃんにかわいいって思ってほしいし、大好きと思ってほしい。他の人っていたっけ? という感じです(笑)。


――だから、「ぼく」に対する言葉がキュートに思えたんですね。

悠木:1話の最初のシーンは玖渚自体が超ゴキゲンで、あなたといてすごくハッピーで、すごく大好きだよっていうことを伝えたい感じなんです。それ以外は何も要らないので、この子が一番言いたいことだけを抽出している感じです。


――アフレコ現場の雰囲気はどうですか?

悠木:やっぱり誰が犯人なんだろうね? みたいな話はしています。原作を読んでいる方もいて、「知らないほうが絶対いいよ!」って話をしたり。でもアフレコの後にご飯に行ったりもしているんですけど、基本的には作品の話をしていますね。あと、「ぼく」のモノローグに対する女子陣のコメントがシビアだなっていうのはありますね(笑)。

――その時、梶裕貴さんは?

悠木:梶さんって、とても緻密にお芝居される方なので、隣でずっと悩まれているんです。だから、そのコメントはあまり聞いていないかもしれないです(笑)。でも、たくさん悩んでお芝居に臨まれる姿が、「ぼく」とリンクしていて、なるほどって思いました。新房さんはそれを見てぴったりだと思ったのかなって。すごく悩んで、いいものを探していくスタイルっていうのは、先輩としてすごくカッコいいなって思います。

――1話では、キャラクターがたくさん出てきましたが、気になるキャラクターはいましたか?

悠木:いろんなところで言っていますが、姫菜真姫さんは超好きですね! 私たちから見ると天才って憧れの存在なんですが、真姫さんを見ていると自由じゃないんだろうなって思うんですよね。

玖渚も自分ルールが人と違っていたりして生きにくいし、真姫さんの場合は人の心の声が聞こえちゃいますからね。どんな生活を送るんだろう、本当に嫌だなって思うんですけど、彼女はのらりくらりとそれを乗り切ってるところが良いと思います。


お互いがお互いの世界観をリスペクトしているすごいチームだなと思います

――今回はシャフト作品となるわけですが、その魅力を教えてください。

悠木:シャフトさんの作品は、基本的にアーティスティックだと思っていて。アニメーションって子供向けであったり、アニメ好きの人向けに作られたものが多いからか、アートではないみたいな扱いを受けることがあると思うんです。その中でも、「アニメもアートだよ」っていうのをすごく詰め込んで表現されているフィルムだなと思います。すべてのシーンに言いたいことが詰まっているというか。これって、こういう風に気持ち悪いよね、不思議だよねっていうのが、どのカットにも意味を込めて描かれている。それがアートだと思う理由ですね。


――大きくて豪華な螺旋階段とか、部屋の背景とかもそうですよね。

悠木:花が出てきたら、花言葉を調べなきゃって思うし、すべての画の中にトリックがあるみたいな感じですね。

――それと音楽が『魔法少女まどか☆マギカ』と同じく、梶浦由記さんです。

悠木:私たちは音がない状態で録っていて、先程も言ったように、セリフでリズムを刻みながらやっているんです。そこにさらに音楽が乗ると、一気に世界が広がるというか。アニメーションの画と音楽で、その空間がどんなところなのかがわかる気がしました。


――私もどんどん映像と音が足されていくのを拝見したのですが、印象がまったく変わりますね。

悠木:変わりますよね! 情報に溺れるって思いました(笑)。言葉だけでもいっぱいいっぱいなのに、そこに視覚の情報が入ってきて、しかも1話ではキャラクターたちも覚えなければならない。そこでまた音楽となると、すごい情報量! と思うんですが、いつの間にか終わっているという。

――あっという間ですよね。西尾維新さんの作品って会話が中心になっていると思うんですが、そこにシャフトだからこその見る楽しみがさらに加わるというか。

悠木:逆に説明してくれるセリフがあるから、背景が抽象的な表現であっても許されるんですよね。そういう組み合わせなのかなって思うし、お互いがお互いの世界観をリスペクトしているのがすごくよくわかるので、すごいチームだなぁと思って、いつも見ています。


――『〈物語〉シリーズ』的な会話の中でのギャグみたいなものが、『戯言シリーズ』では少ないのかなっていう印象でした。

悠木:サンドバッグになっているいーちゃんがじわじわ面白いっていうギャグ(笑)……だなって私は思っているんです。もともといじられやすいんですけど、いじられるとちょっと抵抗を見せるんですよ。それもすごくおかしくて(笑)。だから〈物語〉シリーズの阿良々木くんよりいーちゃんのほうが幼いのかなって感じは、ちょっとしますね。阿良々木くんは悩んだ結果大人になってるけど、いーちゃんはまだ悩んでいる途中なので。

――では最後に、今後の見どころをお願いします。

悠木:基本的に「ウソでしょ?」っていう衝撃的な展開が重ねられていくんですが、おそらくこれを見る皆さんは原作を読まれているんじゃないかと勝手に思っているので…今回のアニメ化では、このチームが『クビキリサイクル』を映像として捉えたらこうなりましたっていう、一つの提案がずっと続いていくんだと思います。そして、これが答えではなくて、皆さんの中での『クビキリサイクル』と比べてどうでしたか? という提案だと思っているので、原作と一緒に楽しんでいただければいいなと思っています。

[文&撮影・塚越淳一]


パッケージ情報
■OVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』
 Blu-ray&DVD 第一巻 発売中
         第二巻 11月30日(水)発売
 ※以降毎月発売、全8巻

□価格
 ・Blu-ray完全生産限定版:3,600+税 ※各巻共通
 ・DVD完全生産限定版:3,600+税 ※各巻共通



□特典
 ○原作者:西尾維新書き下ろしキャラクターコメンタリー
 出演:哀川潤と「最強シリーズ」のキャラクター1名
 ○キャラクターデザイン:渡辺明夫 描き下ろしデジジャケット
 ○特製ブックレット12P(キャスト・スタッフインタビュー他)
 ○スーパーピクチャーレーベル
 ○全巻購入連動キャンペーン 全巻収納BOX応募券(応募台紙は1巻にのみ封入)

作品情報
【INTRODUCTION】
日本海に浮かぶ孤島、鴉の濡れ羽島。
そこに建つ屋敷には、島の主の赤神イリアによってあらゆる分野の天才たちが客として招かれていた。
だがある朝、屋敷の中で、首斬り死体が発見される。
そして事件は、それだけでは終わらなかった――

原作は、西尾維新のデビュー作にして第23回メフィスト賞受賞作『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』。〈物語〉シリーズを手がけてきたシャフトによって、西尾維新の原点とも言える作品が映像化される。

【STAFF】
原作:西尾維新「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」(講談社ノベルス・講談社文庫)
キャラクター原案:竹
総監督:新房昭之
監督:八瀬祐樹
シリーズ構成:東冨耶子・新房昭之
脚本:木澤行人・中本宗応
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
総作画監督:鈴木博文
イメージボード:okama
美術設定:大原盛仁
美術監督:内藤健
色彩設計:日比野 仁・渡辺康子
3DCGディレクター:越田祐史
3DCG制作:オレンジ
撮影監督:江上 怜
編集:松原理恵
音響監督:鶴岡陽太
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:シャフト
製作:アニプレックス・講談社・シャフト

【CAST】
ぼく:梶裕貴
玖渚友:悠木碧
園山赤音:嶋村侑
伊吹かなみ:川澄綾子
逆木深夜:浜田賢二
姫菜真姫:遠藤綾
佐代野弥生:池澤春菜
赤神イリア:伊瀬茉莉也
班田玲:桑島法子
千賀あかり:桑谷夏子
千賀ひかり:新谷良子
千賀てる子:後藤邑子
哀川潤:甲斐田裕子

【THEME SONG】
オープニング・テーマ:三月のパンタシア「群青世界」(コバルトワールド)
エンディング・テーマ:Kalafina「メルヒェン」

>>OVA『クビキリサイクル』公式サイト
>>西尾維新アニメプロジェクト公式Twitter(@nisioisin_anime)

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
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