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TVA『うた☆プリ』音楽プロデューサー・上松範康氏にインタビュー

今期最も話題のTVアニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』で音楽プロデューサーを務める上松範康氏に単独インタビュー!「最終回で“魔法”が解けて、“歌の力ってこんなに凄いんだよ”っていうのが伝わったら嬉しいです」

 “キスより素敵な音楽が奏でる”青春ラブコメストーリー、アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』の人気が凄いことになっている。

 2010年6月にPSPゲームソフトとして誕生し、瞬く間に一大タイトルに成長した今作。TV放送以外に、ニコニコ動画での配信も開始されているが、アニメ第一話が放送された直後から、オープニングで流れた「マジLOVE1000%」(第2話以降はエンディングテーマ)が大反響を呼び、急遽公式映像を配信。

 7月20日にリリースされたシングル「マジLOVE1000%」もチャートの上位をマークするなど、その注目度の高さがうかがえるよう。

 今回、アニメイトTVでは同作のゲーム、アニメの音楽プロデューサーを務める上松範康さん(Elements Garden)にインタビューを敢行。音楽家・上松さんがこの作品に挑んだ気持ちとは──じっくりと語ってもらった。

●「第1話がオープニング、本編、エンディングで約1万枚(作画を)作ってくれたらしくて……これって凄くないですか?」

――『うた☆プリ』の人気が凄いことになっていますね。アニメの話題と比例してCDのセールスも異例の売り上げを記録している上、キャラソンも大反響を呼んでいます。上松さんの心境としてはいかがでしょうか。

上松範康さん(以下上松):すっごく嬉しいです。そういう結果を生み出せたのは、声優さんや、制作サイドのひとりひとりの情熱や愛情があったからだと改めて思いますね。 “音楽のあるアニメ”って凄く難しいと思いますし、音楽に対して絵を合わせるって作業に対して凄く苦労も多いと思うんですけど、A-1 Pictures(制作)の加藤さんが「一番大事にしなきゃいけないのは倉花(千夏)さんの絵。その上でElements Gardenの音楽がしっかり見えるアニメにしたい。その2つを守ればこのアニメはうまくいく」って言ってくださっていて。とにかく、皆さん命を掛けてこのアニメを作ってくれているんですよね。そういう意味でも“人に恵まれたアニメ”になったんじゃないかなと。

――確かに作業的に難しい部分は多いかとは思うんですけどST☆RISH(一十木音也・聖川真斗・四ノ宮那月・一ノ瀬トキヤ・神宮寺レン・来栖 翔/CV:寺島拓篤・鈴村健一・谷山紀章・宮野真守・諏訪部順一・下野 紘)がパフォーマンスする姿が見れるオープニング映像“マジLOVE1000%”(現在ED)を見た時はビックリしました。あまりにも映像と音楽がリンクしていたので……。

上松:あれも、本当に色々な逸話があるんです。
本当はイベント(第1話上映会イベント 6月18日@秋葉原UDXシアター)でお披露目する予定だったんですけど、スタッフさんたちが寝る間を惜しんで──いや、命を掛けて作って下さっていたので、そこには間に合わなかったんですよ。
前日納品だったらしくて、僕もオンエアで初めて見たんですけど(笑)。でも、それだけでも泣けるんですけど、後から聞いたら、オープニング、エンディングだけで1万枚くらい(作画を)作ってくれたらしくて……これって凄くないですか? ありえないですよね(笑)。
また倉花さんの絵も素晴らしいですし、倉花さんの絵を再現した作画監督の森さんも凄いと思いますし──この映像を見て、本当に声優、スタッフ、ひとりひとりの情熱がアニメになっているんだなって改めて思いました。こんな奇跡って起きるんだなと。

――皆さんのお力ももちろんですが、上松さんの作られる音楽も本当に素晴らしいと思います。「マジLOVE1000%」は底抜けに明るいメロディー、キャッチーなコーラスがとても印象的な曲ですが、このタイトルにはどんな想いを込められているんでしょうか。

上松:アニメのタイトルもシングルのタイトルも“マジLOVE1000%”。このシングルを買ってくれた人たちの中には “どういうことなんだろう?”と考えている人もいると思うんですけど、その答えは13話全部見終わったときに出るんです。だから、今の段階では完成したCDじゃないんですよ。
僕、ツイッター上では“魔法”って言ってるんですけど──今放送中のアニメではひとりひとりの紹介をしている段階だと思うんですけど、最終回で初めて魔法が解けて、本当の意味でこの歌がみんなに伝わるようになるんじゃないかなと。最終的に“歌の力ってこんなに凄いんだよ”っていうのが伝わったら嬉しいですね。


こちらが話題の「マジLOVE1000%」(ST☆RISH)ジャケ写

こちらが話題の「マジLOVE1000%」(ST☆RISH)ジャケ写

七海春歌(CV:沢城みゆき)

七海春歌(CV:沢城みゆき)

一十木音也(CV:寺島拓篤)

一十木音也(CV:寺島拓篤)

聖川真斗(CV:鈴村健一)

聖川真斗(CV:鈴村健一)

●「“そんな作曲家見たことないよ”って言われてきました(笑)」

――上松さんは今作のアフレコ現場にも立ちあっているという話を聞いたんですが、実際にアフレコを生で見ていかがでしたか?

上松:もう凄いの一言。まるでオーケストラを見ている感覚でした。歌のレコーディングの場合は、アーティストがひとりで歌う事が多いので何度も録り直せますけど、アフレコの場合は、出演する声優さんたちが集まって、一気に録っていくじゃないですか。制作サイドはそれを真剣に聞きながら、良いところ、悪いところを冷静に指摘していく。音楽の現場とは違った緊張感があると言うか……何度見ても感動しますね。

――“アフレコ=オーケストラ”っていう表現が上松さんらしいですね。

上松:一人一人が自分の仕事をこなしながら、全員で一個の大きな物語を作っていく、「相手がこういう風に言ったから、こっちはこういう風に表現しよう」って考えながら声を吹き込んでいく……その作業がオーケストラに近いのかなと。オーケストラの奏者たちも「バイオリンがこういう風な音を出したからホルンは小さめに吹こう」とかって考えるじゃないですか。それに近いものを感じたんですよ。そういう意味でも、ひとつの作品が生まれる瞬間っていうのは芸術品だなと。感動の嵐で「凄いです」としか言葉が出ませんでした。

――アフレコ中のエピソードがあったら教えていただきたいです。

上松:何か事件が起きたかっていうと何も起きてないんですけど(笑)、自分的には声優さんが本当に凄いなと思いましたし、さっきもちょっと話しましたが音響監督さんも凄いな、と。例えば音楽のレコーディングでは「今のテイク良かったよ!もっとアガっていこうぜ」みたいな感じで(歌い手の)モチベーションを上げていくことが多いんですけど、アニメの音響監督さんの場合は「あ、今のところなんだけど、もう一回やり直して」みたいな感じで気付いたところを淡々と指摘していくんですよ。
それに対して声優さんがやり直して、それをエンジニアさんが録って……っていう。それって凄く効率的なやり方だなと思ったし、アニメの現場は──“葛藤の中で生まれたセッション”なんだなって。日本のアニメの現場は世界に誇るべきだなと思いましたね。自分も凄く勉強になりました。

――上松さんは多くのアニメの楽曲を手がけられていますが『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』以外のアフレコの現場に立ち合われたことはありますか?

上松:あります。むしろ「音楽を良いものにしたいんで、アフレコ現場見させてもらいたいんですけど……」ってムリヤリ立ち合わせてもらってるんですよ(笑)。アフレコが終わった映像をもらって、それに対しての音楽をつけたいので、よく立ち合わせてもらってたんですけど、色々なひとに「そんな作曲家見たことないよ」って言われてきました(笑)。珍しいんですかね?(笑)


四ノ宮那月(CV:谷山紀章)

四ノ宮那月(CV:谷山紀章)

一ノ瀬トキヤ(CV:宮野真守)

一ノ瀬トキヤ(CV:宮野真守)

神宮寺レン(CV:諏訪部順一)

神宮寺レン(CV:諏訪部順一)

来栖 翔(CV:下野紘)

来栖 翔(CV:下野紘)

●「音楽に興味を持つ人が増えるっていうのは物凄く嬉しいことなんです」

――ところで、上松さんが主人公だとしたら、どのプリンスさまを選びたいですか?(笑)

上松:えーっ! それは難しいなぁ(笑)。う~ん……自分が春歌だったらってことでしょ? ……(考えて)トキヤかも(笑)。トキヤが自分と葛藤している姿を見ると、守ってあげたくなるっていうか、自分が春歌だったら抱きしめたくなるというか(笑)。

――(笑)では、プリンスの中で上松さんに一番近いキャラっていうのは誰だと思いますか?

上松:それはインタビューで絶対聞かれるだろうなと思ってよく考えるんですけど……全員なんですよね(笑)。
例えば、(一十木)音也は理論的なところはトキヤにはかなわないけど、音楽に対する愛情は人一倍強いじゃないですか。そういうところは音也に似ていると思うし、トキヤのストイックなところ、レンのチャラいところ──あ、あと翔ちゃんの高所恐怖症なところも似ていますね(笑)。
……でも、一番は春歌かな。二話のシーンで春歌が鼻歌でメロディーを作る場面があるんですけど、僕もそうやって曲を作っていくんですよ。でも、みんな鼻歌から曲を作るとは想像できなかったみたいで、ビックリされている方も多いですけど。

――確かに、意外に思う人も多いと思います。

上松:ピアノや色々な楽器を使いながら「う~ん、違う~」とか唸りながら曲を作ってるイメージが強いみたいなんですけど、まったく違うんです。昔、水樹奈々ちゃんに「どうやって曲を書けばいいか」って聞かれたことがあったんですけど、「鼻歌さえ歌えれば曲書けるよ」って。
むしろ、鼻歌で歌えるくらいシンプルじゃないとダメなんですよね。メロディーだけで分からないような歌っていうのは人に伝わらないと思うので、そう考えると鼻歌で作曲するのが一番良いんですよ。まぁ、実際そこからまとめるのが大変になってくるんですけどね、譜面も必要になってきますし。でも、それは曲が出来たあとの話であって、それに縛られると曲はできないと思うんです。
実際、僕も春歌と一緒でピアノも習ってなくて基本的に独学でしたし、譜面を書くのも苦手ですし──なので、良いメロディーが思いついたら、鼻歌でうたったものをすぐボイスレコーダーに録音するんです。第五話で春歌が「あ、曲が逃げちゃうっ」って言うシーンがあるんですけど、まさに僕もそういう風に思うときがあるので、ボイスレコーダーを常に持ち歩くようにしてるんですよ。

――このアニメを見ることでそういったリアルな作曲のコツを知ることも出来るっていうことですね。

上松:あ、そうですね(笑)。バレちゃうかもしれないです。


月宮林檎(CV:中村悠一)

月宮林檎(CV:中村悠一)

日向龍也(CV:遊佐浩二)

日向龍也(CV:遊佐浩二)

渋谷友千夏(CV:今井由香)

渋谷友千夏(CV:今井由香)

シャイニング早乙女(CV:若本規夫)

シャイニング早乙女(CV:若本規夫)

クップル(CV:鳥海浩輔)

クップル(CV:鳥海浩輔)

――そういう面でこのアニメを見ることで「作曲を実際にしてみたいな」「上松さんのような作曲家になりたいな」っていう気持ちになる方も多いと思います。

上松:そんなこと言われたら、リアル早乙女学園を作りたくなりますよ(笑)。でも、そう言っていただけるのはすっごく嬉しいです、ありがとうございます。よくね、周りの人たちに「そんなに作曲家を育てるな」って言われるんですよ(笑)。奈々ちゃんにもジョークで「そんなに良い曲書かないでよ! 俺らの仕事がなくなるじゃん」って言ったりするんですけど(笑)。
でも、自分からすると音楽に興味を持つ人がひとりでも増えるっていうのは物凄く嬉しいことなんですよ。友達が増えていく感覚っていうか。しかも、その人たちが育っていくと、ライバルになっていくわけじゃないですか。ライバルが凄ければ自分はもっと頑張れるので。

――(笑)でもそういう意味でも、いろいろな発見のある、今までになかった本格的な音楽アニメですよね。これから後半に掛けてどんな展開があるのか楽しみですが、現時点で上松さんからお話できることって何かありますか?

上松:後半はかなり面白い展開になりますってことですかね。第8話くらいからトキヤの周りで様々な出来事が起きはじめるんですが──続きは放送を楽しみにしていてください。

――気になりますね(笑)。では最後にファンの方にメッセージをいただけると。

上松:最初のイベントの時……その時は40人くらいだったんですけど、その時きてくれた方たちに「みんなの声があればうた☆プリは大きくなる、みんなの声があれば彼らは大きな舞台に立つことができるはずです」ってことを伝えたんですよ。今もその気持ちは変わってなくて、みんなの声が大きかったおかげで彼らがこんなに成長したんだと思うんです。
で、応援してくれる輪がさらに大きくなったら、もっともっと大きくなる可能性もあるのかなと今は思っています。だから、今みんなに言いたいのは――今まで応援してくれてありがとう、でも、今まだ始まったばかりなので一緒に楽しんで、一緒に彼らを応援していきましょう、ということですね。

――来年1月15日に行われる「うたの☆プリンスさまっ♪」スペシャルライブイベントも今から楽しみです。

上松:ありがとうございます。キャパがちょっと少ないかもしれないんですけど、ぜひ楽しみにしていてもらいたいですね。

――いつか水樹奈々さんに続いて東京ドームでイベントを開催してもらいたいです(笑)。

上松:(笑)出来たら嬉しいですね。僕の原点は、本当に奈々ちゃんなんですよ。奈々ちゃんがいてくれたこそ、音楽で気付いたことがたくさんあったので……奈々ちゃんの東京ドーム公演は全力で応援したいと思っています。

<Text:逆井マリ>

>>TVアニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』公式サイト
>>『うたの☆プリンスさまっ♪』ゲーム公式サイト


(C)早乙女学園 / Illustration 倉花千夏
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