1stアルバム『BLAU』発売! 藍井エイルさんにインタビュー

1stアルバム『BLAU』発売! 藍井エイルさんにインタビュー!!

 アニメ『Fate/Zero』のエンディングテーマ『MEMORIA』を唄い、デビューを飾ったのが2011年10月のことだった。当時は、口元を隠した姿でメディアへ登場。楽曲のインパクトもさることながら、そのミステリアスな容姿の裏にどんな素顔が潜んでいるのかと、その正体にも大きな話題が集まり続けていた。

 その後も、2012年4月に『Fate/Zero』のトリビュート・アルバム『Prayer』を制作。5月に行ったモバイル・ファンクラブ限定ライブを通し、初めて人前へ姿を現し、その見目麗しい容姿が、素顔の解禁を待ち望んでいたファンたちに嬉しい衝撃を与えてくれた。

 本人の素顔が表に出て以降は、「アニメロサマーライブ2012」など様々なイベントへ積極的に参加。9月には、渋谷duo music exchangeでのワンマン・ライブをソールドアウトさせるまでの人気を獲得。同月には、アニメ『機動戦士ガンダム AGE』三世代編乃オープニングテーマ『AURORA』を。11月には『ソードアート・オンライン』ファアリィ・ダンス編の主題歌『INNOCENCE』をリリースと、精力的に活動を続けてきた藍井エイルさん。

 これから紹介する藍井エイルの1stアルバム『BLAU』は、デビューの夢をつかんだ時期から現在まで、約2年あまりの中、彼女自身が感じ、心に抱いてきた想いを、14編の物語の中へ詰め込む形で作られている。その一つ一つの心の結晶を紐解きながら、この場へ藍井エイルの心模様をお届けしたい。

●「その曲に似合う歌声の色をどう入れようか?!」「今までに見せたのとは違う声の表情を伝えたい」。心の中には、つねに2つのバランスがあったのかも知れないですね。

――エイルさん、デビュー以来ズッと激動の日々を送り続けていません?

藍井エイルさん(以下、藍井):デビューしたばかりの頃は、口元を隠し、ミステリアス感を出していたこともあって、そこまで「目まぐるしい」ということはなかったんですけど。5月に演った初ライブを通して素顔を見せてからは、本当に激動な日々でした。わたし、ライブ活動が大好きなので、ようやく人前で唄えるようになって嬉しくって。ただし、ミステリアス感が今も残っているのかは、自分じゃよくわかんないんですけど(笑)。

――素顔を出して以降、人前へ出る機会が一気に増えましたもんね。

藍井:ホント、嬉しい悲鳴って言うんですか?!その忙しさって充実感が増していくことだから、すごく楽しんでます。

――どんどん心満たされてゆく様が、いいですね。

藍井:満たされるというよりも、向上心が強くなってくって言えばいいのかな?!人前に出ることも多くなり、いろんな人たちと接していく中、もっともっとライブのパフォーマンスを磨いていこう、歌唱力や表現力の器をもっともっと多くしなきゃという欲求が強くなっていくんです。それだけ音楽活動が充実してるってことは、確かに幸せなことだとは思います。

――具体的なアルバム制作に入ったのは、昨年11月と聞きました。でも、前からアルバムという姿を見据えながら制作を行っていたのでしょうか? それとも、まずは目の前にある楽曲へ取り組もうという姿勢でした?

藍井:その両方ともありました。作品を出すたびに、「藍井エイルらしさを描きだすためには、もっともっと表現力を重視してかなきゃいけない」「いろんな声の色を出せるように幅も広げなきゃ」と感じ続けていました。

もちろん、「その先にアルバムを」というのは見据えていましたけど。でも同時に、目の前にある楽曲に対し、「その曲に似合う歌声の色をどう入れようか?!」「今までに見せたのとは違う声の表情を伝えたい」と、そのつど表現方法を探していたように、心の中には、つねに2つのバランスがあったのかも知れないですね。



●「太陽と月」で例えたら、藍井エイルの楽曲は「月」のような表情が。笑顔よりも「憂い」が似合う楽曲が多いと思います。

――2ndシングル『AURORA』を出した頃までの藍井エイルと言えば、感情の内側からグワーッと湧き出るような雄大な楽曲を、力強く、凛々しく唄いあげてゆく姿を魅力としてきました。でも3rdシングルの『INNOCENCE』では、明るく開放的な。それこそ、光求め輝き放つ開放的な声の色も見せましたよね。あの表情は、とても嬉しい驚きでした。

藍井:力強い声色という面は変わらず。でも、「また違う表現を見れてすごく良かったです」という声もいただけてたように、いろんな藍井エイルの姿を描いてゆくきっかけになったという面では、その反響はすごく嬉しかったです。

『INNOCENCE』の持つサビで開けてく…光が射してゆくその感覚は、わたしも歌ってて新鮮でした。同じアップテンポとはいえ、『AURORA』は、もっと感情の内側へ寄り添った楽曲でしたし。それ以前に出した『MEMORIA』には。もちろんミニ・アルバムの『Prayer』にも、そういう開けた感じの曲調がなかったですからね(笑)。

――「光射す」。まさにそこが、藍井エイルとしての新しい表情の魅力へと繋がりました。

藍井:「太陽と月」で例えたら、藍井エイルの楽曲は「月」のような表情が。笑顔よりも「憂い」が似合う楽曲が多いと思うから。きっとファンの方々にとっても、『INNOCENCE』は新しい魅力になっていたと思います。

――アーティスト藍井エイルとしては、憂いを持った楽曲がとても似合うんだけど。でも普段のエイルさんって、いっつも笑顔な明るい方ですよね。

藍井:人前では、ほとんど笑顔の写真や姿を見せてないんですけど。普段はテンション高く明るい性格です。ただ、感情の波が激しいのか、落ちるときはとことんまで落ちてしまいます。でも、暗い感情を知っているからこそ、より明るい表情を際立たせていけるんだと思います。その感情の揺れが、わたしの声の特徴でもある"抑揚"へと繋がっていますからね。

――抑揚という魅力は、1stアルバム『BLAU』の中で存分に体感できました。エイルさん自身は、どんな想いを持ってアルバム制作へ望んでいったのでしょうか?

藍井:それまでは「月」っぽいイメージが多かったので、『INNOCENCE』のような開けた明るい楽曲など、「これまでに発売してきた藍井エイルの作品にはなかった表情へ挑戦したいな」とは制作に入る前から思っていました。実際、出来上がった『BLAU』はバリエーション豊かな。藍井エイルとして「新しいな」と思える楽曲がいろいろと入っているように、かなり聞き応えのある作品になったと思っています。

●1stアルバム『BLAU』全曲解説。一つ一つの結晶たちに込めた想いとは……。


藍井エイル 『藍井エイル「BLAU」90秒1本勝負』

★『overture』
――ここからは、アルバムの全曲解説をお願いします。まずは哀切な表情を持った、始まりを予感させゆく『overture』からアルバムが幕開けます。

藍井:とても哀愁味のある。でも、何処か厳かな世界観を持った。まるで、ミステリアスな物語の始まりを告げるインスト・ナンバーに仕上がっています。わたし、『overture』の切々としたエンディングから一気に力強く躍動しながら『AURORA』へと繋がってゆく、そこの演奏にすごく惹かれていて。その格好よさを際立たせゆくためにも、『overture』は、物語の始まりを告げる大切な表情になりました。

★『AURORA』
――力強くも躍動性を持った、エイルさんのパワーみなぎる歌声を存分に味わえるのが、『機動戦士ガンダムAGE』三世代編のオープニングテーマとしても流れていた『AURORA』です。

藍井:『機動戦士ガンダムAGE』三世代編のオープニングテーマへ起用されたこともあって、「見たよ~」と報告をしてくれる人たちが本当にたくさんいました。この『AURORA』を通して、大勢の方たちに藍井エイルのことを知ってもらえたのは嬉しい励みになりました。

 この『AURORA』では、「たとえつらいことが目の前にあろうとも、それに負けない強い意志を持って突き進んでゆく」気持ちを表現しています。とても力強い歌声や楽曲になっているよう、『BLAU』という物語の始まりを告げるに相応しい楽曲だなと感じています。

★『INNOCENCE』
――勇壮な表情から一転、『ソードアート・オンライン』フェアリィ・ダンス編の主題歌『INNOCENCE』では、開放的な歌が響き渡ります。

藍井:アニメ作品を通してブラウン管から流れ出した頃から、嬉しい驚きを持って迎え入れられてた楽曲です。頭は重い表情を持ちながら、サビでは一気に開けていくのが特徴になっています。アップテンポな曲調だから、ライブでは盛り上がりを作れるんじゃないかな?

 それまでの藍井エイルの姿を振り返ったら、『INNOCENCE』に描いた笑顔見える開けた感じって、みなさんにはとても新鮮に映ったんだったんだろうなと思います。アルバムでもこの位置に入れたことから、一気に気持ち晴れやかに盛り上がっていきますからね。
 
★『Satellite』
――こちらは、力強くも明るく弾む表情を持った楽曲になりました。

藍井:これはまさに、今までの藍井エイルにはなかった感じだと思います。少しレトロな雰囲気ただよう、ストーリー性を持った楽曲です。ABメロでは、ちょっと感情を内に込めた声の色で歌いながら。サビでは歌声が一気に開けていく。実際にサビのところではニコッと微笑みながら歌ったり、明るい声色を心がけたり。でも、藍井エイルの魅力でもある「憂い」もその中へは意識しているので、微妙な声色の変化も感じ取ってもらえたら嬉しいです。歌詞では♪FLY TO ME♪と唄っているように、とても心に光射す、元気になる楽曲だと思います。

★『閃光前夜』
――冒頭から、感情を押し上げてゆく力強く躍動的なビートが流れてきます。

藍井:けっこうテンポ感のある、しかも、歌声を何度も重ねたように、今までの藍井エイルの世界観にはなかったアレンジが成されています。曲中でも、初めてクラップを録ったり、フフフッと笑った声を入れたりと、遊び心も含め、新しいことへいろいろ挑戦していった楽曲です。弾むビート感も、この歌の特徴になっています。

――歌詞には、自分を変えようとしてゆく強い意志が描き出されました。

藍井:「生命の強さ」「人の持つ心の強さ」を感じる内容ということもあって、歌声をいくつも重ね、力強い声の色を描きながら歌入れしていきました。『閃光前夜』は、とてもビートの強い楽曲。しかも「未来へ向かって自分を奮い立たせてゆく感覚」を歌詞から強く感じていたこともあって、叫ぶように歌いました。気がついたら、マイクスタンドをギュッと強く握りしめながら力強く叫んでたくらいでしたからね(笑)。

★『HIGH & HIGH』
――とても開放的な『HIGH & HIGH』。ここまで爽快で疾走感を持った、光が全身に降り注ぐような楽曲は、本当に嬉しい驚きでした。

藍井:だいぶ開けた感がありますよね。『HIGH & HIGH』は、本当にライブで演るのが楽しみな楽曲。♪HIGH & HIGH♪と一緒にコール&レスポンスをしていったら、きっと、みんなで元気になっていけると思う。この楽曲を初めて聴いたときから「気持ちを前へ向けて進もう」という、歌詞に詰め込んだ想いへわたし自身が励まされていたように、歌ってても本当に楽しかったんです。

――空へ向かって突き抜けてゆく、その感覚が気持ちいいですよね。

藍井:タイトルからして突き抜けてますもん(笑)。この曲、明るい中にも優しい温もりを感じるんですよ。だから「つらいなぁ」と思うときに聴いたら、癒しながらも心を元気にしてくれるんですね。「ぜんぜん駄目だと思っていたけど、その自分さえも受け入れていけばいいんだと教えてくれた楽曲」と、わたしは捉えています。

――弱い自分の心を肯定したうえで光を求めてゆく。エイルさん自身にも、そういう面はありました?

藍井:歌詞の中へ♪自己否定の癖は今も直ってはいないけど♪と書いているように、わたし、もともとマイナス思考なんですよ。だけど、いくら「自分は駄目なんだ」と自分に言い訳したところで、まったく気持ちは先へと進んでいかないじゃないですか。だったら、「自分はこうだけどという自分さえも認めたうえで、前へ進むのを恐れることを辞めてみよう」と考えるようになりました。

 わたし自身が、そういうことを何度も想った経験があったことから、この『HIGH & HIGH』を通して、聴いた人たちにも「自分のことをそんなに攻めず、その弱い気持ちさえも素直に励ましていけるようになれたら」「少しでも元気を与えられたらな」と思い、この楽曲を唄いました。

――マイナス思考な自分をわかっていながらも、そこから抜け出せない人って、意外に多いと思うんです。だから、エイルさんの綴った歌詞に励まされるんですよね。

藍井:その気持ちは、わたしもいまだにあることなんですけど。「こうだから駄目、ああだから駄目」と一人で思い込んでても誰も喜ばないと思うんですね。だからこそ、そこから抜け出す勇気を持つことが大事なんです。そういう同じ気持ちを抱えてる人たちが、この『HIGH & HIGH』を聴いて元気になってくれたら嬉しいですね。

★『アヴァロン・ブルー』


藍井エイル 『アヴァロン・ブルー(Short.ver)』

――これを録ったのは、けっこう前になるそうですね。

藍井:一昨年前の春頃。しかも北海道でレコーディングを行ったように、デビュー前に制作した楽曲でした。だから、とても思い入れの強い歌なんです。G#という、今まで歌ったことのなかったHIGH KEYな楽曲ということで、当時は唄うのに苦労したことを覚えてます。しかも、疾走感を持った格好いい曲をそれまでわたしは歌ったことがなかったように、それも、あの頃の自分にとってはチャレンジだったんですけど。その力強い声が似合う楽曲のよう、『アヴァロン・ブルー』が藍井エイルの魅力を形作ってくれた面は確かにあると思います。

歌詞には、「紆余曲折いろんなことがあり、けっこう心に重い荷物を抱えてるんですけど。それでも前へ進んで行こう」「後ろ髪引っ張られるような意識もあるけど。でも、前へ進むから」という意志を歌っています。

――その心境は、当時のエイルさんの心模様とも重なるものでした?

藍井:そういう面もありましたけど。でも、こういう想いって、普通に暮らしてても、誰もが感じてゆくことだと思います。もちろん、自分の気持ちにもリンクしていましたし。きっと、聴いてくださる人たちの心ともリンクしていくと思います。とにかくわたしは、力強く前へ進んでいきたいですよ。

★『frozen eyez』
――哀愁味あふれた、心に涙の滴が落ちるような幕開け。そこから楽曲は、刹那な感情を抱きながらも躍動していきます。

藍井:この楽曲をレコーディングしたのは2010年のこと。当時は、この歌の特徴としてある、高いキーを伸ばすパートを上手く歌えず、悔しくて泣いてました。さすがにあの頃のテイクは歌声にも幼さがあったし、今とは声の表情も違うことから、歌は録り直しました。 改めて歌入れしたときは、昔、あんなに苦労していたところもすんなり唄えていたように、唄う機会が増えたことから表現力も増していったのか、いろんな感情を込めて唄える余裕まで生まれてました。

――別れのあとの切ない心模様を歌った歌詞も、いろんな想像を投げかけてくれますからね。

藍井:過去にすごく幸せなことがあったのに、それは幻だったんじゃないか!? そう思えるくらいに傷ついた経験を抱えた"わたし"が主人公の歌なんですけど。その人は、その経験がとてもショックなあまり、月明かりのもと、気持ちふさぎ込みながら、その想い出に浸り続けてゆく。だけど楽曲は、切ない感情に反して、突き抜けてく感じなんですね。

 ただ、『frozen eyez』とタイトルが付いているように、感情はあるんだけど、どこか冷たさも歌詞には記されていました。だから唄うときもフラットな声で、でも、その中へ憂いも加えてゆくことを心がけました。

★『夢の終わり』
――こちらも切々としたバラード歌ですが。その歌声の中には、哀愁と同時に温もりさえ抱かせてくれました。

藍井:この曲ではですね、自分の中へ取り入れたい表現がありました。それが、かすれた声で唄うことなんです。そういう声の色を持って表現することで、より感情の籠もった表現や、歌声に厚みがありながらも憂いあるような表情を描けるんじゃないかと思って。しかも『夢の終わり』は、大人な女性の終わった恋を振り返りゆく想いを綴った内容だから、ちょっと色気を持った声も意識していました。

――子供っぽい感情では、この歌が持つ奥深さは表現しきれないですもんね。

藍井:そうなんです。なので、ちょっと太い声を意識しながら。そのうえで切なさから優しさ、温かみや憂いなど、たくさんの声の色を中に描きました。いろんな風に声が変化してゆく様も感じてくれたら嬉しいなと思います。

★『Lament』
――『Lament』は、『Fate/Zero』トリビュート・アルバム『Prayer』に収録していた楽曲でした。

藍井:『Lament』は疾走感のある力強い楽曲なんですけど。キーがとても高いから、唄うのが本当に大変でした。この歌、つらいことがあったときに聴くと、けっこう心にしっくりくるんじゃないかな?

 歌詞では、見えるか見えないのかさえもよくわかんない強さに向かって進もうとしてると言いますか。本当にあるのかどうかもわからない。でも、その力があると信じて進んでゆく感情を描写しています。きっと「信じる力の強い人」は、心にも強いものを持っているとわたしは思っています。「ここにいるんじゃなくて、もっと前へ進んでいきたい」。そういう願いや祈りを込めた、前へ向かってゆく気持ちを歌った力強い楽曲に『Lament』はなりました。

――心に葛藤を抱えながらも光を求めていく。光と影など、そういう相反する感情を通して気持ちの揺れを描いてゆく面がエイルさんの楽曲の特徴という印象も感じます。

藍井:切なさと嬉しさ。だけど、そこには力強さがあって…。そういうのを好んで表現しているところはあると思います。『Lament』は、まだ見えない先の道へ進んでいくのは怖いことだけど。でも、つらい今の現状から抜け出していくためには、どうしてもその道へ進まざるを得ないときもあることを歌っています。そういうときほど、その道の先に一筋の希望の光を感じたり。その光に向かって心をワクワクときめかせたり……。「そこにしかない光」。それをつかんでいきたい気持ちって、きっと誰にでもあることもかも知れません。そこを感じ取ってもらえたら嬉しいなと思います。

――闇を知っているからこそ、光を知れる。エイルさんの歌って、そこも大きなテーマになっていません?

藍井:本当は光ってるかどうかもわからないんですよ。他の人から見たら光ってないのかも知れないんですけど。本人にとってみたら、まわりが闇すぎて、それが光ってるように見えているのかも知れない。そういう気持ちと同じように、本当に心がしんどいとき。心が切なくて苦しいとき、この『Lament』は、気持ちに寄り添ってくれる歌になるんじゃないかと思います。

★『faceless』
――『faceless』も、とても切ない歌。ここに出てくる人は、すでに亡くなっている方ですか?

藍井:それも正解です。おかげで、唄っているときは本当に気持ちが切なかったんです。でも、その受け止め方もいろいろ出来るといいますか。亡くなった方という受け止め方だけではなく、距離的にもう会えなくなった人だったり、失恋で失った人など、いろんな失くした人への想いが、この歌には重なると思います。

 友達や家族、恋人など、日常の中にも失くしてしまう関係っていっぱいあるじゃないですか。『faceless』の歌詞へ触れたとき、失くしてしまうことの辛さや悲しさと同時に、そういう人の存在の大切さをわたしは感じました。この歌を聴いて、その人にとっての大切な存在を思い返してくれたり。我慢していたつらい想いがあったなら、この『faceless』を聞きながら、その感情を思いきり出してもらえたらなと思います。

――心に溜まっていた感情を吐き出すのは大事なことですよ。

藍井:吐き出してゆくのは大事だと思います。『faceless』では、そういう心の中にある切ない想いや悲痛な叫びを表現してみました。

――エイルさん自身も、普段から溜まった感情を出さないと駄目な人?

藍井:駄目ですね。吐き出さないと絶対に良くないと思います。わたし、以前は、思ってても口にしないことが多かったんですよ。だけど、そうやって心に感情を溜めておくと、何もすっきりしないまま気持ちだけがグルグルしちゃって。それだったら、思ったことをすぐに吐き出したほうが気持ちもスッキリしていくので「そういうのが大事だなぁ」と今は思いますし、そうやって吐き出すことで、気持ちもリセットされていくんだと思います。

きっと負の感情をため込んでしまうから、それが積み重なって「自分は一体何を考えているんだろう?」となっちゃうと思うんです。だけど、それをすぐに吐き出していくと、「あっ、自分はこんなことで悩んでたんだな」と、その悩みさえハッキリと見えてきますからね。

★『Reunion』
――とても晴れやかな表情を持った『Reunion』は、冬景色を舞台にした、素敵な恋人どうしの姿を、「君」の視点で描きだした歌になっています。

藍井:真っ白な北海道の冬景色を舞台にした、大好きな人に会いたいがあまり、気持ちが馳せってゆく心模様を歌にしています。だけど、唄うわたしの気持ちまで走ってしまうとテンポがズレてしまうので(笑)、そこは注意していました。

 『Reunion』はとても笑顔の似合う歌だと思ってて。たとえば同窓会へ向かうときって、久しぶりに友人に会うことから気持ちが昂るじゃないですか。昔、よく遊んだ友達に久しぶりに会うときだって、すごくテンションが上がりますよね。そういう想いを歌詞にしてくださっていることもあって、思わず「走っていきたい」気持ちになって歌っていたんだと思います。

――でも、雪の上を走ったら転んでしまいません?

藍井:道民は、意外と走っててもコケないんですよ(笑)。道民は足の裏に力を入れて走るように、雪道なりの走り方が自然と身に付けているんです。

★『空を歩く』
――『空を歩く』からは、光と闇、その2つの表情へ心揺れ動く様を感じました。

藍井:自分の心を覆っている闇の部分…気持ちふさぎ込んでいるときの心模様を、"その人と、その人の影"という2つの視点から描いています。

――"その人と、その人の影"ですか?

藍井:人って、光に当たれば影が出来るじゃないですか。影だって、ちゃんとした存在のはずなのに、影は、何時だって影というマイナスなイメージでしか捉えられることがないんですね。「何故、光に当たっている部分だけじゃなく、その影となる姿にもスポットが当たらないのか?!」。そう考えたときに、「"影が悪いんだ"と考えること自体が悪いことなんだ」ということに気づいたんです。

 自分がちょっとのミスをしたり、駄目だったりしたときに、その影が「そんなこといいじゃん」と語りかけてきて、落ち込んでた自分を励ましてくれたように思ったことが、わたしにはありました。つまり、影だって自分の本体の一つでもあるし。本体と影の2つがあってこその自分だとわたしは思うんです。そういう陰と陽のことを、わたしは『空を歩く』の歌詞に書きました。

――本体と影。確かに、一人の人物が織りなしているものだもんなぁ。

藍井:お互いがちゃんと認めあわないと。言ってしまえば、自分の中にある長所と短所を認めないと、人は前に進めなかったりすると思うんですよ。自分の良いところも悪いところも認めたほうが生きやすいと、わたしは思うんですよね。

――自分を認めるって、難しくないですか?

藍井:わたし、褒められると、つい自分を否定しちゃうんです。でも、否定したって誰も得なんかしないじゃないですか。それって、自己否定や自己満足の感情として自分を否定しているだけのことだから、まったく意味のないことなんですよね。

 自分の中にある陰と陽の部分が恨みあっていたって、結局は前に進めない。どちらか片方だけを取っても、バランスが悪くなっちゃう。だからこそ、お互いが一つになって進んでいくことで、もっと気持ちは楽な方向に行けるんじゃないのかな?!そんな風に想いながら、『空を歩く』の作詞をしていました。

――エイルさん自身も、つねに光と影、2つの気持ちと付き合い続けているわけだ。

藍井:それって、みんなにあることだと思います。わたしは明るい感情ばかりを唄うのはちょっと違うなと思ってる。その明るい気持ちを唄うためには、暗い感情だって表現していくべきだと思います。陰と陽、どちらかに偏っていても変だと言いますか。実際に生きてく中で、どちらの比重が多いか?!と言ったら、わたしは"陰"の感情だと思います。だからこそ"陽"の気持ちが出てきたときに、余計にそれが明るく見えていくんだと思うので。そういうことへ意識を向けながら、『空を歩く』の歌詞を書きました。

★『MEMORIA』
――通常盤の最後をシメくるのが、藍井エイルの始まりの歌となった、アニメ『Fate/Zero』のエンディングテーマにも起用された『MEMORIA』です。

藍井:わたしのデビュー曲であり、わたしの始まりを告げたのが『MEMORIA』だからこそ、アルバムの最後も『MEMORIA』でシメたほうがグッとくるなぁと思い、そうしました。 『MEMORIA』は、北海道の大自然に囲まれたレコーディング・スタジオで夏に録りました。そこは、めっちゃ大自然に囲まれた、超でっかいスタジオなんですね。そこで冬の情景に想いを馳せながらレコーディングしたことを思い返します。

 『MEMORIA』って、"記憶"という意味の造語なんですけど。「一緒にいた人を支えたい」「守ってあげたい」という優しさや強さを、この歌に込めて唄いました。しかも優しいだけじゃなく包み込むような感覚も胸に抱きながら、冬の景色へと想像を膨らませ、この『MEMORIA』を唄っていたことを、今、ふたたび思いだしました(笑)。

★『GLORIA』
――初回盤A/Bには、YUIさんの歌った『GLORIA』のカバー・ソングを収録しました。

藍井:わたし、この曲には本当に思い入れがあって。受験勉強のときに、この『GLORIA』をよく聞いて気持ちを奮い立たせていたんですよ。だからこの『GLORIA』は、わたしにとっての受験勉強ソングだと思ってて。歌詞も、まさに受験生にとって救いになる内容なんです。もちろん、受験生に限らず、夢を追いかけてる人にはとても心励ます歌っていうか……。

 わたしが看護師になる夢を追いかけながら勉強していたときにも、「この夢は叶わないんじゃないか!?」とあきらめそうな気持ちへ陥ったことが何度もありました。でも、この『GLORIA』を聞くたびに気持ちが励まされていたように、この歌を聞くと、受験時代を懐かしく振り返ってしまいます。

――そういう想い出深い楽曲を唄うことで、思い入れもかなーり増していきませんでした?

藍井:わたし自身が、気持ち重ねる経験をこの歌にしてきたからこそ、唄わせていただくときには、本当に「負けないぞ!」っていう感情を強く込めて唄うことが出来ました。

●『BLAU』というのは、ドイツ語で「藍」という意味。とても藍井エイルらしいなと思って。

――そんな、いろんな心模様を詰め込んだアルバム『BLAU』が完成。アルバムのタイトルにも、いろんな想いを重ね合わせていませんか?

藍井:この『BLAU』には、今までに見せていなかったさまざまな藍井エイルの表情から曲調まで、いろいろと詰め込みました。『BLAU』というのは、ドイツ語で「藍」という意味です。藍井エイルだけに、イメージカラーはやはり藍かなと思って。それに"BLAU"という文字を見たときにも、すごいしっくり来たと言いますか、とても藍井エイルらしい字面だなと思って、このタイトルに決めました。

――いろんな歌詞の随所に、"藍"にまつわる言葉が登場します。

藍井:藍=藍井エイルという印象をわたし自身も覚えていれば、藍井エイルの魅力の一つである「憂い」という表情も、色にたとえると藍っぽいなと感じています。だからジャケットも、藍をモチーフにした内容にしていきました。

――そんなエイルさんにとって、『BLAU』はどんな1枚になりましたか?

藍井:最初は「藍井エイルの名詞変わりになる1枚」だと思っていたんですけど。実際に完成したら、それ以上のものをわたしは感じていて。なんて言うのかなぁ、藍井エイルの性格だったり、生活が見えてきたり。藍井エイルそのものみたいな感じですかね?!そんな、「藍井エイルの活きる指針」が見えてくる1枚になったと思います。

――この『BLAU』では、エイルさんの心模様はもちろん、いろんな声の表情をたっぷりと味わえます。

藍井:ちょっとセクシーに歌ったのも、新しい唄い方の挑戦だったように、いろんな声色を描いたところにも、ぜひ注目してください。それと、「初回生産限定盤A/B」には48Pフォトブックが付いてくるんですけど。ほんの少しだけど、珍しく素のわたしが映ってるっていうか、笑顔の写真が入ってます。それまではシリアスな表情ばかりだったし、笑顔の写真を載せてるのはブログだけだから、これはホント貴重なショットになっていると思います。



●制作したMusic Clipに隠された想い。その背景をメイキング!

★『アヴァロン・ブルー』
――続いては、「BD/DVD」に収録したMusic Clip集の魅力を紐解きたいと思います。『アヴァロン・ブルー』はとてもサイバーな感覚を持った、スタイリッシュかつ疾走性を持った映像作品に仕上がりました。

藍井:撮影自体はグリーンバックを用いてなので、頭の中で完成の絵を想像しながら歌いました。あのときは、黒いロングコートをなびかせるために巨大な扇風機を使ったんですけど。わたしの動き次第で風の当たり方が変わり、コートがなびかなくなったりなど細かい苦労もありましたが(笑)。完成した映像を見たら、かなりサイバー感にあふれたMusic Clipに仕上がっていたから、すごく恰好いいなと思いました。

 映像自体は、全体的に青みがかっているんですけど。最初は、月がほとんど見えないような…月が隠れているどんよりとした背景だったのが、次第に姿を現す明るい月に照らされ、わたし自身が、その月明かりに向かってどんどん気持ちを突き進めてゆく。そういう、光(未来)へ進んでゆく映像作品として完成しました。

★『MEMORIA-after days ver.-』
――続く『MEMORIA』は、『MEMORIA-after days ver.-』として新たに誕生。こちらでは、冬景色の中、一人心に憂いを抱えながら歩いてゆく姿が、印象的に瞼へ焼きついてきました。

藍井:ちょっと物思いや懐かしい感情に浸りながら歩いてる姿が、ここには映し出されています。撮影を行ったのは冬を間近に控えた時期。しかも朝4時半からメイクを始めたように、撮影も早朝からでした。

 映像の中、わたしは震えるように歩いてますけど。あれは、本当に寒くて震えていたんです。そのブルっと寒がっている感じがナチュラルに出たので、 逆に良かったのかな??と思っています。今は一人ぼっちだけど、あなたの笑顔は忘れません。そんな切ない感じを、このMusic Clipから感じてもらえたら嬉しく思います。

★『AURORA』
――『AURORA』では、エイルさんの動きに合わせ、光が飛び交ってゆきます。

藍井:あれをリアルに出来たらそうとう楽しいだろうなと思うくらい(笑)、 光を操ってゆくわたしが登場します。『AURORA』は光をテーマにした歌なので、Music Clipでも「暗闇の中に輝く光」をテーマに作りました。このMusic Clipは、綺麗な光をふんだんに使った恰好いい映像作品に仕上がっています。

 これも撮影のときは、光が動いてゆく様を想像しながら動きを付けていかなければいけなかったよう、そこが難しかったんですけど。完成した映像を観てもらえればわかるように、とても躍動感ときらびやかさあふれる映像に仕上がっています。

★『INNOCONCE』
――最後は『INNOCENCE』ですね。こちらは"白と黒"がモチーフになっています。

藍井:わたし自身の中にある"白い部分/黒い部分"をテーマに。それは"陰と陽"に近い部分でもあるんですけど。映像の最初のほうでは、白い姿のわたしが、黒い姿のわたしを見つけた瞬間に嫌な顔をしたり、顔を歪ませたり、水たまりに映った自分自身の姿を観て嫌がるんですけど。次第に「その両方とも自分なんだから」ということに気付き、黒い姿さえもみずから受け入れ、最後は一緒に未来へ向かって飛び立ってゆく内容になっています。

――白い空間の中、白い衣装姿のエイルさんに黒い羽根が空から降り注ぎますが、映像には「それさえも受け入れてく」という意味があったんだ。

藍井:そうなんです。黒い自分さえも受け入れてくという姿を、映像には投影しています。黒い羽根が舞ったり、わたしが躍動的に動きながら歌っている白い部屋の床には、布団の上に大量の小麦粉を敷きつめてました。だから、唄うたびに小麦粉が舞い上がるし、布団の上なんでバランスが安定しないしと、意外と撮影は大変だったんですけど。それをやったことによって、世界観をしっかり構築出来たのは間違いないと思います。

 他にも、撮影場所が廃工場だったこともあり、何が降ってくるかわからないということから、スタッフさんたちは全員ヘルメット姿で撮影をしていました。それも想い出に残ってますね。

★『リスアニ!TV(藍井エイル特集/札幌ロケ・前編・後編)』
――さらに特典映像として『リスアニ!TV(藍井エイル特集/札幌ロケ・前編・後編)』が収録されています。ここでは本当に素顔の、プライベートなエイルさんを観れるわけですが。中身は、観た人のお楽しみにしておきましょうか。

藍井:そうですね。まぁ強いて言うなら、カメラの前で食べるのはすごく照れるなってことがわかりました。

――あと、チーズがとっても伸びることとかね(笑)。

藍井:ピンポーン!!あの映像は、恥ずかしかったぁ(笑)。



●そして、2013年の藍井エイルの進みゆく道は…?!

――ここまでエイルさんには、1stアルバム『BLAU』についていろいろ語っていただきましたが。最後にエイルさん、2013年をどんな年として彩ろうとしているのでしょうか?

藍井:月に、ツアーが3ヶ所決まりました。それが嬉しかったのと。もちろん、今後もライブという場を通していろんな地域に行きたいなと思っています。

――昨年5月に素顔を解禁して以降、ライブ面では、イベント/ワンマンともに精力的に活動していますもんね。

藍井:昨年は、ワンマン・ライブという夢を叶えることが出来ました。今年も、夢の一つだったツアーを行えることが出来たのは、本当に嬉しいことなんです。その夢に加え、今年は、もっともっといろんな地域でライブが出来るように自分も頑張っていきたいなと思っています。

 他にも、わたしは作詞のみならず作曲もするんですけど。得意なバラードは、もちろん。アップテンポな曲調から、バンド・サウンド、昭和なレトロ風など、いろんな楽曲に挑戦してみたい気持ちも強いので、昨年以上に高い向上心を持って突き進んでいきたいなと思っています。

――せっかくだから、5月に「顔出し解禁一周年企画」とかどうですか?

藍井:あっ、それ面白いですね。ぜひ、前向きに検討したいです!!

――ありがとうございました!



◆1stフルアルバム『BLAU』/藍井エイル
発売日:2013年1月30日(水)
価格:
[初回生産限定盤A(CD+BD)] 3,900円(税込)
[初回生産限定盤B(CD+DVD)] 3,600円(税込)
[通常盤(CD)] 3,000円(税込)
※初回生産限定盤(A・B)はスペシャルスリーブ仕様+48pフォトブック付

●出演イベント情報
2013年2月17日(日)「AW×SAOオフラインミーティング3」@五反田・ゆうぽうとホール


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[インタビュー&文・長澤智典]

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