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豪華スタッフの『PSYCHO-PASS サイコパス』座談会レポ!

総監督、監督、ストーリー原案、TV2期シリーズ構成、チーフプロデューサー。超豪華メンバーによる「『PSYCHO-PASS サイコパス』黒幕スタッフ生討論会」をレポートでお届け!

 豪華キャスト&スタッフ陣が作り出す、重厚なストーリーとシリアスな世界観で、今最も注目すべき作品の一つと言っても過言ではないアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』。アニメ第2期や劇場版も控え、乗りに乗っている本作の新編集版が現在、フジテレビ・ノイタミナほかにて絶賛放送中だ。

 そして、本作を裏で動かすビックネームたちが一堂に会したニコ生「『PSYCHO-PASS サイコパス』黒幕スタッフ生討論会」が7月10日に放送された。番組には、総監督・本広克行さん、監督・塩谷直義さん、ストーリー原案・虚淵玄さん(ニトロプラス)、TV2期シリーズ構成・冲方丁さん、チーフプロデューサー・山本幸治さんといったそうそうたるメンバーが出演。

 今回、幸運にもニコ生収録現場に立ち会える機会を得た。本稿では、その収録風景をレポートでお届けする。もう一度放送を振り返ってみたい人や、ニコ生を見逃してしまったという人は、ぜひとも次ページへのボタンをクリックしていただきたい。

●『PSYCHO-PASS サイコパス』にかける思い

 収録現場に入ると、出演者がリハーサルの真っ最中。みなさん真剣な様子で打ち合わせに望んでいるかと思えば、楽しく談笑する姿も垣間見えた。これだけのメンバーが揃うとなると、現場の緊張感もひと塩ではないが、冗談交じりの会話に自然と空気が柔らかくなる。
 今回の収録はアクアシティお台場にあるノイタミナショップ&カフェシアターで行われたこともあり、お店にあるカプセルトイやグッズを見て、笑いながら『PSYCHO-PASS サイコパス』談義に花を咲かせるみなさんの姿がなんとも微笑ましかった。

 そしてお待ちかねのニコ生放送がスタート。司会を務めるニッポン放送の吉田尚記さんからの紹介で、みなさんからのご挨拶が。「今日は久しぶりに『PSYCHO-PASS サイコパス』を語れるので楽しみです」と本広さんが言うように、5人ともどんな話が飛び出すのか楽しみにしている様子だった。

▲本広克行さん

▲本広克行さん

 ノイタミナでテレビシリーズを新編集版として放送するのは初の試みであり、そこには山本さんのとある目論見があったからだという。「このアニメは2クール見てわかる醍醐味があるんです。今の流れだと、1クールの1話を見て、それから見続けない人が多い。その中で1時間しっかり見て、第2期と劇場版につなげて欲しかったんです。さらに言うと流れで『残響のテロル』も見てって感じですけど(笑)」ノイタミナのプロデューサーらしい発言も挟みつつ、『PSYCHO-PASS サイコパス』の魅力を伝えたいという気持ちで新編集版に取り組んでいるようだ。

▲山本幸治さん

▲山本幸治さん

 新編集版の魅力は1時間の尺だけではない。各放送ごとに新規カットがあるのだ。「新編集版をやると聞いて、「やった! カットを増やせる」と思いました。第2期と劇場版がある中で、僕と山本さんはやる気だったんですけど、周りからはやめろやめろと言われましたが(笑)」と塩谷さんが語るように、今回の新規カットもご自身が担当しているとのこと。「新シーンの脚本だけで1.5話分ありました」(塩谷さん)と衝撃的な事実も語られた。

▲新規カットの数々

▲新規カットの数々

 『PSYCHO-PASS サイコパス』と言えば警察ものと群像劇。そこには本広さんの目指した作品があった。「最初は現代版『パトレイバー』をやりたかったんです。でもそこからどんどん形が変わっていって。そこで虚淵さんが登場して、気づいたら銃(ドミネーター)の話になっていました(笑)。でもそれはそれで面白いなって思いました。」(本広さん) と以外な経緯から、作品ができていったことが明かされた。

 「SFって今の社会に対する批判があって、その上に仮説があって成り立つものだと思うんです。なので虚淵さんも社会に対する不満があるんですよね?」と、吉田さんからの社会派な質問が。
 虚淵さんからは「それはそうですね。それがないと世の中を良くしていこうと思わないですよ。作中に出てくる犯罪係数というのも「数字って何よ?」というところから始まりました。その時に引き合いに出したのが体脂肪率です。みんなあの数字を気にしているけど、体の美しさの基準になるのかどうか、本当にあの数字だけ鵜呑みにしちゃっていいの? っていう話はよくしていました。医者ではないので断言はできませんが、それだけを信じすぎちゃうのも怖いよねと。数字信仰が進みすぎた世の中がこの作品ですよね」と意外なところから作品の根幹になる部分を紡ぎ出していることが伺えた。

 この発想を初めて聞いた冲方さんもかなり驚かれた様子。「いやー、大変なものを作っているなと思いました。犯罪があらかじめわかる世界ですから、そこでどうやって犯罪を起こせばいいのかと。物語を作る上で、ものすごくハードルが高い設定なんです。そこで監視官と執行官を対にしたのが上手いですよね。管理人と猟犬という形で物語が動かせる。犯罪がどのように起こるのかを身内同士の会話の中で提示して犯罪者を動かせるので、尺が少なくて済むんですよね」(冲方さん)と小説家ならではの発言には、ニコ生を見ている視聴者からも「なるほど」というコメントが流れた。

 さらに「銃が3段階なのも上手いですよね。ひとつの銃で緊張が段階的にわかるんです。止められるか、吹っ飛ばすか、殺すか、相手のレベルが持っている銃でわかるので、台詞で説明する必要がないですよね」と冲方さんも黒幕たちが作り上げた世界観には圧巻であったという。そこまで唸った冲方さんによるテレビシリーズ第2期がどうなるのかにも注目だ。

●ベストシーンはネタバレのオンパレード!

 番組の中盤では、各々の『PSYCHO-PASS サイコパス』ベストシーンが紹介された。各シーンをコメントを参照にしながら新編集版を楽しむのも一興だろう。ここからはネタバレが大いにあるため、まだ本作を見ていないという方は読み飛ばす事をオススメする。

 まずは山本さんが選んだ第3話(TV1期シリーズ)「飼育の作法」から。こちらは連続殺人犯と公安局刑事課一係の面々が繰り広げるアクションシーンだ。「このシーンが第3話にある理由がいいですね。ここで公安のメンバーの制約を見せて説明をショートカットして、本編を見せるのがすごいなと思いました。それに、これだけのことが起こっているのに何が起こっているのかがわかる作りで、塩谷さんはやっぱりすごいと思いましたよ」(山本さん)と塩谷さんの技には感服したそうだ。

 2人目となる虚淵さんはネタバレもネタバレな第20話(TV1期シリーズ)「正義の在処」の常守朱がシビュラシステムの根幹を目撃したシーン。このシーンには度肝を抜かれた方も多いことだろう。「ここは設定上の最終回です。この世界において一番気持ち悪いものとして描こうとしたところですね。システムが万全の社会だったらいいじゃないかという達観や割り切りの先にあるものですよね」(虚淵さん)先ほど話されていた体脂肪率がここまでの跳躍を見せることになるとは驚きだ。

 続いては第15話(TV1期シリーズ)「硫黄降る街」を選んだ塩谷さん。槙島聖護とチェ・グソンがお茶をしながら犯罪理念や好きな本を語る文学的なワンシーン。「槙島聖護が自ら行動して事件を起こしていくタイミングで彼にスポットが当たるシーンになります。それまでは彼のことを彼の口から聞けることがないんです。今までは誰かを通してだったのが、自分の口から語ることによって人物像がわかるところが好きですね」(塩谷さん)あえて電子書籍ではなく紙媒体にこだわる槙島聖護の台詞は、本好きが共感してしまうところだろう。

 アニメ第1期に関わっていない冲方さんが外から『PSYCHO-PASS サイコパス』を見て選んだシーンは衝撃の第11話(TV1期シリーズ)「聖者の晩餐」。常守朱の親友・舩原ゆきが槙島聖護に惨殺される場面だ。「朱が槙島の用意した実弾の銃を撃って外すところがいいんですよ。実銃を打ったことがないのが見ていてわかりますよね。このカットはこの世界ならではでもありますし、普遍的でもあるんですよ。人間はこんなふうに穏やかな気持ちでひどいことができる存在でもあります。ここの槙島の理屈もいいですよね。めちゃくちゃですけど、こいつの世界が見えるシーンですし」(冲方さん)本広さんもこのシーンは選んでいたそうなのだが、実はこの話は第1期放送当時、年末最後の放送であり、「これで年を越すのか…」と関係者一同(もちろん視聴者も)愕然としてしまったそうだ。

 そして最後は本広さん。選んだのはまさかの第22話(TV1期シリーズ)「完璧な世界」よりエンディング後のラストシーン! わずか2カットながら、映像が流れた瞬間に収録現場からは爆笑が巻き起こる。「いやーすごい! 鳥肌が立ちましたね!(笑)」とお茶目な表情を見せる本広さん。チラッと映る小説にはある人物のワンシーンを彷彿とさせるくだりがあるのだが、そこまでは言及しないことにしよう。

●第2期、劇場版はどんな展開が……!?

 ここからは第2期へ向けた取り組みについてのお話が繰り広げられた。第2期のシリーズ構成を務める冲方さんはどのような意図を持って『PSYCHO-PASS サイコパス』に挑んでいるのだろうか。

 「シビュラシステムの支配下で犯罪を起こすのは困難極まりないんですよ。さらに、狡噛と槙島という素晴らしいキャラクターが描かれていますので、それとも違うものを用意しないといけない。そこで朱が主人公になって、狡噛の後を追いかけるような話になっています。第2期の話は塩谷さんとしこたま飲みながら決めて、横でプロデューサーの方にメモしながら聞いてもらっていました(笑)」という冲方さんの話を懐かしむように頷く塩谷さん。

 「飲みの席では嘘はつけませんからね」と吉田さんも言うとおり、お二人が腹を割って話し合ったストーリーならば間違いない気もする。しかし、生みの苦しみが垣間見えるコメントも。「本読みは頭を使うんですよ。ありとあらゆる矛盾を検証した上でやらなければいけないので。でも、突っ込みすぎるとキャラクターが死んでしまうんです。そこで開き直って、飲んで語るという(笑)」(冲方さん)、「そこまで仕事ですから!」(塩谷さん)とかなり苦労していることが伺えた。

 だがその苦労の甲斐があって、虚淵さんからはお墨付きを貰っているそうだ。「ここまで深く掘り下げてもらえると、感無量ですよね。今まではその場その場の直感や本能でアドリブを効かせたところはあります。後になって俯瞰して見てみたらまとまっているけど、やってる最中はわからなかったりするんですよね。その辺を綺麗に整理してまとめていただいたのは、ありがたいですね」(虚淵さん)

 そんな虚淵さんは劇場版の脚本を担当している。こちらの詳細はアニメ第2期以上に言えないそうだが、「脚本は完成しています。もしかしたら山本さんが見たかった近未来警察ものはこれだったんじゃない? というものができてますね」(虚淵さん)と、3年越しに山本さんの夢が叶う(?)ことになるかもしれないとのこと。
 さらに塩谷さんからは「コンテはこの前終わったんですが、人生で一番きつかったですね……」と渾身の一言がこぼれた。

 期待できるコメントがチラホラ出たところでニコ生も終了の時間へ。最後は出演陣のコメントをまとめてご紹介しよう。

<本広克行さん>
 総監督という立場だけでなくイチ視聴者としても『PSYCHO-PASS サイコパス』を楽しみにしています。今日の夜からすごく楽しみです(ニコ生が放送された同日に新編集版が放送された)。
 
<塩谷直義さん>
 新編集版にはじまり、これからいろんな展開をしていきます。新編集版には、見ると今後と重なる部分が出てきますので、まずはそちらからお楽しみください。よろしくお願いします。
 新編集版のキーワードはチンパンジーです。という謎の言葉を残して終わりにします(笑)。

<虚淵玄さん>
 ちょうど2年前は『PSYCHO-PASS サイコパス』と並行していろんなアニメの企画を準備している段階でしたが、これが一番の博打でした。上手くいくかわからないなと口が裂けても言えない中で、強気で山本さんを言いくるめてました(笑)。

 結果的にここまで広めてくださって、新しい展開にバトンを渡せて本当に嬉しいです。よくぞここまで化けてくれたと、嬉しくて仕方がないです。見てくださる方々にここまで受け止めてくれるとは思っていませんでした。アクションがあるわけでもなく、お色気があるわけでもなく、超人がバトルするでもなくで。でも他ではやってないからノイタミナでやる価値あるよねって感じでやってました。
 結果が出なければただの詐欺師ですからね。詐欺師にならなくてよかったと胸をなで下ろしています。

<冲方丁さん>
 虚淵さんや塩谷さんが稼いだ掛金を第2期で費やすことになるか、倍プッシュになるか、肝に銘じつつやっています(笑)。
 SFディテクティブものというジャンルをこれからもみなさんにご愛好いただき、『攻殻機動隊ARISE』などの公開中の作品も含めて、新編集版も同じジャンルとしてご贔屓にいただければと思います。

<山本幸治さん>
 僕も新編集版を見てみて、やってよかったなと思いました。オリジナル22話もすごいんですが、新編集版もいいですよ。やっぱり意味合いが違っているので、そこは報われた気持ちはあります。
 ぜひ、見てください。

◆TVアニメーション「PSYCHO-PASS サイコパス」作品概要

★Blu-ray&DVD「PSYCHO-PASS サイコパス」第1巻~第8巻好評発売中 
発売元:フジテレビ/東宝 販売元:東宝

<STAFF>
総監督:本広克行
監督:塩谷直義
ストーリー原案:虚淵玄(ニトロプラス)
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)・深見真・高羽彩
キャラクター原案:天野明
キャラクターデザイン:浅野恭司
色彩設計:上野詠美子
美術監督:衛藤功二
3D監督:佐藤敦
撮影監督:荒井栄児
編集:村上義典
音楽:菅野祐悟
音響監督:岩浪美和
アニメーション制作:Production I.G

<CAST>
狡噛 慎也:関智一
常守 朱:花澤香菜
宜野座 伸元:野島健児
征陸 智己:有本欽隆
縢 秀星:石田彰
六合塚 弥生:伊藤静
唐之杜 志恩:沢城みゆき
槙島 聖護:櫻井孝宏
ほか

<STORY>
人間の心理状態や性格的傾向を、計測し数値化できるようになった未来世界。
犯罪に関する数値も“犯罪係数”として計測され、犯罪者はその数値によって裁かれる。治安維持にあたる刑事たちは
常に、犯人を捕まえる実動部隊となる“執行官”と、執行官を監視・指揮する“監視官”のチームで活動する。
自らが高い犯罪指数を持ち、犯罪の根源に迫ることのできる捜査官こそが優秀な“執行官”となりうる。
それゆえに、犯罪者になりかねない危険も孕む“執行官”は、その捜査活動を冷静な判断力をもつエリートである
“監視官”に監視されている。
公安局刑事課一係のメンバーはそれぞれの想いを胸に、正義の在処を常に突きつけられながら任務を遂行していか
なければならない。
彼らが立ち向かうものの先にあるのは――


>>TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式サイト
>>TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式ツイッター(@psychopass_tv)
>>TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」公式Facebook

(C) サイコパス製作委員会
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