映画
『アップルシードアルファ』荒牧監督&キャストインタビュー

作品の魅力やキャラクターに対する想いを語っていただいた『アップルシード アルファ』荒牧伸志監督、小松由佳さん、諏訪部順一さん、インタビュー

 『攻殻機動隊』などで知られる士郎正宗氏のSF漫画『アップルシード』。OVA、映画、テレビアニメと多岐にわたって映像化をされてきた本作だが、その最新劇場作品である『アップルシード アルファ』が北米やヨーロッパでリリースされている。そんな中、「字幕版」が、2014年10月23日から同月31日におよび開催された第27回東京国際映画祭で、特別招待作品として上映された。

 今回、アニメイトTVは『アップルシード アルファ』を手がけた荒牧伸志監督、日本版でデュナンを演じる小松由佳さん、ブリアレオスを演じる諏訪部順一さんにインタビューを行うことができた。キャラクターの再構築やシナリオの追加を行い、ただの吹き替え版ではなく「日本版」として完成したという本作の魅力について語って頂いたので、その内容をお届けしよう。

■コンセプトは「フォトリアル」CGアニメーションの表現力を追求した本作

──2004年の『APPLESEED』、2007年の『EX MACHINA』に続き3度目の劇場上映となりますが、今作のストーリーを教えてください。

荒牧伸志監督(以下、荒牧監督):ありがたいことに3本とも監督をさせて頂いているのですが、シリーズものではありません。今回の話は、原作の第1巻、最初の30ページくらいの部分に当たります。オリュンポスという未来都市のような場所があるのですが、デュナンとブリアレオスがそこへたどり着く前、大戦後の廃墟の世界をさまよっている頃の話をクローズアップしたストーリーです。なので、戦争が終わって当てもなく日々を暮らしているという失意の中から、だんだんと希望を見出していくような話になります。

──今作のコンセプトや、過去2作品との違いはどんな所になりますか?

荒牧監督:分かりやすいところでいうと、まず見た目です。最初の『APPLESEED』ではトゥーンシェーディングを使った長編作品だということで非常に注目して頂いて、『EX MACHINA』はそれを進化させた形で作りました。「アニメーションがルック的にどこまで進化できるか」というこれまでのテーマに対し、今回は「フォトリアルなルック(見た目)で、CGアニメーションがどこまでやれるか」ということをテーマに作品を作りました。その点はストーリーとも非常に絡んできて、「このストーリーだからこのルックだ」という意味合いを込めています。もうひとつのポイントとして、今までの作品は士郎(士郎正宗)さん原作ということで、非常に複雑な背景を持ったストーリーでした。今回は、戦争が終わったばかりでテクノロジーが一旦全てなくなっているような状態なので、ストーリーとしてはシンプルになっています。分かっているファンにとっては深い楽しみ方もできますし、そうでない人は入り込みやすい話になっていると自負しています。

■オリジンとして再構築した、吹き替え版ではなく日本版

──映像をご覧になった感想を教えてください。

小松由佳さん(以下、小松):私は外画の吹き替えのお仕事をすることが多く、アニメーションとなると結構緊張するたちなんですけれども、今回は外画に挑むような形でやらせて頂いたのでとてもやりやすかったです。……言いたいことはあるんですけど、言っちゃいけないこともたくさんあってですね(笑)。ひとつ挙げると、メカの質感がヤバいですね! 双角の鼻とか口とかの動きがすごい好きで、何回も繰り返し見ちゃうくらい、今回で双角のファンになりました(笑)。

諏訪部順一さん(以下、諏訪部):英語版が先行して世に出ている作品ではあるんですが、我々が出演した日本版も「吹替ではなく、これはこれでオリジナルだ!」という心積もりで自分は収録に臨みました。精緻な映像に、日本人の感性で声をあてるならこうだろう!という感じで(笑)。映像を観ていて特に印象的だったのは、金属の質感や重量感、そして空間の広がりですね。大きな空やたなびく雲、陽の光など、非常に美しく。とても目に心地良い作品だと思いました。

──監督から見て、おふたりの演技はいかがでしたか?

荒牧監督:先ほど諏訪部さんも仰っていたように、日本版を作る時には英語版が既に出来ていて、そちらの方では声のイメージも決まっていました。しかし、オリジンが日本の作品ですから、もう一度全てのキャラクターを日本独自に構築し直したいという想いがありました。ブリアレオスはありがたいことに……誰にとってありがたいのか分かりませんが(笑)、口パクがないのでセリフをどんどん詰め込むことができるんです。

諏訪部:誰にとって一番ありがたいかというと、自分なんですけどね(笑)。

荒牧監督:ですよね(笑)。基本的には無口なキャラクターなんですが、そこに色々なニュアンスを足したりした結果、英語版とは少し変わったキャラクターになっているので必見です。デュナンの方も、小松さんに演じてもらったことで自然体な女性という部分がより鮮明に際だった新しいキャラクターになったな、と感じています。個人的には(聞いていて)純粋に楽しく、もっと見ていたかったですね。

──今日のアフレコの感想や、監督からの演技指導などといったエピソードはありますか?

小松:今の(監督の)一言ですごく緊張が解れました(笑)。「どう思われているんだろう」というのもありますし、私自身この作品に想い入れがあったので、プレッシャーも感じていました。本当に「日本の」デュナンをやりたかったので、私が(原作を)読んだ時に感じたデュナン、そしてこの映像を見た時に「あ、原作とここが違うんだ」と思ったことを、そのまま素直に演じました。それがどう出るかは、皆さんに見て判断して頂きたいと思います。私にとっては本当に幸せな時間でした。

諏訪部:『アップルシード』は過去に何度も映像化されていますし、また錚々たる先輩方がブリアレオスを演じられているわけですが、あえて自分のなかでそのイメージは一旦忘れて、自分なりのブリアレオスが構築できれば、と思い取り組みました。なにせ彼は口パクがありませんし、表情が変わるわけでもない。話し方ひとつで感情に変化をつけられるキャラクターですので。結果、本当に楽しく収録は行えました。台本の残りページが減っていくのが寂しくて(笑)。

■キャラクターに対する想いや、小松さんと諏訪部さんの相性の良さが垣間見えた一幕も

──おふたりで一緒にアフレコをした空気感だとか、お互いのお芝居をご覧になった印象はいかがでしたか?

小松:実は私、今日初めて(諏訪部さんと)ご一緒させて頂いたんですね。どういう感じで一緒にお芝居できるのか、本当に予想がつきませんでしたけど……すごいカッコいいブリアレオスでした! 私が思っていたよりずっとカッコよかったです。ひたすら守ってくれて、絶対ケンカにもならない感じ(笑)。諏訪部さん普段もそうなんですか? あんまり女性とケンカとか……。

諏訪部:しないですね(笑)。

小松:ですよね! スッと引いてくださる感じの……「私こういう人だったら長続きするかも」って思いながら演じていました(笑)。

諏訪部:いやいや(笑)。でも小松さんが演じたデュナンも本当に素敵で。自分が台本や映像からイメージしていた感じをそのまま体現したようなキャラクターでした。おかげで、スッとパートナー役に気持ちを入れることが出来ました。

──おふたりがそれぞれ演じたキャラクターで、共感できるポイントはどんなところですか?

小松:私はすごく平和主義者というか、気は強いんですけれども絶対に争いをしたくないんですね。デュナンもそうだと思うんです。ただ、仕事として生きるためだとか、ブリアレオスと一緒にいるためとか……だから、本当に女性らしいなって。目の前の目標を達成するために彼女は戦っているのであって、基本的に戦いが好きではないというところはすごく共感できます。そこが男の人の戦争と、女の人の戦争の違うところだと感じました。『アップルシード アルファ』でも、その違いは描かれていると思います。

諏訪部:ブリアレオスは、やるときはやるんだけど、ちょっとしたところでポカする、みたいな雰囲気ありますよね。ちょっと生きるのに不器用な感じ。そういうところが似てるかもしれませんね(笑)。

──最後に、本作の魅力や「ここを見て欲しい!」というところを教えてください。

小松:まずはやっぱり映像ですね。「私がこの大きさだと、あれはあの大きさなんだ」というのがすごくよく分かって、いち観客としては面白かったです。音楽は毎回豪華で、私もとてもノリノリで収録してました。本当に見てください!(笑) 「どこが好き?」とか皆で話したいですね。

諏訪部:以下同文です(笑)。……というのは冗談ですが、本当に映像、音楽、ともに素晴らしい作品ですので、英語版はもちろん、我々が心を込めて演じた日本版も、ぜひご覧下さい!。

荒牧監督:映像としては手触り感や空気感だったり、物の重さといった「あり方」をきちんと描きました。ただのフォトリアルという訳ではなくて、主人公たちの心情……ブリアレオスには表情がないですが、彼の一挙手一投足から気持ちが伝わるような質感を大事にしています。最初は失望感から始まる物語ですけど、そういったものも彼らが触る物の質感一つ一つから伝わるような映像にしたかったという想いを実現できたと自負しております。英語版を日本語にするにあたり、当初から日本がオリジンということで、キャラクターや台詞をもう一度見直して再構築したいと言う想いがありました。小松さんと諏訪部さんに最初に声をあててもらった時、「これはイケる! 俺のデュナンとブリアレオスは完成した!」という手応えがありましたので、皆さんにもぜひ見て頂きたいと思います。

>>『アップルシード アルファ』公式サイト

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