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細田守監督の『バケモノの子』完成披露会見の公式レポート到着

映画『バケモノの子』役所広司さんら登壇の完成披露会見より公式レポ到着! 細田監督が"入道雲"に込めた想いも明らかに!?

 来る7月11日(土)、細田守監督の劇場最新作『バケモノの子』がロードショー! 本作は人間界<渋谷>とバケモノ界<渋天街(じゅうてんがい)>という2つの世界を舞台に、バケモノ・熊徹とその弟子となった九太の師弟関係を通した、成長と冒険を描くオリジナルストーリーです。

 そしてこのたび、本作の完成披露会見&舞台挨拶が、6月15日、東京国際フォーラムで行われました。会場には、細田監督をはじめ、豪華声優陣が勢ぞろい。細田監督の作品にとってトレードマークともいえる、"夏の入道雲"をバックに、監督自身が入道雲にこめた思いを語る場面もありました。もちろん、役所広司さんをはじめ、豪華声優陣からも注目のコメントが登場! 今回は、この会見及び舞台挨拶の模様を記した公式レポートをお届けしましょう♪

▲左から齋藤優一郎プロデューサー、細田守監督、広瀬すずさん、染谷将太さん、<br>役所広司さん、宮﨑あおいさん、大泉洋さん、リリー・フランキーさん

▲左から齋藤優一郎プロデューサー、細田守監督、広瀬すずさん、染谷将太さん、
役所広司さん、宮﨑あおいさん、大泉洋さん、リリー・フランキーさん

◆完成披露会見の模様を公式レポートで大公開!
細田守監督(以下、細田監督):本日はようこそお越しくださいました。監督の細田です。「バケモノの子」、ようやく完成いたしました。スタッフ、キャストともに考えうる限りのすごいメンツが揃って夏の映画を作れる幸せを改めてかみしめております。

齋藤優一郎プロデューサー:お暑い中、「バケモノの子」の完成披露試写会に足を運んでくださって、ありがとうございます。この「バケモノの子」は、7月11日から公開されます。細田監督が企画の当初に話していた「子どもと大人が一緒に楽しめる」新しいアニメ映画の王道が生まれたんじゃないかと思います。

九太の師匠・熊徹役・役所広司さん(以下、役所):初めて細田監督の作品に参加することができました。一生懸命挑戦しました。夏休みに親子で楽しめる映画が完成したと思います。

少年期の九太役・宮﨑あおいさん(以下、宮崎)今回、私は細田監督の作品に(「おおかみこどもの雨と雪」に続き)2度目の参加です。とても嬉しく思っています。

青年期の九太役・染谷将太さん(以下、染谷):細田監督とともに、とても充実した時間を過ごさせてもらいました。温かい時間が作品にも流れていて、誰でも楽しめて感動できる作品になっていると思います。

九太が人間界で出会う女子高生:楓役・広瀬すずさん(以下、広瀬):私自身、初めての声優のお仕事で、しかもいきなり細田さんの作品に参加させてもらい、とても嬉しく思います。少しでもたくさんの方に観てもらえたらなと思います。

熊徹の悪友でブタ顔のバケモノ:百秋坊役・リリー・フランキーさん(以下、リリー):細田さんが絵コンテを書かれる段階から、時々お話をうかがって「今これくらい進んでいる」ということを聞いていました。やっと完成して皆さんに観てもらえる日が来たことには特別な気持ちがあります。よろしくお願いします。面白いことは大泉洋が言いますから...。

熊徹の悪友でサル顔のバケモノ:多々良役・大泉洋さん(以下、大泉):細田監督の「バケモノの子」のお話をもらって、脚本を読んで、「なんてスケールが大きくて面白いんだ」と思いました。家族が描かれていて、しかもこれだけのすごい役者さんと一緒にアフレコをするのが新鮮でした。何度か声優の仕事はしていますが、一人でアフレコすることが多いですし、実写でもこれほどの皆さんと共演できることはありません。
多々良という役を演じたんですけれど、ちょっと私に似ているように思うんですね。不思議だなと思って、映画の資料を読ませてもらったら、まずサルに似ているという理由で、私がキャスティングされたことを、そこで初めて知りました(笑)。直接は聞いていませんでしたから、「あっ、そういう理由だったんだ」と残念に思いました。ついおとといのことです。でも、多々良はドえらく魅力的なキャラクターで、完成した作品を観て「サルに似ていて良かったな」と思います。

──細田監督、そのあたりの真実はいかがですか?

細田監督:はい、顔で選んでいます!

大泉:アハハハハハ!

──これまで細田監督の作品は、「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」と3年ごとに夏公開されています。どの作品にも「青空に入道雲」が描かれていますね。監督が夏休みにこだわる理由を教えてください。

細田監督:入道雲ってモクモク成長していくんですよね。どの映画も主人公がささやかな一歩かもしれないけれど、少しずつ成長するので、そのテーマを象徴的に入道雲に託しています。それと、夏休みにアニメ映画を観ることは、子どもにとって重要なことだと思うわけです。自分自身もそうですけれど、夏休みに観た作品たちが単に面白かっただけではなく、思い出を彩る作品でした。今、めぐりめぐって作品をつくる立場になって、"お返し"じゃないですけれど、子どもたちが大きくなっても思い出せるような夏の思い出をちゃんと作ってあげたいという思いがあります。夏休みに子どもが冒険をして、一皮むけて成長するっていうのは絶対になくてはならないことです。そういうものを体現する映画は絶対に必要だと思います。

──それでは続いて、キャストの皆さんに、先日完成したばかりの本作を観た感想をうかがおうと思います。

役所:最初は自分の顔が出ていないので、気楽に観られるのかなと思っていました。ですが映画が始まると「熊徹、ちゃんとセリフ言えるだろうか」と、ものすごく緊張しました。ラストまでドキドキしましたね。何よりあっという間の2時間弱で、引き込まれました。大人と子どもがそれぞれ豊かに描かれていて、涙を誘うシーンもいくつかありました。

宮﨑:私も緊張しながら観始めましたが、私が演じた九太は途中で染谷くんにバトンタッチするので、そこからはすごくリラックスして、「すごいなあ」「いい映画だな」と思いながら、観ていました。男同士の話ではありますが、女性が観ても、人との関係性ですとか、子どもを育てることであったり、子どもに育てられることであったり、共感できるところがたくさんある映画なんじゃないかなと思いました。

染谷:僕は全く逆で少年期まではワクワクしながら観て、"声変わり"した青年期になると不安になりました。作品は繊細で、実在する渋谷という街が細かく再現されていて、そこから渋天街というファンタジーの空間を行き来することで、今まで得たことないような驚きにワクワクし、感動しましたね。

広瀬:自分の声が、楓ちゃんとして生きているのがすごく不思議な感覚でした。作品として、いろんな形の愛情を感じて、これがどんどんたくさんの人に広がっていく、観てもらえると思うとすごくドキドキしました。私は普段、あまり緊張しないタイプなんですけれど、今回のアフレコは(デビューして)この3年で一番緊張しました。

リリー:監督から「リリーさん、ブタの役で」と聞いて、ブタっぽいところがあるのかなと思ったら、痩せているブタでした。じゃあいつも通りの声でいいかなと思いました。渋谷が細かなところまで再現されているので、普段なら気づかない街の魅力がわかりました。今田舎や海外に住んでいる子どもたちが将来渋谷に来たら、「あっ、『バケモノの子』のあそこだ」と言うと思いますね。娯楽作品としても楽しいですし、バケモノたちは誰も心がよどんでおらず、結局、争いの元を作るのは人間だというのは、ちょっと考えさせられるものがありました。幅広い年代の方、それに海外の方にも観てもらいたい作品です。

大泉:久しぶりに子どもの頃の感覚に戻ったというか、観終わって「今日はもう寝られないや!」と思いました。観終わったのが夜の11時過ぎだったんですが、興奮しちゃって、この感動を誰かに伝えたいと思って、夜中に迷惑だと思いつつ、役所さんに「素晴らしかった」とメールをしましたよ。本当は監督にメールしたかったんですけれど、アドレスを知らなくて...。熊徹が泣けるし、カッコいいんです。子どもはもちろん、40歳を過ぎたおっさんにはたまらない世界観でしたね。セリフがカッコいいですし、やっぱりアニメのスケールのデカさですよね。バケモノと人間という突飛な関係性も、親子として見事に描かれているし、そうかと思いきや渋谷の街がとんでもないことになって、アニメならではだなと思いました。やっぱり役者としてはねえ、いつか実写でもこのスケール感を実現できたらと...最終的にはこのキャストで、「バケモノの子」を実写化したいなと思いましたね。役所さんはあれだけのアクションをしなくちゃいけないので、大変かなと思いますけれど...(笑)。

細田監督:そう言ってもらえるのは、光栄ですね。

──ちなみに役所さんは、大泉さんにメールの返信をしたんですか?

役所:次の日に、しましたよ。「多々良が素晴らしい」って褒め返しました。あのサルは大泉さんにしかできないですから。

大泉:そんな返事をさせてしまい、いかに迷惑だったかが分かりますね...。

──それではここから、ご来場の記者の皆様からご質問を受け付けます。

●今回、渋谷が重要なモチーフになっていますが、なぜ渋谷だったのか教えてください。

細田監督:渋谷という街が「絵になる」のが一番の理由ですね。すり鉢状になっていて、丘からずっと道が連なっている。映画の画作りでは、坂道ってすごく重要で、以前の作品なら「時をかける少女」で新宿の中井というところを参考にしています。魅力的な坂道をロケーションできるという意味で、やっぱり渋谷でしたね。それに渋谷は、いろんな人が集って、そこから生まれるバイタリティやパワーを発している場所だと思います。それがバケモノが生きる世界と表裏一体で、とてもリンクするんじゃないかと思いました。

●なぜ、今の時代に「師匠と弟子」をテーマに選んだのですか?

細田監督:私ごとなんですけれど、前作「おおかみこどもの雨と雪」が完成した後、我が家にも男の子が生まれました。そこで「この子はこれから誰が育てるのか」「どうやって成長するのか」ということを考えました。「おおかみこどもの雨と雪」は母親が子どもを育てるというお話だったんですが、それに対して父親は子どもに何をしてあげられるんだろうと思いました。もちろん父親も子どもを育てるのですが、もっと社会的な意味で、いろんな形の父親たちが世の中にたくさんいて、一人の子どもを育てていくんじゃないかと、それを映画にしたいなと思ったわけです。

●今回、どんな作品から影響を受けていますか? 監督が以前アニメーターとして活躍された東映動画(現・東映アニメーション)の作品や「東映まんが祭り」、また宮崎駿監督の影響を感じたのですが...。

細田監督:強い影響があるとすれば、ジャッキー・チェンの「スネーキーモンキー 蛇拳」です。それと作っている途中は、意識していませんでしたが、熊徹、百秋坊、多々良が九太を育てる姿は、結果的に「スリーメン&ベビー」にも影響を受けているかもしれません。東映での、こちら側が素晴らしい先輩を勝手に師匠として尊敬するといった経験も、影響しているかもしれません。宮崎駿監督に関しては、当然ながら子どもの頃の憧れの監督ですし、かつて夏休みに観た多くの作品は忘れようにも忘れられないものばかりです。例えば1986年の夏の「天空の城ラピュタ」という映画は、それを観たという体験が自分にとって、大きな思い出になっていると思います。

●監督にとって、今年はフリーになって10年目の節目ですが、今回スケールの大きな「バケモノの子」を完成させて、これからの映画製作についてどのような思いがあるか教えてください。

細田監督:10年という言葉を聞いて思うのは、「バケモノの子」はすごく贅沢なスタッフで作っているんですね。原画にしても「こんなにすごいスタッフが、ひとつの場所に結集するのか」と思うほどの布陣で、劇場映画を作れたというのは恵まれているし、幸運ですね。ちょっと恵まれ過ぎじゃないかと思うくらいです。声優さんに関しても、これだけの豪華で、才能と魅力を持った皆さんが勢ぞろいし、ご一緒できるのは一種の運がないとありえないと思います。本当に幸せです。僕は映画を作るのが好きですが、周囲のスケールが大きくなる分、観てもらうための努力も同じくらい必要です。いろんなチームに支えられていますが、多くは10年前に小規模で公開された「時をかける少女」の頃からお付き合いしている人たちなんですね。その連続性が今も生きているのはありがたいし、幸運だなと思っています。

●キャストの皆さんにうかがいます。声優としての皆さんにとって、細田監督はどんな演出家でしたか?

役所:もう、このままの雰囲気の方です。絵コンテを拝見した段階で、監督の強い思いを感じました。目指すものも伝わってきましたね。そこにいかに近づくか、一人の声優として頑張りどころだなと思いました。アフレコの現場では、ブースから「うんうん、そうそうそう」という声がもれてくるくらいでした。褒め上手ですね。まずは、やってみましょうという段階で、監督が「あぁ、熊徹ってこういう声だったんだ」とおっしゃってくださいました。その言葉に勇気をもらって、迷わず演じようと思えましたね。とにかく、監督の絵コンテは素晴らしくて、家宝としてずっと取っておきたいですね。

宮﨑:監督は基本的にとっても優しくて、笑顔でいらっしゃるんですけれど、前作(「おおかみこどもの雨と雪」)の最後に笑うシーンを撮った時は全然笑顔じゃなくて「どう思うの?」って今まで見たことのない監督がいました。私は自分の演技がへたくそで、監督が怒ってらっしゃるのかと思って、「どうしよう」と思っていました。その後、取材で監督とそのお話をしたら、全然怒っていたわけじゃなくて、「アフレコが終わるのがさみしくて、そういうことを言ったんだ」とおっしゃっていました。今回は私の声は中盤でいなくなってしまうんですが、アフレコの後半にもお付き合いしました。そうしたら、(監督は)やっぱり少し怖い表情で...(笑)。私は勝手に「あっ、監督はまたさみしいのかな」って思っていました。

──その推察を聞いて、細田監督はいかがですか?

細田監督:いや、確かに...。終わるのがさみしいですよね。後半になるにつれて、セリフも少なくなって「あぁ、これで九太ともお別れか...」とさみしくなっちゃうんです。「もうちょっと、あと5分だけ一緒にいようよ」という気持ちになってしまうんです。あおいさんにも、付き合わせちゃってすみません...。

──染谷さんはいかがですか?

染谷:とてもいい時間を作ってくださる監督で、自分がいろいろ試すと、監督もいろいろ試してくださいました。向き合うのはもちろん、同じ場所に並んで立って、ものづくりをしてくれる監督さんだと思います。とても有意義な時間でした。

広瀬:役所さんもおっしゃっていましたが、よく褒めてもらいました。声優は初めてですし、すごいキャストの皆さんと一緒で緊張しました。楓は一番人間側のキャラクターなので、ご覧になる皆さんが身近に感じてもらえればと思って演じました。私が「もっとこうした方がいいかな」と思ったことと同じことを、監督が言ってくださることもありました。同じ方向を向いてくれる監督だなと思いました。

リリー:皆さんがおっしゃる通り、とても穏やかです。キャラクターとそれを演じる人をしっかり尊重される監督なので、「もうちょっと声を大きめに」といった雑な演出はしない方です。監督と初めてお仕事したのは、10年くらい前のゲームのCMでした。僕なんて、普段は地声がほとんど届かないほど小さいんですけれど、「もう1個上のテンション、ありますか」ってどんどん乗せられて、最後にはすごいテンションになってしまいました(笑)。逆に「僕じゃなくても、いいんじゃないか?」って思いましたけれど...。尊重されながらも、知らず知らずに監督の世界に連れて行ってくれる感覚ですね。

大泉:僕が演じるのは、とても皮肉屋という役柄で、監督からキャラクターについて説明してもらったんですが、お考えが非常に深いんですね。台本を読む以上に、「こんなことまで考えていらっしゃるんだ」と...。単に皮肉屋ではなく、その奥にある愛情を示してもらい、なるほどと思いました。また、監督から多々良には「七人の侍」の影響があるとうかがって、早速「七人の侍」を観たんですけれど、今度はそれに影響されちゃって、テンポが速くなりすぎてしまいました。全然画と合わなくて、観なきゃ良かったなと思いました(笑)。でもそうやって、自分の好きな映画を教えてくれたり、とてもわかりやすく演出してもらいました。

◆会見後後に行われた舞台挨拶もレポート!
■会見後には完成披露試写会を実施し、1000人を超えるお客様が完成したばかりの本作を鑑賞。上映後に細田監督と声優陣による舞台挨拶も行われました。舞台挨拶には、長年バケモノを束ねてきた長老・宗師を演じる俳優の津川雅彦さんも登壇。また、劇中に登場する不思議な小動物・チコを模した紙吹雪が舞台と客席に降り注がれる幻想な演出で、会場のボルテージは早速最高潮に達しました。

役所:降ってきたチコはタダですから、たくさん持ち帰ってください。今日という日を迎えられて幸せです。細田監督の作品に参加できて、ここにいるキャストの皆さんとお仕事ができて、本当に幸せです。孫に自慢できる作品になり、とても誇らしく思っています。
先日、宮﨑あおいさんと映画が製作された「スタジオ地図」にお邪魔して、製作過程をご説明いただきました。作品は本当に膨大な時間をかけた、スタッフ皆さんの努力の結晶です。最近は少なくなったらしいですが、人間によって鉛筆の線一本一本に心をこめて描かれている。それが細田監督のこだわりで、その温もりがお客さんに伝わるはずだという思いで作られたアニメです。どうか、たくさんの方に観てもらえるように、宣伝してください。

宮﨑:今回、前作に続き細田監督に呼んでもらえたこと、とても光栄に思っています。監督はほぼ順録りで、キャストの皆さんが揃った状態でアフレコする手法なので、「声をあてている」というよりは、普段の体を使ったお芝居に近い感覚で、とてもやりやすく感情が自由に動くような感じがしました。またアニメーションでしか出せない声があったり、たくさんの経験をさせてもらえるので、今回も呼んでもらって、とても嬉しく思っています。今日は観てくださって、ありがとうございました。

染谷:涙されている方も多いんじゃないでしょうか。こんな素晴らしい作品に出会えて、こうして皆さんに観てもらえることを幸せに思います。時代が過ぎても、いつまでも色褪せない名作を細田監督が作り上げたので、たくさんの方に観てほしいです。

広瀬:今回、初めての声のお仕事が細田監督の作品で、このキャストの皆さんの中で楓として強く生きることができて、本当に幸せだなと思いました。声のお仕事は自分にとって、とても特殊な世界観でわからないことだらけでした。今日を迎えて「バケモノの子」がどんどん広がっていくんだなと思うと、すごく楽しみです。

長年バケモノを束ねてきた、ウサギのような外見の長老:宗師役・津川雅彦さん(以下、津川):僕にとって細田監督は、「サマーウォーズ」という作品を観て、大変感動し、尊敬してきたアニメの監督さんなんですね。僕はあまり声を入れた(アフレコ)経験はないんですが、この作品に呼んでもらって大変光栄だと思っています。実は細田さんは、最初から僕を(キャラクターに)当て込んでいたらしいんですね。それに僕はウサギ年なもんですから、それが理由でウサギのバケモノにキャスティングされました... というのは嘘です(笑)!

リリー:役の紹介じゃなければ、「ブタのバケモノ」って悪口ですよね(笑)。僕もウサギ年ですけれど、ブタを演じています。やっと観てもらうことできまして、今日は特別な思いです。

大泉:舞台挨拶が始まる前は、皆さんがどんな顔をしているのか緊張していましたが、実際に幕があがると、皆さんがチコに夢中で上を向いているという...(笑)。ちっともこちらを観ていないという雰囲気を感じました。この「チコを降らす」という演出を考えた人を説教しないといけないですね...(笑)。私も先日観たんですが、観終わった後にすぐ「もう一度観たい」と思えるほど素敵な作品です。皆さんも余韻に浸っているかと思いきや、よくあんなにチコを奪い合っているなと...(笑)。ですが、この作品で感じ取った感動を、周りの皆さんに伝えてもらえればなと思います。

──実際に大泉さんのもとに、チコが降ってきたらどうしますか?

大泉:そりゃ、うちの娘の分を多めに欲しいですけれど...。

──今回もまさに"バケモノ級"の映画を作ってくださりました。細田守監督です。

細田監督:今日はお越しくださって、ありがとうございます。今日、この作品を皆さんにお披露目するまで3年以上の月日がかかりました。その間ものすごく優秀なスタッフと、ご覧の通りの素晴らしいキャストを得まして、今は誇らしい気持ちです。3年かかりまして、1時間58分58秒の作品になりました。楽しんでもらえましたでしょうか? 

──先ほど宮﨑さんのお話もありましたが、細田監督の作品は順録りで、全員そろってアフレコをするんですね。それにはどのような狙いがあるのですか?

細田監督:はい、そうですね。演じる俳優さんが、気持ちの変化を自然に感じながら演じてもらえるんじゃないかという思いがあります。贅沢なやり方ですが、順録りじゃないと演出する私の方もよく分からなくなってしまうので...(笑)。互いに気持ちなどを確かめ合いながらアフレコを進めました。

──役所さん、アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?

役所:もちろん、順録りというのは俳優にとってありがたいことですね。現場は...まあ、必死でしたね。とにかくほとんどのシーンで怒鳴っていまして、セリフに!(ビックリマーク)が10個くらいついていました。声が枯れずに最後までもつか不安でしたが、監督にも助けてもらって、なんとか最後までやり遂げることができました。それに若い人チームは、本当に上手なんですよ。僕たちおじさんチームは、そんなに上手じゃなくて...(笑)。やっぱりアニメで育った世代というのは、全然違うんですねえ。

──役所さんが「上手」とおっしゃる若い人チームの皆さんはどうですか?

宮﨑:私はアフレコ前日から緊張しすぎて、眠れませんでした。楽しみな反面「明日が来なければいい」と思うほどすごく緊張が大きかったです。「どうしよう、どうしよう」と現場に向かい、1時間くらいやっていると、だんだん現場の空気が流れてきて、役所さんとの掛け合いも増えてくるので、少しずつ乗ってきて、最終的には「楽しい」で終わるんですけれど、それまではただただ緊張でした。

──声優初挑戦の広瀬さんは、いかがですか?

広瀬:私も普段は緊張しないタイプなんですけれど、この3年間お仕事をしてきて、一番緊張しました。収録に入る前に、監督と一緒に先輩方の収録を見学させてもらって、何となく「こういう感じなのかな」という雰囲気は掴めたんですけれど、やっぱりマイクの前に立つと、すごく足が震えて...。最初に予告を録ったのですが、今でも録りなおしたいと思うほどです。

──そんな広瀬さんとご一緒のシーンが多かった染谷さんはいかがでしたか?

染谷:自分も緊張していたので・・・(笑)。お互いの緊張を感じていましたね。

──細田監督からの指示で、印象に残っていることはありますか?

染谷:青年期の九太は、人間界とバケモノ界を行き来することが多かったんです。監督が「そのギャップを意識してください」とおっしゃっていたので、そのあたりを意識しました。

──それではバケモノを演じた皆さんにもお話をうかがいます。

大泉:あの、役所さんもバケモノ役ですからね! 今回、サルのバケモノ役だと聞いて、「あぁ、サルかあ」と思いました...。以前はネズミを演じたこともありますし、自分の中にサルっていうイメージはなかったです。きっと、主人公を支えたり、そういうキャラクターの人柄で選ばれたんだと思っていたら、「大泉さんは顔で選んだ」と映画の資料に書いてありました...。

細田監督:はい、顔です。

大泉:そんなにサルに似ています?

細田監督:あの、いやあ...、似ていますよ! サルというより、多々良に通じるものがありますよ。

大泉:確かに、皮肉を言いつつも、熱いところがあるというか...。私も皮肉じゃないですけれど、ボヤキ体質なもので、ボヤキながらも内心には熱いものを持っていると自分では思っているんですよ。自然に演じた? いえいえ、緊張で脇汗が止まらず「ヤバイ、ヤバイ」という状況でした。私だって何も考えていないわけじゃないんですよ。

役所:台本を読まずに現場に入ってきたりね(笑)。

大泉:私だって、台本は読んでいますよ!

細田監督:まあ、その場で読んでもらえれば...。

大泉:いや、その場じゃないですよ。読み込んでいますって! やっつけじゃないです。軽くやっているのはリリーさんですよ。

リリー:僕の場合は軽く、じゃなくて、単に元気がないだけです。僕もブタの役だと聞いて、細身のブタといえば、レストランに置いてあるイベリコ豚のイメージだし...(笑)。でも、実際はすごく僕に似ていて、大泉さんと一緒で資料を読んだら「顔で選んだ」って書いてありました。この二人は"顔枠"みたいですよ。

細田監督:でも、あれですよ。青年期の一郎彦を演じる宮野くん(声優の宮野真守さん)も顔ですよ。宮野くん、すごくカッコいいでしょ? 一郎彦にすごく反映されています。

──アニメであっても、顔は重要ですか?

細田監督:顔というよりは、その人がもつ雰囲気や人間性ですね。それが近いことがトータルで重要だと思いますね。なので、ちゃんと生きたキャラクターとして、性格や見た目とズレないようにキャスティングをしています。

大泉:今の説明を聞けば、納得できますね。端的に「顔で選んだ」って言われちゃうと...(笑)。

──リリーさんが演じる百秋坊はいかがですか?

細田監督:それはもう素晴らしいですよね。私は昔からリリーさんのラジオのリスナーだったので、リリーさんの落ち着いた、それでいて特別な響きを持った声の魅力が好きで、今回お願いできて光栄でした。それを言い出したら、皆さんそうなんですけれどね。

──そして津川さんは、ウサギの宗師役を演じていて、ぴったりだと思いますが、役所さん、いかがですか?

役所:津川さんも体力を使っていない感じですよね。

津川:今おじさんって言われたばかりで、傷ついているのよ。監督が僕に求めたのは"品"なんですよ。熊徹も九太も異端児なんですよ。その異端児を最初に認めるんですよ。宗師がね。それはやっぱり、"品"があるから納得させられるんですよ。この人が味方し、育てるんだから、(熊徹と九太が)主人公に違いないと思わせるんです。僕自身、娘を育てていますからね。そういう経験があるので、やっぱり宗師は僕だなあと思いますよ。

細田監督:完璧にこの映画のテーマを表現してくださり、感動しております。この映画を企画した3年前に男の子が生まれまして、子どもを母親が育てるというのが前作(「おおかみこどもの雨と雪」)で、「じゃあ、父親は何ができるんだろう」というのが今回のテーマです。社会がよってたかって子どもを育てるんじゃないかと思い、「師弟関係」を描いた作品を作ろうと思いました。

──最後にお客様に、細田監督からご挨拶をお願いします。

細田監督:今日は来てくださってありがとうございます。今日は初めてお客様に触れる機会でした。この映画を観てどんな感想をお持ちか、震えながら立っております。気に入ってもらえたら、いろんな人に薦めていただければと思います。

◆「バケモノの子」作品情報
★2015年7月11日(土)ROADSHOW

<STORY>
この世界には、人間の世界とは別に、もう1つの世界がある。バケモノの世界だ。
人間界【渋谷】とバケモノ界【渋天街(じゅうてんがい)】。
交わるはずのない2つの世界に生きる、ひとりぼっちの少年とひとりぼっちのバケモノ。
ある日、少年はバケモノの世界に迷い込み、バケモノ・熊徹の弟子となり、九太という名前を授けられる。
その偶然の出会いが、想像を超えた冒険の始まりだった――

<STAFF>
監督・脚本・原作:細田守
作画監督:山下高明 西田達三
美術監督:大森崇 髙松洋平 西川洋一
音楽:高木正勝

<CAST>
役所広司 / 宮﨑あおい 染谷将太
広瀬すず / 山路和弘 宮野真守 山口勝平
長塚圭史 麻生久美子 黒木華 諸星すみれ 大野百花 / 津川雅彦
リリー・フランキー 大泉洋

>>映画「バケモノの子」公式サイト

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