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ゲーム・アプリ
必然の音、そこにいたる物語と熱量。「グリモア」の裏世界を歌う「リバース レコードプロジェクト」完結記念制作秘話インタビュー【前編】
2014年8月のリリースからちょうど2年目を迎える、アプリボットのスマホゲーム「グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜」。そのプロモーション企画のひとつである「リバース レコードプロジェクト」が、ついに完結を迎えます。
「リバース レコードプロジェクト」は、ゲーム内で語られるストーリーが表としたら、ゲームでは語られない裏のストーリーを音楽で表現しようと試みたもの。非常にシリアス&悲痛なものが多く、複雑な世界観を有した「グリモア」の正と負を華麗に表しているのが何よりの味です。
【特報】
— グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜 (@Grimoire_Staff) 2016年8月19日
最終章、まもなく。 #グリモア pic.twitter.com/kCjeYowZnN
今回は「リバース レコードプロジェクト」の重要人物たち、作曲家の伊藤翼さん(@Tsubasacurry)、作詞家の仰木日向さん(@ogihinata)、シナリオライターの栗原寛樹さん(@yuki2kurihara)、プロモーション担当のもうりさん(@Mouri_megane)の4人によるドリーム対談をしていただきました。
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■「リバースレコードプロジェクトとは?」
──そもそも「リバース レコードプロジェクト」とは何ぞや? という部分から伺っていこうと思っているのですが
もうりさん(以下、もうり):企画を練り始めたのは2015年の8月くらいからですね。グリモアのリリースから1年が経った時に、次の施策としてキャラクターソングをやろうと思ってたんです。でも「グリモア」は独自な世界観に合わせたプロモーション施策を行ってきたので、ありきたりなキャラソンを作って出すというのは意味がないなぁと思って。
「グリモア」はストーリーをユーザーさんから高く評価されているので、ストーリーを機軸に音楽に考えてみようと思ったときに物語音楽と出会ったんです。コレなら「グリモア」の濃い部分とうまくマッチするなと。その後、ライターの栗原さんと相談した時には、誰を歌わせるかっていうのもほぼ決まってました。
企画の大枠も見えたので作曲家の伊藤翼さん、作詞家の仰木日向さんに話しを持って行き制作をスタートさせました。
仰木日向さん(以下、仰木):連絡を受けた時は自転車で関西に行こうとしてた時ですね(笑)。で、連絡をうけて、本当にやるんですねって。
もうり:当時はアイドルソングがとても流行っていたので時代の潮流に全く合わないことをしているなーという不安はとてもありました。でも2人に企画の事を話して最初に智花の曲を作るってなったときにバンバンアイディアを出していただいたんですよ。
参考記事:石原夏織さんが歌う『グリモア』キャラクターソングは悲壮感あふれるヤンデレソング!?
伊藤翼さん(以下、伊藤):「なんて企画を立ち上げたんだ!」とは思いましたけどね(笑)。僕は仕事柄アイドルソングをよく作るんですけど元々はクラシックやプログレ系も好きなので、これは面白いなと。でも1曲目は相当悩みましたね。
仰木:1曲目で全て決まるところもあるしね。
もうりさん:当時の不安は今でも思い出しますけどね。作って出してみて反応が悪ければもう打ち止めとは言われてたんです。でも、これは完結があるプロジェクトだから始めたからには終わらせないといけないなと思っていて、この第1弾で失敗したら…っていう不安はありました。
でも確証めいたものもあって、ユーザーさんはストーリーを評価してくれている、それは間違いない。そこをしっかり体現した音楽にさえなっていれば、「グリモア」のユーザーならきっと評価してくれるって思ってました。でも周りの人は「これキツくない〜?」とかありましたけどね。
伊藤:やっぱり味方から言われると不安ですね(笑)。声優さんの声が入っていないデモ段階での曲を聞くというのはなかなか想像力が試されるところでもあると思うので、もうりさんには頑張ってもらったと思っています。
もうり:でも、いざリリースしてみたらすっごく盛り上がってくれたんですよ。この流れでこれからも続けていけるって思いましたね。
■「世界感を伝える」ということ
栗原寛樹さん(以下、栗原):僕の方でキャラクターの選定をしていて、基本的にはその通りに進めていただけて、予定通りいったなと感じています。
もうり:周りからは「○○に歌って欲しい」みたいな要望もあったんですけど、裏世界はこのキャラクターに語らせなくちゃいけないっていうのがあるので、そこは貫き通しました。
──確かにキャラクターの人選も、表と裏の両面に強い思いがあるキャラクターが揃っているなとは感じていました。
伊藤:パっと見繋がりがないように見えても実は…みたいなのもあるんですよね。
仰木:リバレコ始動にあたって、この「グリモア」の世界ができるまでの経緯など、いわゆる0話みたいな情報を下さいって言ったら、まー長いのがきまして(笑)。
もうり:もうちょっとしたラノベくらいありましたね(笑)。でも情報を渡してからは2人の提案の数もすごくふえて、物語への理解度がすごく深まったなというのは感じました。こんなに提案をくれる作曲家、作詞家というのもなかなかいないんじゃないかなと。
伊藤:ライターさんと作詞家さんがやりとりをしているのを見て、それを音楽的な視点から、キャラクターにフォーカスできるのかを仰木さん、栗原さんと3人でよく話しましたね。
仰木:僕が音楽制作も物語執筆もできるポジションにいるので、2人の意見を通訳できるんですよね。ライターがどんなつもりで何を欲しがって、そしてどう決着したいのか。それをできるかぎり正しく受け取り、音楽語に変換して伊藤くんに伝えて、あがってきた音楽に歌詞を付けてみたいな、そういうとてもキレイな循環があったなと思います。ちょっとでもズレてたらたとえハイクオリティなものができ上がってもNGっていうのは、実際よくある話しだったりしますし。
■この人だから、ついていこうと思った
──前提的な話しになってしまいますが、お二人は「グリモア」に関してはどういう部分に惹かれたのでしょうか? 話を聞いていてとてもハイモチベーションに感じるのですが。
仰木:「グリモア」に関するモチベーションの一番はじめの部分でいうと、アプリボットさんの打ち上げの時に「ラブライブ!」のライブ帰りのもうりさんがいたんですよ。
全員笑
仰木:それでサイリウム二刀流で打ち上げに参加してカラオケで大暴れしてるのを見て「この会社こういう人もいるんだぁ」って思って(笑)。で、その打ち上げの席で「俺、最高の萌えコンテンツで良いものを作りたいんですよ」って仰ってたのがものすごく印象的だったんです。それを見て「あーこの人が作るんなら大丈夫だろうな」って感じたんです。その記憶が今でもかなりあって、このプランナーがたてる企画なら最高の品質で答えなきゃいかんなと。
伊藤:僕も「グリモア」のBGMも担当することになったんですけど、僕としてはそれがかなりモチベーションになっていて、テーマを作っている作品はそもそもの理解度が高いので、そこでキャラソンを作るとなった時にほとんど違和感なく移行できたんです。じゃあもうこういう感じだろう、みたいな。
仰木:最初に「グリモア的な音楽」を決めましょうと提案して、僕が超長文の情報を最初に起こしたんです。何を聞いてもグリモアっぽいよねというものを一本軸として持っておいて、それが僕らに発注してくれる意味でもあるなと。結果としてBGMも評価して下さっているので、リバレコという挑戦的な企画を聞いた時には、僕らが出せる最高のアイディアで取りかからねばならないなと。このプロジェクトを信じてる人間の瞳に惚れた、というところもありますね(笑)。
栗原:ソーシャルゲームの場合はボイス以外だとBGMしか音楽が入ってこないので、絵がどれだけシリアスだったとしても音楽が能天気な感じだと残念な感じになってしまうんですよ。
伊藤:音楽演出はとても重要ですし、僕は音楽が作品のムードだけじゃなくて制作側のモチベーションも決めてしまうんじゃないかと思っていて。ゲーム自体の雰囲気を大きく左右してしまうわけですから、そこで制作側に良い雰囲気を提供できれば作家としてこれほど嬉しいものはないなと思っています。ユーザーも作ってる人もテンションが上がるっていう状況が一番の理想です。
■第1弾「クロックワークラブロマンス」 / 南 智花(CV.石原夏織)
──ここからは曲ごとにお話を聞かせてもらおうかと思います。まずはリバレコの開幕の狼煙ともなった「クロックワークラブロマンス」について
仰木:実はリバレコを始めるにあたって、特化している部分、ツッコミどころみたいなものを楽曲的に何か一つ作ろうっていうのは一番初めから話していたんです。逆再生だったり、歌詞違い重なりだったり裏切りだったり。というわけで伊藤くんどうぞ。
伊藤:収録も含めて1ヶ月くらいだったかな、あの曲は。
仰木:石原さんが歌詞をすっごく読み込んでくれていて、収録の時に感動して…もう大好きになりましたね(笑)。
伊藤:グリモアの曲ってほとんど生楽器なんですよ。この曲もギター、ベース、ピアノ、ドラム、バイオリンは生で録ってます。スタジオもロックアウトしてレコーディングして、最初だからってことで。人の暖かみとかも含めて入れていかないとって思って。
仰木:あのピアノは大変だったね。
伊藤:ピアノもダビングは何度もしたけど、リバースも含めて全部生で録ってます。でも本当に楽しかったですね。ここまで打ち込み無しでバンドとして曲を作ることもあまりないので、イメージ通りに作れるどころかイメージを越えてくるんですよ、人の手を介すと。楽譜通りの演奏だけでなく、プレイヤーの方が何かを感じて入れてくれる音が感覚的には一番正しいと思っていて、それを僕は結構野放しにしているんですよ。
生で録るとそれができる。普通のレコーディングはドラムを呼んでからベース、ギターという風に録っていくんですけど、今回は全員せーので録ってるのでスタジオのブースごとに全員いるんですよね。ほぼバンドのようなスタイルで作っているのでやっぱり一体感もあるし、全員が全員やりたいことやって帰るっていう。全員終わったあと築地で寿司食って帰りましたね(笑)。
仰木:あー、あれもう1年前かぁ。
伊藤:銀座のスタジオなんですよ。そこから歩いてすぐ築地なので朝からやってる寿司屋入って…良い音楽録って良い寿司食って、いやー最高でした。
──歌詞に関してはどのように構築していんったんでしょう?
仰木:まずはどこに決着させようという話しはだいぶ練り込みましたね。 1曲目は1番最長のテイクだったと思います。
もうり:ももは一発だったもんね。
仰木:僕も作家をやってるからこそ思うんですけど、伝え切ってない情報が必ずどこかにあるんですよ。しかも歌は心象風景を描くことが多いので、栗原さんと僕とで何度もすり合わせをして、照合して、それを歌詞に置き換えて。でもその甲斐あってか石原さんもとても深く理解してくれましたし、Bメロとかに関してはものすごく「あ〜それ、それが欲しかったんです」って感じで、笑顔の収録現場でしたね。
──ちなみにこの曲の仕掛けはなんなんでしょう?
伊藤仕掛けっていうと仕掛けだらけなんですけど(笑)。そもそもラップっていうのも仕掛けですし…。
ジャンル的にもギミックの多い曲ですね。変拍子含めて楽曲の調整も曖昧だし2Bから2Cに関してはメロが全部違うし、同じことは繰り返したくないみたいなものがあるんですけど、こういうエンディングは二度と繰り返したくないっていう思いからの表現でもあるんですよね。
仰木:「グリモア」やってないけど曲は知ってる、っていう状態を作り出したいなとはちょっと思ったんですよ。で、音楽を聞いてプレイしてみましたってなった時にどんな曲だとそうなるかっていったら、主人公らしき女の子がいて、楽しい系のやつだと思ったら悲壮なこと言ってるぞ、みたいな。その「気になる」という部分をどうイントロデュースできるのかが、クロラブの一番の勝負どころだったと思います。
音楽は囃し立てみたいなもので、「面白そう」を作る部分だと思っていて、実際に中身の「面白い」を作る部分は栗原さんだと思うので、その面白そうな部分にクロラブは特化したなと。
■第2弾「スノードーム」 / 冬樹イヴ・ノエル(CV.大久保瑠美・原紗友里)
──では次は、第1弾とはうって変わってスローテンポで不安を誘う「スノードーム」についてのお話を
参考記事:2人はすれ違い、そして死んでいく…。大久保瑠美さん、原紗友里さんのキャラソン『スノードーム』に涙
伊藤:クロラブ終わってすぐ取りかかったんですけど、今回はキャラクターが2人なのでまずそこからどうしようか、と。
仰木:ちなみに僕は公言しておりますがノエル推しなので。
──大丈夫です、存じ上げております(笑)
伊藤:そのせいもあって仰木さんのテンションもすっごい上がってて(笑)。イヴ・ノエルの裏世界での事情もなんとなくは知ってたんですけど、曲を作るにあたってもっと深い事情を聞いた時に「え、こんなことなってんの!?」ってくらいびっくりしました。
栗原:イヴ・ノエルに関しては既にゲーム中のイベントで語られていたところもあるんですけど、伊藤さんがそれをしっかり知って下さっていたので、ものすごく汲んでくれたんです。詞を見た時も「あれ、これもうOKなんじゃね?」ってくらいでした(笑)。
伊藤:やっぱり一番の聞き所は2人が交差するところですね。そのあたりのメロの絡み合いは自分でも上手くいったなと思っています。歌詞も上手く絡んでくれたし、PVもほんと見ごたえがありますよね。
仰木:でもあの歌詞ほんと大変だったんですよ。それぞれメロが違うんですけど、それぞれの歌詞を見た時も個別に繋がってなきゃいけない。しかも最後の重なるところで一番強い主張が重なっていないといけない、もちろん音楽的な美しさも備えて。なので簡単に出せたものでは無かったんです。これでリテイクきたらどうしようってくらいでしたね。
あと、個人的に好きな部分としては最後にすごく不愉快な音が鳴るところは、イヴ・ノエルの未来をアレな感じで暗示していて好きですね。
もうり:そこまではキレイにいくんですけどね。最後でずぅーーん、と。
伊藤:最初はキレイに終わってたんですけど、ギリギリでもうりさんから「これ違うよね」って言われて、キレイでいいじゃないですかって返したら「予兆が足りない」って。で最後に不協和音を入れたんですけど何個か試して、ハマったのが今のかたちです。
仰木:クラシック的に何か言い方なかったっけ、あれ。
伊藤:増四度、悪魔の音程だね。わかりやすい話だけどね(笑)。
仰木:音的にもストーリー的にも良い暗示になるなと思って入れましたけどね。イヴ・ノエルはどちらの意味でもキレイなパッケージになったなと思います。
もうり:流れ的には1弾であのテイストをやったので、同じことをやっちゃ駄目だと思ったんです、お腹いっぱいになるんじゃないかなと。そういう流れという意味でもうまくハマッたなと思います。
仰木:声優の大久保瑠美さんと原紗友里さんも、バラードを歌うことはあまりないって仰ってましたね。最近はこう、キャピキャピルンルンな曲が多いので。お二人もすごく気に入って下さったみたいです。
もうり:お二人のラジオ「青春学園 Girls High↑↑」でも流して下さって、その時の思いなども話してもらったそうで、すごく好きな曲だと仰ってました。
仰木:これあまり制作側が言うことではないと思うんですが、歌収録に来て下さった声優さんたちが、よくプロジェクトの熱にあてられてるというか、みんな「よくわかんないくらい熱気がある」と仰っていて(笑)。
もうり:最初に作詞家の思いやキャラクターが歌うことになった経緯、リバレコとは何ぞやというところをガッツリ話すんです、もう囲み面接みたいな感じで。
仰木:毎回作詞メモみたいなのを提示するんです。それを渡してから物語や目的、作詞や音楽のもくろみを話して「質問ありますか?」っていう風にして、それから録ってみましょうって。最初に宣伝用のナレーション録りがあるんですけど、まずナレーションを録ってキャラクターに入ってもらってから歌に入るスタイルで録音してます。録音のテンションに引っ張っていくまでの工程をすごく徹底しているんです。
──限られたレコーディングの時間を削ってでも音楽への理解度を深めてもらうというスタイルは、間違いなく熱量として伝わるでしょうね。
……第3弾以降は、インタビュー後編へ続く。
[文-ヤマダユウス型]
<アプリ基本情報>
タイトル:『グリモア~私立グリモワール魔法学園~』
ジャンル:学園ライフアドベンチャーゲーム
利用料金:基本無料プレイ(アプリ内課金あり)
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