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すごーい!の連続、『けものフレンズ』チームに3万字インタビュー

話題沸騰中の『けものフレンズ』、プロジェクトチームに初インタビュー! 誕生秘話からブーム到来までの歴史など「すごーい!」の連続3万字の大ボリューム

超人気テレビアニメ『けものフレンズ』を作ったキーパーソンに超ロングインタビュー! ネットでは連日のように各話の考察が行われ、「すごーい!」や「たのしー!」といったセリフは流行語にもなっています。

今回お話を伺ったのは、コンセプトデザインを手がける吉崎観音先生と二人三脚で『けものフレンズ』を立ち上げた株式会社KADOKAWA コミックス編集部編集長・梶井斉さんと、アニメを制作するヤオヨロズ株式会社取締役プロデューサー・福原慶匡さんのおふたり。

彼らははたして、どんな思いで作品を育ててきたのか? 大ヒットしている現状をどのように考えているのか? 何から何まで、たっぷり伺ってきました。

インタビュー前の思惑では、頭をからっぽにして読めるような、「たのしー!」記事にするツモリでした……。ですが、お話を伺ったら、インタビュー時間にして2時間。出来上がったこの記事は、読むのに疲れるほどの超ロングインタビューです。文字数は約3万字です! また、とってもマジメなインタビューになりました。フレンズのみなさんはもちろん、動物が好きな読者の方々に、隅から隅までじっくり読んでいただきたいです。

(2017年2月14日 取材・第6話「へいげん」放送日)

▲左より、株式会社KADOKAWA 梶井斉さん、ヤオヨロズ株式会社 福原慶匡さん

▲左より、株式会社KADOKAWA 梶井斉さん、ヤオヨロズ株式会社 福原慶匡さん

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目次

『けものフレンズ』の原作は「動物」、アニメもコミックも可能性のひとつ

――大ヒットおめでとうございます。そもそも『けものフレンズ』は、どのような経緯で立ち上げたコンテンツなのでしょうか?
梶井:『けものフレンズ』を立ち上げたきっかけは、吉崎観音さんのイラストと世界観を使った「IP(知的財産権)」を創出するのが目的だったんです。なので、大本はアニメやゲーム、映画を作るのが目的ではないんです。大げさな話をすれば、「今後100年続くIPを作りたい」という思いが根本にありました。

――ゲームやアニメなどの商品化が目的ではなく、先にIPがあるのはおもしろいですね。
梶井:たまたま最初に世に出たのがゲーム(2015年3月にリリース)だったというだけですね。よく「原作はゲームだ」とおっしゃる方がいますけど、実はそんなことはないんです。ゲームはいろいろなアイデアがあるなかのひとつとして考えてました。『けものフレンズ』はさまざまなメディアを使って盛り上げていく複合プロジェクトなんです。
▲第一弾アニメキービジュアル

▲第一弾アニメキービジュアル

――では『けものフレンズ』の原作は、いまでも明言していないのでしょうか?
梶井:吉崎観音さんが明記しているのですが、原作は「動物」です。吉崎さんには「ジャパリパーク」や「セルリアン」、「サンドスター」などといった、キーとなる元の世界観は作ってもらいましたが、原作は「動物」なんです。

福原:そういう意味も含めて、吉崎先生の肩書が「原作者」ではなくて「コンセプトデザイン」になっています。

梶井:ゲームとアニメ、コミックの3つは、一見するとバラバラなようでいて、実はつながっているんです。ゲームはすでにサービスが終了したため遊べませんが、3つを理解している人からすれば、共通点が見えていると思います。ジャパリパークという舞台がどういう状況になっているか……それを楽しんでいただければと思います。

福原:そうですね。『けものフレンズ』は単体のコンテンツでも楽しめて、すべてをわかるともっと楽しめるようになっています。吉崎先生が「サンドスター」とか「ジャパリパーク」といった単語の定義を作りましたが、定義の解釈はある程度のバッファがあるんです。なので、ゲームやコミック、アニメなどを作る人が、それぞれ用意された幅のなかで独自に解釈しています。

――それもユニークですね。一般的な設定は「○○はこういうモノだ!」と決めると思います。吉崎先生は各作品の作者が考えた解釈を、寛容に見てくださっていますか?
福原:そうですね。

梶井:本人に聞いてないのでわかりませんが、もしかしたら、他の人にも考えてほしいから自分で描かないのかもしれませんね。吉崎さんが描いてしまったら、それが「答え」になっちゃうから。

福原:コミック(『けものフレンズ -ようこそジャパリパークへ!-』)を描かれているフライ先生の絵は吉崎先生の絵と違います。アニメの絵も吉崎先生の絵と違います。アニメの情報を出した初期のころは、吉崎先生が大好きなファンから「これは吉崎観音さんの絵じゃない!」と言われました。



――そういう声があったのですね。
福原:はい。ですが、僕らは吉崎先生からは「自分の絵を意識しないでほしい」と言われたんです。アニメはアニメらしい絵でやってほしいと希望されていたんです。そこで僕らは考えました。吉崎先生の元のイラストは3頭身くらい。そしてマンガは7~8頭身くらいです。さて、アニメはどうしようか……と。

――いまの頭身になった理由は?
福原:8頭身のキャラがギャグをやるとなまめかしくなってしまいます。反対に3頭身のキャラがシリアスをやると泣けません。ということを考えて、ちょうど中間の頭身をアニメのキャラクターデザインとして採用しました。

梶井:プライズ用のフィギュアがわかりやすい例だと思います。あのフィギュアは、思いっきりデフォルメしたんです。なぜかと言うと、吉崎さんの絵のままでは立体化はできないから。フィギュアは立体物なので、立体化したときに一番かわいく見えるようなプロポーションにしました。
▲2017年1月末にアミューズメント施設に登場したプライズフィギュア『ちょびるめぷち-サーバル・アライグマ・フェネック-』(フリュー)。机の上に飾ったとき、もっとも可愛く見えるデザインに仕上がっている。好評につき再販が決定した。

▲2017年1月末にアミューズメント施設に登場したプライズフィギュア『ちょびるめぷち-サーバル・アライグマ・フェネック-』(フリュー)。机の上に飾ったとき、もっとも可愛く見えるデザインに仕上がっている。好評につき再販が決定した。

梶井:だから「アニメを3Dで作る」と決まったとき、かわいらしさと動かしやすさを考えて、いまのデザインになりました。

――福原さんがアニメを作り始めたのはいつでしょうか?
福原:実はこれもややこしくて、初めに『けものフレンズ』の映像を作ったのはテレビアニメじゃなくてPVだったんです。あのときはまだアニメの制作会社が決まる前だったので、「PVを作ってほしい」と言われたから3DCGで作ったんです。



――そうだったのですね。時期はいつごろでしょうか?
福原:確か2014年の2~3月です。ちょうどあのころは『みならいディーバ』(註1)をやっていて、モデリングの時期が完全にかぶっていました。ものすごくテンパっていたのはいい思い出です(笑)。

(註1:『みならいディーバ』は、ヤオヨロズ制作の生放送3Dアニメ(!?)。声優にモーションキャプチャユニットを付けて、声と共にキャラクターまでも演じ、しかも生放送という挑戦的作品。プロデューサーは、『けものフレンズ』の福原P。)

 

「二次創作がオーケー!?」な寛容なスタンスの理由は?

――テレビアニメ版のキャラクターデザインは誰が担当したのでしょうか?
梶井:基本的にキャラデザは「ノーネーム」なんです。『けものフレンズ』では、キャラデザをあまり押し出すつもりはありません。誰が描いてもいい作品なんです。そのひとつの例が、ホームページに掲載している「二次創作のガイドライン」です。あれは企画当初からの考えです。作品が好きな人に自由に描いてもらって、この世界を広めてほしい思いがあったんです。
▲「二次創作に関するガイドライン」、公式サイトより

▲「二次創作に関するガイドライン」、公式サイトより

――二次創作を認めてくださるなんて、とてもユニークだと思いました。プロの方じゃなくて、ファンの方も自由に描いていいのですね?
梶井:はい。『けものフレンズ』の題材は「動物」ですから、誰かが権利を主張するものでもないですよね。動物のみなさんは、肖像権を訴えて来ませんから(笑)。

――確かにそうですね(笑)。
梶井:なのでファンの方々には、まだフレンズになっていない動物を考えて描いていただけると、世界が広がって楽しいな~って思います。

福原:そうです。ちょうど『キン肉マン』(註2)みたいにね(笑)。

(註2:『キン肉マン』に登場する超人のなかには、読者の応募作品から誕生したキャラクターが多数存在する。)

一同:(笑)

梶井:本当はそれをやりたいんですよね。募集をして「採用されたら登場するよ」って、おもしろいですよね?

――それはファンとしては、この上なく嬉しいです! ぜひ企画していただきたいです。すでにpixivなどの画像投稿サイトでは、大勢のファンがファンアートを描いています。反響をご覧になっていかがですか?
梶井:僕は2014年ごろにプロジェクトを立ち上げたころからずっと『けものフレンズ』を見ているので驚いています。

――プロジェクトを立ち上げたころは、どのような反響でしたか?
梶井:あのころは、たまに『けものフレンズ』を好きな方が、チョコチョコとイラストを投稿している感じでした。それが、アニメが始まってからは投稿数が激増して、それこそプロの方まで投稿してくださってます。ありがたいですね。



――いろいろなファンアートをご覧になっていると思いますが、印象に残っている投稿作品はありますか?
梶井:実はいままでに公式のTwitterアカウントでリツイートした作品は、2件だけなんです。

――2件だけRTされたのですか? どのような作品ですか?
梶井:その作品はただ単に絵が上手いのではなくて、『けもフレ』の世界観を汲み取ってくれたイラストなんです。ちゃんと『けものフレンズ』を理解してもらっているのが伝わるイラストをRTさせていただきました。

――RTされた方は、ものすごく嬉しいですね! 一般的に公式アカウントはファンアートをリツイートしません。
梶井:言い方が難しいですが、そういう意味でも我々は二次創作を応援していると、みなさんに理解していただけたら嬉しいです。『けものフレンズ』は誰が参加してもいいスタンスです。原作が「動物」という作品の強みだと思っています。

――いまはイラストについて伺いましたが、二次創作はイラスト以外にもたくさんの作品があると思います。他の作品もオーケーですか?
梶井:はい。もしコミックも描きたい人がいたら、どんどん描いてほしいです。

福原:僕らがビックリしているんですけど、すでにオンリー同人イベントが2件も決まっているらしいんです。オンリーイベントって、参加サークルがそこそこ集まらないと開催できないと思うんですけど、みなさん大丈夫なんですかね?

一同:(笑)

――イラストやマンガを描く同人作家だけでなく、コスプレイヤーさんも出てきそうですね。
梶井:これから出てくるかもしれませんね。

福原:気づいてる方も多いと思いますが、実は『けものフレンズ』の服って、そんなにハードルが高い衣装じゃないんです。なかには露出が多い子もいますけど、そうでもない子の方が多いです。

梶井:コスプレイヤーさんって、衣装を着て作品を表現しているのですから、ひとつの二次創作だと思います。なので、界隈が盛り上がってくださるのでしたら、とても嬉しいです。


福原:それにネットでファンの声を見ると、「子供に見せてもいい作品」とか「NHKで放送できる作品」との意見をちらほら見かけるんです。なので、『けものフレンズ』は大人から子供まで見る可能性がある作品。同人活動をされる際には、このへんの事情も少し考えていただけたら嬉しいです。

――ファンの声で気になったものはありますか?
福原:すべてをチェックしていませんが、僕がネットで見ている限りだと、動物園に足を運んでいる方もいるみたいですね。いまグッズが出揃っていないので、ファンのみなさんの購買欲求が動物園に向けられているんです。

一同:(笑)

梶井:『けものフレンズ』を立ち上げたときのひとつの目的が、「本物の動物に興味を持ってもらいたい」だったんです。なので実際に動物園に足を運んでくださるのは、とても嬉しいです。いま福原さんが言ったように、我々が望んでいた流れになってくれました。ただ、爆発的に来場者が増えて、動物園と動物に迷惑をかけてしまわないかが心配です。

福原:そうですね。こんなことを僕が言うと偉そうに聞こえちゃうかもしれませんが、ファンのみなさんにはルールを守っていただきたいです。Twitterに写真をあげたい一心で、柵を乗り越えたりガラスを叩いたりするのはよくないです。そんなことをしなくても、ただふらっと動物園に行って、普通に動物を見ているだけでも楽しいですよ。


 

『けものフレンズ』はビジネス度外視のプロジェクト?

――これだけ話題になると、ビジネスとして成功と呼べるのではないでしょうか?
梶井:う~ん、それが……。ビジネス的視点に立って始めたプロジェクトのはずなのに、いま思い返すとビジネスはあまり考えていませんでしたね。

福原:オープニングのクレジットを見てくださればわかると思いますが、プロデューサーの人数がめちゃくちゃ多いんです。

――それも気になりました。大勢が関わっているプロジェクトなんだなぁ~と。あの大勢のプロデューサーさんは、なにをされている方たちですか?
福原:それぞれなにかしらの窓口になってる人たちなんですけど、あんなにいっぱいいるのに、ビジネスを考えてないっていうか……。

梶井:そう言えば……「ちゃんとビジネス考えてなかったなぁ」と(笑)。長年編集者をやっているので、ただただ創るのが好きなんですよね。USJとかでジャパリパーク開園してくれないかなぁ。ビジネスは誰かにやってもらおう(笑)。

一同:(爆笑)

福原:きっと放送終了後にいろいろグッズが出ると思うので、「ファンの方は、そのときのためにお金を貯めといてください」と書いておいてください!(笑)

――間違いなく書いておきます(笑)。
梶井:過去、秋葉原のUDXで「けもフレショップ」をやっていたんです。あのときは「なんで通販にしてくれないんだ」とお叱りの声をいただきましたが、あれはショップに足を運んでくれたファンの方を大事にしたいという考えもありまして。

――なるほど。現場派のファンを大切にしたいと。
梶井:でも、東京だけじゃ地方の方に申し訳ないじゃないですか? なので、本当は移動動物園みたいに各地を巡りたいんです。理想としてはやりたいんですけど、お金がかかりますからねぇ……。春から出るグッズの中には全国のアニメイトさんなど複数店舗での販売や通販も行いますので、こちらをご利用いただければ幸いです。

――そもそもですが、ビジネスを考えていなくてプロジェクトを動かせるものなのでしょうか?
梶井:なんで動かせたんでしょうね?(笑) キャラクターありきのプロジェクトだったので、「このキャラなら、なにかできるんじゃないか」というフワッとしたものでした。

福原:クリエイティブ側の人間として、吉崎観音先生と梶井さんが立ち上げ当初からプロジェクトの中心にいました。その他にビジネス側の人間が何人かいました。ですが、ビジネス側の人間は途中で若干入れ替わったので、ずっと終始一貫して『けものフレンズ』を理解しているのは、委員会のなかで梶井さんだけなんです。

梶井:ここまで続けてこられた一番の理由は、キャラの魅力があったからかな? これがあれば「なにかできる」という思いはありましたね。

 

次ページでは「空前のブレイク前にヒットの予兆はあったのか?」
(C)けものフレンズプロジェクト
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