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『プリキュアドリームスターズ!』はアニメの未来を感じられる映画!

『映画 プリキュアドリームスターズ!』は、手描きとCGの両面から攻めた未来を感じられる映画!ーー宮本浩史監督インタビュー

2017年3月18日(土)、毎年恒例となっているプリキュアの春映画『映画プリキュアドリームスターズ!』が公開されます。オールスターズの愛称でおなじみ『映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』から数えると9作目、プリキュア映画全体としては22作目の作品となります。

監督をつとめるのは『映画Go! プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』内のフルCG作品『プリキュアとレフィのワンダーナイト!』の監督を手がけた宮本浩史さん。宮本監督は過去のプリキュアシリーズのCGアニメーション、モデリングにも多数関わっており、CG WORLD誌主催の「第1回CG WORLD大賞」も受賞されています。

宮本監督だかこそ出せる絵とは、そしてプリキュア春映画おなじみの「オールスターズ」が今回から変わったことについての思いなど、試写会を見て気になったコトを宮本監督にぶつけてきました。

▲宮本浩史監督

▲宮本浩史監督

 

「プリキュアの映画は誰のものか?」から企画がスタート
──春のプリキュア映画といえば2009年から始まった『オールスターズ』ですが、今作ではタイトルから「オールスターズ」がなくなり「ドリームスターズ」となりました。その意図はなんでしょうか?

宮本浩史監督(以下、宮本):元々、出演するプリキュアの人数を絞ろうという案自体はプロデューサーの鷲尾さん(註1)から出ていたんです。それが今回スタートした形です。意図としては、「演出やお話を主軸に持ってくる」、「子供たちの知っているプリキュアで子供たちに向けて楽しいものを作る」というものです。自分もそうだなと共感しました。映画館で大人たちは盛り上がってるけど子供たちからすると「あのプリキュア、誰?」というのは寂しいですし。改めて、子供たちに向けてきちんと作っていくべきだろうと感じていたんです。

註1:東映アニメーション、プリキュアシリーズのプロデューサー鷲尾天さんの事。プリキュアシリーズのお父さん。


──人数を絞ろうという案はいつごろから出だしたのでしょうか?

宮本:去年の5月頭か4月末くらいだったと思います。ただ、鷲尾さんの中では減らそうという構想は以前から既にあったようです。

 
──人数を減らすにしても直近の何シリーズを出すかとか、そういった具体的な話しもされましたか?
宮本:そこに関しては鷲尾さんの方で、恐らく10数人レベルのところの、いわゆる『映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』(2009年)(註2)くらいまで絞りたいなというオーダーは受けていました。

註2:初のオールスターズ映画。14人のプリキュアが登場。『映画プリキュアドリームスターズ!』は、ある意味で『オールスターズ』の原点回帰とも取れる。


──シリーズ単位というよりも人数を大事にされていたんですね。

宮本:そうですね、大体これくらいの人数だったら子供もきちんと認識してくれるのではないかという、そういう調整で絞っていったと思います。

 
なぜ、作画とCGのハイブリッドになったのか?
──本作は作画とCGが融合した構成となっていますが、何故でしょうか?

宮本:そこに関しても最初は、紆余曲折があったんですが、「やはり自分が監督をするからには半分近くをCGにしなければ意味がないだろう」というところに行き着いて、企画がスタートしました。

その後も、作画とCGの区分けに関しては、試行錯誤が行われたました。今の区分けになる前は、「変身後をCGにして変身前を作画にする」といった案が出るなど、たくさんの構成案が出たんです。ただ、世界が繋がっていると、表現のあり方もつながってしまい、キャラクターのCG表現も作画に寄せなければいけなくなってしまう。「だったらいっそのこと作画とCGの世界を分けてしまおう」という、今回の表現に行き着いたんです。


──ということは作画とCGを両面でやるぞというのが企画としてあって、それに相応しい物語を構築していった感じでしょうか?

宮本:そうですね、そういうところから脚本会議がスタートしました。


──それ以前に、全編CGにするという案はありましたか?

宮本:例年の新シリーズのスケジュールと映画の制作時間を考えると、全編CGは絶対無理ということは、当初から分かっていました。


──そうなんですか? てっきり、作画に比べればCGの方が労力が少ないものかと思っていました。

宮本:いわゆる「CGキャラクターアニメーション」というのは大きく分けて2つあります。CGアニメーターが動作を1コマずつを手動で付けていく「手付け」と、動作を取り込んでキャラクターを動かす「モーションキャプチャー」です。ピクサーやディズニーなどのアニメーションでは「手付け」が使われ、実写映画やゲームムービーなどは「モーションキャプチャー」が数多く使われています。

「モーションキャプチャー」を使った方が効率的で現実に近い動きが可能です。一方、「手付け」は、作業時間こそ多くなりますが、キャラクターの心情芝居などを得意とし、動きを誇張して演出意図を伝えやすくなります。どちらが優れているということはなく、作品のタイプによって使われ方が違ってくるんです。

今作のプリキュアのCGが「手付け」ですが、それは「レフィのワンダーナイト!」の頃から通している制作の経験とアニメらしい演出を目指してです。

ただ、「手付け」にすると、問題も発生します。それは、アニメーションらしさを理解した上で「手付け」で動きを付けられるCGアニメーターの絶対数が少ないんです。その数は、作画のアニメーターに比べるとまだ圧倒的に少ないんです。なので、全編CGにするのはスタッフの観点からも難しいといえるんです。

また、今回気付いたんですが、作画のアニメーターさんは長年積み上げてきた経験の上で、アニメーションらしい動きを修得しているということです。芝居表現の技術的にも、作画の方が進んでいます。今回、作画とCGの両方を使った作品の監督を担当して、この部分は特に痛感しました。

──実際に作画とCGを融合させてみた、手応えというのはどうでした?

宮本:今回、作画の方についてもすごく良いスタッフを集められたので、CG側として勉強になることがたくさんありました。総作画監督の中谷友紀子さん(註3)と作画監督の大田和寛さん(註4)は、作画畑で色々な表現を模索されてきた方々です。上がってきた作画から、たくさんの事を学びました。例えば煽りの画に時は、「顔の輪郭線が、外側に膨れるようになるので、アゴの形も変わる」だったり「泣いたときは、表情にシワが入り、こんな震え方をする」だったりとか、演出や芝居の細かいニュアンスがとても勉強になりました。ご一緒して、特に寄りの心情芝居はまだCGが作画の域に到達できていないと痛感しました。

註3:中谷友紀子さんは、『Go!プリンセスプリキュア』のキャラクターデザイン担当。本作では、オリジナルキャラクターデザイン、総作画監督を担当している。
註4:大田和寛さんは、『Go!プリンセスプリキュア』の作画監督。本作でも、作画監督を担当。


──なるほど。作画サイドとCGサイドで情報交換しながら進めていった感じですか?

宮本:今回に関しては完全に別班としてやっていましたね。自分が両方に参加しディレクションするという橋渡しをしたので、現場スタッフレベルで直接交流するということはほとんどなかったです。


──ちなみに、「作画には負けないぞ」、「CGには負けないぞ」みたいな、お互いにライバル視するなどはありましたか?

宮本:現場のスタッフはもしかしたら感じていたかもしれないですけど、自分としては両方が良い方向に進まないと困る立場だったので、両方とも応援していました(笑)。


──では、逆にどちらが歩み寄ろうみたいな意識はありましたか?

宮本:それはあったと思います。東映アニメーションのCGアニメーターは、作画に対してリスペクトを持っている人がすごく多いんです。作画から学ぼうという意識はあったかなと思います。ヒントや刺激になればと思って、作画のレイアウトや原画の上がりを、CGアニメーターには内々で見せるようにしていました。CGアニメーター側もそういうのはすごく嬉しいらしくて、刺激になったようです。


──今作で特に感じたのが「CGのシーンなのにCGの感じがあまりしない」というところと「作画のシーンなのにCGっぽい」というところなんですが、これは意識されたんでしょうか?

宮本:例えば冒頭でサクラのラメが剥がれていくシーンなどの、「これから作画になりますよ」っていうところは演出上で違いが分かるように明示化しています。


──例えばCGの方はもっと作画のような「セル画」に寄せることもできたんでしょうか?

宮本:はい、それはできます。今作は、最終的な画はかなりの処理を施してるんです。素材のCGだと、作画のような「セル画」に近い感じになっています。そこからいくつかの撮影処理を施すことでCGのような質感を後から足しているんです。なので、CGの作業工程としては、まず作画にしか見えないようなレベルのものから作ってます。


──予告映像や公式サイトからも映像の美しさと新鮮さを感じていたのですが、作画とCGの境界を味わってもらおうみたいなものはプロモーションの段階で意識されていたんですか?

宮本:CGの魅力のひとつとしてライティングだったりとか空気感みたいなものが出しやすいというものがあるので、画面の奥行きや海のキラキラだったりとか、そういったところで勝負しつつというのはありますね。やっぱり心情に迫るような寄りの芝居というのは、なるべく作画に任せるようにしています。


──それぞれの描き方で訴求できる部分というのが、やはりあるんですね。

宮本:今後埋まっていくとは思いますけどね。ただ、現段階ではそれぞれの得意不得意というのは確実にあると思います。

 
オールスターズを超えるため、12人でできる最高の映画を目指した!
──「オールスターズ」という冠がなくなることに対しての不安などはありますか?

宮本:いやーもう不安しかないですよ(笑)。結局、『オールスターズ』っていうところの冠で来てくれたお客さんというのは確実に一定数いますので、いまだにそこは怖いですね。


──その不安を払拭させるために、宮本監督が特にエネルギーを注いだ部分はどこでしょう?

宮本:『オールスターズ』でないのだとしたら、だったら「12人でできる最高の映画はなんだろう」というところをものすごく一生懸命考えて作りました。結果的に面白いものになっていると思いますが、そうですね……やはりまだ怖いといえば怖いですね。


──クロスオーバーのところなんかはすごくアツかったです。作品的な時系列もある程度読めたりしてファンとしては嬉しい演出がたくさんあったんですが、そこもこだわったところですか?

宮本:完全にパラレルな世界だよって言ってしまうのは簡単なんです。ただそうでなく、画をみて「(春野)はるかや(朝比奈)みらいたちがテレビで見ていた時の彼女たちと変わらない」と感じてもらえるよう、ものすごく意識しました。

どうしても辻褄が合わないところは大なり小なり出てはくるんですけど、そこをなるべく感じさせないようにしつつ、テレビでみた大好きなキャラクターを感じられるように意識したつもりです。


──プリキュアたちの出会いのシーンには今までない新しさを感じました。

宮本:そこは自分の中でどうしてもやりたかったところですね。「偶然出会った」とか「運命だった」とかっていうのは、台詞で言うのは簡単なんですが、プリキュアたちには「自分の足で迎えに行く」という能動的な姿勢を取らせたかった。12人に絞る前からそれは感じていました。制作の初期段階で、今回は『オールスターズ』ではなることが明確になったので、自分から提案したんです。

 

サクラとシズク、そしてプリキュアたちの関係
──「サクラ」と「シズク」というキャラクターは、どういった理由で誕生したのでしょうか?

宮本:まず、今回の映画の主人公は「いちか」なので、いちかというキャラクターが守るべき存在として「サクラ(CV:阿澄佳奈)」がいます。そして、サクラを守る存在として「シズク(CV:木村佳乃)」が登場するんです。このサクラとシズクの関係は、いくつかの比喩になっています。具体的にいうと、「同じ目線で同じ景色を見ることによって一緒に過ごせていける」という意味を表したキャラクターなんです。

この比喩は、『GO!プリ』や『まほプリ』の先輩プリキュアと『プリアラ』の関係にも含めているんです。先輩プリキュアは、登場シーンから圧倒的な戦力でプリアラたちの前に登場します。ただ、その後はみんな友達になって、先輩や後輩という関係性はあるけれど、同じ目線の中で物語が進んでいくんです。また、これと同じことがプリキュア制作現場にもあるんです。昔からプリキュアを担当されている方々は、上から目線で意見をする人がいないんですよ。「面白いものを作る」という目的の中で、自分みたいな新米の監督に対してもしっかり話を聞き、目線を合わせて面白い話を引き出そうとして下さるんです。まさに、「サクラ」と「シズク」、「後輩」と「先輩」プリキュアの関係と一緒なんです。

▲左より、シズクとサクラ

▲左より、シズクとサクラ

──ジーンときますね……。シズクについても、細かくお聞かせ下さい。

宮本:サクラといちかの出会いは、「孤独な者同士」という構図でしたが、シズク自身も色や瞳、尾の数が普通と違うということから迫害を受けていて孤独を感じていたキャラクターなんです。サクラとシズクは、孤独な者同士が依存し合って繋がっている関係なんです。二人とも最初のうちは幸せだったかもしれないんですけど、依存関係というのはいつか破綻するものです。そして、鴉天狗(CV:山崎亮太)によって強引に引き離された二人が、依存を断ち切り、本当の信頼を得ることができたという物語でもあるんです。

この依存の話は、私自身の経験でもあるんです。自分自身もそれほど心が強い人間ではないので、やっぱり辛くなったりしたら誰かに依存したくなるんです。でも依存したまま何かが上手くいったことって人生経験上一度もありません。ですので、最初は依存していたかもしれないけれど、最後は自分の力で立ち上がり、信頼関係を得た仲間たちと何かを成し遂げたことで前に進める。そういった経験を物語に投影しています。なので、シズクは自分自身を自己投影したキャラクターでもあるんです。

一方のプリキュアは、依存関係がなくそれぞれが自分自身で行動します。その部分を明確にするために、今までだとプリキュア同士の出会いのシーンであった背景が真っ白になってスーパースローなり「運命の出会い」という演出表現をしていません。運命の出会いは確かにあるかもしれませんが、自分としては行動を見て「あの人は、プリキュアだ!」と信じて欲しかったんです。言い換えると、依存ではなく行動を見てお互いを信頼して欲しかったんです。

そういう意味では、「依存して頼る」サクラとシズク、「信頼して頼る」プリキュアたちは、対比の関係で描いているんです。


──普段からそういった自身のパーソナルを作品に投影することはあるんですか?

宮本:これ言うとちょっと引かれちゃうこともあるんですけど……、人に言われて嬉しかった言葉や勇気づけられた言葉、逆に人に言われて傷ついた言葉や腹の立った言葉を全てメモに残してるんですよ。で、ここぞという時にそのストックの中からキャラクターを作るようにしています。前作『プリキュアとレフィのワンダーナイト!』(2015年)のレフィも同じく自己投影から生まれてますね。




──なるほど! 今作でもメモのストックから、ネタを出しましたか?

宮本:相当使ってますね(笑)。レフィの時も階段を駆け登りながら「ずっと怖くて寂しくて、不安でどうしようもなかったけど」というモノローグがあるんですけど、あれは脚本に無かったセリフをメモのストックから追加したんです。今回もいくつかのセリフは、コンテを書きながら、メモのストックから出てきたセリフを追加しています。


──説得力に繋がる要素ですね、それは。

宮本:使っている言葉が、必ずしも万人に刺さる要素ではないと思うんです。ですが、どこかのアニメやドラマで見たようなステレオタイプな言葉を綴って、安定感のあるようなものを作るよりも、自分が生きてきた中で感じたものを投影していった方が、伝えたいメッセージが届くんじゃないかと思っていて。その部分は、意識して作るようにはしています。

 
和のプリキュアはなぜ生まれた?
──他にはかなり気持ち悪いキャラクターの鴉天狗と、使い魔の狛犬・赤狗・黄狗(CV:ライス)がいますが、敵キャラクターについてはどういった描き方をしているんでしょうか?

宮本:作品全体のコンセプトとして和風があり、脚本会議でちょっと間抜けな感じのモンスターか使い魔を出そうというのが決まったんです。ちょうどその頃、江ノ島や鎌倉に行って神社仏閣のの写真をいっぱい撮ったんです。そこからインスピレーションを得たのが、あの狛犬のキャラクターですね。


──そもそも作品全体を和風でいこうとしたのは何故なんでしょう?

宮本:本作の企画書の提出の時に、「今までやってこなかったことをやろう」と思いまして、和風モノの企画のストックがあったのでそれを提出しました。誰もやったことがなく、きらびやかなイメージにマッチするというところで、和風を強く打ち出した感じです。


──実際にやってみて、和とプリキュアの相性はどうでしたか?

宮本:合ってるところもあれば、合ってないところもある……という感じですね(笑)。ただ、和風にしたことで、シーン全体で色をのせやすかったというのはあります。例えば、鳥居や桜など、画面のトーンに合わせて色を変えられるオブジェクトが多かったのは良かったと思ってます。

今回の映画、色のトーンが各シーンで変わるんです。それはすべてサクラの心情を描いてるんですよ。後半、サクラがショックを受けるシーンがあるんですが、一気に画面の彩度が落ちるんです。女児モノのアニメであそこまで彩度を下げた映画は初めてかなと思いますね。逆に、そのあと場面が展開し、画面は一気に赤くなるんです。赤くなるピークでは、夕陽のシーンよりも赤くしています。また、色相を変えた黄緑寄りのシーンもあったりします。こういった演出は、すべてサクラの心情を表現しているんです。


──他に色味でこだわった部分はあるのですか?

宮本:ハリウッド映画では、カラーコレクションやグレーディングといった「色彩補正作業」を必ずやります。昼に撮影したものを色彩補正作業で色を変えて、時間帯を変えるといったことも可能です。ただ、狙って撮影した色合いは、色彩補正で調整した色合いとは確実に違います。去年公開された『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015年)って映画は、1日の中でごく数日しか現れない時間帯を狙って、時間をかけて丁寧に撮られた映画です。観て頂ければその違いが分かるかなと思います。

そして、今作もCGではありますが、後者に近い工程で製作しています。後から色彩補正で色を転がすのではなくて、地の素材レベルできちんとライティングをして、その時間帯を狙って色を作っています。いわゆるシーンのセットアップというところにすごく時間はかかるんですが、「何かを感じるものにしたい」という意図の元、わざとそういう風に作りました。


──なるほど! では、他に監督がこだわったところはありますか?

宮本:作画とCG、双方の良さを発揮させる部分には、こだわってますね。作画のアニメパートの美術監督である倉橋隆さんの仕事はすごく素晴らしく私自身もリスペクトしているんですが、CGパートはゲームムービーなどでコンセプトアートを担当している澤井富士彦さんにお願いしました。CGの情報量やライティングを前提とした立体などは、作画とは設計の方法が異なるんです。やはり作画の良さを魅せるために作画のスペシャリストにお願いし、CGにはCGのスペシャリストにお願いしました。


──それは手描きと3Dの両面から進めていくと決めたときから考えていたんですか?

宮本:そうですね。お互いの強いところを推していこうという結果ですね。

 
音楽へのこだわり! 序盤の絵作りへのこだわり!
──音響面については何かオーダーなどはありましたか?  個人的に開始の劇伴の音の分厚さにすごく心捕まれまして……。

宮本:今回は、大きく3種類の音の付け方をしています。ひとつ目は劇伴と言われる映像ありきで音を付けてもらう方法です。今回は林ゆうき先生にお願いしました。CGパートのサクラとシズクが逃げてるところはその手法を使ってます。
ふたつ目は、音に対して映像を合わせたというシーンですね。既存の曲を編集して絵コンテ撮を作っています。クライマックスの主題歌が流れるあたりはそういう作り方をしています。
3つめが、テレビシリーズで多くとられている手法と同じ手法です。選曲の水野さんが、シーンに合わせてテレビの曲を切り張りしてタイミングが合うようにしたり、もっと盛り上がるようにしたりしてくれています。作画パートの大半はこの手法です。
この3つの方法を取っているんですが、やっぱり映画ならではと言えるのは、ひとつ目とふたつ目のやり方ですね。3Dパートはこの2種類を軸に進めていきました。なので、曲でシーンを盛り上げるというのは、だいぶ攻められたんじゃないかなと思っています。


──シーンによっては「この音は、女児向けとは思えない重厚さだ……!」と思ったところもあるんですが、世界観が和風だからそれほど逸脱して聞こえないとも感じました。そのあたりの味付けの濃さはどうですか?

宮本:最初にぐっと引き込むことは、映画においてとても大事だと思っています。特に映画館に入った直後は、子供だけでなく大人でも少しそわそわしていて集中できない雰囲気がありますよね。そんな中で「なんかいきなりスゴイ場面から始まった!」ってなれば、あとはもうずっと引き込また状態で観れるんじゃないかと思ってます。


──最初で引き込むというのは仰る通りで、最初のCGパートでの感動は本当に大きかったです。最初の5分、10分でつかんでいこうというのはかなり意識されていたんですね。

宮本:そうですね、最初のフルCGのパートに関しては徹底的にリズムで攻めようと思いました。特に序盤のサクラの走っているシーンにはこだわっています。サクラの歩調やシーン的なエフェクトは、サクラの走りのテンポから大きくズレないように、リズムの強弱を徹底しました。あのシーンは、サラっと観れるようでいて、実は細かい演出を結構入れているんです。

 
1年ぶりの現場でも「あうん」の呼吸は忘れていない!
──『プリアラ』の方々はテレビ本編よりも映画の収録が先にだったと伺ったのですが、やはり監督が演技指導されたんですか?

宮本:テレビに出ていないタイミングで収録をした『プリアラ』組のアフレコに関しては、必ずシリーズディレクターの暮田公平さんや貝澤幸男さんに立ち合って頂いて、そこで相談をしながらすすめていきました。特にショコラやマカロンに関してはテレビでもほとんどまだ喋ってない状態でアフレコに臨みましたね。


──皆さんどんな感じでしたか?

宮本:そうですね、やっぱりかなり試行錯誤はしましたね。ディレクションルームで「マカロンやショコラはこんな話し方します?」とか、随時確認しましたし(笑)。声優の役者さんたちもそうですし我々ディレクション陣も含めて、色々と試行錯誤しながら作っていったかなぁと思います。


──『まほプリ』組は現行で放送していましたし、『GO!プリ』組は久しぶりに会ったことかと思うんですが、そこらへんはどうでしたか?

宮本:もう完全に同窓会でしたよ、キャッキャしながら、再会を楽しんでいらっしゃいました(笑)。ひとつ面白かったことがあって、変身のあたりってみんな声をそろえないといけないんですけど、『GO!プリ』組は1回でバッチリ合わないんですよね(笑)。


──合わないんですか!

宮本:録音の川崎さんも「一年経つとこうなっちゃうのかぁ」とニヤニヤしてたんですけど、2回目でもう完全にピッタっと合うんです。やっぱりこれって、息が合うってことなんだろうなと思って鳥肌立ちましたね。


──1回目でズレを確認して、2回目で調整をして……。

宮本:そう、そして合わせてくる。あれはすごかったですね。『まほプリ』組に関しては、現役だけあって一発OKでした。


──『オールスターズ』の映画でいつも思うんですが、放送が始まったばかりのシリーズのキャラクターを描くとき、そのキャラクターたちの仲の良さの距離感って難しくないですか?

宮本:難しいですね。実際そこに関してはこちらではもうわからないので、わからないことがあったらシリーズディレクターの暮田さんや貝澤さんに聞くしかないなっていう状況ですね。脚本や絵コンテも各シリーズのプロデューサーやディレクターがチェックして、その都度相談をしながらすすめています。その中で、「分からなかったら聞く」というスタンスで進めていきました。


──そういう意味では登場するシリーズを絞ったおかげでその部分の打ち合わせがより濃密になった感じがしますね。

宮本:例えば世界観がクロスオーバーしたときにその世界のモブたちがいっぱいいるんですけど、あそこに出てくるキャラクターも自分が決めたわけではないんですよ。『GO!プリ』の世界は『GO!プリ』のスタッフが決めています。なので、『GO!プリ』ファンからすると相当ニヤニヤできるキャラクターが出ているので、そこも楽しんでいただければと思いますね。あ、ゆいちゃん出したいって言ったのは自分です、眼鏡っ子大好きなので(笑)。

 
作画もテクノロジーで新しい時代へ進みだす!?
──CGの技術は日進月歩で進化していますが、CGと作画の関係はアニメーションの製作現場においてどうなっていくと思いますか?

宮本:実はですね、今回CGだけでなく作画パートも新しいことをやっているんですよ。今回、線太かったと感じませんでしたか?


──感じました! あれも「手描きの良さだな〜」なんて感じてましたが……。

宮本:あれ、実はほとんど作画ではやってないんですよ。作画は今まで通り描いていて、そのあとの撮影の時に、最新の技術を使って線を太らせたりして強弱を付けたり、頬のブラシはほぼ全カット入れたりしています。他にも結構攻めたことをやってるんですけど、作画の部分もテクノロジーの処理を施すことでもっと良くなっていく気がします。


──宮本監督自身の今後の展望はありますか?

宮本:やっぱり子供に向けた作品というところでやりがいを感じます。子供向けで、今後も勝負していきたいと思っていて、遅かれ早かれオリジナル作品を作ってみたいですね。それが5年後であれ10年後であれ。

──最後に、読者に向けて一言お願いします。

宮本:今回の『ドリームスターズ!』では、いろいろなことが変化した映画になると思います。その変化を観ていただければ、今後の映画プリキュアの可能性というのを感じてもらえるのではないかと思います。『ドリームスターズ!』は、そんなきっかけの作品になったのではないかと思っています。これからのプリキュアの進化に対しても楽しんでいただければと思います。

──ありがとうございました。


[取材・文 ヤマダユウス型]
 
作品情報

『映画プリキュアドリームスターズ!』
2017年3月18日(土)全国ロードショー!

 

さあ、一緒にいくよ!
トビラをぬけてフシギな世界へ――3つの勇気で守ってみせる!
わたし、宇佐美いちか! ある日ね、サクラっていう女の子に出会ったの! サクラがいたのはキラキラキレイでフシギな世界。だけどそこに<世界中のキレイなもの>を狙う鴉天狗っていう悪いヤツらが現れて、サクラのともだちを連れ去っちゃったんだ…。でも安心して!「GO!プリンセスプリキュア」と「魔法つかいプリキュア!」、そして私たち「キラキラ☆プリキュアアラモード」が絶対に助けてみせる! さあみんな、手をつないで! トビラを開けて! サクラの世界を助けにいくよ!!


原作:東堂いづみ
監督・キャラクターデザイン:宮本浩史
企画:鷲尾天
脚本:坪田文
総作画監督:中谷友紀子
作画監督:大田和寛
演出:佐藤宏幸、村上貴之
音楽:林ゆうき


美山加恋
福原遥
村中知
藤田咲
森なな子
かないみか
阿澄佳奈
高橋李依
堀江由衣
早見沙織
齋藤彩夏
嶋村侑
浅野真澄
山村響
沢城みゆき
東山奈央
古城門志帆


木村佳乃
山里亮太(南海キャンディーズ)
ライス(関町知弘・田所仁)

配給:東映

>>『映画プリキュアドリームスターズ!』公式サイト

(C)2017 映画プリキュアドリームスターズ!製作委員会
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