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アニメ『エロマンガ先生』監督が絶賛する紗霧アニメーターの正体は?

最終話 放送直前!TVアニメ『エロマンガ先生』竹下良平監督のインタビューで見えた、幻のED映像やこだわりのエンドカード、紗霧ダンス、そして紗霧アニメーターの正体は?

 和泉正宗(CV:松岡禎丞)と和泉紗霧(CV:藤田茜)、ふたりの兄妹を中心に個性的なキャラクターが多数登場するTVアニメ『エロマンガ先生』。現在好評放送中の人気作ですが、アニメイトタイムズでは本作の監督を務める竹下良平氏にインタビューを行いました。

 これまで作品を作り上げてきた感想に加え、原作者・伏見つかさ先生の前作である『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(以下、『俺妹』)や、度々出てくる他のライトノベル作品にまつわる小ネタ。話題の紗霧アニメーター・小林恵祐さんの活躍についてなど、作品についてのアレコレを伺いました。

 もちろん監督自身が絵コンテを担当されたオープニング&エンディング映像に加え、エンドカードの秘密も……!? 『エロマンガ先生』のファンはもちろん、『俺妹』から伏見先生のファンだというみなさんも注目を!!

 

初監督作品の手応えと竹下監督の推しヒロインは?
──アニメの放送もいよいよ終盤ですが、手ごたえは感じていますか?

竹下良平監督(以下、竹下):とても人気があるみたいで、周りの人も観たとよく言ってくれますし、面白いとメールをくれる方もいて嬉しいです。

──そもそもアニメ化にあたっての指針や方針はあったのでしょうか?

竹下:とにかく女の子を可愛く描くことです。なかでも紗霧を一番可愛く魅力的に描くことを大前提に考えていました。

――本作が初監督作品とのことですが、イチから作品を作り上げるのは大変だったのでは?

竹下:やっぱりゼロからアニメを作り上げて行く過程でたくさん苦労は経験しましたよね。特に、何か問題が起きたときに指示を出すのが自分なんです。みんなが僕を見るわけで、どう言えば一番効率的で、スタッフの負担が軽くなるように問題が解決できるのか判断するのは非常に悩みました。

――そんな苦労の中で、何か嬉しかったことはありましたか?

竹下:自分が呼んだスタッフもいるんですけど、この作品に関わってよかったと思ってくれる人や、この作品をどんどん好きになってくれる人がいて、そこがとても嬉しいです。また放送が始まってからは視聴者の反応も見られるので、そこも嬉しいポイントですね。今までの苦労を、全部帳消しにして余りあるくらいの喜びになっています。

――スタッフのみなさんも、Twitterでイラストとともに「作監を担当しました!」「制作進行やりました!」と呟いていて、とてもいい雰囲気の現場だという印象を受けました。

竹下:みんなキャラクターのことが好きで、それぞれ推しのキャラクターの絵を上げていますよね(笑)。それはやっぱり嬉しいなと思います。

――ちなみに監督自身の推しのヒロインは?

竹下:やっぱり見てくれている人ありきなので、誰かを推すわけではなく全員を可愛く描きたいと思っています。個人的に好きなキャラクターを聞かれれば智恵か紗霧です。

特に智恵の自然体な感じや正宗との距離感がすごく好きですね。原作を読んでいても一番リアルにいそうなキャラクターですし。


噂の紗霧アニメーター・小林恵祐さんとは

――紗霧を一番可愛く描くことが重要だとおっしゃっていましたが、紗霧専属のアニメーターがいらっしゃることが話題になりました。この「紗霧アニメーター」を小林恵祐さんにお願いした理由と、経緯を教えてください。

竹下:もともと小林君は、僕がXEBEC(ジーベック)にいた頃の1つ下の後輩なんです。彼の作画は可愛さとリアルさのバランスの加減の仕方が絶妙だと思います。それをこの作品の中で、自分がポイントだと思ったところで発揮してもらえれば、人の印象に残るようなアニメになるのではないかと思いました。

――竹下監督からお願いしたんですね。昔から付き合いがあったのでしょうか?

竹下:僕がアニメーター二年目になった時に彼が入ってきたんですけど、生意気な後輩って感じでしたね(笑)。

――(笑)。紗霧カットを作ろうと思ったときには、小林さんにお願いするつもりだったと?

竹下:いい意味で小林君のカットは目立つんですよね、悪目立ちとかではなくて。なので、演出的に目立たせたいポイントだと思ったときに、彼にお願いしています。

――紗霧カットを選ぶ基準を教えてください。

竹下:コンテの段階で毎回10カットずつ、状況に応じてはもっと少なくなる場合もありますが、見ている人に引っ掛かるようなシーンをチョイスしています。フェチズムを感じるようなアングルや芝居など、小林君の作画でやったらここは光るなというのが基準ですかね。本人は感情芝居も上手い人ですが、ずっとフェチズムを感じるようなシーンばかりやっているから、もうちょっとそういうシーンもやりたいんだろうなとは思っています(笑)。

一同:(笑)。

――感情芝居と言えば、5話の正宗との会話のなかでコロコロ表情が変わる紗霧も視聴者の間で話題になりました。ちなみに5話の紗霧カットは?

竹下:5話は紗霧が洋服を脱ぐところやベッドの上でバタバタしているシーンが紗霧カットです。小林君のカットは全体が映るよりも、一部分だけ映るカットが多く、お腹や足元、脇だけとか、そういうシーンがほとんどですね。

――なるほど。では監督が特に気に入っている紗霧カットをお聞かせください。

竹下:1話で紗霧が、自分で自分のお尻の写真を撮るシーンが気に入っています。放送後にpixivやTwitterであの瞬間の絵を描いてくれている人がいたので、特に影響が大きかったんだと思います。もちろん、ほかにもお気に入りの紗霧カットはいっぱいあるんですけど。

――紗霧カット以外にも小林さんが手がけたカットはありますか?

竹下:3話の山田エルフ(CV:高橋未奈美)が裸でピアノを弾いているカットも小林君ですね。動きだけでなく肉感というんですかね。エルフは中学2年生なんですが、その世代の女の子の裸がとてもリアルに描けているんじゃないかと思います。またお尻とかそういうシーンばっかりなんですが(笑)。

――エルフといえば、3話で正宗をビンタして吹っ飛ばす場面がありました。そのシーンを見て『俺妹』の、新垣あやせ(CV:早見沙織)のハイキックを思い出した人が多かったようですが、これは意図したことなのでしょうか?

竹下:そうですね、あのシーンは実際に『俺妹』のコンテを見て作りました。この作品のファンは『俺妹』を見ている方がかなり多いと思うので、その方たちが喜ぶシーンは入れているつもりです。あそこは、メインアニメーターの沢田犬二さんがやってくれています。

――ほかにも『俺妹』を意識して作ったシーンがあったり……?

竹下:結構ありますね。例えば1話なら、『俺妹』にも登場した、紗霧のベッドに置いてある緑色のタコのぬいぐるみです。織田広之さん(※)のTwitterアイコンにもなっていますね。また正宗が使っている目覚まし時計は、高坂京介が使っているものと同じデザインにしていたり。あとは、8話には黒猫がでています。

※原作イラストレーター・かんざきひろ氏のアニメーター名義

――黒猫の出演にはどのような経緯が?

竹下:8話の脚本は原作者の伏見先生が担当したのですが、黒猫を出したいとおっしゃっていて、僕も出すことは作品にとってプラスになると思い出演することになりました。


竹下監督のお仕事スタイルは、正宗orエルフ?

――先のエルフが正宗をビンタする場面は、ふたりが仕事のやり方で対立するような場面でしたが、監督はどちらのスタイルに近いですか?

竹下:正宗スタイルです、エルフにビンタされる側ですね! エルフみたいにやる気MAXファイヤーの時に、一気に仕上げられる人はすごく羨ましい(笑)。なんだかんだエルフは締め切りは守っているわけですし。3話が放送された後、メインスタッフのなかにも、エルフが言っているからやる気MAXファイヤーのときじゃないと仕事しないとか言っている人もいて困りました(笑)。

――本当にいい雰囲気の現場なんですね(笑)。そんなエルフは自分の小説のアニメ化のために引っ越していました。監督もこの作品のためにスタジオから5分のところに引っ越したと聞きましたが、もしかして何かを意識してのことだったのでしょうか?

竹下:単純に移動時間がもったいないと思ったからです。前に住んでいたところは自転車で20分くらいかかっていたのですが、毎日30分の時間短縮ができました。

――『エロマンガ先生』のために引っ越して、30分の時間を無駄にしないようされたと。

竹下:時間的なことだけじゃなくて、精神的にも楽じゃないですか。家が近いとお風呂にも入れるし。


時間がないところから生まれた、正宗と紗霧の物語を想起させるオープニング

――監督が絵コンテを切られていたオープニングとエンディングの映像についてもお聞かせください。まずオープニング映像はどんなところに意識を?

竹下:オープニングもエンディングもとにかく時間がなかったことを覚えています(笑)。

――短時間であのオープニングとエンディングの絵コンテを?

竹下:ほとんどのアニメは、時間のないところから生まれているものだと思います。決して時間をかければ良いというものでもない気もしますね(笑)。時間がないと自分にプレッシャーがかかるから、その分、やる気MAXファイヤーにはなりますよね。

――なるほど(笑)。

竹下:まずオープニングは本編を意識して、シリーズ全体を想像させるような構成にしたいと思っていました。正宗と紗霧の物語ということを見ている人が分かるようにしつつ、そこに周りの人たちが集まってくるという流れを作りました。

――まさに紗霧と正宗が一緒に走っているサビのシーンですね。

竹下:サビは僕も気に入っているんです。紗霧の表情が、ひとりで走っているときと正宗と走っているときで変わっているんですが、それに気づいてくれる方がいて嬉しく思いました。

――曲と映像が相まって、まさに『エロマンガ先生』を象徴するようなオープニングになっていると思いました。

竹下:演出は、ちなさんという若手の方がやってくれました。

――若手の方が担当されているんですか!?

竹下:まだ21歳という若さで、絵もとても上手い方です。自分で演出をやれなかったのでお願いしましたが、動かし方が今風ですよね。4コマとかを使っていて、僕が作るものとは良い意味で全然違うものになったと思います。そのときは、ちなさんの周りの若手のアニメーターが集まってくれて、新しい世代のパワーを感じましたね。

――オープニングは若手の方が中心になって制作されていたんですね。

竹下:オープニングは全員若手です。平均年齢が20代前半だと思います。次世代を担っていくような方たちなので、怖くなりましたよね(笑)。

――(笑)。サビも印象的でしたが、Bメロの踊る紗霧も話題になりました。

竹下:紗霧ダンスのところですよね。あそこは1話でオムライスのカットをやってもらって、とても評判が良かった温泉中也さんという若手のメインスタッフの方にお願いしました。この方が一連のダンスシーンをやってくれましたが、少ない枚数で効果的に見せていて感心しましたね。

そんな若手が作った作画の土台の上に、総作画監督の岡勇一さんや小林真平さん、織田さんがキャラ修正を乗せてくれてあのオープニング映像が出来上がりました。

――短い時間のなかで正宗や紗霧をはじめとしたキャラクターの背景が一発で分かるので感動しました。

竹下:ちなさんは本編にも参加しているので、アニメの世界観やキャラクターの雰囲気を理解してくれていると思います。それと8話以降のオープニング映像が、ちょっと変わっているんです。今までツンツンしていた千寿ムラマサ(CV:大西沙織)がデレます。本当に微妙な違いなんですけどね。


エンディングには実現しなかった幻の案も……!?

―― 一方のエンディングはどのような経緯で作られたのでしょうか?。

竹下:ただ音楽に乗っかるだけでなく、視聴者の印象に残る仕掛けをやりたいなと思っていました。最初に考えていた案として、正宗が紗霧と世界旅行に行く構想がありました。正宗が紗霧にたくさんの外の世界を見せていくというのがコンセプトだったのですが、ボリューム的に厳しい状況になってしまって……。

――そのエンディング映像の案も非常に気になりますが、現実的にはハイカロリーだったと。

竹下:だから、もうちょっと簡単にできるものはないかなと考えた結果、あのエンディング映像になりました。洗濯機がグルグル回っているのをずっと見ている人っているじゃないですか。そういう動画もありますし、繰り返すということをエンディング映像に落とし込めないかなと思いました。

また2話のラスが、紗霧が紐パンを自分で洗う宣言をしているので、そこからエンディングに繋げてループするような映像になれば見ている人の印象に残るんじゃないかなと思ったんです。

――その部分が本編とエンディングで繋がっていたんですね。

竹下:エンディングは杉田柊さんというまた若手の原画さんが、ひとりで担当してくれました。絵やタイミングもすごく上手ですよね。「yeah」の髪の毛の感じとか素晴らしいです。

――こちらも洗濯機の前で徐々にリズムに乗りながら踊っていく紗霧が印象的でした。

竹下:実はサビのジャンプするところで、左手がグーパーグーパーと開いて閉じてを繰り返しているんですが、あれは杉田さんのアドリブなんです。ジャンプ自体はコンテに指示がありましたが、あのアレンジは可愛いなって思いました。Tシャツの中がチラチラ見えそうで見えないところも、よく表現してくれたなと。実力がないとチラリズムは表現できないので。

また、エンディング映像の色は色彩設計のホカリカナコさんが決めてくれました。美術の雰囲気にあわせたビジュアルに関しては、ホカリさんとそれを撮影してくれた撮影監督の青嶋俊明さんたちの仕事が光っているかなと思ってます。

――温かみのある色合いですよね。

竹下:ミュージシャンの米津玄師さんという方の「MAD HEAD LOVE」のMVを参考にしています。背景一色というのがかっこいいと思っていましたし、色に関してはホカリさんが特殊な色を作るのが上手いので、「カッコよくしてください!」とお任せしましたね。一色の背景を美術の小川友佳子さんに頂いて、そのミルキィな画面に合わせてホカリさんに色を作ってもらいました。

――全体的に若手の方が中心になって制作されているんですね。

竹下:そうなんです。そんなエネルギッシュな若手の原画を、ベテランの岡勇一さんをはじめとする総作監陣や、自分の同期でメインアニメーターの藤原奈津子さんがキャラクターを魅力的に修正してくれます。若手が中心ですけど、その周りにちゃんと形にしてくれるようなキャリアの方たちがいるので、『エロマンガ先生』のクオリティは今のような状態になっていると感じています。

――その点、やはりチームワークは重視しているのでしょうか?

竹下:自分が監督になったときに、今まで僕がこうした方がいいと思ったことは全部やろうと思いました。

――例えばどんな試みを?

竹下:頑張っている人にちゃんとお金を貰ってほしいと思っていたので、作品への貢献度とその人に見合う対価は気にしています。全然働かない人がお金を貰うのはずっと納得がいかなかったので、そういったことは『エロマンガ先生』の現場ではないと思っています。

またみんなフリーなので、会社に来なくても仕事はできるんです。でもみんなが会社に来たくなるような雰囲気と、コミュニケーションを取りやすい環境というのはとても重視しています。自分ともそうですし、ベテランと若手がコミュニケーションを取りやすいように、一緒にご飯に行ったり、何かの機会に紹介しあったりできる機会はなるべく設けています。縦の繋がりや横の繋がりができやすいような現場にしたいと思っていました。

――本当に温かい雰囲気の現場なんですね。

竹下:みんなが楽しんでやってくれたらいいんですよ(笑)。

――会社で上映会が行われていることも伺いました。

竹下:多くの方が参加してくれたと思います。遊びみたいなものですけどね(笑)。


こだわりのエンドカード、キャラクター選出の基準は?

――エンドカードの絵コンテも監督が担当されていますが、キャラクターの選定基準などあればお聞かせください。

竹下:自分からエンドカードをやりたいと申し出ましたが、実は本編の延長となるネタをやりたいと思っていたんです。理想的なことを言えば、漫画『ワンピース』の扉絵(※)があるじゃないですか。ああいう感じで、本編にいずれ関わってくるようなネタをアニメーターの絵でやれればいいなと思っていました。

※主に『ワンピース』の扉絵では、麦わらの一味と一騒動あったキャラクターのその後がスピンアウトとして描かれています

――印象に残ったエンドカードは?

竹下:特に印象的だったのは、大野仁愛君という新人が描いてくれた3話のエンドカードですね。織田さんと岡さんに色々と教えられながら悪戦苦闘していました。師弟愛というか、先輩後輩の愛を感じるような出来になってます。大野君自身は非常に上手いんですけど後輩気質で可愛がられるタイプなので、織田さんと岡さんが嬉しそうに教えているのをよく見ていました。それであのエンドカードができたので、印象深いですね。

――ちなみに第1話のエンドカード「おあがりよ!」は松岡禎丞さんの某主演作のパロディだと思いますが、どなたのアイディアだったのでしょう?

竹下:1話は伏見先生のアイディアです(笑)。続く2話のエンドカードのパンツを見つめている紗霧も話題になってくれました。

――次の3話は、全裸でピアノを弾いていたエルフがインターホンに急かされて服を着ているエンドカードで、こちらも話題になりました。

竹下:原作では裸から服を着て出ていくシーンがあったので、エルフが服を着ながらどんなことを思っているのだろうと考えた結果、あのエンドカードになりました。

――では紗霧が紙を持ってベッドに横たわっている4話は?

竹下:4話のエンドカードは、本編で正宗に告白された後「お腹すいた」と言った紗霧に、正宗がご飯を持って行った後のシーンのつもりです。

――いつものメッセージカードを持ちながらベッドで悶えているわけですね。

竹下:そして5話から夏服になるので、高砂智恵(CV:石川由依)の着替えシーンです。制服を着ている頃って急に衣替えの時期が来るじゃないですか。なので、間違えて前の制服を着ている……みたいなシーンを描けられたらいいなと。

――6話は「ごきげんよう…」と挨拶しているめぐみが作風からして別作品みたいでした。

竹下:智恵によってめぐみが小説にハマる回です。放送が終わった後に知りましたけど、“レイニー止め”っていう言葉があるんですね。すごく気になるところで次巻に繋げる『マリア様がみてる』のファンの間では有名なネタだとか。

7話はムラマサが活躍する回なので、セーラー服姿のムラマサが描かれています。全体的に見て、その回のメインエピソードのキャラクターが多く出ていますよね。今後も本編に関係するようなエンドカードになっていると思います。


『円環少女(サークリットガール)』はまさかの原作者許諾済み!?

――第5話ラストで智恵が『灼眼のシャナ』のシャナや『とらドラ!』の逢坂大河の真似をする場面がありました。あのシーンはどのように収録を行ったのでしょうか?

竹下:伏見先生からリクエストがあったので、智恵役の石川由依さんに物真似をしてもらいました。ここは原作であったネタをそのまま拾っています。正宗の好きなヒロインは、基本的に上から目線でSっ気のあるキャラクターなんですよね(笑)。

――『円環少女(サークリットガール)』に関しては声が付いたことがなかったですよね?

竹下:伏見先生が原作の長谷敏司さんと友達で、ご本人から許可をいただいたようです。

――長谷先生公認だったんですね!

竹下:アフレコ現場で長谷さんからのメールを見せていただいて、そこに書いてあったキャラクターの特徴を石川さんに伝えてお願いしました。

一同:(笑)。

竹下:正宗の好きなラノベヒロインの特徴は紗霧に通ずるところがちょっとあるのかな? 紗霧もわがままで偉そうですからね。

――正宗はわがままを言われたいのかもしれませんね。

竹下:言われたいんでしょうね! そういう想いはすごく感じました(笑)。きっと世話を焼きたいんだと思います。


実は水面下で競り合っていた松岡禎丞さんと制作スタッフ!?

――アフレコに関してもお伺いしたいのですが、監督からご覧になったキャストのみなさんの印象は?

竹下:みなさん実力者という印象を受けました。ポイントを伝えたらすぐに対応できる力がある方々だなと。若くてもキャリアのある方ばかりだと思います。なので、キャラクターを掴んでからのアフレコは、テストの段階でほぼ完成されていました。

――監督からディレクションをすることはあまりなかったのでしょうか?

竹下:キャラクターに関することなど、話に沿ったディレクションや演技の方向性は決めています。1話に関しては、紗霧がラストで心を閉ざすシーンです。正宗と紗霧は両想いなんですけど、正宗は紗霧と家族になりたい願望があって、一方で紗霧は恋人同士になりたいんです。そういうすれ違いを絵だけで表現するのは難しいので、声でも表現できるようなディレクションを心がけました。

ただ最初の方は悩むことも多くあったので音響監督の山口貴之さんといろいろ相談させていただきました。その注文にすぐ対応出来るキャストの皆さんのおかげでスムーズな現場でした。

――ということは、キャスティングも若手の中でも実力のある方を基準にされていたと。

竹下:オーディションのときに「この人だ!」と思った方を選んでいるので、実力というよりは声質やインスピレーションを重視しました。でも実力があるからこそ、このキャスティングになったんだと思います。

――ちなみにアフレコ現場の様子はいかがでしたか?

竹下:音響監督の山口さんがとてもコミュニケーションの取りやすい方なので、和やかな雰囲気で収録できたと思います。初めてお会いしましたが、山口さんのおかげで意図を伝えやすかったです。キャストさん同士もほかの作品でご一緒されていたりするので、お互いの雰囲気を掴んでいるように感じられました。

――逆にキャスト陣の芝居からインスパイアされたものはありますか?

竹下:息づかいやアドリブで入れてくれたものには動きを付けたいと思っています。1話では「エッチ、変態!」と紗霧が言っているんですが、そこは藤田さんの演技に合わせられたのでよかったです。

――アフレコを経て、さらにブラッシュアップされると。

竹下:表情を芝居に合わせたりすることは、声を聞いたアニメーターが徐々に作り上げていくものです。声とのリンクは、どのアニメでもやっているものだとは思いますが。

――なるほど。そのほかに演技から影響を受けたシーンやキャラクターはいるのでしょうか?

竹下:やっぱり松岡さんの正宗ですね。1話だとメインアニメーターの沢田さんが松岡さんの芝居をほとんど描いてくれました。コミカルなシーンなど、今まで松岡さんが演じたキャラクターや、我々視聴者が見ている松岡さんの雰囲気から、沢田さんが「松岡さんのテンションに負けないように描こう」と頑張っていたことを覚えています。

――松岡さんの演技とのせめぎあいがあったんですね。最終話が楽しみです!

竹下:息切れしないようにしないと(笑)。


原画マン・藤田茜の裏側と最終回へ向けた見どころは?

――本作はニコニコ生放送を通して様々な企画をしていますよね。それこそ第4話には紗霧役の藤田さんが原画マンとして参加されています。

竹下:藤田さんの原画企画については、エンドロールに藤田さんの名前を載せたいと事前に言われていました。ただ、エンドロールに名前を載せるからには、ほかのスタッフと同等に扱いたい。特別扱いはしたくないと思っていたので、ほかの原画さんと同じように作画打ち合わせをして、同じように演出チェックをしています。

なので、いただいた原画をそのまま使って、そのままTVに流しています。特別扱いでエンドロールに名前を載せるのは嫌だったので、そこだけはちゃんとやりたかったんです。藤田さんもすごく困惑したとは思いますけどね(笑)。

――実際に上がってきた原画をご覧になっていかがでしたか?

竹下:一生懸命描いてくださっていたなと思って嬉しかったですね。A-1 Pictures本社の会議室で、2時間くらいかけて描いていただきましたが、あの精神力はすごいですよね。そこから監督にチェックされるのはすごくイヤだと思いますし、逆の立場でもしも自分がいきなり声優やれって言われても絶対無理です(笑)。

――(笑)。

竹下:しきりに餅は餅屋って言ってましたね(笑)。僕も大変そうだなと思いましたが、作品のいい宣伝になったので非常に助かっています。

――ここまでお話をお伺いしましたが、本編のクオリティやキャスト陣の演技も相まって、アニメならではのアプローチで正宗と紗霧の関係性が魅力的に描かれていると思いました。

竹下:やっぱりああいう家族がほしい正宗と、恋人になりたい紗霧というふたりの関係性は、『エロマンガ先生』の核になる部分だと思います。その関係性があるからふたりはくっつかずに、すれ違ったままラブコメを続けられるので、そこは意識して演出しているつもりです。

――これからも、そのもどかしいすれ違いが楽しめると。

竹下:そうですね。正宗が鈍感だからこそ、成り立つ場面はいっぱいありますよね。

――では、その点を踏まえて最終回に向けた見どころをお聞かせください。。

竹下:実は正宗と紗霧は、過去にWEB上で交流があったという話が原作にあるんです。アニメではそこが一番感動的なラストシーンになるような構成にしていて、そのための伏線を1話から少しずつ張っています。なので、そのラストに向かって、伏線が全部解決する瞬間が見どころになると思います。また、今後も女の子の可愛さは注力して作っているので、そこもぜひ注目していただけると嬉しいです。

――最後になりますが、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

竹下:自分が監督するときに一番心がけているのは、見ている人がビックリしたり喜んでくれることです。その想いを『エロマンガ先生』という作品を通して、自分が考えた仕掛けや演出を見て楽しんでいただければ、それが一番の喜びです。何も考えず、肩ひじ張らずにご覧ください!

[取材・文/胃の上心臓 編集・撮影/鳥谷部宏平]

 
作品情報

【放送情報】
TOKYO MX/とちぎテレビ/群馬テレビ/BS11:毎週土曜24:30~
MBS:毎週土曜26:58~
テレビ愛知:毎週火曜26:35~
※放送開始日・放送日時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承ください。

【スタッフ】
原作:伏見つかさ(電撃文庫刊)
原作イラスト:かんざきひろ
監督:竹下良平
シリーズ構成:高橋龍也
キャラクターデザイン:織田広之
総作画監督:岡勇一・小林真平
色彩設計:ホカリカナコ
美術監督:小川友佳子(KLAS)
撮影監督:青嶋俊明
音響監督:山口貴之
音楽:菊谷知樹
制作:A-1 Pictures
製作:EMP

【キャスト】
和泉紗霧:藤田茜
和泉正宗:松岡禎丞
山田エルフ:高橋未奈美
千寿ムラマサ:大西沙織
神野めぐみ:木戸衣吹
高砂智恵:石川由依
神楽坂あやめ:小松未可子
獅童国光:島﨑信長

>>TVアニメ『エロマンガ先生』公式サイト
>>『俺妹』&『エロマンガ先生』公式Twitter(@oreimo_eromanga)

(C)2016 伏見つかさ/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/EMP
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