映画『BLEACH(ブリーチ)』佐藤信介監督インタビュー

映画『BLEACH』佐藤信介監督インタビュー「そこにあるとしか思えないようなスーパーリアリズムを」

久保帯人氏による全世界シリーズ累計発行部数1億2000万部の国民的人気コミック『BLEACH(ブリーチ)』。その実写映画が7月20日(金)から全国ロードショーとなります。

『BLEACH』は、霊が見えること以外は普通の高校生・黒崎一護が、ある日突然現れた死神の朽木ルキアから力を与えられ、家族や仲間たちのために悪霊・虚<ホロウ>と呼ばれる悪霊たちと戦うバトルアクション。映画では、原作の「死神代行篇」のエピソードを中心に物語が展開します。

アニメイトタイムズでは映画『BLEACH』の公開を記念して、本作のメガホンを取った佐藤信介監督にインタビューを実施。これまで『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』など、CGを駆使した映画を制作してきた佐藤監督が描く実写版『BLEACH』の世界観とは?

実写ならではの“カタルシス”と“リアリティ”

ーー世界中で熱狂的なファンが多い『BLEACH(ブリーチ)』ですが、映画公開に向けた今の意気込みをお聴かせください。

佐藤信介:『BLEACH』はこれまでアニメ・舞台と展開してきましたが、今回の映画では、実写ならではのカタルシスをぜひ味わってもらいたいと思っています。

色々な『BLEACH』の描き方があったと思うんですけど、僕らとしては、それをある種リアルに描きたいと思ってやってきたので、そのリアリティを楽しんでもらいたいですね。

ーーもともと『BLEACH』を実写化しようという企画があったのですか?

佐藤:私のところに実写化の話が持ち上がってきたのは3〜4年くらい前で、企画段階から今回の「死神代行篇」までを撮ることは決まっていました。

ーー『BLEACH』を実写映画として描くうえで難しかったことはありますか?

佐藤:そもそもこの『BLEACH』の世界観をどこまでやるのかが一番大きかったですね。ドラマなら延々とやっていけるんですけど、この映画の2時間の中で世界観を描き、カタルシスをもたらすことを主軸に置いていたので、今回は一護とルキアに焦点を絞って描いています。

ーー原作者の久保帯人先生から実写化においての注文や要望はありましたか?

佐藤:キャラクター同士の距離感については守って欲しいという要望がありました。また、台本を読んでいただいて、久保先生ならではのセリフを書き加えてもらったりもしました。

朽木白哉役にミュージシャンのMIYAVIを起用した理由

ーー個性の強いキャラクターが多数登場する本作ですが、キャスティングの際に軸にしたことはありますか?

佐藤:黒崎一護役の福士蒼汰さんは最初から決まっていて、杉咲花さんも朽木ルキアのイメージに合っていてすぐに決まったんですけど、やはり朽木白哉やチャド(茶渡泰虎)の役はビジュアルの雰囲気もありますから、色々と練りながらやっていました。

単に「あの役者がやった」とか「オールスターキャスト」という感じではなく、得体の知れなさや、独特の雰囲気も持っている方がいいなとか。プロデューサーと一緒に考えていましたね。

ーー朽木白哉役にミュージシャンのMIYAVI(ミヤビ)さんを起用されたのは驚きました。どのような経緯で抜擢されたのですか?

佐藤:人間の世界に居なさそうな雰囲気というんですかね。他の役者さんを起用するという選択肢もありましたが、日本を離れてみたときに、何か独特のビジュアルを持っている人の方がいいなと思ったんです。

MIYAVIさんは『無限の住人』の音楽を担当していた縁もあって、プロデューサーもよく知っていて。アンジェリーナ・ジョリーの作品にも出演していたり、役者としての動きもされていたんですよね。

西洋人が考えるような独特のアジアの雰囲気もあって、加えて人間界に居なさそうな感じがあり。それで侍を演じるとなると適任だなと。

ご自身がギタリストという、技術に生きている人間なので、研ぎ澄まされている目つきというか、役者がただ役でやっているだけではないような感じがしたんです。

セリフを言ってもらえるよう頼んでみたら、気さくに演技をしてみせたビデオで送ってくださったんです。それも良くて、真摯で真面目な人柄に惚れまして。

あるものに熱を入れて取り組んでいるアーティストは、作品に対する真摯な向き合い方を持っているので、それでぜひMIYAVIさんに朽木白哉役をやっていただきたいなと思ったんです。

一護(福士蒼汰)とルキア(杉咲花)のビジュアルへのこだわり

ーー福士蒼汰さんとは『図書館戦争』以来のタッグとなりましたが、福士さん演じる一護にどんな印象を持たれましたか?


佐藤:福士さんとは前にやっていたこともあって、今回の作品が始まる前に『BLEACH』の世界観について少し話をしていました。

一護のキャラクターについても少しずつ話をして、『図書館戦争』で演じてもらったキャラクターとは全然違かったのですが、福士さんもすごく理解の早い方なので、役を作っていくところはそんなに時間がかからず出来上がっていったような気がしますね。

今になって思えば、一護は憎めないキャラクターというか。福士さんの持っているキャラクター性ともちょっと違うのですが、撮影も終盤になると、終わっていくのが寂しいというか。映画が終わっても、また会いたいなと思うキャラクターになったなと思っています。

ーー杉咲花さん演じる朽木ルキアのビジュアルは原作に寄せすぎずに作られていましたが、理由をお聴かせください。

佐藤:福士さんの方は髪の色も含めて、すごい打ち合わせをしながら完全に一護のビジュアルに寄せて詰めていったんです。

ルキアの方は、杉咲さんの持つ雰囲気やキャラクター性に寄せていったんです。そのままでもキュートに見えるような。非常に堅い役なんだけれど、愛らしく見えるような。そういうキャラクターにしていこうとやっていました。

ルキアは和装を着ていたり結構独特なんですよね。尸魂界(ソウルソサエティ)を代表していたりもするので、そういうところも兼ね備えた「和」な感じに寄せていったというのはありますね。

ーー佐藤監督の中で特にお気に入りのキャラクターはいますか?

佐藤:もちろん一護やルキアがすごく好きなんですけど、阿散井恋次がルキアに対して葛藤を持っているキャラクターじゃないですか。ただの敵ということではなく、いつももどかしい感じをルキアに対して持っている。それが憎悪に向かっていくような。恋次は脚本的にも掘り下げて考えていきましたね。

ーー本作では早乙女太一さんが阿散井恋次役を演じられていましたね。

佐藤:恋次を演じている早乙女さんを見ていると、異界のキャラクターを演じているにも関わらず、真剣な思いになっていくんですよね。それがすごく良くて。

尸魂界(ソウルソサエティ)という、遠い古から続いている悠久なる世界が彼の背後に感じられて。映画の中でもすごく魅力的なキャラクターになれたなと思いますね。


そこにあるとしか思えないようなスーパーリアリズム

ーー映画『BLEACH』の見所を教えてください。

佐藤:『BLEACH』の中では、日本刀を和装の死神達が持ち、虚(ホロウ)という巨大な魔物と戦っていきます。しかもそれが時代劇ではなく、現代のコンビニの前とかで行われているというのが、なかなか見たことがないビジュアルなのかなと思ったので、そこを徹底的にやりました。

公園や町中を舞台に大きな戦いが起こるというのが、実写『BLEACH』の大きな魅力になるんじゃないかと思っていて、そこに全精力を注いだという感じですね。


ーー空座町(からくらちょう)駅前での虚(ホロウ)との戦闘シーンは圧巻でした。CG制作でこだわった点はありますか?

佐藤:CGもアニメと同じで、コンピュータで自動でできる訳ではなく、人が一つ一つ作っていく地道な作業で、それを延々とやったという話なんですけど、それが「画として良い」ということではなく、「そこにあるとしか思えないようなスーパーリアリズム」になるまで試行錯誤しながら磨いていきました。

その果てにあの映像ができたんですけど、空座町駅前は架空の町なので、東京郊外の色々な駅前を取材して、その辺りの雰囲気や、町の大きさを参考にしながら絵を描いて、その図面を見ながら「ここから虚(ホロウ)がこう来て、ここが壊れて」という動きを設計してきました。

最初は日本の町中で侍たちが戦っている奇妙奇天烈な感じだったものが、だんだん町が破壊されて、荒廃してくることで死神たちの跋扈する世界に見えてくる。日常ではないものに見えてくる。だんだんと事態が深刻になっていく様を、そうした背景の変化とともに出していきたいなと考えてやっていましたね。

ワンカットに込められた尸魂界(ソウルソサエティ)への構想

ーー今回のストーリーは「死神代行篇」が中心となっていますが、「尸魂界(ソウルソサエティ)篇」などの続編は考えていますか?

佐藤:原作を読むと、実はここからが壮大な魅力を備えた作品になっているので、やはり尸魂界(ソウルソサエティ)篇がどんな感じかなと、妄想しました。

ただこの映画は、原作ファンの方もまだ原作を読んでいない方も、日本の方も海外の方も含め、色んな人に観てもらいたいなという思いで予算をかけて作りました。なのでやっぱり、その結果が出ないと続けていけませんね。

映画というのは“2時間の宝箱”なので、「まずはこの2時間の作品を」というのが私の中では大きいですね。

ーー今回の映画の中にはワンカットだけ尸魂界(ソウルソサエティ)が登場するシーンがありますね。

佐藤:あえて、ワンカットだけにしたんですよ。一瞬だけ見えたみたいな。死神達は現世に来て戦い、むしろこの人間界が、やがてまるで別世界のようになってしまうというのが今回のテーマだったので、不必要にたくさん見せるというようなことはしませんでした。

『BLEACH』のようなファンタジックな世界の舞台として、尸魂界(ソウルソサエティ)は非常に魅力的な空間で、近未来のようでもあるんだけど、江戸時代のような空気もあって。まさに見たことのない世界で、そこで色んな戦いが起こるじゃないですか。それはアクション映画としても魅力的な感じがするし、ワクワクしますよね。

ーー最後に、これから映画を観る方々へメッセージをお願いします。

佐藤:映画『BLEACH』には、実写ならではの面白さも込めました。これまで『BLEACH』の漫画、アニメ、舞台を楽しんできた方に、実写映画としての魅力が届くといいなと思います。

1時間40分に濃縮された映像を、全身全霊で作った作品なので、ぜひ大きなスクリーンで観てもらいたいなと思います。

ーー素敵なお話をありがとうございました!

インタビュー・文・撮影:吉野庫之介

作品概要

映画『BLEACH』
2018年7月20日(金)全国ロードショー!

<ストーリー>
高校生・黒崎一護はユウレイが見える霊感の持ち主。ある日、家族が人間の魂を喰らう悪霊・虚<ホロウ>に襲われてしまう。そこに現れたのは死神を名乗る謎の女・朽木ルキア。彼女は一護に究極の選択を迫る。このまま家族とともに殺されるか、世の中の全ての人を虚<ホロウ>から護る《死神》になるか――。《死神》として生きていく道を選んだ一護の先には、想像を超えた闘いが待ち受けていた。

<スタッフ>
監督:佐藤信介
脚本:羽原大介、佐藤信介
音楽:やまだ豊
原作:「BLEACH」久保帯人(集英社ジャンプ コミックス刊)
主題歌:ALEXANDROS「Mosquito Bite」(UNIVERSAL J/RX-RECORDS)
製作:映画「BLEACH」製作委員会
制作プロダクション:シネバザール
配給:ワーナー・ブラザース映画

<キャスト>
福士蒼汰
杉咲花
吉沢亮
真野恵里菜
小柳友
田辺誠一
早乙女太一
MIYAVI
長澤まさみ
江口洋介

映画「BLEACH」公式サイト
映画「BLEACH」公式Twitter(@bleach_moviejp)

(C)2018映画「BLEACH」製作委員会
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