映画
『インクレディブル・ファミリー』から見るピクサー・アニメーション・スタジオ進化の軌跡

『インクレディブル・ファミリー』から見るピクサー・アニメーション・スタジオの進化の軌跡とは!?

2018年8月1日(水)より日本公開となる『インクレディブル・ファミリー』。本作は『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』のピクサー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション20作目という記念すべき作品で、家事も育児も世界の危機も、驚異のスキルと家族の絆で乗り越える、この夏最高の一家団結アドベンチャーです。

ピクサー作品の映像は進化を続けており、アニメーションでは表現することが難しいとされていたことにも果敢に挑戦してきました。ここでは作品を楽しむ新たな視点を手に入れて貰えるよう、ピクサーの映像の軌跡を紹介しましょう!


 

髪の毛

技術の進化による貢献を受けたアニメーション表現は数限りなく存在しますが、その中でもスタッフ達から多く上げられるのは“髪の毛”の表現についてです。

特に長女ヴァイオレットの長いストレートヘアの髪をCGで表現することは難易度が高く、加えてヴァイオレットは体つきの小ささに対して頭部が大きいため彼女が動いたり振り向いたりする時の髪先の着地場所がとても少ない。この問題は本作からピクサーで導入された新たなツールのおかげで解消され、髪の描き方を向上させながらリアルタイムでその変化を見ることが出来るようになりました。

この技術は弟のダッシュの髪の毛にも使用されているのですが、彼にはまた違った問題がありました。彼のヘアスタイルは頭部の後方に髪の毛が流れる形で、尚且つブロンドの髪色をしています。頭部が大きい(毛量が多い)ことに加えてブロンドの髪は光を反射するので、その反射を表現しつつ、私たちが実際に目にする彼の髪色にするために彼のヘアスタイルを通過する光を制限する特別なルールを設ける必要があったのです。
 

キャラクターデザイン

『Mr.インクレディブル』はピクサーにとって初めての、すべて人間のキャラクターだけで構成された作品でした。しかし、ブラッド・バード達スタッフはあまり人間らし過ぎる様相で描きたくはないと考えていました。

バードは「キャラクターを単純化させてよりグラフィック的にすることに多くのエネルギーを注いだ。キャラクターの顔を真ん中に寄せれば寄せるだけディテール感が減ってゆくのです」と語り、そうして出来上がったデザインに満足しました。

しかし当時の技術では限界があり、そのデザインを完璧に表現は出来なかった。今作では技術の進化によって当時表現したかった様相を作り出すことに成功し、更に今作のキャラクター達の目は本物の人間の目をヒントにしたものになっています。技術の進歩によってかすかな輝きと生きている感覚を彼らの目に施すことができ、そのリアルさによって彼らの存在に説得力が増したのです。
 

群衆

群衆の存在によって場面のスペクタクル感を作り出すことができますが、1人のキャラクターをアニメーション作業で動かすのですら多くの時間がかかります。これが10人100人の群衆となれば普通のやり方ではなく技術的なトリックが必要となってくるのです。

この群衆の技術は『メリダと恐ろしの森』以来進化を続けており、新たに映画が作られるたびに向上しています。例えば群衆の中からカメラに近い者や流れるような動きをするスカートを履いているキャラクターだけを昇格させ、彼らにだけ細かなシュミレーションを与えることで、群衆の全体像をダイナミックに仕上げることが出来ます。
 

技術の進化

1987年からピクサーに在籍するスーパーバイジング・テクニカル・ディレクターのリック・セイアーはピクサーのアニメーション技術の進化について、「『Mr.インクレディブル』は映画全体にわたって人間のキャラクターをアニメートした初めてのことでした。当時やっていたことのほとんどはそれまでにやったことのないことであり、絶え間なく新しいチャレンジがありました。今回に関しては初めてやることがそんなにはないという利点がありました。スタジオが『メリダとおそろしの森』のために書いたアニメーション・システムや、『ファイディング・ドリー』から始まったレンダリングや照明のテクノロジーの変化もありました。今回はそのツールを使った経験のあるスタッフ達がいて、それは今回もっとクリエイティブになれることを意味しています。そして何かやるのに悪戦苦闘しなくてもよかった訳です。改良したり、コラボレートすることにもっとエネルギーを使うことが出来たのです」と語っています。

積み上げてきた技術と経験が高いレベルで組み合わさることで、本作のアニメーションが成立したことがよく分かります。
 

ピクサーの未来について

リックは「もっと多くのアニメーションが、ただのジャンル以上のものとして受け入れられることだと言えます。それは明らかにアニメートされるものだと考えるようなストーリーだけではなく、そういう考えにチャレンジするようなストーリーを語るということで、ピクサーが努力していることのひとつだと思います」と語ります。

本作でプロデューサーを務めたニコール・グリンドルはピクサーの歴史を振り返り、「私たちは映画を作ることがとても上手くなったと思うわ。ツールを使うのがとても上手い。そして私たちが一生懸命戦わないといけなかったことは、スタジオを守る為にクリエイティブに独立するという精神を保持すること。それはビジネスじゃない。今もそれはストーリーテリングのアートフォームなの。私達は新しい人々を連れてくる。そして、彼らにならず者のピクサーのアイデンティティを持ち続けて欲しいわ」とコメント。

この発言を聞いていた監督は「北カリフォルニア(ピクサー本社がある)は少しヒッピー傾向があるんだ」と語り、ニコールも「そうよ。フリーダム!」と返し、そのやり取りからもピクサーのクリエイティブに対する自由な気質を感じ取れます。
 
 
本作はこれまでに生み出されてきた様々なツールと、それを使ってきたスタッフ達の経験が合わさった技術の結晶と呼べる作品となっています。

映画に登場する何気ないシーンにも彼らが培ってきた技術が詰め込まれており、その技術の進化を可能にしたのはピクサースタッフ達の常に新しい表現や物語を求め続ける精神性です。是非この夏はスクリーンで本作をご覧頂き、ピクサーの歴史と進化を体感してください。
 

作品概要

8月1日(水)全国ロードショー!

<ストーリー>
彼らは、どこにでもいるフツーの家族...ではない!パパもママも 3 人の子供も、それぞれ異なるスーパーパワーを持ったヒーロー家族なのだ!超人的なパワーをもつパパ、ボブ、伸縮自在なゴム人間のママ、ヘレン、超高速移動できる長男ダッシュと、鉄壁バリアで防御できる長女ヴァイのオレット。さらに、スーパーパワーに目覚めたばかりの赤ちゃんジャック・ジャック。その潜在能力は、まだ未知数。家事も育児も世界の危機も、驚異のスキルと家族の絆で乗り越える、この夏最高の一家団結アドベンチャーが誕生した!

監督:ブラッド・バード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

『インクレディブル・ファミリー』ディズニー公式ページ

(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
おすすめタグ
あわせて読みたい

Mr.インクレディブルの関連画像集

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング