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ガルパンコミック作家座談会【後編】野上武志らが語るガルパンコミックの最新事情!

野上武志×才谷屋龍一×伊能高史×葉来緑×むらかわみちお×吉田創によるガルパンコミック作家座談会! より強く作家性を発揮できるようになったガルパンコミックの最新事情!【後編】

僕は『ガルパン』の絵に合わせているつもりなんですけど(むらかわ)

――この『プラウダ戦記』も驚きましたが、さらに衝撃的だったのが『樅の木と鉄の羽の魔女』です。

むらかわ:あ、僕のですか?

才谷屋:来ましたね!

――これまでの作品は、アニメの絵柄を引き継いだ上で作家のみなさんそれぞれの個性を出されているものが多かったのですが、凄くハイレベルな別の世界観が現れた感じがあったんです。衝撃度としては一番強かったですね。

むらかわ:そうですか? 僕は『ガルパン』の絵に合わせているつもりなんですけど。

才谷屋:あははっ!

むらかわ:鼻の峰を点にするとかも含めて、普段の絵柄とはずいぶん変えているつもりではいるんですけどね。ただ、自分がああいう絵なので、背景とかを描いていると段々自分の絵になっていっちゃうんです。

▲『樅の木と鉄の羽の魔女』第1話より
 
伊能:凄い繊細な作りですよね。どんな方なんだろうと思って、新年会でお会いしたら「あっ、こんな方なんだ!」と。
 
才谷屋:人間観察されてる(笑)。
 
むらかわ:一番年長者です、みたいな感じでね(笑)。
 

――みなさんはどんな印象でしたか?

吉田:いや、品のいいのが来たなって(笑)。

むらかわ:僕は『ガルパン』のマンガを描くぞという話になって、ちょうど大洗にいた時なんですけど、泊まった宿にコミックスとか同人誌がたくさん置いてあって、それを初めて眺めたんです。その時に、僕の絵柄に近いものは全然ないなとは思っていたんですね(笑)。

僕は実はあまり戦車とかミリタリーに興味を持たないで、いい歳になってしまった人間なので、いろんなことがわかってないんですよ。ガルパンマンガもほとんど持ってなくて、持っているのは野上さんのを何冊かと、『劇場版 Variante』の第1巻を持っているくらいで。

仕事が決まった時に、ほかの作品との違いをどう出そうかなというのを考えて、ほかの作品を読むのを止めたんです。だから今日、この場でガルパンマンガについて話し合おうというのに「ヤバい! みんなのマンガをほとんど読んでいない!」って。

――あははっ!

むらかわ:『リボンの武者』は野上さんのアシスタントに入る時に、直前の3号分くらいを読んで描くみたいな感じだったので、コミックスも僕が手伝った第10巻と第11巻を持っているだけなんです。

『劇場版 Variante』は本当に面白いなと思って第1巻を買ったんですけど、その後マンガを描くことになっちゃったので、とりあえず買わないで止めているという感じで。

あと、吉田さんのマンガは初回がウェブに載った時に、ちょうど僕の作品の予告も載るよということで読んだんですけど、以降は全然読んでいないんです。

吉田:それもやり方ですよね。

むらかわ:ただ、戦車のことはわからないので、どうしようと思った時に才谷屋さんが色々と相談に乗ってくれそうだったので、「一緒にお付き合いいただけませんかね?」という話で、一応版権表記も2人の名前で入れているんですよ。

今はすっかり寄りかかって、戦車のことは才谷屋さんに訊ねながらやっている感じですね。

才谷屋:今となってはすっかり詳しくなっているじゃないですか。

むらかわ:いや、全然わからなくて。最初は図書館に行って、世界の戦車的な本を探して「あ、戦車ってこういうものなんだ」って勉強してたんですけど、よく見たら斎木(伸生)さんの本だったんです。

一同:あははっ!

むらかわ:あとは、田村(尚也)さんと野上さんの『萌えよ!戦車学校』があって、それも眺めながら一所懸命勉強してボトムを少しずつ上げていったんですけど、やっぱりわからないことが多いですよね。

なので、何か困ると相談をしています。

伊能:作中の戦術論とかは?

むらかわ:それはもうお任せ。才谷屋さんからいただいたものを、ドラマの必要性に応じて相談しながら取り入れています。

伊能:アニメと作り方が一緒ですね。専門的なところは軍事考証の人に任せて、みたいな。

才谷屋:あぁ、そういう意味だったらそうかもしれないですね。

▲『樅の木と鉄の羽の魔女』第1話より
 

――こんなミリタリーの世界に「魔女」というファンタジー要素が入ってきたことにも驚きました。

むらかわ:伯爵高校を主人公の学校に選ぶという段階で、設定の鈴木貴昭さんが書かれた文章(『月刊戦車道』第6号「ライバルチーム研究」記事)の中に「珍しい学科として魔女学科がある」というのがあって、そこは使わなきゃいけないかなと思ったんですよ。

僕が昔、富士見書房で描いた最初の連載が、魔女を扱うマンガ(『Ringlet』)だったので、自分の中で「また魔女を扱う作品を描くのはどうなのかな」と躊躇はしたんです。

でも図書館でルーマニアの本を読んで、ルーマニアの魔女とは何たるものかを勉強していったら、僕が以前描いた魔女とは違う輪郭が見えてきたので、別のアプローチをしていけるかなと思ってプロットが組めたんです。

あとは、自分の中に「戦車道ってなんだろう?」という疑問がずっとあって。

僕は表千家茶道の名取なんですけど、「道」という以上はそこに考え方、理念というものがなんとなくあるんですね。たとえば、仏教の禅語であるとか、武士道的なものであるとか。

「じゃあ戦車道ってなんなんだろう?」というところと、「魔女の考え方ってなんなの?」という話も含めて、朧げに描いていければいいかなと目論んでいます。

吉田:戦車道っていうのが、戦車道全体なのか、「西住流とは? 島田流とは?」みたいな話になるかで、またそれぞれ違ってきますよね。

むらかわ:そうなんですよね。表千家、裏千家みたいな。

吉田:空手道全体と、空手における極真と松濤館の違いみたいな話というか。私の野球道でもいいんですけど、「道」は流派じゃなくて、スタイル的なものだと思うんですよ。

むらかわ:自分なりに語るのか、野上さんのマンガにあるように「実は朧げなもので」としていくのかというのはあるんですけど、そういうところを魔女の視点から出していければいいのかなとは思っています。

全話のプロットはもう組んであって、才谷屋さんの戦車戦のプロットと併せてドラマを作っていくんですけど、描き進めていくと自分のやろうとしていたことに曖昧な点が出てきていたので、先のことはもう少し練らなきゃダメかなとは考えているところですね。

遠藤:最初に貰った文字プロットには、ルーマニアのことだけびっしり書いてありましたよね。

むらかわ:図書館で調べたばかりだったから。

遠藤:ルーマニアの文化とか、お国柄みたいなものがずら~っとあって、才谷屋さんと一緒に見て「……なんか凄そう」っていう話をしたのを憶えています。

才谷屋:そうでしたね(笑)。

むらかわ:キャラクター主義という考え方と、ストーリー重視という手法があって。キャラクターを動かすことを主体にするより、もう少し別のところに物語の流れを作ってみたいと思っていたので。その辺もあって、ああいうマンガになっているんです。

動的でもなく、情緒的でもなく、じわじわと進んでいくという感じになっているんですけどね。あまりお話が進んでいないように見えて、プロットの半分くらいまでは来ているんですよ。

▲『樅の木と鉄の羽の魔女』第10話より
 

――その匂いがガルパンコミックの中で、ほかとの違いとして際立っていました。

むらかわ:多分、みなさんの作品を読んでいないからだと思いますね(笑)。

伊能:最初は青師団高校でやるという話を聞いていたんですけど。

むらかわ:そうなんですよ。最初は青師団でやろうと思っていたら、色々とありまして。

伊能:青師団で通っていたら、話の展開的にはガラッと違うものになっていたんですか?

むらかわ:やろうと思っていた大筋は、実はあまり変えていないんですよ。

伊能:あっ、そうなんですか。

むらかわ:ただ、語り口はかなり変わっていたと思いますね。

葉来:青師団だったら胸に目が行って話が入ってこないですよ、みんな(笑)。

むらかわ:あの制服を変えようかという話も考えていたんですよ。あれで行くのであれば、主人公はあの服にコンプレックスを持っているみたいな話にするとか。

青師団でやろうかなと思っていた時は、バルセロナの思想的背景をどうやって形にしていくのかを考えていて。

野上:スペインの独立問題に踏み込んでいく感じ?

むらかわ:やり過ぎると政治問題に絡むようなところに行きそうだったので、背景にあるキリスト教的なものとスペイン文化的なものの中で、「燃え上がる情念と冷静なるもの」みたいなものをやろうと思ったんですけど、それは流れたので、じゃあ魔女っ子だなと。

吉田:ミリタリーと魔女って、ヒムラー辺りのことを考えたら、なくはないですよね。

伊能:親和性はありますよね。

葉来:二次大戦ドイツはオカルトの宝庫なので、よく歴女チームでネタにしてました(笑)。

吉田:最終的には加藤保憲(『帝都物語』)と戦うんです!

むらかわ:でも、あまり神秘主義にはしないようにしようと思っていて。魔女の存在というものが一般的にどう見られているか、学校の中ではどういう感じなのかを含めて、神秘主義からは離れていこうと思っています。

▲『樅の木と鉄の羽の魔女』第10話より
 
むらかわ:スポーツが得意とかいうのと同じように、タロット占いが得意みたいな感じで。魔女が抱えている精神的なバックボーンが何なのかというところが鍵になっていくと思うんです。
 

――戦車道とは少し違うところに挑戦していけるというのも、第三世代の特徴かなと思います。

むらかわ:結局、畑がだんだん耕されてきたんですよね。

――そうです。第二世代で可能性を広げてきたから、これができるようになったんだろうなと。

むらかわ:お料理マンガもありますしね。

『ガールズ&パンツァー 最終章 継続高校はらぺこ食事道』
 あしもと☆よいか/原作:ガールズ&パンツァー 最終章 製作委員会
 株式会社KADOKAWA 電撃コミックスNEXT
 第1巻好評発売中

――また『最終章』でも新要素が次々と出てきましたね。

むらかわ:コアラの森学園はやりたいですねぇ!

才谷屋:ちょっとブッ飛び過ぎてるけど(笑)。

遠藤:結果として“脚マンガ”になって良かったじゃないですか。

▲『樅の木と鉄の羽の魔女』第9話より
 
一同:あははっ!
 
むらかわ:僕、脚はあんまり好きじゃなくて。
 
吉田:なんだとぅ!? あんな脚を描いておきながら!
 
むらかわ:脚は苦手なので、いつも悩むんですよね。どうやったら、ちゃんとしたお尻に見えるのかなって。僕はおっぱいが好きなんですよ。

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