『HUMAN LOST 人間失格』木﨑文智監督＆コザキユースケさんインタビュー｜参加のきっかけは15年前に交わした約束だった!?

2019年11月29日より全国公開中の映画『HUMAN LOST 人間失格』。

本作は、太宰治の不朽の名作「人間失格」を原案に、SFやヒーローのエッセンスなどの大胆なアレンジを加え、木﨑文智監督、コザキユースケさん（キャラクターデザイン）、冲方丁（ストーリー原案・脚本）さんなど、錚々たるスタッフ陣とポリゴン・ピクチュアズの手によってアニメ映画化された作品です。

現在アニメイトタイムズでは、その公開に先駆けて実施された、全4回に渡る関係者限定試写会のレポートを掲載していますが、その第1回目の試写会終了時には、木﨑文智監督とキャラクターデザインを務めたコザキユースケさんのインタビューも実施。

『HUMAN LOST 人間失格』の制作秘話から、今回のトークテーマになっていたアメコミに関する話題まで、様々なお話を伺うことができました。

関係者試写会密着レポート&インタビューはこちらから！

◆第1回「ダークヒーロー特集　最強MARVELから大ヒットJOKERまで」
◆第2回「CGアニメの最前線」
◆第3回「文学とSF」
◆第4回「CGアーティストの今と未来」

◆アニメ映画『HUMAN LOST 人間失格』冲方丁さんインタビュー

美子のデザインにはある実在のモデルの存在が

――本日はお疲れ様でした。試写会を終えての感想をお聞かせください。

木﨑文智監督（以下、木﨑）：トークつきの関係者試写というものをやったのが初めてでした。ただただ皆さんに来ていただいたことがありがたいというのが、素直な心境です。

――30分のトークはあっという間でしたね。少しこの部分を補足しておきたいということはありますか？

コザキユースケさん（以下、コザキ）：語り尽くしたかなという感覚もあるのですが、そういえばヒロイン（美子）のデザインに実在のモデルがいるという話はしていなかったですね。

――そうだったのですか!?　どなたかお聞きしても大丈夫でしょうか。

コザキ：ええ。今回は原作が『人間失格』ということで、昭和の女優さんをモデルにしようと考えていたのですが、僕の中で昭和の大女優さんというと原節子（※１）さんなんです。

というのも原節子さんを芸能界に入れて面倒を見たりしていたのが、僕の祖父の従兄弟だったという縁があって、いろいろ話も聞いていたんです。

なので「昭和の女優」といったら原節子さんだというイメージがあって、美子にはそうした要素も反映させています。

※１：原節子
戦前から戦後を代表する日本の大女優。世界的にも有名な映画監督・黒澤明の『わが青春に悔なし』、小津安二郎の『東京物語』をはじめ、多数の映画に出演。役者盛りの42歳で突如として銀幕を去り、それ以降は表舞台に出ることはなかった。

――コザキさんは、本作にはどういった経緯で参加されたのでしょうか？

コザキ：実はプロデューサーの一人が、僕の小学校の時の同級生なんです。僕がキャラクターデザインをした『スピードグラファー』（※GONZO制作のテレビアニメ。2005年放送）という作品で再会した時「いつかコザキに企画を持っていくよ」と話していて。

それから15年くらい経ってから、もってきてくれたのが『HUMAN LOST 人間失格』だったんです。結果として15年越しに約束は果たされたと（笑）。

――最初にこの企画の話を聞いた時はどう思われましたか？

木﨑：正直、難しいだろうと思っていました。まず原案の『人間失格』が、万人が楽しめるエンターテインメントからは離れたものだという印象がありましたから。

ただ、難しいからこそ、逆にチャレンジすることに意義があると思いましたし、コザキさんの素晴らしいデザインが上がってくるのを見て「これはいけるかもしれない」と気持ちが前に進み始めていたのを覚えています。

コザキ：僕は最初に企画書をもらった時は、「陰鬱なテーマが来たなぁ」と（笑）。この物語は、どうあがいてもハッピーにはならないだろうなと思っていましたね。

木﨑：ただ実際には、暴走族がヒャッハーしている世紀末的なノリがあったり、結果的にはエンターテインメント性の強い、楽しい作品にできたのかなと（笑）。

テーマがテーマだけに、事前に皆が想像するような暗い作品にはしたくなかったんです。