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『ふたりはプリキュア総集編 』本名陽子、ゆかな、西尾監督、鷲尾P対談

TVアニメ『ふたりはプリキュア』の声優・本名陽子&ゆかな、西尾大介監督、鷲尾天プロデューサーがクロストーク「子どもたちに嘘はつきたくない」

「子どもに嘘をつきたくない」

──収録後は必ず食事に行ってそのなかで生まれたエピソードも多かったそうですね。

西尾:毎週行って話してましたね。

本名:よほど予定が立て込んでない限りは毎回話していました。

ゆかな:私、次の現場が26時入りのときでも行ってたくらいでしたから(笑)。

西尾:そうだったねぇ。当時は新宿のスタジオで録っていたんですが、その後(ゆかなさんは)別の現場にナレーションを録りに行って、また戻ってくるんですよ。終電前で帰る人たちではなかったから「じゃあ戻ってきまーす」と。

本名:話が尽きなくて。

ゆかな:その8割以上の会話は作品のこと、仕事のことでしたよね。

──さきほど「私の靴下はちょっとクサイ。なんちゃって」というセリフは当日に付け加えられたとのことでしたが……そういうことはよくあったんでしょうか。

西尾:当日まで書くことはよくありましたね。

ゆかな:当日“まで”じゃない。当日に、でしょ?(笑)。

西尾:はい、その通りです(笑)。

鷲尾:シナリオの段階で違和感がある言葉を、意図が伝わりやすくする作業です。そしてコンテになったときも「絵になると印象違うね」と言葉を変えたりするんですが、最後の最後に物凄く気になる場合があるんです。「ああ、しまったコレ音にするとダメだ!」と。

そうすると西尾さんが突っ伏して考えるんですよ。(演者に)「テストをとりあえずやっててください」と言ったままずっと考えてる。

ゆかな:録る直前まで「もっといいセリフはないか」と頭を捻られていましたね。腑に落ちるセリフを探していたというか……。

西尾:毎週追い詰められてた。「もっといいセリフ」というと、より良いものという印象を受けるかもしれませんが、そうではなくて。自分が “嫌ではないほう”を取るために毎回毎回直してました。テキストに納得できないことってたくさんあるんです。

例えばセリフのなかに「守る」という言葉が出てくることがありますが、この状況だったら「守る」は使ってもいいけど、ここでは使いたくない。そういった線引きが自分のなかであったんですね。戦争だって守るためにあるものじゃないですか。だから、(シーンによっては)使いたくない。

“家族”という言葉もそうです。一方的すぎると押しつけがましく感じてしまう。僕は片親で育ったんですが、母親が家族愛をテーマにしたドラマを見ながら「家族みんなが揃ってることが一番幸せというけど、じゃあうちはどうなんだ」ってよく言ってたんです。僕はその母親の感覚が正しいと思っていたんですね。片親の子ども、血の繋がっていない家族もいる。使い方によっては違和感や誤解を与えてしまうんです。それはずっと思っていたことでした。

鷲尾:私はプロデューサーという立場だったので「子どもに見てもらえるといいですね」と言うんです。そしたら西尾さんは「子どもは無条件で見てくれるから、だから怖い。我々が表現していることがそのまま伝わってしまう」と。

例えばなぎさとほのかが食べ物を残すシーンがあったら、それを見て子どもは食べ物は残して良いものだと思ってしまう。そういうことを西尾さんが言っててハッとさせられました。それ以降、私もそういったことも意識するようになりましたね。

西尾:決して子どもたちを下に見ているわけではないんですけど、子どもは本当によく見てくれるんですね。そういった関係性がある中で、子どもに嘘をつきたくないんですよ。僕の母親が言ってたような愚痴の……本当の意味を伝えないとダメだと。そこに蓋をして、通りの良い美辞麗句でやって押しつけになっていくのは嫌だなぁと。

自分たちの誠実さ、真心をなんとか伝える方法を考えて、見つけて、流されない言い方の状態で伝えないと子どもに失礼だと思っていました。

──真摯に向き合い、誠実さ、真心を伝えてきたからこそ、プリキュアの物語は完成したんですね。そしてその次に繋がっていった。

鷲尾:きっと少しでも手を抜いていたら、姪御さんも覚えてくれてなかったと思う。

──総集編を見ることで日常の尊さ、友情の大切さといったものも、改めて感じてもらえるんじゃないかなと思います。

ゆかな:伝わってる……!

鷲尾:伝わってますね(笑)。よくできていますよね、この総集編は。





4人が考える“プリキュア”とは

──そろそろ終わりのお時間になってしまいました。最後に、よく聞かれる質問だとは思うのですが、今の皆さんにとって“プリキュア”とはどんな存在かを教えてください。

鷲尾:今の気持ちとしては“出会い”です。作品に対する出会い、関わってくれた人たちとの出会い、作品を観てくれた子供たちとの出会い。今日の答えはそれですね。明日には変わるかも(笑)。

西尾:じゃあ明日電話して!

一同:(笑)

ゆかな:今日のめいいっぱいの答えはこれです! これが全員分の答えです。

──分かりました。長々とありがとうございました。

西尾:いや長々と話したのはこっちですよ(笑)。

ゆかな:(インタビュアーの手元のメモや資料などを見て)たくさん調べていただいたようで、ありがとうございます。

鷲尾:ありがとうございます、本当に。

──とんでもないです。色々な記事を改めて読み返したのですが……当時のインタビューを見つけられなくて。

本名:そうなんですよ!当時そういう機会があまりなかったんです。

西尾:アニメの記事としてはなかったですね。

──やっぱりそうだったんですか。それに今驚きました。

鷲尾:16年前は子供向けのアニメーションはなかなか取り上げてもらえなかったんです。当時は今と空気感が違ったんですよね。

西尾:キャラクターを演じている人(声優)が前に出るということは少なかったんですよね。

本名:だから表に出るということはほとんどなかったんです。舞台挨拶も映画が初めてでしたし。

ゆかな:それも“押しかけ舞台挨拶”だったんです。私たちに何かできることがあれば行きますって。

鷲尾:大阪まで行きましたもんね。

本名:最初はプリキュアというワードが世間に浸透するのにものすごく時間が掛かっていたように感じます。子どもたちには早かったんですけどね。それで実際におもちゃ売り場に行って、みんなに受け入れられているのか見に確認しにいったこともありました(笑)。

出演者、スタッフで「あのおもちゃ売ってたよ!」「七夕の短冊にプリキュアになりたい」って書いてあったよ~」とか、そんな話を共有して。『ふたりはプリキュア』のいわゆる着ぐるみショーがあるときは、親子連れに混じりながら、私たちも見に行きました。いちばん後ろから子どもたちが喜んでいる姿を見て、ああ本当に画面の向こうで待ってくれているんだって喜びをかみしめていましたね。

ゆかな:マーケティングの人でもなく、なんの肩書もないのに(笑)。みんな自主的にです。

──その熱いプリキュアイズムは『スター☆トゥインクルプリキュア』のキュアスター演じる成瀬瑛美さんたちからも感じます。ずっと受け継がれてきているものなんですね。もっとお話を聞きたいところなのですが……。

ゆかな:それでしたら是非また次回もお話させてください。

西尾:喋れと言われたらいくらでも喋りますよ(笑)。

──ぜひ宜しくお願いします!ありがとうございました。

[取材・文:逆井マリ]


商品情報

『ふたりはプリキュア総集編 ~ぶっちゃけ、ありえな~い!? 2020edition~』

 
発売日:2020/02/26/価格:9,680円(税込)

全49話を新規編集。
「プリキュア」シリーズの原点を凝縮した総集編がついに登場。
数々の名場面をたっぷり盛り込んだ入門編にして決定版!

“レジェンド”としてファンの熱い支持を集める「初代プリキュア」。
かつて視聴していたファンも、未視聴のファンも、手軽に作品を堪能でき、
かつ数々の名場面はたっぷりもりこんだ入門編であり決定版。

ストーリー
スポーツ万能、勉強嫌いで無鉄砲だけど人一倍正義感が強くクラスでも人気者の美墨なぎさ、成績優秀で常にクラスのトップだが、実は天然ボケの雪城ほのか、ふたりは同じベローネ学院女子中等部の2年生。なぎさとほのかはそれぞれ不思議な生き物メップルとミップルに出会う。

邪悪なドツクゾーンがメップルたちの故郷・光の園を襲撃し、地球に逃れてきたのだった。

そして、メップルとミップルによってなぎさとほのかは変身する能力を与えられ、戦うことに…趣味も性格も違うふたりは力を合わせてドツクゾーンから送り込まれてくる邪悪な敵に立ち向かう!!

キャスト

美墨なぎさ/キュアブラック:本名陽子
雪城ほのか/キュアホワイト:ゆかな
メップル:関智一
ミップル:矢島晶子
ポルン:池澤春菜

収録内容
● 本編
・Chapter1:なぎさとほのか編
・Chapter2:キリヤ編
・Chapter3:イルクーボ編
・Chapter4:新たな闇の戦士編
・Chapter5:光と闇編
● 映像特典
・キャスト座談会
・「DANZEN!ふたりはプリキュア」フルサイズ名場面ムービー
・変身&技シーン集




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