
25周年を迎えた『しゃばけ』がアニメで広げた世界――原作・畠中恵×一太郎役・山下大輝が語る、江戸妖怪推理帖の魅力
大ベストセラー江戸妖怪推理帖がテレビアニメ化。10月から放送されたテレビアニメ『しゃばけ』が最終回を迎えたタイミングで、原作の畠中恵さんと主人公・一太郎(若だんな)を演じた山下大輝さんとの対談が実現。アニメ『しゃばけ』について振り返っていただきました。
メディアミックスは、それぞれの立場で作ったほうが上手くできる
──アニメ化の話があったときの率直な感想をお聞かせください。
畠中恵さん(以下、畠中):すごく嬉しかったんですけど、今まで何回か話はあったのですがテレビアニメ化までは至らなかったので、本当にアニメ化するのかな?というのが素直な感想でした。
山下大輝さん(以下、山下):僕は『しゃばけ』に携わることになったときに下調べをしたんです。これまでドラマやコミカライズなど、いろんな展開をしている作品だと感じたので、新たにアニメ化されるならば、どんな風に『しゃばけ』を描くんだろうと、めちゃくちゃ楽しみでした。台本を読ませてもらったときも、また新しい魅力がある作品だと感じたので、出会わせてくれてありがとうございます!と思いました。
──25周年イヤーというタイミングでもありますが、こうやっていろいろな展開がされている『しゃばけ』は、畠中さんにとって、どんな作品になっていますか?
畠中:そうですね。この作品がデビュー作だったので、もうほとんど作家人生の時間そのもの、25年分の作品です。
山下:すごいですよね。デビュー作が、今もずっと続いていて、こんなにも愛されているって、シンデレラストーリーみたいです。でも、きっとそこには努力もたくさんあっただろうし、僕たちからは見えていない部分もあるんでしょうけど、改めて、25年続いているというのは、すごい作品だと思います。僕はまだ25年も声優を続けられていないので、大先輩です(笑)。
畠中:そうなんですか? もうずっとやってらっしゃるような感じがしていました。
山下:全然まだまだで、13年くらいなんです。だから、25周年というのは憧れます。
──こうやって長く愛されている理由は、どんなところだと思いますか?
畠中:そうですね……『しゃばけ』の主人公を決めようと思ったときに、若だんなの立場を、今の年齢の子供たちと同じ設定にしようとしたんです。そしたら江戸時代だと、結構立場的に難しかったんです。大店(おおだな)の坊っちゃんくらいにしないと、10歳ちょっとで奉公に行ってしまうので、今の子供たちに追いつけないみたいな感じで。なので、そのくらいお金持ちになっちゃいました。
──江戸時代にしたというのは、何かきっかけがあるのでしょうか?
畠中:この作品は投稿作になるんですけど、1作目は現代物を書こうとしていたのですが、今ひとつ上手くいかなかったんです。だから、それは少しあとにしようと考えて、じゃあ、時代物を書いてみよう!と思ったので、あまり深くは考えていなかったような気がします。ただ、時代物が好きだったので、そのまま書き始めた感じでした。
山下:時代が違うことによって、常識も違ってきたりしますよね。それこそ『しゃばけ』の時代の当たり前が、今の時代の当たり前に当てはまらない部分がとても多くあって、昔の子供たちって、こんなにしっかりしていたんだなぁと、演じていてハッとしました。
──そういう意味では、主人公の年齢設定や時代感は、長く続いた理由のひとつなのかもしれません。また、町の風景が浮かぶような情景描写も素晴らしいと思ったのですが、時代物は、そのまま書き始めて書けるものなのですか?
畠中:もちろん書くとなったらいろいろと調べましたけど、私が習っていた先生が時代物を書いてらっしゃる方だったので、抵抗感はあまりありませんでした。ただ、今回のアニメでは、江戸の町がすごくきれいに描かれていて、動いている映像で見ると、いいなと思いますね。もちろん、小説を書いているときも、自分で想像はするのですが、実際に画になっているのを見るのとは全然違うので……。
山下:昔の日本橋とか、若だんなが住んでいる場所はどうでしたか?
畠中:きれいだなぁと思いました。暗くなるとこんな感じなのかとか、頭で思い描いていたものだと、どうしてもはっきりしないところがあるので、そこを若だんなが歩いてる!と思っていました(笑)。
山下:そうなんですね! 僕は先生の中で鮮明にイメージがあるのかと思っていたんです。たとえばここはこのくらいの長さで、門構えはこうで!とか。
畠中:全部資料を集めて、特に画像になっている資料はとてもありがたいのですが、それが全部構築されてひとつの世界になっているとなると、また全然違うんです。
山下:アニメになって新たに知る細かいディテールとかもあったりするのですか?
畠中:実際に暖簾をくぐったりするところも、暖簾の資料は見ていても、実際にくぐっているシーンとは全然違うんですよね。だから、あぁいいな、きれいだなと、嬉しく思いながら観ていました。
山下:先生がアニメに対してこだわったポイントがあったのかどうかが勝手に気になっているんです。たとえば廻船問屋兼薬種問屋である長崎屋の、ここの描写は絶対にこだわりたいとか。
畠中:そこは、すごくよく調べてあるなと思いました。薬研とか秤とか、棚の感じとか。あと、卯建(うだつ)も上がっていましたよね。屋根の上に卯建が上がっているというのは、お金持ちだということなんですよ。
山下:そういったところも、すでに出来上がっていたんですね!
畠中:皆さん、すごいなと思うくらい調べているなと思いました。アニメには、しゃぼん玉を吹くシーンが出てくるんですけど、わりと江戸時代にしゃぼんが売っていたのをイメージしていない人も多いと思うんです。でも、実際に売っていたし、とてもきれいだなと思いながら嬉しく思っていました。
──今の話ですと、メディアミックスする際は、あまり要望を出さないというスタンスなのですか?
畠中:メディアミックスのときは、なるべく自由に作っていただきたいと思うんです。それが一番楽しくできると思うんですね。ああしなきゃダメだ、こうしなきゃダメだと言われてしまうと、ちょっとカチカチになっちゃうと思うんですよ。メディアミックスは本とは違いますし、作品によって尺も違いますよね。なので、それぞれの立場で作ったほうが、上手くできるのではないかと思っているんです。
──それは、過去の経験からなのでしょうか?
畠中:昔ちょっと漫画を描いていたんですけど、そのときにいろいろと制約があるのが、私自身苦手で……。そのときの思い出から、なるべく自由なほうが楽しくできるに違いないと思っているんです。
──制作サイドとしても嬉しいことかもしれないですね。
山下:原作へのリスペクトという部分はもちろんありますから、それにプラスして、アニメならではの表現の仕方もあると思うので。アニメでしか見られない世界観の広がり、色みや音など、そういうアニメのオリジナリティも含めて、『しゃばけ』の世界を広く観ていただけたら嬉しいなと思います。

















































