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『チェンソーマン レゼ篇』「レゼダンス」はなぜ人気? 現役アニメーターが解説!

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の「レゼダンス」はなぜ人気? なにがすごい? 現役アニメーターだからこそわかるすごさを解説!

大ヒット上映中の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』。タイトルにもあるレゼの可愛さや、ど迫力のアクションシーンでも話題となっている本作ですが、映画館の外でも話題が登場しました。

それは、12月12日に主題歌を担当している米津玄師さんの公式Xにて、レゼが「IRIS OUT」に合わせて踊るスペシャル動画です。本動画はMAPPAが制作しており、「レゼダンス」としてSNSで大話題となりました。

この投稿は30万リポスト、163万いいね、1.9億インプレッション(2025年12月26日現在)というとんでもない話題に。

なぜここまでの話題になったのでしょうか。今回はアニメ業界に携わる現役アニメーターの目線から「レゼダンス」の魅力をご紹介します!

 

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チェンソーマン レゼ篇
悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」となり、公安対魔特異4課に所属するデビルハンターの少年・デンジ(戸谷菊之介)。憧れのマキマ(楠木ともり)とのデートで浮かれている中、急な雨に見舞われ、雨宿りしていると偶然“レゼ”(上田麗奈)という少女と出会った。近所のカフェで働いているという彼女はデンジに優しく微笑み、二人は急速に親密に。この出会いを境に、デンジの日常は変わり始めていく……作品名チェンソーマンレゼ篇放送形態劇場版アニメシリーズチェンソーマンスケジュール2025年9月19日(金)キャストデンジ:戸谷菊之介ポチタ:井澤詩織マキマ:楠木ともり早川アキ:坂田将吾パワー:ファイルーズあい東山コベニ:高橋花林ビーム:花江夏樹暴力の魔人:内田夕夜天使の悪魔:内田真礼岸辺:津田健次郎副隊長:高橋英則野茂:赤羽根健治謎の男:乃村健次台風の悪魔:喜多村英梨レゼ:上田麗奈スタッフ原作:藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載)監督:𠮷原達矢脚本:瀬古浩司キャラクターデザイン:杉山和隆副監督:中園真登サブキャラクターデザイン:山﨑爽太 駿メインアニメーター:庄一アクションディレクター:重次創太悪魔デザイン:松浦力 押山清高衣装デザイン:山本...

 

まさかの30fpsの噂のホントのところ

SNSで「レゼダンスが30fpsで制作されている」という噂を目にした時はもはや驚きでした。fpsはframes per secondの略で、1秒あたり何枚の画像が入るかという単位です。アニメーション制作では24fps(1秒あたり24枚)で動かしています。

24コマとも呼びますが、コマ送りをすると同じ画が続くことがあります。これは24枚全てを描いているのではなく、実際は8枚で3コマずつ入れて動かしているからです。芝居によっては12枚2コマずつ、途中1コマや4コマを差し入れて動きにバリエーションを作ります。

かつてのディズニーは『白雪姫』で「フルアニメーション」を手かけており、24コマを全て描きました。これにより、いわゆる「ぬるぬる動く」が実現されています。しかしアニメーションの産業化が進み、枚数を制限して工夫することにより生まれたのが「リミテッドアニメーション」です。

fpsが多いほど枚数も増え、情報量が多くなります。実は実写映画も24fpsを起用し、海外番組でも25fpsでシネマチックな速度を表現しています。60fps対応のゲームだとリアルタイムでキャラクターを動かす速度のように思えますが、60枚も入っていますから、キャラクターが反応する動きの情報量が多く、なめらかで物理的に敏感な操作感になります。30fpsというと、テレビ放送やYoutubeで使われる標準的な映像速度です。我々が最も見慣れた速度からfpsを変えたら非日常体験の出来あがりです。

さて冒頭に戻りますと、私はレゼダンスが1秒あたり30枚の単位で制作されているという噂に驚いているのです。アニメーターにとって30fpsで動かすというのは、暗算ができない計算式を見て、答えが見つかるまで直感を頼りに試行錯誤しなければなりません。我々が目にするダンスの映像は30fpsですので、24fpsでダンスのアニメーションを描くと枚数制限によりキャラクターが可動できる幅も狭くなります。

仮説ですが、おそらく「ロトスコープ」という実写映像をなぞって描く方法を取ったと考えられます。フルアニメーションにすると、同じ技法で描かれた『白雪姫』みたいにぬるぬる動いてしまうので、30fpsでレゼを描いたことで視聴者に親しみのある速度間を与えたのだと思います。しかも、そこにリミテッドアニメーションで計算したことはもはや凄腕の寿司職人の技です。

 

贅沢なフォロースルーとオーバーラップアクション

レゼの「フォロースルー」と「オーバーラップアクション」は何度も見たいというのが私の初見的な感想でした。前者は慣性を表現するアニメーション技法であり、外部の力が働かなければ対象の運動状態は変わらない法則に従います。後者は対象の動きが変わったり止まったりした時の反動の動きです。

レゼが動くと衣装と髪の毛が揺らぎ、フォロースルーとオーバラップアクションを30fpsで表現すれば情報の幅も広がります。遠心力によって、レゼにくっ付いているほど対象の動きが小さく、レゼから離れるほど対象の動きが大きくなります。

絵と絵の間の「中割り」では動きが小さいほど描きやすいので、最後に動きが大きくなる対象の位置を描いてあげることで動きの設計は失敗しにくいです。ショートパンツの厚みと、ダンスの動きに追っかけるリボンと髪の毛の描写に作画スタッフの愛を感じます。

 

歌詞と芝居がマッチしすぎている

上記でも大変な作業であることがわかりますが、歌詞に合わせて芝居を入れる余裕を見せてくれているのが作画スタッフの最終兵器です。

歌詞冒頭に合わせて「I」のように腕を伸ばし、「アイリス」を比喩してカメラのレンズの中にペロっと舌を出すレゼ。「どうしよう」に手をかわいく振るレゼ。「ザラメ」にジャケット写真と同じく指を口の中に入れて甘い魅惑のポーズをとるレゼ。もはやファンサービスな、首元のピンを抜く仕草のレゼ。「溺れ死にそう」に映画で見たプールの中のレゼ。「今この世で君だけ」で約束事のように2本の小指を愛おしく見せるレゼ。そして何回か片目に手を丸めて覗く仕草が、私をカメラで撮っているあなたの眼線だと伝えたいそうなレゼ。

レゼらしいフリの数々に悶絶した視聴者も多いはずです。しかも手の芝居は大変難しく、レゼのジェスチャーは顔の表情に負けないくらい主役的に動いています。歌詞に乗った踊りの豊富さが、短い尺の中でレゼの贈り物を惜しみなくたくさん貰った気持ちになります。このこだわりはなかなか出せるものではありません。

といった具合に、アニメーターの私から見てもこだわりがひしひしと伝わってくるほどのクオリティです。もし解説で気になったら、もう一度「レゼダンス」をチェックしてみましょう!

 
[文/朴 智銀]

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