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『Tokyo 7th シスターズ(ナナシス)』茂木伸太郎インタビュー|0.7、5.0を振り返る

『Tokyo 7th シスターズ』茂木伸太郎総監督インタビュー|“真正面から愛を描いた0.7”“未来に恋する5.0”はどうやって生まれた? そして今後の展開、長編アニメ化など語る。

本当の意味での“素敵な大人”

――では、話を『5.0』に進めましょう。

茂木:まず、こういうお話が個人的に大好きなんです。ロマンチック過ぎるかもしれませんが、作っていて本当に楽しかったし、気持ちよかった。「なんでそんな未来なの? 『4.0』、『0.7』が終わってすぐの話でいいじゃん。ご褒美なんでしょ」と思われるかもしれませんが、ご褒美ってそんな簡単に手に入らないよ、と僕は思っていて(笑)。それはもう僕の人間性ですね。経験則とも言いますが。

――(笑)。

茂木:あとからついてくるもの、今選んだものが間違いや失敗だったりするかもしれないけど、「いつか良い未来に変わると信じて頑張る」ことが、良いことなのでは? と思って生きているので、今回は未来の話なんです。そんな短絡的に幸せなんか手に入らないし、そうやって手に入れた幸せなんて大したことないんじゃないかと思っています。

それこそ、苦しんだ末に選んだ未来、その努力の報いというものが、どこに成就するのかは分からない。彼女たち本人に成就するのかさえも分からない。その魂を受け継いだ人たちが何かを成すことで彼女たちの幸せに繋がるのかもしれない。僕の中での幸せがそういう理屈だからこそ、遠い未来のお話になったのだと思います。

今回はミトもルイも、そしてニコも、マノンやモモカの視点からとても美しく描きましたが、『0.7』でとても辛い思いをしたからそのあとは全部ハッピーでした、なんて言うつもりは全然なくて。もしかしたらその間にもっと辛い思いをしていたかもしれない。

ただ、一貫しているのは、彼女たちは自分たちの選択の責任をちゃんと背負って生きていた。自分の人生に対する責任ですね。その強さを彼女たちはセブンスシスターズであったことから学ぶことができたんだと思います。それがしっかりと垣間見える描き方をしたかった。本当の意味での“素敵な大人”というのはこうなんだと思って描いています。

とにかく、作り手というのを抜きにして、個人的な感情で言えば『5.0』は今までの物語で一番好きかもしれません。こういうのを描けてよかったなと思うし、自分にできるのかなと思いつつ、いろいろな人に助けられて作りきることができました。

――テーマはタイトルどおり、やはり「恋」だったのですか?

茂木:『0.7』に対比して、一言で言うなら、「未来に恋する物語」ですね。未来の部分を「世界に」と言い換えてもいいんですが。人が未来に恋をする、そんな瞬間を描きたかったお話です。

――モモカがここまで重要な役どころになるとは予想だにしませんでした。

茂木:(笑)。それでいうと実はこちらも、6,7年前に777☆SISTERSの設定を作っている時から決めていました。この二人(モモカとシンジュ)はコニーとの別れの際に、きっと泣けないだろうなと。これまでもそういうふうに二人を描いてきたし、泣けなかったと言われてもそうだろうなと思えるような造形にしてきたつもりです。

先ほどテーマは「未来に恋する物語」と言いましたが、この『5.0』はいろんな意味で二重構造にしています。「大人と子供」「過去と未来」「後悔と不安」みたいに。だから実はもう一つテーマがあって、それを自分では「涙を取り戻す物語」と呼んでいます。

――涙を取り戻す物語ですか。

茂木:モモカとシンジュが涙を取り戻す物語です。人って大人になると泣けないじゃないですか。それはきっといろんなことを知りすぎてしまうからだし、素直でいると傷つきすぎてしまうから。777☆SISTERS当時のモモカとシンジュってある種、最も「大人っぽい」人たちだったと思ってるんです。「大人っぽい」と今言ったのは、悪い意味ではなく、経験が伴わなくても知識やセンスだけで、世界のことを理解した気になってしまう人。そういう人はきっと少なからずいて、モモカとシンジュは理解した気になっていたわけではないですが、なんとなく「世の中をカテゴライズして、わかってしまう」、能力の高い人として描いてきたんです。

ちなみに僕は仕事という面において、物事や人を正しくカテゴライズし、処理、対応することは高い能力が必要なことだとも思っています。でも人生は仕事だけじゃない。というか、人も人生も世界も、白黒つけられるものじゃない。

だからこそ泣けなかった二人なんですが、彼女たちは大人になるにつれ、どんどん実際の経験をして、自分の中での「本当」を得ていく。そんな中、当時わかったつもりになっていた昔の自分が置いてきぼりにされていくんです。泣けなかった自分への後悔がどんどん浮き彫りになっていく。あのとき泣けてさえいれば楽だったかもしれないのに、とさえ思っている。しこりになっているんですね。だって本当のことを知れば知るほど、コニーがなんでいなくなったのかわからなくなってくるんですから。他人の心は本当の意味ではわからない、ということを経験で知っていったために生まれた後悔です。

――読んでいて、そんな二人の葛藤がたくさん描かれていると感じました。

茂木:で、その先にあるものって「信じること」だけなんだと思います。それに気が付くことで、彼女たちはまた一歩先に行ける。だから「二度と会えなくても大丈夫」なんです。モモカもシンジュも「もう大丈夫」とコニーに言いたかった。あの時のあなたを信じている、そしていま私はあなたの幸せを祈っている、それでいい、と。このあたりは『0.7』でも描いたセブンスの別れ、つまり愛は自分の中で知るもの、という部分と似ています。寄りかかるでも、期待するでも、あきらめるでもなく、信じる。結果、美学の話です。

――ニコルが現れて、何かを言う描写を入れていないのもそのためだと。

茂木:そうですね。描きたかったのは「涙を取り戻す」というお話。結果、真実はなんでもいい。それはきっとあの後、モモカとシンジュとニコルがお互いのことを話すでしょうから、それを知ろうとするのは個人的に野暮だと思いました。

涙を取り戻すというのは自分がもう一度本来の自分に戻る、という意味でもあると思うんです。ルイも「また、君は君になる」と言っていますが、大人になるというのは、その繰り返しなんじゃないのかなと思います。

――先ほど仰っていた“素敵な大人”ですね。

茂木:そうですね。そういうことを頑張らないと素敵な大人にはなれないような気がします。だから「未来に恋する物語」も「涙を取り戻す物語」も、最終的に今を一生懸命生きてちゃんと戦えば、未来は素敵なものになるかもしれない、好きになれるかもしれない。ということに集約されるんだと思います。そういう希望を謳っている。シラユキとマノンの物語でも、結局は同じことを言っています。

だからこそ、ラストシーンはまさにご褒美ですよね。あれがないのが現実なんですけど、そこはもうロマンチック過ぎてもいいから描こうと思いました。エンタメがエンタメとして存在する理由は、希望を見せることでもあると思うので。

でも、あくまで多くは語らない。ニコって今なにやってるの? と聞かれたら僕には分かりませんと答えます。

――たしかに、それぞれの人の中にキャラクターが生きていますから。

茂木:はい、それは本当に嬉しいし、それでいいと思います。

――そして満を持しての『6.0』! シリーズ完結編ですね!

茂木:ですけど、今はまだ話せません。すみません(笑)。

――(笑)。物語が完全に完結するということでしょうか。

茂木:物語とされているものが、どこからどこまでを指しているのかはわかりませんが、シンプルに言うと、僕が持っていたものはこれで「最後」ということです。ナナシスを始めた人間として、僕個人の「けじめ」としてやる、そういうものになると思います。考えようによってはセブンスと同じですね。自分が決められる範囲で、自分の責任をもって選択する。

でも、なんでしょうね。ずいぶんと固い言い方をしてしまいましたが、片意地を張ってやるような気持ちじゃなく、楽しくやれそうな気がしています。素敵なものにしたいです。

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