アニメ
Yostar Pictures 李衡達&稲垣亮祐&斉藤健吾インタビュー

今、アニメ製作会社を立ち上げる意味とは――李衡達さん、稲垣亮祐さん、斉藤健吾さん、Yostar Picturesの舵を握る3人にインタビュー

中国のアニメ・ゲーム市場の今

――中国の市場における日本アニメの立ち位置は、近年ではどのようになっているのでしょうか?

李:20年くらい前から変わっていないと思います。ただ最近中国では3D のアニメが徐々に本数が増えてきていていますね。また、少し前までは子供やファミリー層向けのものがほとんどでしたが、最近は子供向けの色がちょっと薄くなりつつあって、割と大人でも楽しめるアニメが増えてきてはいる印象です。

一方で日本のアニメは2Dがメインのものですから、基本は今まで通り棲み分けがされているというか。言ってしまえば、若干オタクっぽいユーザーが日本のアニメを見る傾向が強い感じですね。

――中国にもアニメーターはたくさんいると思うんですけど、いわゆる2Dでの作画をやる方は少ないんでしょうか?

李:いえ、ここ数年増えてきています。アニメを見て育って、アニメ業界を目指した人たちが、だいたい20歳を越える年齢になっている時期ですし、日本アニメの人手不足の状況もありますから、アニメーターの募集が多いんです。中国のアニメ製作会社は日本の会社の外注先として今までずっとやっていて、どこも人材を欲しがっている状況ですから。若い人たちはそこに入っている感じですね。

――人材はいるのに、あまり2Dのアニメを作っていない?

李:そうですね、どちらかというと、2Dは外注の方にリソースが消化されている感じです。2Dができる人が増えても、結局は日本のアニメに行ってしまう。その人たちが意識しているかどうかは分からないですけど、中国のアニメは表現の制限が多いので、もしかすると、(日本からの仕事を受けるのは)制限を回避するための迂回策でもあるのかもしれないですね。

――今の中国市場は、日本のアニメにとって非常に大事だと思うのですが、稲垣さんはプロデューサーの視点から中国のアニメ市場をどう見ていますか?

稲垣:これは中国に限った話じゃないんですけど、日本とそこまで変わらないというか、日本で売れているものは中国でも売れるなという印象ですね。『鬼滅の刃』もそうですし、少し前だと『進撃の巨人』とか『Fate』とか……。日本が80年代、90年代に作ってきたアニメの空気って、未だに世界中ですごく愛されていて。だからそこのセンスは間違ってないと思いますし、見る側も皆それで育ってきているわけですから、そこまで国の文化の違いとかは関係ないのかなと思っています。

――アニメを作る上では、海外の市場を意識して描写を変えたりということもあったりするんでしょうか?

稲垣:それは普通にありますね。李さんもおっしゃられた通り、表現規制の問題もありますから。例えば子供向け作品とかは、銃口を画面に向けたら駄目だったり、いろいろ制限があるんです。ただ、それは日本も同じです。車に乗っているキャラクターは、全員シートベルトをしなきゃいけないとかね(笑)。

――ああ、なるほど。

稲垣:リアルに考えれば、マフィアの構成員みたいな人が、シートベルトをして運転はしないじゃないですか(笑)。そこはタバコ吸いながら、体勢を崩して運転して欲しいんですけど……そういうのも、日本の局だと駄目だったりするので。僕もタバコは吸わないですけど、やっぱり表現として吸わせたいキャラクターはいますし、そういうのができないのは色々と残念だなぁという想いはありますね。

――中国のアニメはそこまで日本に入ってきてないイメージがある一方、ゲームの方はかなり印象が変わってきたと感じていて。それは『アズレン』がきっかけでもあると僕は思っているんですが、中国のゲームがかなり日本でも遊ばれるようになってきているなと。

李:いえ、きっかけじゃないと思います(笑)。一応アニメに関して言えば、去年Flashで作られた『黒猫戦記』(※1)という作品があって、池袋サンシャインを中心に公開されているのですが、結構日本でも評判が良いんですね。こういう風に中国のアニメがこれからどんどんどんどん出てくれれば嬉しいと思いますし、もう少し進化したら日本でも通用する作品が出てくるんじゃないかなと。世界観や設定、声優のパフォーマンスとか、諸々の点から見ると、中国アニメはこれから期待できそうな気がします。

逆にゲームだと、コンシューマーゲームの基盤が日本や欧米と比べると、そんなに育ってないんですね。近年になってようやくNintendo Switchとかプレイステーション4も売られるようになったんですが、それまでは長い間正規販売のルートがありませんでしたから。そういう事情もあってコンシューマーゲームという基盤がなかったので、割とゲームの文化の形成は日本や欧米と異なっていて。2000年頃のインターネットの普及に伴って入ってきた、韓国製のネットゲームからスタートしたような感じですね。


※1:黒猫戦記
中国漫画家、アニメ監督のMTJJ及び寒木春華スタジオが原作としたアニメ作品。人間によって森のすみかを破壊された猫の妖精の羅小黒の冒険を描く。元々は2011年に動画サイトに投稿されたことで人気を博し、2019年には中国と東京で劇場公開が行われた。


――あくまでもPCゲームが中心だったと。

李:ただ、特にこの6年、7年間はスマートフォンの普及に伴って、一部のネットゲームのユーザーがごく自然にスマートフォンに流れてきているわけじゃないですか。その間、中国のデベロッパーは韓国のネットゲームから得たユーザーさんの趣向とか好みを反映させながら自社開発を進めていて。積み重ねた技術力とかビジュアルのセンスがここ数年一気に花開いて、割といいスマホゲームを作るようになったという状況です。

――中国におけるモバイルゲーム市場と日本のモバイルゲーム市場というのは、少し傾向が違うのでしょうか?

李:規模感が違いますね。中国はでかすぎて訳が分からない(笑)

――ユーザーの好みが分散しているということですか?

李:そもそもジャンルの好みが皆さん違うじゃないですか、人口の母数も違いますし。地方の若い人たちのエンターテインメントとしては、最近はゲームだけではなくて、TikTok とかのアプリに時間やお金を費やす傾向が徐々に徐々に強くなってきています。ただ若者の人口の母数自体が大きいので、やっぱり日本に比べるとユーザーの獲得というのはやりやすいと思います。

日本では、2、30万 DAU(※2)が集まったら超ウハウハな感じだと思うのですが、その規模でも中国では屁みたいなもんですから。しかも、いわゆるちょっとオタク向けのスマホゲームは、最近課金率や課金意欲も中国の方が高くなってきていて、昔と傾向が変わってきているんです。


※2:DAU
Daily Active Userの略。SNSやアプリ、WEBサービスの一日あたりのアクティブユーザー数を表す指標で、スマートフォンゲームのプレイヤー数の目安の一つとしても扱われる。


――ソーシャルゲームへの課金率でいうと、日本も相当高い方だと思うのですが、それ以上だと。

李:そうです。一昔前の中国は、おそらく皆さんが思っている通り、大量のユーザーがプレイはするけど結局課金するのはごく一部ということが多かったのは確かです。それが最近では、特にサブカルチャー風のゲームに対しては、課金率は日本よりも断然高くなってきています。

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