マンガ・ラノベ
BLにおける「受けの事情」【アニメイト編集部BL塾・応用編】

【BLのことさらに知ってみませんか?】令和最前線の「受けの事情」! 受けはまだまだ発展途上!? の巻 【アニメイト編集部BL塾・応用編】

複雑な「受け事情」

阿部:ここからは「〇〇受け」についてお話していくのですが……前提として、攻めと比較して受けキャラクターのふり幅はあまり大きくありません。「〇〇受け」の種類自体が少ないわけではないのですが、同じカテゴライズの受けが多い印象を持っています。

時代の変化によって「俺様攻め」が減少して「ヘタレ攻め」が増えた、みたいなこともあまりない。

石橋:攻め以上に分かりづらそうですね……。

阿部:なので、今回も例として私の好きな作品の受けキャラクターをピックアップしています。石橋さんの苦手な痛い系の作品は抜きに紹介しているので、ご安心ください!

石橋:ありがとうございます!(笑)

阿部:受けのフォーマットにも記載していた定番の受けから「健気受け」「天然受け」「ほだされ受け」について最初に解説していきます。

阿部:作品数がトップクラスで多いのが「健気受け」です。みんな大好きなやつ。

石橋:これは想像しやすい受けですね。

阿部:例に挙げた『もういちど、なんどでも。(※2)』の古藤くんはまさに健気受けの中の健気受け。大好きな作品なので、これはぜひみなさんに読んでほしい一冊です。泣けます。


※2:もういちど、なんどでも。

 
祥伝社にて刊行された阿仁谷ユイジさんの漫画作品。高校時代から恋人同士の藤井貴博と古藤多郎。順風満帆にお付き合いをしていた二人に試練がー。なんと貴博が交通事故に遭い、多郎と付き合っていた期間の記憶がなくなってしまう。


石橋:表紙を見た感じ切なそう……。これは読んでみたい。

阿部:続いて「天然受け」。

阿部:「天然受け」は大きくふたつの属性に分かれると思っていて、ひとつは箱入りで大事に大事に育てられたタイプ。一定の常識はあるし、勉強はできるけど、性的な知識に疎い天然。もうひとつは、育ってきた環境に問題があって、一般的な常識がわからずに成長してしまったタイプ。勉強が得意ではなかったり、非常識なことを常識だと思い込んでしまっている天然。

前者だとコメディ作品が多く、後者はシリアスや不幸な作品が多い印象です。

石橋:難しいですね、想像がつかない……。

阿部:作品例に挙げたふたつはコメディ要素の強い「天然受け」の作品です。「天然受け」は大体、攻めに流されてしまうことが多いです。

石橋:「あれ、俺、こいつのこと好きかも……!?」みたいな展開になりそう!

阿部:ラブコメだとそういう展開も多いですね! 騙されて痛い目に遭っちゃう「天然受け」もいます。そういう作品は石橋さんがあまり好きじゃないかも(苦笑)。

石橋:(笑)。

阿部:そんな流されやすい受けにもちゃんと俗称があります。その名も「ほだされ受け」。

阿部:「ほだされ受け」もかなり多いです。

石橋:僕が前回の宿題で読んだ『真夜中ラブアライアンス(※3)』の受けはまさにですよね!


※3:真夜中ラブアライアンス

 
竹書房にて刊行されたみちのくアタミさんの漫画作品。夜の街にたたずむ「Bar lberis」を中心に巻き起こる3つのカップル(女装男子×ノンケのヤリチン、生意気な年下男子×ランジェリー趣味の元ヤン、ゆるいヤンキー×硬派なヤンキー)を描いたオムニバスストーリー。


阿部:典型的な「ほだされ受け」ですね(笑)。

BLでは、体の関係から始まって心が結ばれる展開が割と多くて。体に快楽が刷り込まれて、気になって、好きになるみたいな。

石橋:百合(※4)はそういう展開がないので不思議です……。


※4:百合
女性どうしの関係性(恋愛関係も含む)を描いた創作ジャンルの通称。ちなみに石橋の聖書的作品は『マリア様がみてる』『青い花』『ささめきこと』。


阿部:百合は感情の結びつきがメインで描かれますからね。「男性」は本能的に子孫繁栄をする生物、という印象から来るものかもしれないです。あとは体から入ることで展開がつくりやすい、分かりやすいというのもあるかも。

石橋:たしかに男性の方が性に積極的でみたいな印象はあります。

「ほだされ受け」という字面がおもしろくて好きです(笑)。

阿部:ぜひ覚えてください(笑)。

今挙げた3つはヒロイン力が高めの受けでした。続いて紹介していくのは、男性性を強く感じる受けについて。まず「意地っ張り受け」。

阿部:ツンデレと似ていますが、「意地っ張り受け」はほぼツンです。基本的に素直じゃない受け。

石橋:『カラーレシピ(※5)』の笑吉くんとか?


※5:カラーレシピ

 
新書館にて刊行されたはらださんの漫画作品。腕はいいが愛想が悪いスタイリスト・笑吉の働く美容室に正反対の性格のスタイリスト・笑吉が入社してきた。そこから、笑吉の身の回りで不可解な出来事が起こり始める。


阿部:笑吉くんは「強気受け」かなと思います。

阿部:「強気受け」は自分に自信があるけど、「意地っ張り受け」は自分に自信がないから強く見せてしまう。

ただ、ここら辺は複雑なので、読者によって解釈が異なると思っています。次の「ツンデレ受け」も「意地っ張り受け」や「強気受け」に近いので、ややこしさを感じるかも……。

阿部:恥ずかしくて相手(攻め)に素直になれない。

石橋:みんな大好きなやつだ(笑)。

たしかに攻めと比較すると受けは大きく違いがないような気がします。似たような性格の中で細かく分類されている感じ。

阿部:ヒロイン力の高い受けか、男性性の強い受けか二極化している感じ。今回資料をつくっていて、「全体的に似ている……」と思いました。

石橋:読者の好きな受けの系統があるのかも。特に商業BLは売れることが重要になってくるので、「売れる受け」のテンプレートもありそう。

阿部:あると思います。その分、攻めで遊ぶ(自由に描く)部分もあるのかなと。

石橋:なるほどね!

阿部:この似ている「意地っ張り受け」「強気受け」「ツンデレ受け」ですが、攻めに流されるパターンが非常に多い。「意地っ張り受け+ほだされ受け」のようなセット表記。

石橋:大体ほだされちゃうんだなぁ(笑)。

阿部:続いて、ここまで紹介してきた受けのちょうど中間くらいに位置しているふたつの受けキャラクターについてお話します。

まずは「やんちゃ受け」。

石橋:ヤンキーみたいな感じですか?

阿部:うーん。ヤンキーには大きく「ツンデレ・クール系」と「陽キャ(チャラい)系」ふたつパターンがあると思っていて、「やんちゃ受け」は後者のイメージですかね。

もうひとつは「誘い受け」です。

石橋:出た! これは聞いたことある。

阿部:攻めに流される受けが多い中、「誘い受け」は攻めが流される展開になりがち。「ヘタレ攻め」とセットで登場することが多い。挿入される側なので「受け」ですが、表向きは攻めと感じることがあるかもしれません。騎乗位とかすぐするタイプ。

石橋:あーーー、分かりやすい!

BL塾がキッカケで周りのライターさんとBLについてお話することが増えたんです。それでこの前「石橋さん、最近はケツで攻めるっていうのがあるんですよ」と言われまして。最初は「何それ……?」と思ったんですけど、要するに「誘い受け」のことですね(笑)。

阿部:ケツで攻める(笑)。まさにですね(笑)。

紹介している作品はどちらも「誘い受け」として分かりやすいので、「誘い受け」が掴めない人はぜひ読んでみてくださいね。数巻あるのでサクッと読める作品ではないですが、オススメです。

石橋:「誘い受け」気になります。今まで読んだことのないタイプの受けだと思うので、これはどちらか挑戦してみようかと思います。

阿部:また、外見的な部分では「美人」「色素の薄い色」の要素を持つ受け、体格も攻めより小柄な受けが圧倒的に多いと思います。体型の同じカップルや受けの方が大きいカップルも以前と比較すると増えてきていますが、まだまだ少ないなと。

石橋:受けは発展途上なのかもしれないですね。進化している途中を我々は見ている気がします。

BLマンガを描いてきた先生方が読んできた少女マンガが反映されているとも思っていて。ヒロインとなる女の子のパターンってある程度決まっていたんですよね。そこも一つ影響しているのではと。

これからは「こんな受けある!?」みたいな受けが出てくるかも。今も発生しているけど、広く認知されていない可能性もありますし。

阿部:今回すべての受けについてお話しているわけではないので、もちろんこれ以外にもあります! ただ、作品数自体が少なかったり、これまで人気だった受けの要素が入っていたりする。変化があっても作品数が少ないため、気づきづらいんでしょうね。

石橋:受けは複雑な事情がありそう……勉強になります。

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