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【ネタバレあり】アニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』西本由紀夫監督インタビュー後編|【連載01】

【ネタバレあり】TVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』西本由紀夫監督インタビュー後編|監督が語る第一話、音楽へのこだわり【連載 vol.01】

2021年10月6日(水)よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送開始となったTVアニメ『マブラヴ オルタネイティヴ』。この作品は、06年発売のâge(アージュ)が企画・製作したアドベンチャーゲームを原作としたアニメーションである。

意思疎通ができない地球外起源生命体であるBETAとの絶望的な戦いが繰り広げられている世界で、人々がどのような生活をしているのか、そして人々はどんな戦いを強いられているのか、それが描かれたアニメオリジナルの第一話について、前回から引き続き西本由紀夫監督に聞いた。

※本編のネタバレを一部含む内容となっているためご注意ください。

第一話で登場する豪華な声優陣、その迫真の演技にも注目!

――役者についてですが、第二話以降は出てこない方ばかりになりますよね。でも素晴らしいお芝居だったと思いました。

西本:第一話って作品のコア、芯のようなところを描いているんです。それを最初に見せるというのは、映画で言うと冒頭の5分で激しいアクションシーンがあるようなもので、ツカミなんですね。制作サイドからの「こういう作品をぶちかまそう!」という提示だと考えていただければいいんですけど、それだけに、声優さんをどうするかは考えました。軽い話ではなく、命のやり取りがあるものなので、重い、良い芝居ができる人がいいと思ったんです。

――かなり豪華な名前がありました。

西本:特に死んでしまう新米衛士である草野哲也くんですけど、河西健吾さんがとても良い演技をしてくれたんですよ。駒木咲代子(CV.豊口めぐみ)を助けて、最終的に死んでしまうんですけど、死んでしまうところもそうですが、その前の「やった!」って喜ぶところの声もすごくかわいいんです。

そこだけではなく、普通の会話のシーンもすごく自然で良かったです。佐渡への思いとか、BETAから人類を守らなければいけないと、その使命感を駒木と語り合うシーンもあるんですけど……(最期のシーンを思い出し涙をこらえる)、そういうところで、命の重みとかを感じていただければいいなと思いました。人間ってあっけなく死んでしまうんですよね。つらいですけど人間って脆いんだよというのを第一話から感じ取ってもらえたらと思います。

――序盤の会話のシーンは本当に素晴らしかったなと、見ていても思いました。

西本:第一話のタイトルを「世界の日常」にしているんですけど、この世界の日常はこういうことなんですよね。そこで名もない衛士の想いを描くことで、その魂が第二話以降の登場人物に引き継がれていく、というようなところは意識しましたし、それが最後の合唱曲にも繋がっているんです。

――劇伴がEvan Callさんで、TVアニメ『シュヴァルツェスマーケン』の劇伴もやられていましたし、最近では『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などでも知られている方です。

西本:僕は映画サントラが好きで、そこからインスパイアされて、こういうふうにしようと思うことも多いんです。『マブラヴ』という作品を見ると、戦争モノ、SFモノといったキーワードが多いのですが、そこに当てはまる音楽は何がいいかを考えると、オーケストラ系のものや重めの音でゴリゴリ系の音楽が合うのかなと思いました。

Evanさんは『マブラヴ』のシェアードタイトルでもある『シュヴァルツェスマーケン』の劇伴もやられていて作品の世界観も知っていますので、そこに自分のイメージをいろいろと伝えていきました。特にこだわったのはBETA出現の際の音楽なんですけど、そこは普通の音楽と変えたかったんです。

『宇宙戦艦ヤマト』という作品では、地球側とガミラス側で音楽が違っているんですけど、『マブラヴ』も、戦術機が戦うときはカッコいいオーケストラやロック系を考えていたので、BETA側は気持ち悪い、不安で不穏な感じの音楽にしたいと思いました。流れたときにイヤなことが起こるようなものにしたいと思ったので、それを音響監督の本山哲さん(『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ、『ガーリー・エアフォース』音響監督)に相談したんです(※劇伴は主に音響監督から発注される)。

そうしたら先日、音楽がすごい曲数届きまして、そこにBETAの音楽もあって、聴いてみたらものすごくカッコ良かったんです! 「これカッコいいですね!」って本山さんに言ったら、「カッコ良すぎるよ! 気持ち悪くないよ」ってリテイクに出すと言うものだから、でもカッコいいからどこかで使いましょうって話をしたんです(笑)。

――カッコいいのにリテイクをされてしまったんですね(笑)。

西本:そうなんです。でも劇伴からはEvanさんのこだわりもすごく感じられました。すべてフルオーケストラで録ってくれていて、リモートで海外のオーケストラに指示を出してレコーディングしたみたいなんです。「Evanさんが行かなくてもいいんですか?」と聞いたら、現地にいる仲間に指示を出せば、やってもらえるということだったので、すごいなぁって思いました。ギターとか、こちらでやれそうな楽器の音楽に関しては東京の自分のスタジオで録っていたらしいんですけど、そういう使い分けはしていたようです。

でも、本当に良い音楽を作ってくれたので、すごく助かりました。音楽は本当にバッチリハマっているので、きっとサントラ欲しくなる思いますよ。

――第一話の終盤に流れていた合唱曲も、Evanさんが作曲されたものなのですか?

西本:そうです。僕が合唱曲を作りたいと伝えました。第一話の主人公は駒木と草野ですけど、「世界の日常」なので出ている全員が主人公ではあるんです。坂崎都(CV.白石涼子)や大倉鈴乃(CV.矢作紗友里)、安倍参謀(CV.上田燿司)や小沢司令CV.伊丸岡篤)……いろいろなキャラクターが出てくるんですけど、全員にスポットを当てて描いているんです。最後の安倍と小沢のやり取りなんかも、彼らの想いが伝わってくるというか。

――その前のシーンで坂崎の取った行動……駒木を生かすやり取りにも涙が出ました。

西本:どうやったらみんなが助かるのか、BETAをくい止めなければみんなが逃げられないという戦いを描いていたんですけど、そういう戦いで流れる音楽が必要だと思ったんです。
 
駒木と草野が佐渡の自然を見ながら歩いている冒頭のシーンで、少女が鼻歌でこの歌を歌っているんですけど、そこで佐渡の住民がなぜ逃げないのかというのを話している。

生まれ育った場所を離れたくないなどで退去要請を拒絶する人が多いんですけど、彼らにはここでの生活があって、それこそが日常なので、そこを出ては生きられないんですよね。つまりここでは佐渡島のことを話しながら、狭い日本列島のことを語っているんです。

だから、それが日常なんだよということを歌にしたかった。その歌が、最後に襲われたシェルターを調べているところで流れてくる。そこでたった一人の生存者である少女が発見されたところで合唱に変わっていく。みんなの思いが歌に乗っかっているんです。

この歌の歌詞は僕がアイデアを出していて、それを作詞家の方にリライトしてもらったので、すごく思い入れが強いんです。ダビングしているとき、何度涙をこらえたことか(笑)。だから曲の歌詞も聴いてほしいですね。とても良い歌になったと思います。

――絶望感はありましたが、少女が生きていてくれたことで、わずかな希望が見られて良かったなぁと思いました。

西本:大倉も「ひとつくらい奇跡があってもいいだろう、あの地獄の中で」と言っていましたけど、駒木や少女は、本当に奇跡の生き残りであると思っていただければと思います。

――では最後に、今後の見どころについてもお願いします。

西本:自分で言うのも何ですけど、この作品、すごく面白いんですよ。自分も絵コンテを切りながら、監督として作品を作りながらとても感じます。それに毎週アフレコに行くんですね。そうすると声優の皆さんもゲームをプレイしてくれているから、そのキャラクターの想いが伝わってくるんです。

音響監督の本山哲さんとは付き合いも長いんですけど、お芝居的なところで、役者さんをどう引き上げるのかということを理解している方なんですね。しかも『マブラヴ』の世界観をご存知ですから、僕が分からないことまで分かってくれているので、すごく良きパートナーであり理解者なんです。その本山さんの的確な指示のもと、声の出し方、張り方、抑え方を描いてもらっていて、すごくリアルな感じのお芝居をしてくれてるんです。

原作で声優を一新したことに関しては、「10年、20年先を見越して」という話がありましたし、声質や演技が近いキャストを吉宗さんがキャスティングしていただいているんですけど、前の役者のままに演じてしまったら、その役者さんでいいということになってしまう。だから自分たちで考えたそのキャラクターのお芝居をしてもらいたいと最初に伝えさせていただきました。今作では自分なりの白銀 武(CV.神木孝⼀)だったり、鑑 純夏(CV.楠木ともり)だったり、御剣冥夜(CV.奈波果林)だったり、榊 千鶴(CV.伊藤美来)だったり、彩峰 慧(CV.佐伯伊織)だったり、珠瀬壬姫(CV.田中貴子)だったり、鎧衣美琴(CV.Lynn)を描いてほしかったんです。

特に、武役の神木くんは、前の声と似ていると、PVが流れた時に反響をいただきましたが、本人の想いもものすごく強いんです。アフレコをしていて空回りをすることもあるんですけど、冷静に「ここはこうだからね」って説明すると分かりましたと修正してくれる。収録も進んで、だいぶ感覚も掴めてきたらしく、上達もとても感じます。だからこれからが楽しみで仕方ないし、すごく良い感じになっていくと思います。

――各話の最後の引きの部分もこだわっていますか?

西本:各エピソード、重要なシーンが本当に多いんですよ。それを考えると内容的にものすごく濃縮したものになるので、見ているとあっという間に終わってしまう感覚かもしれません。

ご存じの方も多いと思いますが、原作の序盤は戦術機自体の登場回数が少ないので、「まだか?」と思うかもしれないですが、第一話に新たなオリジナルのエピソードを追加し、第二~三話でもちょくちょく戦術機を出すことで、ロボットファンやミリタリーファンの方にも喜んでもらえるようにしています。練習風景や銃へのこだわり、ハンガーに入った戦術機を運ぶ大型トレーラーなどをCGで作っているので、そこはぜひ見ていただきたいです。

第一話では、この世界での戦艦が出てきていて、そのCGもかなり作り込んでいて、質感も良いんですよ。またそれを意識してライターさんがシナリオを書いてくださったので、そこもアニメでうまく表現できていると思っています。

[文・塚越淳一]

TVアニメ「マブラヴ オルタネイティヴ」作品情報                                                 

放送・配信情報

<放送>
フジテレビ
10月6日(水)より毎週水曜24:55から ※初回放送のみ 25:25~25:55
関西テレビ
10月7日(木)より毎週木曜25:55から
東海テレビ
10月9日(土)より毎週土曜25:45から
テレビ西日本
10月6日(水)より毎週木曜25:55から ※初回放送のみ 26:25~26:55
北海道文化放送
10月10日(日)より毎週日曜25:10から ※初回放送のみ 25:40~26:10
BSフジ
10月13日(水)より毎週水曜24:00から

<配信>
FODにて独占配信
10月6日(水)25時25分配信スタート 毎週水曜24時55分最新話配信

FOD ・ TVer ・ GYAO!
にて毎週1週間限定無料見逃配信
10月6日(水)25時55分配信スタート 毎週水曜日25時25分最新話配信

スタッフ

原作:吉宗鋼紀(âge)/ aNCHOR
監督:西本由紀夫 シリーズ構成:浦畑達彦 キャラクターデザイン:谷 拓也 サブキャラクターデザイン:つなきあき プロップデザイン:星野浩一 アニメーションメカディレクター:大河広行 色彩設計:内林裕美 美術監督:内藤 健 美術設定:大平 司 撮影監督:荻原猛夫 CG監督:大矢和也 編集:丹 彩子 音楽:Evan Call 音響監督:本山 哲 アニメーション制作:FLAGSHIP LINE ゆめ太カンパニー×グラフィニカ

キャスト

白銀 武:神木孝⼀ 鑑純夏:楠⽊ともり 御剣冥夜:奈波果林 榊千鶴:伊藤美来 彩峰慧:佐伯伊織 珠瀬壬姫:田中貴子 鎧衣美琴:Lynn ほか

マブラヴとは

「マブラヴ」は、ゲームブランド:âge(アージュ)が企画・製作した2003年発売の、シリーズ累計80万本を突破しているアドベンチャーゲーム。2006年発売の『マブラヴ オルタネイティヴ』と合わせてひとつの壮大なストーリーを成し、多くのシェアードワールドタイトルやメディアミックスを展開しているプロジェクトです。
待望のテレビアニメ「マブラヴ オルタネイティヴ」は、10月6日(水)より毎週水曜24:55からフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送予定。

イントロダクション

それは、極限の世界で戦う人々の絆の物語―この時空に存在する、無数の並行世界のひとつ。そこで人類は、戦術歩行戦闘機(戦術機)と呼ばれる人型兵器を駆り、人類に敵対的な地球外起源種「BETA」と数十年にわたる戦いを続けていた。滅亡の危機に追い詰められた人間たちが、過酷な運命の中でどのような生き様をみせていくのか―

主題歌

OP主題歌:V.W.P
「輪廻」

ED主題歌:STEREO DIVE FOUNDATION
「TRISTAR」

公式サイト
公式ツイッター(@Muv_Luv_A_anime)

(C)aNCHOR / オルタネイティヴ第三計画
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