『新サクラ大戦 the Stage』の第2弾が12月17日より上演！　アニソン界のレジェンド&『サクラ大戦』シリーズの全音楽担当の田中公平さんが感じたキャスト陣の覚悟とスゴさとは？

聴くと感情と情景が浮かんでくる名曲たちはミュージカルおたくの先生ならでは。楽曲制作の秘訣は「逆張り」!?

――『新サクラ大戦』の舞台の歌をまとめて聴かせていただきましたが、どの曲もミュージカルの曲だなと改めて思いました。だから舞台映えするんだろうなと感じました。

田中：元々、ミュージカルおたくで、アメリカに留学している時もたくさんミュージカルを見たし、『コーラスライン』の第1回公演も見ていますから。向こうのミュージカルは全部、生演奏だし、夢の舞台で。「これを日本でできないかな」とずっと思っていましたが、『サクラ大戦』のお話があって、少し自分の夢が実現できました。

――歌だけ聴いても、それぞれのキャラの表情や心情、景色が浮かんでくるのはすごいですね。

田中：それは私がBGM作家だからかもしれません。それぞれのアニメの状況や心情に合わせて曲を作るのは昔からの得意技ですし、ただ単に歌を作っているわけではないので。

今の日本のミュージカルに苦言を呈するとすれば、向こうのミュージカルは劇の中に必然的に歌があるんですけど、日本は「歌」、「歌」、「歌」と単発で入っている感じで、それはミュージカルではなく、もはや音楽劇ですよね。しかも1コーラスめ、2コーラスめ、3コーラスめ、すべて同じということもあったりして。J-POPみたいな曲をそのまま入れてもミュージカルなんです。

どんどん転調したり、ストーリーの流れで変化したり、柔軟にハマるのがミュージカルのいいところなので。今回、書き下ろした新曲もそんな感じです。

――『新サクラ大戦』の楽曲は「新ゲキテイ」のような主題歌然とした曲もあれば、初穂メインの「女!!祭りの心意気」は和風テイストの男勝りなお祭りソング、あざみのソロ曲「忍者あざみ」はキュートなポップ、アナスタシアのソロ曲「帰れる場所」はジャジーな香りがするアダルトさ、クラリスのソロ曲「輪舞」はワルツやケルトっぽさがあったりと多様なジャンルなのも楽しいです。

田中：今の日本の音楽シーンは何かが流行るとその方向にみんなが流れてしまう傾向があって。例えば今のアニメ主題歌は電波ソング系が多い傾向があって、16ビートで速いテンポでしゃべっている曲が7割くらいあるんじゃないかな？　それもみんなが望んでいるのなら悪くないと思うけど、私は昔から逆張りする人で。

40年前、まだ誰も打ち込みをやっていない頃に誰よりも早く機械を買って、曲に取り入れました。『ドラゴンボール』の主題歌「魔訶不思議アドベンチャー!」とか。その後、世の中が打ち込みを始めたら、今度は打ち込みをいっさいやめて、全部アナログにして。

――あまのじゃくなんですか？（笑）

田中：逆張りするほうが人が少ないから。アニメに来たのもそうだし。みんながポップスや歌謡曲を目指していた時、ミュージカルに行きたかったけど、日本ではミュージカルはできないので、アニメに来たら、すごいことになってしまって。「ラッキー！」って（笑）。本当はこの次に行きたいんだけど、オファーが多すぎてアニメ界からは抜け出せそうもないので。