音楽
ALI PROJECT30周年記念アルバム『Belle Époque』インタビュー

来年メジャーデビュー30周年を迎えるALI PROJECTが記念アルバム『Belle Époque』をリリース! 2022年1月に大阪、2月に東京でライブも! ALI PROJECT(宝野アリカさん、片倉三起也さん)インタビュー

 

全曲紹介 1曲目の「アタシ狂乱ノ時代ヲ歌ウ」は「ベルエポック」のガチャガチャした感じの歌詞をアリプロサウンドに

――では全収録曲のご紹介をお願いします。まず1曲目の「アタシ狂乱ノ時代ヲ歌ウ」は?

片倉:まさにずっと続けてきたアリプロサウンドですね。

宝野:テクノっぽいところとか。展開も複雑で、場面場面で歌い方も変えています。

フランスで19世紀末に始まった「Belle Époque」以降、文化や思想、芸術などが栄え始め、その後に狂騒や狂乱の時代が訪れましたが、そんなガチャガチャした感じを現代詩風に書いて歌いました。

思えば今も「狂乱の時代」ですけどね。「Wow Wow Wow!」なんて歌ったのは初めてです。ここには最初、言葉を入れていましたが、言葉数が多くなりすぎたので叫び声に変えました。

――「転生離宮へ」は「誰もひとつの 物語なの」や「得るものと 失くすもの どちらも等しく大事なもの」など共感できる歌詞もあれば、「宇宙に抱かれ わたしは眠る 目覚めるはどこ 異郷か知らぬ世界か」など神秘的かつ壮大な雰囲気もある楽曲です。

片倉:最後にトラックダウンが終わった曲です。オーケストラっぽい、クラシカルな一面のある骨太で美しい曲になったと思います。

宝野:どんな歌詞でもハマる曲だけど、最後に書いたので、疲れ切ってしまっていて(笑)。

私は「輪廻転生」を信じていて、そういう歌詞を今までも書いてきましたが、この曲では生まれ変わる前に訪れる場所を“離宮”と表現しつつ、最新シングル「緋ノ月」(『月とライカと吸血姫』OP曲)にも通じるような宇宙の世界もイメージして、壮大な星空が見えるような歌詞にしました。

 

 

――「大正撫子モダンガール」はタイトルのポップな印象と違って、しっとりと美しい音色と歌声ですね。

宝野:洋風ポップス風のアリプロには珍しいタイプの曲です。

片倉:Bメロやサビはわかりやすくてシンプルだけど、変な曲で。「戦争と平和」みたいな曲を作ろうと思ったら全然違う曲になっちゃいました(笑)。

宝野:デモの段階では女性が歌う英詞が入っていたので、歌詞も英語にしたかったのですが面倒くさくなってしまい(笑)。

最近、大正時代を舞台にしたドラマを見ていたので、モガ(モダンガール)と呼ばれたおしゃれな女性たちと、今の女の子たちを重ね合わせながら歌詞を書きました。

――「Cafe d'ALIで逢いましょう」は、入りのクラシカルで存在感が大きいヴァイオリンの音色から一転して、フレンチな雰囲気が漂うおしゃれでポップな曲ですね。

片倉:イントロは約240年前のイタリアのヴァイオリスト、パガニーニのフレーズを少し引用しています。余談ですが、超絶技巧の音楽家で、弾くだけで女の子がついてきたり、失神したりしたそうで、『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリスト』という映画にもなっています。

最初はパガニーニの邪悪さや天才性、女好きなところを体現した強烈な曲にしようと思いましたが、作っているうちに悪いものに毒されていない曲にしようかな、という気持ちに変わりました。

宝野:私は最初のイメージで作ってほしかったな(笑)。

これまでジビエや茸のお店の曲(「狩猟令嬢ジビエ日誌」「茸狂乱美味礼賛」)とか和牛の曲(「恋する和牛」)とかは歌ってきましたが、カフェの曲は歌っていなかったな、というのと、曲名などからフランスの気分もあったので、カフェの曲を作ってみたいと思っていたし。この曲はぴったりでした。

これまでの曲の言葉を散りばめつつ、最後に「宝の在りか」も入れたりして(笑)。

――「恋闇路」は、チップチューン的なイントロから始まり、中東や無国籍の雰囲気を漂わせながらも歌詞は「野垂れてござる」や「さあ暮らさんか」など江戸言葉っぽい表現が使われていて、なんとも不思議な曲です。

片倉:僕らにとっては普通なんですけどね。ポピュラリティの欠落なのかもしれないですが(笑)。

宝野:片倉さんから「河鍋暁斎(幕末から明治にかけて活動した浮世絵師)みたいな、少し変わった日本画をテーマにしたらいいんじゃない?」と提案があり、ちょうどその頃に心惹かれる絵があって、この雰囲気を歌に籠められたらと、すごく燃えて作りました(笑)。

遊女とか心中、といった話が私は大好きで(笑)、「地獄」や「外道」もどうしても入れたかったり。個人的にはこの曲をぜひ氷川きよしさんに歌ってほしいと思っています(笑)。

 

 

「ドリアンヌ嬢の肖像」はオスカー・ワイルドの小説をヒントに。「令和燦々賛歌」はアリプロ風ジャズナンバー

――「ドリアンヌ嬢の肖像」はストリングスが刻む旋律が美しくも強くて、サビでは「血に濡らす 残虐と幻惑と」などゾクっとするフレーズがあって。美しさと残虐さが共存しているような。

片倉:「Cafe d'ALIで逢いましょう」ではイントロでヴァイオリンをフィーチャーしましたが、この曲ではAメロにチェロの五重奏を入れています。たぶんパガニーニの残像が残っていて、この曲では重たく地べたに降ろしてみようかな、と。抽象的な説明で申し訳ありませんが。

宝野:この曲は長く、曲自体の持つイメージが奥深いので、物語風の起承転結がある歌詞にしよう、と思って書き始めたら、冒頭の「わが名はドリアンヌ」がふと思い浮かんできました。そこからオスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』につながり、主人公を女性に変えて書いてみました。

『ドリアン・グレイの肖像』は自分の肖像画だけが年老いていって、もう生きていたくないと自ら肖像画を突き刺すと『うらしま太郎』の玉手箱のように本人も年老いて死んでしまう、というお話ですが、この曲ではそのまま生き続けるという結末にしました。

小説は『Belle Époque』よりも少し前の時代の1890年に発表されており、長く生きている間に悪徳の限りを尽くしています。そんなお話が私、大好きなんです(笑)。

――「君影草」は「ああ人生は 時に哀しい 触れた指は離れて」など歌詞もサウンドもせつなげで。

片倉:バラード曲で、このアルバムの中で一番好きかもしれません。音楽的にはあまり特別なことはしておらず、サビで転調するのですが、そこが絶妙で、僕的には大発明だな、と嬉しくなりました(笑)。なので、あまり手を加えず、ピアノと弦楽器くらいのアレンジにしています。

宝野:曲名はスズランの別名であることを最近知って素敵だな、と思いました。

美しいバラード曲なので、スズランのような慎ましやかな歌詞にしたくて。「ああ人生は」なんてあまり歌ったことがないフレーズですが。音域が広い曲なので、歌うのがちょっぴり難しかったですね。

――「令和燦々賛歌」は明るい雰囲気のゆったりした曲で、フレンチの空気も感じさせるような。

片倉:アリプロ版ジャズナンバーです。ピアノの演奏がメインで、具体的なピアニストのお名前を出して、そんなふうに弾いてください、とお願いしました。

宝野:ジャズナンバーは以前、「昭和恋々幻燈館」という曲でも歌っており、歌詞も昔の昭和の時代を懐かしんでいますが、今回、片倉さんから「『令和~』みたいな曲名にしたら?」と言われて。

アレンジができ上がる前は「令和恐々賛歌」というタイトルで、令和を皮肉った内容で書いていましたが、ジャズのアレンジがあまりにも明るくて素敵だったので、暗いことを歌うのは嫌だな、と。

「令和燦々賛歌」に変えて、もうちょっと前向きな歌詞にし、コロナのことも「招かざる客」くらいにとどめて。「いろいろあるけど、今の時代を明るく生きていくしかないよね」という希望の歌になりました。

――「日出づる万國博覧会」はタイトル通り、万博の楽しさを明るく歌っていて。2025年に大阪万博が開催されるからでしょうか?

片倉:それはあまり関係ありません(笑)。

1800年代にパリ万博が2度行われましたし、そこでは日本の文化も紹介されていたはずなので、1曲、万博の曲を作ろうかなと。

宝野:万博の曲だから「みんなで行こう!」みたいな明るい曲にしようと言っていました。

片倉:最初にファンファーレが入って、Aメロでは子供の声で合いの手が入り、B、Cでより万博感を出してみました。おもしろい曲になったと思います。

宝野:「日出づる」は一見、日本っぽいけど、どんな国でも日は昇っていくわけで、様々な国々が集うまさに万博です。

ここで「国宝」という言葉も使ってみました(笑)。日本が誇る国宝を飾ったり、職人さんたちの技をみんなで見たり、集う世界中の人たちと交流しようと。私たちは心の中にも外にも美しいものを持っているから、みんなで分けあおうという素晴らしい歌です。

――最後にインストナンバーの「Art de Vivre」が入っていますが、どんな意図で作られたのでしょうか?

宝野:曲名は「美しい生活様式」という意味です。

片倉:後付けですけどね(笑)。

きれいなピアノの演奏から入って、途中にエスニックな感じも入る美しい曲です。「日出づる万國博覧会」の後なので、祭りの後のイメージで作りました。万博を楽しんだり、「Belle Époque」という時代を過ごした後や、夜寝る前に振り返ってみた時、明日からまたいい時間や生活を過ごせたらいいな、というイメージの曲になっています。

――そして通常盤には、ボーナストラックとして「森の祭典」が収録されています。

片倉:僕らがまだメジャーデビューする前、たぶん35年くらい前の曲で、1stアルバム『月下の一群』への収録候補曲でしたが、残念ながら収録されなかった曲です。

現在に通じるアリプロらしい曲だと思い、今回収録しました。レコーディング前だったので、正真正銘の新録曲です。自分たちでレコーディング&録音して、いろいろなレコード会社やCM会社にカセットテープを送りまくった想い出深い曲です。

宝野:今、考えるとこの曲で仕事をもらうことは難しかっただろうな、と思いました(笑)。改めて聴き直してみたら、この頃から早口で歌っていたんだなと。35年も前の曲とは全然思えないほど、今とほとんど変わっていないですね。今回、歌い方も当時と変えていないし……。

片倉:アレンジもほぼそのままで。せっかくの30周年だし、まだ世に出ていない曲があったので、ボーナストラックとして入れました。

裏話ですが、当時の楽譜が残っておらず、一生懸命聴いてコピーしたのですが、速すぎるなって(笑)。

 

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