音楽
工藤晴香 1stフルアルバム『流星列車』ロングインタビュー

終着駅を決めるのは、自分次第。たとえそこが終着駅だったとしても、別の駅に向かって旅をすることもできる──工藤晴香さんの1stフルアルバム『流星列車』のテーマは「列車、乗客、人生、旅」

「旅立ち」の次に完成したのはロックスターの新曲

──作られたのが昨年秋くらいだったそうで、そこからアルバムの制作が徐々にはじまっていったのでしょうか?

工藤:そうですね。9月23日のワンマンライブ(Zepp DiverCity )が終わったあとに、徐々にという感じでした。レコーディングも順次録りましたが、突然3曲連続で録ることもあれば、期間が空いたりとか。波があったので集中力が下がってしまうこともあって。

──そういう時はどうするんです?

工藤:休憩ください、って言ってコンビニに行って何かをちょっと食べる!(笑) 少しリフレシュしています。でもずっと同じチームでやってるからこそ、「休憩させてください〜!」って言いやすくて。ありがたいです。

──「旅立ち」の次に出来たのはどの曲なんでしょう。

工藤:8号車の「ROCK STAR’s Brand new song」ですね。

──この曲は以前発表された「ROCK STAR」の延長線上にあるものなんでしょうか?

工藤:そうです!

──でもイメージはまた違った雰囲気になってますよね。

工藤:そうですね。この曲は私がみんなに伝えたいことというより、自分が誰かに言われたいことを書いていて、自分が歌うという不思議な曲です。これまでは私が思っていること、みんなに伝えたいことを書いていたんです。今までとは違う技法で歌詞を書いたので私自身も楽しかったです。

──じゃあ<君は悪くない 悪くないよ>と肯定するような言葉は、くどはるさん自身が言われたいと思っていた?

工藤:この時は言われたかったんでしょうね、大丈夫だよって。ただ、この曲を聴いたファンの人は「くどはるが(自分に向けて)こう言ってくれてる」と思ってほしいなという気持ちはあります。でもそれをくどはるの主張のようにしたくなかったので、あくまでロックスターの新曲です、と。

──以前「ROCK STAR」についてうかがったとき、「私はロックスターなんだ」って自己暗示してるけど、遠い存在なんです、といったことをおっしゃっていましたが、ロックスターという存在は自己投影したような存在なのでしょうか。

工藤:ファンの方はそう考えるかもしれないんですが、微妙に違くて。私にもロックスターと考える人がいて、偶像じゃないんですけど、それぞれにイマジナリーフレンドのような存在がいると思うんです。だから前回のミニアルバム(『POWER CHORD』)で登場したロックスター……音楽に救われた人が最終的に自身もロックスターになって人を救うという曲でしたが、そのロックスターが出した新曲って感じです。シリーズものになっています。

──自分とはまた違う人格で書くっていうのは発見もありそうです。

工藤:そうなんです! すごく面白くて。密かにまたやりたいなと思っています。次はまだ考えていないんですけど(笑)。

──第3弾も楽しみにしています(笑)。この曲の中に出てくる<1step 右手あげ 2step 左手あげろ 3step 手を叩け いいじゃん>という言葉が好きで。コロナ禍でのライブでも楽しめるフレーズだなと思いました。

工藤:ライブを意識して書いた部分もあります。なかなか声が出せない世の中なので、手拍子を叩いている時のみんなの笑顔を見て「いいな」と思って。そういう曲を増やせたらと思い、歌詞にギミックを入れました。だからその歌詞の部分はみんなに手を叩いてもらいたいな〜と思っているんですが……テンポがめちゃくちゃ早いのであっという間に終わってしまいそう(笑)。でもその景色をステージから見たいなと思っています。

「Cry for the Moon」に込めた祈り

──前回お話うかがったときは、「Cry for the Moon」が音源化するか分からないとのことだったんですが、今回は2号車に収録されていて! しかもリード曲!

工藤:そうなんです! 前回お会いしたときはフルアルバムのフの字もなかったので、本当に分からなかったんです(笑)。満を持して、1年越しの音源化です。全曲完成したあとに、リード曲をどうしようかってなったときに……「Cry for the Moon」以外考えられなかったというか。全部良い曲ではあるんですけど、「Under the Sun」は既にシングルになっていますし、「工藤晴香らしさ」というものを考えたときに「Cry for the Moon」だなと。即決でしたね。

──くどはるさん的に、それくらい大きな存在だったと。

工藤:この曲だけちょっと特殊なんです。歌詞が暗いんですよね。「Under the Sun」とは本当に対照的なんです。羽ばたかないんだ、と。

私の中で初挑戦が多かったんです。今まではポジティブで強くて、ポップに攻めた曲が多い中で、「Cry for the Moon」だけは悲しくて、満たされない心が描かれていて。激しいサウンドに乗せて、叫び……いや、祈りというのかな。それを込めて、歌を届けるというのは私にとってもはじめてだし、新しい自分を見せたいという思いもあったので、この曲をリード曲にしたいなと思っていました。

──そして、3号車の「Utopia」で楽園に向かい、「Supernatural」で2人だけの世界に行くっていう。ライブで盛り上がりそうな曲が続きます。

工藤:「Utopia」は「楽園に行こう、行きたいところに行こう!」って割り切っているというか。ライブを経験したことで、ライブを意識した曲が増えたなと思っています。

──「Cry for the Moon」が特殊とおっしゃっていましたが、激しい曲の中にある5号車「HOPE」、6号車の「家路」も異色の雰囲気ですよね。「HOPE」はこれまでにないミドルバラード。さっき少しお話にありましたが、どちらも全部日本語で。

工藤:異色なんですよね。今までにないミドルバラードで書いていて楽しかったです。物凄くシンプルにして、登場人物が“みんな”しかいないという。一方の「家路」に関しては、いろいろな対象の人がいるので僕、私、君、を登場させないようにしていて。そこは歌詞を書いていて難しいところでした。激しい緩急のある曲が多いので、ちょっと音とハマらない時に、私や僕という言葉は当てはめやすいんですよね。物語的にも成立しますし。

そういう意味では「家路」も特殊ですね(笑)。昔の自分だったら絶対書けなかった曲だなと思います。「恥ずかしい〜!」ってなりそうで……。

──今書けた理由ってなんだと思います?

工藤:甥っ子が生まれたんです。甥っ子にはじめて会ったときに「生まれてきてよかったね!」って心の底から思って。その気持ちを歌詞に書きたいなと思ったんです。やっぱり生まれてきてくれたことを喜んでくれる人たちがいることが、すごく尊いなと思って。きっとみんな、そういう“帰る場所”があるのかなって。自宅、家族、友だち、パートナー、ペット……当たり前すぎて気づかない幸せってあるじゃないですか。でもそういう些細な幸せが大事なんだろうなって思ったんです。その大切さを書きたかったんですよね。

──この2年で、その当たり前すぎて気づかなかったことがどれだけ尊いことだったのかというのは改めて感じましたね。

工藤:そうなんですよね。当たり前の日常、早く戻ってこい!と思うんですけど、この新しい世の中が当たり前になりつつあるので、時代の変わり目に自分がいるんだなっていうのは感じます。だからこそ、今だから気づいたことというのを書いていきたいなと。

──甥っ子さん、可愛くて仕方ないんじゃないですか。

工藤:めちゃくちゃ可愛いんですよ! でも私のことは覚えてないんだろうな〜(苦笑)。あまり会えていないので。

──今度会ったとき、この曲を聴かせてほしいなぁ。

工藤:確かに聴いてほしい……いや、もうちょっと大人になってからだな(笑)。

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