【GWに見てほしいおすすめアニメその3】細かな描写に注目！ 美しすぎるアニメ『やがて君になる』は「好きを知らない」あなたに見てほしい【GWはアニメを見よう！】

ついに待ちに待った大型連休であるゴールデンウィーク（GW）が幕を開けました！　みなさんはどんな休日をお過ごしでしょうか？　今年のGWは最大10連休の方も多いと聞いています。

そんなに長い余暇時間があるなら、アニメを見てはいかがでしょうか？　それも、普段見ないような作品を。

今回の企画【GWはアニメを見よう！】では、アニメイトタイムズで活躍するライター陣が個人的に好きで見てほしいアニメをチョイスし、おすすめするだけのなんとも見切り発車なスペシャルプログラムをお届けします！

しかし、出揃った作品はどれも一級品ばかり。絶対に後悔はさせません！　ぜひ、ライターによる解説を参考にアニメを見てみてくださいね。

本稿では、2018年に放送されたアニメ『やがて君になる』をご紹介！　ライターは、せきどん。さんです。それではどうぞ！

美し過ぎる恋愛アニメ『やがて君になる』の魅力を伝えたい！！

今回紹介するのは、『やがて君になる』です。

なぜ私が本作品を紹介しようと思ったのか、その理由はとにかく「美し過ぎる」から。これにつきます。

もう本当に尊い。観ると心が浄化されます。

何が美しいのか、挙げればキリがありませんが、特に登場人物の感情の表現、これが繊細で、各キャラクターの等身大の思いを見事に表現しています。

さらにその感情がしっかりと理解できる形で伝わってくるのです。だからこそ、繊細な表現も生きています。

恋愛をテーマにした作品ということもあり、登場人物の感情が揺れ動くシーンが多く登場するのですが、その度に登場人物のリアルな喜び、悲しみ、迷いなどがひしひしと伝わってきます。

なぜこんなにも繊細に感情を表現できるのか、そしてなぜしっかりと感情が伝わってくるのか、その秘密に迫るとともに本作の魅力を伝えていきます。

ピュアな純愛を描いた作品を観てみたいと思っているそこのあなた！ぜひご覧ください！

あらすじ

人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える小糸侑は、中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが、逆に燈子から思わぬ言葉を告げられる─。「私、君のこと好きになりそう」（公式HPより）

『やがて君になる』最大の魅力〜感情が精細に伝わって来るのはなぜか〜

『やがて君になる』最大の魅力は細かい感情表現と、はっきりと伝える表現力。その裏には緻密な工夫が多く隠れています。美しさを産んでいるものとは何か、どこに注目してみるべきなのか。今回はポイントを３つに絞ってご紹介します。

①細かな目線の描写

注意してみるべきポイントのひとつ目はズバリ、キャラクターの目です。目線の変化による感情表現は『やがて君になる』を『やがて君になる』たらしめる根幹です。

本作ではキャラクターの感情の変化を目線の動きで表現するシーンが散見されます。

日常生活の中でも目にはついつい感情の変化が現れがちです。嘘をつく時や緊張している時、そして好意を抱いている相手に対してはついつい目を向けたり、そらしてしまうものです。

本作はそのような人の感情が自然と現れる部分にも細かい配慮を払っています。それは主人公だけに限らず全てのキャラクターにいえます。

例えば、８話の冒頭で橙子の同級生で生徒会副会長を務める佐伯沙弥香（さえきさやか）が中学校時代の先輩と再開するシーンでは、先輩の沙弥香に対する後ろめたさを表現するために、目線をそらすような描写がありました。

話している途中で目線をそらす動きを加えることでリアルに感情が伝わるようになっています。このような目線による表現が各話に１つは見つけることができるくらいに張り巡らされています。これこそが本作の特徴のひとつであり、繊細な感情表現を組み立てる要素のひとつだといえます。

②等身大の思いが詰まったモノローグ

二つ目にご紹介するのが、作中に登場するモノローグです。『やがて君になる』には登場人物の心情をモノローグで表現するシーンがたくさん登場します。

本作には詩的な表現を用いたモノローグが登場します。

第一話の冒頭もモノローグで始まるのですが、侑が持つ恋がわからないという感情を、侑の言葉で表現しています。

恋愛ということの辞書的な意味は理解しているものの、自分の肌感覚として理解できていないという侑の心情を正確に伝えながらも、直接的でなく、文学的な表現を使うことで登場人物の複雑な心情を表現できています。

楽しい、悲しいという直接的な表現が赤や青などの原色だとすれば『やがて君になる』はさまざまな詩的な言葉という他の色を混ぜることによって、より複雑な色彩を表現していると言えるでしょう。

③「特別」を見つけた燈子と見つけられない「侑」の対比

最後に本作を語る上で欠かすことのできない登場人物侑と橙子について、二人の間にある対比構造についてご紹介します。

物語開始時点では侑も橙子も好きということがわからずにいる状態でした。侑が同じ感情を持つ人と初めて出会えたと思ったのも束の間、その侑との出会いがきっかけとなって橙子は人を好きになるという感情を初めて知ることになりました。

恋をすることを知った橙子と未だ知らずにいる侑二人のそれぞれの立場があるからこそ、二人の感情を理解することができるのだと思います。

恋愛に対する考え方は人それぞれなのはいうまでもありません。愛する人がいることを幸せに思う人もいれば、自分は一人で生きていく方が気楽だという人もいます。そんな中、侑の「好きがわからない」という状態は一部の読者には理解することが難しい感情かもしれません。

ですが、橙子という「好きを知った」存在を登場させることで侑の心情をより鮮明に伝えることを可能にしています。

「好きを知らない」という感情を読者に理解させることでその後の侑の心情の変化を理解でき、読者が共感することもできるのです。

作品が進む中で、「好きを知らない」侑に惹かれる橙子と自分にしか見せない弱さを持つ橙子に対して特別な感情を持ち始める侑。文字にすると複雑な心情を表現することができるのも、物語序盤で二人の立ち位置を明確な対比構造にしたからこそ生まれるものなのです。

終わりに

繊細かつ、はっきりとした感情の描写によって私たちに登場人物の思いを伝えてくる本作。
ここまで筆者が考える本作の魅力についてお話ししてきました。

とはいえ、本作に対する思いは人それぞれ。
若き日の思い出を思い出す人、登場人物のピュアな思いにキュンキュンする人、緻密な心情描写に圧倒される人。こだわりにこだわられた作品だからこそ、十人十色のさまざまな感想が生まれてくる作品です。

『やがて君になる』が持つ世界観に魅了される方が増えることを願っています。

[文/せきどん。]

TVアニメ『やがて君になる』作品情報

ストーリー

人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える小糸侑は、中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが、逆に燈子から思わぬ言葉を告げられる─。

「私、君のこと好きになりそう」

スタッフ

原作：仲谷鳰（「月刊コミック電撃大王」連載）
監督：加藤誠
シリーズ構成・脚本：花田十輝
キャラクターデザイン：合田浩章
音楽：大島ミチル
アニメーション制作：TROYCA

キャスト

小糸侑：高田憂希
七海燈子：寿美菜子
佐伯沙弥香：茅野愛衣
槙聖司：市川太一
堂島卓：野上翔
日向朱里：寺崎裕香
叶こよみ：小原好美
箱崎理子：中原麻衣
児玉都：森なな子
小糸怜：小松未可子

公式サイト