話し合うほどに新たなリチャードが誕生する・両性の魅力を表現する稽古とは?――舞台『薔薇王の葬列』俳優 若月佑美さん&有馬爽人さん&和田琢磨さんインタビュー
森の出会いの展開もグッと引き込み、リチャードに影響を与えたい
ーー動き以外の演技面、公開稽古で見せていただいた森でヘンリーと出会うシーンについてもお聞かせください。ヘンリーの羊飼いとしての心の光と王の宿命である心の闇をどう感じて演じていますか?
和田:羊飼いは逃避行だと思っています。実社会から強制的にどこかへ誘う……キャンプに行っている感覚ですね。人によって違うと思いますが、釣りとか海外旅行とか。そこに偶然居合わせた運命の人。自分ひとりしかいない絶対領域にいとも簡単に踏み込んで来たけど居心地が悪くないと。それってすごくときめきますよね。
ーーそして、ヘンリーのときめきにリチャードの感情は乱されます。
和田:リアルなら惹き合うまでが早いんですよね。だから難しくて。こんなにすぐ「好き」とか言うかい⁉︎ みたいな感じですけど。(早い展開を)逆算してグッと持っていきます。どちらかというとヘンリーの方が森のシーンではリチャードに大きく影響を与えなければいけないので、繊細に演じてふたりの心を動かせるようにならないとな、と思っています。
有馬:リチャードは男でも女でもであって、どちらの性でもない役で、まだ正解がありません。でも父上と話す時は男性が多め、ヘンリーと話すときは自覚はないけど女性性が多く出ているのか、リチャードとしてどう対応していくかを研究していくべきなんだと考えています。
若月:森のシーンは和田さんがおっしゃったようにとても早い展開で、漫画だと二度出会ってから名前を言う場面を1つにまとめているので時間の経過が短いです。でも若月佑美として生活していても、昨日会ったばかりなのに親に話してないことを話している人とかいるんですよね。その「なんかこの人とは話せちゃう」という感覚は、リチャードが感じたヘンリーに対する感覚に近いのではないかと。リチャードは最初こそ警戒しますが、知らないうちに話していって。
普段、お城で暮らしているから知らない人には秘密を話さないと思うんです。でも、ヘンリーといると自分の立場を忘れて「気楽でいいな」と。そんな、なんでもない感情を言ってしまうリチャードでいようかなと思っています。
松崎さんも話していたのですが、「羊飼い」という言葉が、ヘンリーはすごく嬉しかったと。誰も知らない場所へ行って、初めて会った人として接してもらえることに喜びを感じるところまで、ちゃんと演じていかなきゃいけない。演出していただいたのできっちり大事に感情を乗せて、ポロッと言った一言との塩梅を上手く演じたいなと思っています。
Wリチャードによって変化する舞台を楽しんでほしい
ーー最後に舞台への意気込みと観客に見てほしいキャラクターの場面について教えてください。
和田:同じ役柄を男女でWキャストするのは珍しいと思うので、いろんな角度から楽しんでいただけると思います。ぜひ若月さんのリチャードも有馬さんのリチャードも2回見ていただきたいです。また、他の出演者によって影響の受け方も違うので、彼らだけの違いではなく作品としても別の色になるところも楽しんでいただければと思います。
個人的に瀬戸祐介さんのウォリック伯爵の「キングメイカー」という言葉が好きで、(ウォリックが)一番欲や本能に貪欲で人間らしいなと思うので注目してください。
有馬:物語が繊細で美しいからこそ、演者も見ているファンの方も同じ場所で生きていけるようにリアルな世界観をお届けできたらいいなと思いますし、それができる作品だと実感しています。そのためにさらに(演技を)磨きあげていこうと思います。
僕はこの作品でジャンヌが好きです。実際はリチャード的には惑わされて邪魔な存在ですが、ジャンヌはいつも側にいてくれるんですよ。同じく辛い過去を持っているけど優しくはしない、隠れた優しさがジャンヌにあって。言葉にはしないけど表情や台詞の息づかい全てが僕の役より繊細なのではないかと思うので、ジャンヌの全てのシーンが注目ポイントだと思います。
若月:シェイクスピアの舞台『ヘンリー六世』、『リチャード三世』を原案に漫画が生まれ、再び舞台に戻ってきてはいますが、決して難しい内容の舞台ではありません。シェイクスピアと聞くと深い演劇のイメージがありますが、現代に近いわかりやすい物語になっているので、身構えずに見に来ていただきたいなと思います。
全てのシーンに熱を入れていて、漫画では結構な巻数を舞台で公演するので、各シーンが熱く重いシーンになります……だから、全てのシーンが注目ポイントです。リチャードにも注目していただきたいのですが、実はリチャードに影響を受けている人がたくさんいます。
例えば、エドワード王太子の思い(恋心)にリチャードは最後まで気がつきませんが、(エドワード王太子は)最後まで追いかけてくれたり。リチャードは無意識に周囲の人物に影響を与えていくので、いろんな人の恋模様やケイツビーの思いに注目していただけると、さらに面白いんじゃないかなと思います。
【インタビュー/杉村美奈】
上演情報
舞台「薔薇王の葬列」 2022年6月10日(金)~19日(日)日本青年館ホールにて上演
チケット好評発売中!
公式HP:https://officeendless.com/sp/baraou_stage/
公式Twitter:https://twitter.com/baraou_stage
舞台『薔薇王の葬列』
2022年6月10日(金)~2022年6月19日(日)
日本青年館ホールにて
あらすじ
中世イングランド。 白薔薇のヨーク家と赤薔薇のランカスター家による王座を巡る戦い―"薔薇戦争"。 ヨーク家の三男として生を受けたリチャードは、 同じ名を持つ父の愛を一身に受けるが、 実の母セシリーには「悪魔の子」と呼ばれ蔑まれていた。 戦乱の中、父・ヨーク公爵を王にすることを願うリチャードは、 森で羊飼いの青年・ヘンリーと出会い、束の間の逢瀬に心を通わせる。 互いの素性を知らぬ二人。 しかしヘンリーの正体は、宿敵ランカスター家の王・ヘンリー六世その人であった。 リチャードは運命の戦禍を必死に生き抜いていく。 その身に宿す「男」と「女」、二つの存在に身を引き裂かれそうになりながら―。
キャスト
リチャード:若月佑美/有馬爽人
ヘンリー:和田琢磨
エドワード:君沢ユウキ
ジョージ:高本学
ケイツビー:加藤将
ウォリック伯爵:瀬戸祐介
エドワード王太子:廣野凌大
アン:星波
セシリー:藤岡沙也香
ジャンヌダルク:佃井皆美
マーガレット:田中良子
ヨーク公爵リチャード:谷口賢志
スタッフ
原作:TVアニメ「薔薇王の葬列」
脚本:内田裕基
演出:松崎史也
アクション:船木政秀
美術:乘峯雅寛
舞台監督:田中聡
照明:大波多秀起
音響:天野高志
映像:O-beron inc.
衣裳:雲出三緒
ヘアメイク:新妻佑子
小道具:平野雅史
演出助手:小林賢祐
宣伝美術:羽尾万里子(Mujina:art)
宣伝写真:渡邉和弘
WEB制作:遠藤嘉人(EAST END CREATIVE)
ロゴデザイン:橋本清香(caro design)
宣伝:ディップス・プラネット
制作:赤堀一美
プロデューサー:鳥居玲/木村学/下浦貴敬/山本侑里
舞台『薔薇王の葬列』公式サイト
舞台『薔薇王の葬列』公式Twitter
TVアニメ「薔薇王の葬列」 TOKYO MX他にて放送&配信中。Blu-rayシリーズ好評発売中。
公式HP:https://baraou-anime.com/
公式Twitter:https://twitter.com/baraou_anime