マンガ・ラノベ
秋アニメ『4人はそれぞれウソをつく』原作者・橿原まどか先生インタビュー

アニメ放送中! 漫画『4人はそれぞれウソをつく』橿原まどか先生インタビュー|エピソード作りは、シチュエーションを決めて4人の行動をシミュレーションするような感覚!?

4人の行動をシミュレーションするとエピソードができていく

――各キャラクターの性格はどのように考えていきましたか?

橿原:性格診断や人間を分類する本を読むのが好きなので、そこからヒントを得ています。

明確に参考にした、ということではないんですが、各キャラクターにXY軸のマトリックスを考えていて。例えば、リッカは極めて理念先行型で理想主義的、イデオロジストな人。関根は現実主義で適応的。千代さんと翼は、それぞれ女性ジェンダーの強い人、男性ジェンダーの強い人……といった具合です。

同じキャラにならないように、そういったものがある程度重ならないように決めていきました。

――関根ならツッコミ、というような物語の役割からではなく、性格からキャラクターを構築していったんですね。

橿原:参考書を読んでうまくいかなかったくだりと同じで、お恥ずかしながら自分は考えて物語を作れないんだと思います。

仮に「関根をツッコミとして立てよう」と決めてしまうと、自分の場合はガチガチに考えてしまうと思います。そうすると理屈だけが残り、作中の会話が人として自然じゃないコミュニケーションになってしまい、面白くなくなってしまうんです。

なのでエピソードを作るときも、軸となる行動の指針(1シチュエーション)を決めてシミュレーションするような感覚で作っています。

例えば関根がサイキック研究所の所長に連れ戻される回は、「密室に4人が閉じ込められたら各々がどういう反応をするだろうか?」ということだけを決めて描き始めているんです。

7、8ページ目くらいで「あ、じゃあここを超能力の研究所にしよう」と決めていて(笑)。なので、全然違うものになっていた可能性もあります。

――そういった作り方をしているのは、ご自身が勉強していた分野も関係しているんでしょうか?

橿原:そうですね、人間の感情や心理という曖昧な、ファジーな概念をどのように論理化していくかに非常に興味がありました。

例えば恋愛シミュレーションゲームだと、キャラクターの好感度が上がっていくじゃないですか。面白いのが、好感度が上がると、今度はあまりデートをしてあげないと嫌われるところです。逆に言えば、好感度を上げなければ、その子に何にも関与しなくても憎まれることはありません。

そういった具合に、現実の人間の中にある感情をシステムに落とし込む、ということに非常に興味があるんです。

『4人』もある種のシミュレーションで、こういう思考の人とこういう思考の人がいて、こうしたらこうなる、というのをシミュレーションするのが楽しいですね。

「バッドエンドにするほうが楽」その理由とは?

――これまで書いてきたエピソードで特に思い出に残っている回を教えてください。

橿原:第21話「合宿」がすごく気に入っています。この回は元々、最終回のつもりで描いていたんです。

終わり方を2パターン用意していて、最初は、リッカが星に帰り、軍人として大成し、いろいろあって死んでしまって、彼女の戦没100周年式典で終わるというビターエンドでした。

担当編集さんからの評判も悪くなかったのですが、描いているうちに本気で自分が悲しくなり、つらいな~と思ってしまって(笑)。

 

――完成したものは、リッカが星に帰りかけるも、3人からの呼びかけで最終的に踏みとどまるものになっていますね。

橿原:映画などを観たときに、一見ハッピーエンドでも、「よくよく考えたら全然ハッピーではないんじゃないか?」と考えた経験があると思います。

例えば、『ロッキー』の1作目なんかも、「あの後、ロッキーはどうなったんだろう?」とリアルに考えると、そんなに明るい未来は想像できない終わり方だと思うんです。ですが同時に、一番「よかったね!」と思える瞬間で切っているとも思うんです。

合宿回もそういった感じで、いつかリッカは星に帰る、千代さんは戦いの途中で命を落とすか、里に連れ戻される、関根もどこかで能力が暴走して、研究所に連れ戻される。でも「今この瞬間はよかったね」という先延ばしエンドのつもりで描きました。

それは別に絶望的な話ではなくて、「人生の中で美しい一瞬があったよね」というハッピーエンドに近い感覚で描いていたなと思っています。

自分の性格的には正直、バッドエンドにするほうが楽なんですが、頑張ってハッピーエンドにできて、かつそれがウソくさくないものにできたので印象に残っています。

――バッドエンドにするほうが楽なんですか?

橿原:「幸せを維持するのって幸せなんですかね?」と思っていて。

絶対に壊しちゃいけないものを持たされている状態、例えば、生まれたての赤ちゃんを抱っこさせられているのってすごくストレスだと思うんですよ。

――確かに、すごく怖いです。

橿原:「うっかり落としたら死んじゃう」と思うと辛いと思うんです。

ですがバッドエンドになってしまうと、少なくとも「壊してしまったらどうしよう」という恐怖からは解放されますよね。なので、壊れてしまった、もうダメだというところを描くのは“安心”でもあると思うんです。

自分は、人生が少し辛い時期に漫画を書き始めたこともあって、漫画には“安心感”を求めてしまいます。「この作品から現実と戦うエネルギーを得てほしい」という思いよりも、「読んでいる瞬間だけは現実から逃避して安心してほしい」という気持ちが強いんです。

そういう意味で、究極の安心はバッドエンドであり死で、自分的にはそっちの方が描くのは楽なんですが、それでも頑張ってハッピーエンドを描けたのでよかったです。

――ハッピーエンドが描けたことが手ごたえになったんですね。

橿原:漫画を描いているうちに自分の性格が明るくなったのかな、とも思います(笑)。

(C)橿原まどか・講談社/製作委員会はウソをつく
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