音楽
楠木ともり ライブツアー『PRESENCE / ABSENCE』千秋楽公演レポート

楠木ともり ライブツアー『PRESENCE / ABSENCE』千秋楽公演レポート|1stアルバムの新曲はすべて披露、彼女の存在証明となったライブ

ライブこそ彼女の“存在証明”であると強烈に印象付けたライブ

ここまで一気にアルバムの世界観を表現していくと、MCでは笑顔で観客とコミュニケーションを取っていく。途中で、2枚の1stアルバ厶『PRESENCE』と『ABSENCE』のどっちが好きかを聞いていったりしたのだが、1枚しか買ってない人を指して、優しい笑顔で「どうして1枚だけなの?」と問い詰めていくシーンは面白かった。「グッズを買ってくれているんで、いいでしょう!」と許してくれるまでが1セットで、アーティストデビューしてからできていなかった、ライブでのファンとの会話を楽しんでいた。

「体を自由に動かして楽しんでもらえたらと思います」と言って「もうひとくち」からスタートした後半。大きなクラップが起き、気持ち良さそうに、体全体でリズムを取りながら歌っていく。ライティングもカラフルだし、バンドの演奏も楽しそうだ。簡単な振り付けがある「StrangeX」では全編ウィスパーで歌っていく。実際ライブでここまで息を多めに歌うのは難しいのかもしれないが、そんなことは感じさせずに楽しませる。また、長い長い間奏では手を左右に振りながら、ステージを左右に移動し心をひとつにしていた。

「Forced Shutdown」は、おもむろに椅子に座って歌う。これはおそらく、ソファに座りながら歌っているMVも意識した演出だったと思うが、カオティックな楽曲の世界観に合わせ、2番からは、少しおぼつかない足取りで歩きながら歌っていたのが印象的だった。

ピアノの独奏、そして楠木の「雨が……」という言葉から激しい演奏が鳴り響く「遣らずの雨」。ライブも終盤に差し掛かり、バンドメンバーそれぞれの熱のこもった演奏と感情が揺れ動きまくるボーカルで圧倒する。1stアルバムは『PRESENCE』=“存在”、『ABSENCE』=“不在”というテーマで曲が分けられていて、この曲は『ABSENCE』に収録されているのだが、失ったからこそ、その存在が浮き彫りになるような感じもしていて、このテーマは究極、どちらにも当てはまる表裏一体のものなのではないかと、ステージでのエネルギーに満ち溢れた演奏を聴きながら、感じた。

そして元気に盛り上がっていた観客に座ってもらうと、今回のツアーのコンセプトについて真剣に語り始める。まだ声優としてデビューしたての、あまり知られていない時代にイベントで立った思い出の会場。あの頃から声優としても大きくなり、インディーズでのアーティスト活動を経てメジャーデビューも果たした。だがやっと、自分を応援してくれる人の前で精力的にライブができるとなったときに、コロナにより、ライブができなくなってしまった。できたとしても無観客。何かを届けたくて活動をしている彼女にとって、それはとても大きな出来事で、何を表現したいのかを見失いそうになったのだという。

だが、それでも何かを届けたいと思ってこられたのは、ファンのみんながいたからだと感謝を伝え、自分の“存在証明”をしたいと思って作ったのが、今回のアルバムでありツアーだったと伝える。そして「自分のことを知らない人でいっぱいだった会場が、今、自分に興味を持って出会ってくれた人たちでいっぱいなんだと思うと、十分に存在証明をして来られたんだという気持ちで、胸がいっぱいになります」と言う。

また、自分を肯定してあげることの大切さもメッセージとして送っていた。「たとえ自分って必要ないなと思うことがあっても、私のライブに来たらそんなことは思わないでいい。私にとってあなたが必要だし、そう思える場所を作ると約束します。そして、ここで過ごした時間をあなたの存在証明としてほしい」と力強く語り、自身も、このツアーで自分のことをちょっとだけ好きになったと打ち明ける。そしてみんなに「それを僕は強さと呼びたい」を届けていく。

冒頭のサビ部分をゆったりと心を込めて歌い、バンドの演奏が加わり景色が拓けていく。日常を生きていることこそ強さだと肯定してくれるような楽曲で、彼女がデビュー前から好きなアーティストとしてよく名前を上げていたハルカトミユキからの提供曲でもある。そんな大切な曲をしっかりと歌い届けていくと「めっちゃ楽しかったです。最後、この人数で歌ってほしい曲があるんです!」と言って「アカトキ」を披露。大きなクラップと、〈アップデートしていこうよ〉の大合唱。みんなの歌声が聴ける喜びを噛み締めながら、ライブの本編を終えた。

大きな「ともり」コールを受けて登場したアンコールでは、「眺めの空」をエモーショナルに歌うところから始まる。そしてバンドメンバー紹介と、グッズ紹介をハイテンションで行ったあとに、彼女の誕生日である2023年12月22日(金)にパシフィコ横浜国立大ホールにてバースデーライブを開催することを発表した。自身最大キャパとなる会場名を言ったときは大きなどよめきと歓声があったが、インパクト絶大のサプライズでもあった。最後はタオル回し曲の「僕の見る世界、君の見る世界」をみんなで歌い、ハッピーな気持ちになってライブを終える。ライブこそ彼女の“存在証明”であると強烈に印象付けたライブだった。

[文/塚越淳一]

ライブ情報

楠木ともり「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2023」

●日時:2023年12月22日(金) open 18:00 / start 19:00
●会場:パシフィコ横浜 国立大ホール

□チケット料金:全席指定 7,700円(税込)
※未就学児童入場不可
□枚数制限:お一人様1公演につき4枚まで
□SMA VOICE会員先行受付期間
9月2日(金)21:00~9月10日(日)23:59
□当落発表・入金期間
9月14日(木)18:00~9月17日(日)23:59
□お問い合わせ
H.I.P. 03-3475-9999 / https://www.hipjpn.co.jp/

ライブBlu-rayリリース情報

Kusunoki Tomori Birthday Live 2022『RINGLEAM』

発売日:2023年11月1日(水)

■完全生産限定盤[BD+フォトブック+三方背スリーブ仕様] ¥9,900(税込) / ¥9,000(税抜)

■通常盤BD[BD] ¥7,150(税込) / ¥6,500(税抜)

●収録曲
01. narrow
02. 熾火
03. アカトキ
04. よりみち
05. 山荷葉
06. タルヒ
07. 遣らずの雨
08. ロマンロン
09. absence
10. alive
11. バニラ
12. もうひとくち
13. 僕の見る世界、君の見る世界
特典映像:全会場ドキュメント

楠木ともりプロフィール

声優・シンガーソングライター。代表作は「チェンソーマン」マキマ役、「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」レン/小比類巻香蓮役、「魔王学院の不適合者 II~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」ミーシャ・ネクロン役 ・「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」宵崎奏役、「ヘブンバーンズレッド」茅森月歌役 等。

2020年「ハミダシモノ」でメジャーデビューし、リリースしたEP4作品は全てオリコンTOP10入り。2023年5月には初のフルアルバム「PRESENCE / ABSENCE」を2枚同時リリース。

同年9月にはTOKYO DOME CITY HALLでの単独公演を成功させる。声優活動を精力的に行いながら、自身で作詞作曲し、ライブグッズのデザインも手掛けるなど、多方面で才能を開花させている。

公式サイト
公式ツイッター(@tomori_kusunoki)
Official YouTube channel

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