音楽
「R.I.P.」でReoNaが紡いだ新たな絶望は理不尽に対する“怒り”/インタビュー

肺が潰れたって叫ぶしか無いし、ただ進みゆくしかない。進め 進め 正邪の行進――5周年を迎えたReoNaが紡ぐ『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』EDテーマ「R.I.P.」ロングインタビュー

「誰も聴いたことがない音楽を」

――「R.I.P.」には静かな怒りがこもっていて、サウンド的にも新たなReoNaの側面が見られる曲となっていますが、いつくらいからこの曲を作られていたんですか?

ReoNa:楽曲制作自体は実は結構前なんです。TVアニメ『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』(オープニングテーマ「Alive」)を歌わせてもらった時から「次回も……」というお話はいただいていました。『アークナイツ』チームの渡邉(祐記)監督から「誰も聴いたことがない音楽を」という熱意を受けて作り始めたのが「R.I.P.」になります。

――渡邉監督はどのような方なのですか?

ReoNa:情熱の塊のような方です。ものすごく深い愛情と情熱を持って作品づくりに取り組まれています。自分の作っているものに対するプライドも持っていて、「作品をもっとよくしたいから、僕はこうしたいんです」という意志をはっきりと伝えてくれます。『アークナイツ』という世界観は厚みのあるものですが、作品に対して、高くクリアな解像度を持たれていて。今回の曲に対しても「『アークナイツ』の絶望を表した作品にしたいので、それに伴って今までに聴いたことがないような曲をお願いします」という言葉をいただいていました。

――アシッドジャズをベースに、ソウル・ファンクやサウンドが軸となっています。これまでのReoNaサウンドにはなかったものですね。うねるようなベースラインも特徴的です。

ReoNa:今までにないほど挑戦的なスタートだったなという印象があります。ソウル・ファンクやアシッドジャズというジャンルは私自身あまり触れてきたことがなかったんです。作曲・編曲の毛蟹さんも通ってないジャンルではあったのですが、LIVE LAB.チームで色々とそういった楽曲を聴いていての有識者がいて。アシッドジャズを彷彿とするようなベースラインがあったら良いかも」という意見が出たんです。

それで、楽曲を作り始めるときに二村学さんに連絡して「こういうフレーズ感で、こういうイメージなんだけど……」と事前に相談させていただきました。二村さんはもともとファンクやアシッドジャズに精通された方なのですが、さらに研究してくださって。一方で毛蟹さんも研究してくださっていて……チームで音楽を作ってるからこそ生まれた曲だなとも思っています。

「80年代のアニソンの多彩さ」がキーワードに

――そもそも、なぜそのジャンルに挑戦しようと思ったんですか?

ReoNa:アニメに寄り添おうと考えたときに生まれたアイデアです。曲調が決まる前の段階から<正邪の行進>、軍歌、足音、ホーンセクションといったキーワードが出てきて。実際、4つ打ちの横乗りの雰囲気はレユニオンの足音のような印象があるなと感じていました。

――話がそれてしまうかもしれませんが、昔のアニソンは軍歌っぽい雰囲気があったように感じていて。もちろん曲によって違うんですけども。

ReoNa:“昔のアニソン”がまさにひとつのキーワードになっていたんです。昔の時代のアニソンを聴く身として、80年代のアニメソングって大人びていた印象があって……チームでもそういった話をしていて「昔のアニメソングってジャンルも多彩で、大人びていたよね」と。私自身、さまざまな「絶望」をアニソンシンガーとして探求してきた身として、いろいろな種類のアニソンがあっても良いのかなと思っていました。

――それで「R.I.P.」は作品に寄り添いながら、幅広いジャンルに挑戦した曲になっているんですね。<正邪の行進>というキーワードは、作詞を手掛けられたハヤシケイ(LIVE LAB.)さんから出てきたものなんでしょうか。

ReoNa:そうです。この言葉がケイさんから出てきたときに「それだ!」と思いました。『ハーメルンの笛吹き男』感もある言葉というか……。

『PERISH IN FROST』は、泥沼にさらに深く進んでいくパートという印象が私の中であったんです。徹底的にロドスのやりたいこと、レユニオンのやりたいことが深く深く離れていって。どちらにも己の正義はあるんだけど……その先に例え泥沼が待っていたとしても、進み始めた輪廻は止めることができない。そういう理不尽さ、絶望感に<正邪の行進>はピッタリな言葉だなと思いました。

――例え戻ったとしても、それはそれできっと泥沼で。行くも地獄、引くも地獄であれば進むしか無い。

ReoNa:肺が潰れたって叫ぶしか無いし、ただ進みゆくしかない。それって理不尽だなぁと思います。理不尽、哀しみ、苦しみも絶望だけど、怒りも絶望だと思うんです。その怒りを拾い上げて、言語化する作業ってとても大変なものだと思うんですが……まっすぐに怒っていて、さすがケイさんだなと思いました。

――<なあ>というフレーズからも、その怒りが伝わってきます。

ReoNa:それもケイさんから生まれた言葉で。ケイさんが表す怒りとしてすごくしっくりきました。きっとケイさん自身がきっと怒るときに「なあ!」って言うんだろうなと。だからレコーディングの時も、呼びかけるように、問いかけるかのように歌いました。この怒りが伝わると良いなぁと思いながら。

――<なあ>はあちこちに登場するフレーズですが、最初とBメロ終わりの「なあ」で違った印象を受けました。その差別化はどのように考えられていたんでしょうか。

ReoNa:Bメロの終わりにあるんですけど、私としてはサビの頭として捉えていたんです。だから歌いはじめの<なあ>とは少し歌い方も変えています。

――<もしも神様がいるなら>という言葉もあります。神様という言葉は、これまでの曲にも出てきましたけど、「R.I.P.」に登場する神様は少し残酷な印象があるというか……。

ReoNa:「酷い奴」みたいなつもりで歌っていました。神様って神頼みという言葉通り、自分を救ってくれたり、助けてくれたりする存在のように思うんです。でも「R.I.P」の中における神様は、手を差し伸べてくれる存在ではないんだろうなって。<もしも神様がいるなら>は、この世界では皮肉めいた言葉だと思います。

普段とは違うレコーディング風景

――今回は“怒り”もキーワードですが、ReoNaさんは普段怒るタイプじゃないですよね。

ReoNa:そうですね(笑)。だからレコーディングでは、頑張って頑張って、これまでの怒りの経験を思い出しながら歌っていました。ただ、サビの <Rest in peace>という言葉をどう怒って伝えるかは悩んだところでした。今込められる怒りの気持ちをどうにか歌で表現しようって。

――バンドやブラスチームのレコーディングにも、いつも通り立ち会われたんでしょうか。

ReoNa:はい。いつもお世話になっているバンドメンバーにお願いしていますが、こういう曲なので普段とはまた違った様子でした。例えば、荒幡さんの鍵盤のディレクションもすごく印象的で。「もう少しここ怒れますか?」「ほの暗くなりますか」など、感情を重視したディレクションを受けていました。あとドラムのバスドラムがものすごく大きくて。私がしゃがんだら入れるんじゃないかと思うくらい(笑)。なんだかそれが印象的でした。

――「シャル・ウィ・ダンス?」でもおなじみの宮野幸子さん(SHANGRI-LA INC.)さんがブラスアレンジとしてクレジットもされています。ブラスチームに関しても宮野さんが先導されたのでしょうか?

ReoNa:はい。宮野さんが連れてきてくださった方たちにお世話になって。宮野さんには、ReoNaのストリングスアレンジでいつもお世話になっています。

ホーンセクションのレコーディング現場では、今までに見たことのないくらいの緊張感が溢れていました。ブラスってキラキラした音色を足してくれる楽器というイメージがあったんです。<di-li-pa-pa du-pa-pa>(“ディリパッパ、ドゥパッパ” )の後に入るブラスに顕著ですが「こんなにもツヤツヤした音のまま、枯れることができるんだ」と。

――ラッパの音色も含め、泥臭さを感じるフレーズですよね。

ReoNa:やはりラッパの音は行進感も出るなとも思いました。ホーンセクションが入った瞬間に、楽曲の方向性がバチッと見えました。

――新機軸な曲ではあるんですけど、歌詞にはこれまでのReoNaさんを感じる部分もあって。奇しくも、5周年のはじまりにピッタリの曲だなと感じていました。

ReoNa:めぐり合わせというか、運命というか……。楽曲を作っているとき、未来は想像してはいるんですけど、いざ楽曲が表に出る時期になった時に、ピタッと今の自分に当てはまることが多いなぁと思っていて。それこそ「HUMAN」もそうなんですけども。最近その運命力みたいなものを感じます。不思議な力があるなと。

余談なんですけども、今日ロドス・アイランドの服を着てきたんですが……最近気づいたんですが、「Rhodes Island Pharmaceutical Inc. (ロドス・アイランド製薬)」って「R.I.P.」なんですよね。

――わ、本当だ……! 

ReoNa:「もしかしたらケイさんは、それも意識したのかな……?」と思っていました。それはケイさんにしか分からないので、想像するだけなんですけど。

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