映画
『青ブタ』原作者・鴨志田一が『ランドセルガール』の物語で表現したこと/インタビュー

『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』原作・鴨志田一先生インタビュー|「相手との関係値で自分の立ち位置が決まっていくという立体感が『青ブタ』で描きたいことのひとつ」

『ランドセルガール』は二本立てになる可能性があった

――『ランドセルガール』は原稿執筆時点から咲太の家族を掘り下げることは決まっていましたか?

鴨志田:企画を立てた段階では花楓が思春期症候群を発症して、咲太も大変な目に遭う。そして翔子さんに助けられるけれど、家族はバラバラになってしまうという物語の作りとして梓川家がありました。

そこがスタートの物語なので、かえでから花楓に戻る際の問題解決は必要です。さらに、その問題を解決したとしても家族はバラバラなままなので、絶対に掘り下げなければいけないし、咲太が向き合わなければならないことは認識していました。

ですが、企画立ち上げ当初は原作7巻である『ゆめみる少女』で描いた部分がひとつの区切りだと思っていて。『おでかけシスター』と『ランドセルガール』で描かれる問題にそろそろ向き合わなければと感じたのは、『シスコンアイドル』を書いている頃でした。

僕からは『ゆめみる少女』で終わる空気を出していたのですが、編集部は続きを書いてくれという雰囲気で……(笑)。

 
一同:(笑)。

鴨志田:一度きっちり終わるつもりだと話していたので、続けるとしたらこの先の物語は大変だぞと感じていました。次の『おるすばん妹』でかえでの話を書き上げた頃には、もうこの物語を続けようという流れになっていましたね。

ですが、『おるすばん妹』から続けて咲太の話を書くつもりはありませんでした。なぜなら『ゆめみる少女』と『ハツコイ少女』を経て成長した咲太なら、家族と向き合うことができると考えていたからです。やっぱりあれだけハードな経験をすれば、精神的にも成長すると思いますし。

その頃には大学生編を書くことが決まっていたのもあって、地味な話ではありますが高校生編の最後を飾る大きなピースとして、今の内に終わらせておきたいという考えでした。

――今の話を聴いて少し気になったのですが、花楓がかえでになる前の咲太はどんなキャラクターだったのかという設定はあるのでしょうか?

鴨志田:序盤の『バニーガール先輩』の状態とそこまで変わらないと思います。あれを幼くしていく感じでしょうか。孤立した少年ではないですし、そんなに捻くれてはいないのかなと。

 

――ありがとうございます。『バニーガール先輩』と言うと、今回の『ランドセルガール』で発症する咲太の思春期症候群は、これまでのヒロインたちと違ってその時の麻衣と近いものだと感じました。

鴨志田:お母さんとの関係値を照らし合わせると、咲太は「お母さんなしで生きていこう」というスタンスで、お母さんは「花楓をどうにかしなきゃいけない」という気持ちだから、お兄ちゃんである咲太が蔑ろになってしまっている。咲太もお母さんも互いに存在が希薄になってしまっているんですね。

自分を産んでくれた母親から認識されないというアイデンティティの喪失が、「見えなくなる」という表現になっています。物語のテクニック的な話をすると、高校生編を締めくくるエピソードが最初のエピソードと同じ要素を持っているとパッケージとして美しいという部分もありました。

――麻衣の『ランドセルガール』での役割や立ち位置は、執筆する際にどのように考えていたのでしょうか?

鴨志田:現実の中でお母さんとの折り合いを少しずつつけている人、咲太より少し先に行っている人物になるかと思います。

この部分が先ほどお話した『おでかけシスター』で注目すべき要素に繋がるのですが、麻衣自身も家族との関係が良好な子ではないですよね。お母さんのことを今でも許していないと言っているけれど、時々は連絡しているくらいの関係性です。なんだかんだ言いながら卒業式には来てくれていますし。

咲太が問題を乗り越えるにあたって、一足先にハードルを越えたポジションの人が必要だったんです。実は書けるかどうかわからないと思いつつ、元々麻衣がお母さんと仲直りするにあたって思春期症候群を発症するエピソードを挟もうかとも思っていました。

ですが麻衣がこれまで経験してきたことを踏まえると、お母さんと折り合いをつけるエピソードは必要ないのではないか、彼女自身が成長してお母さんの気持ちを理解することで乗り越えていけるのではないかと感じられて。だからなのか中々筆がのらず、やっぱり麻衣は現実の中で一歩ずつという結論に落ち着きました。

物語の表は咲太を中心に展開されますが、それと対比となる麻衣の関係も少しずつ動いていると感じていただけたら嬉しいです。

――麻衣があそこまで咲太を好きになった理由みたいなところも聞かせて貰えますか?

鴨志田:あれだけもがいているところですよね。物語的な理由としては翔子さんとの出会いが大きいのですが、真摯な彼の生き方や姿勢を見て麻衣は「もうこのタイプの人間とは出会えない」と思っているでしょうね。

――麻衣といえば、本作には小学生の頃の麻衣に似た少女が登場しています。彼女がどのような存在なのか理解しやすくなるヒント的なものもお願いします。

鴨志田:みなさんが感じた通りだと思います。実はこの先の展開にも関係してくることなので、まだ黙っておきたいんです。なぜ咲太にだけ見えるのか……という謎の答えもいつか明かされるはずだと願っていてください!

(C)2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project
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