声優
井上和彦自伝本『風まかせ』インタビュー

井上和彦さんが初の自伝本を出版「お芝居は自分の生き様が全て、今の演技に活きてくるのではないかなと思っています」 『風まかせ 声優・井上和彦の仕事と生き方』インタビュー

声優デビュー50周年! 現在も第一線で活躍し続けるレジェンド声優・井上和彦さん。そんな井上さんが2024年3月25日(月)に、宝島社より発売された初の自伝本『風まかせ 声優・井上和彦の仕事と生き方』を出版しました。

アニメイトタイムズでは発売を記念して、井上さんにインタビュー。少年時代の思い出から、現在の心境、そして未来のお話まで、いろいろとお話をうかがいました。

 

 

声優デビュー50周年!

――本作を執筆することになった経緯を教えてください。

井上和彦(以下、井上):今年はデビューして50周年で、70歳になります。区切りのいい年でもあるので、何かできないかという話をしていて、ちょうどその時に本のお話をいただきました。本として、どこまで形にできるかわからないですけど、残すことができたらいいなと思って執筆することになりました。

――本にするまでにどのくらいかかりましたか。

井上:お話をいただいてから、半年以上はかかりました。思い出す時は、なるべく時系列に沿ったお話をしているつもりですけど、記憶が行ったり来たりしているので、もしかしたら事実と違っているかもしれないです(笑)。

 

 

――70年を振り返るのは大変でしたね。

井上:思い出せて良かったです(笑)。40歳の頃に、声優の学校をやることになって、その時も自分のことを振り返る機会がありました。

それまでは無意識にお芝居をやっていたから、よくわからなかったんですけど、声優の学校では生徒にお芝居を教えなくてはいけないので、自分の中でお芝居について整理するために、19歳の頃から20年間ぐらいの自分、井上和彦が声優になった過程みたいなものを振り返りました。

その時と同じように、今回本を制作するにあたって、生まれてから70年間振り返ってみました。「あぁ、こういうこともあって、こういう周りの人がたくさんいて、今の井上和彦ができあがったんだ」ということを振り返ることができたので、すごくいい経験をさせてもらいましたね。

お芝居は経験したことが何一つ無駄になることはないと思うので、自分で生きてきた生き様みたいなものが全て今の演技に活きてくるのではないかなと思っています。

 

『風まかせ』のタイトルはウィンドサーフィンから

――井上さんが感じる本の魅力とはどんなところにありますか。

井上:デジタルでは絶対に味わうことのできないインクの匂いや紙の匂いを嗅ぎながら字を読めるということですかね。読みたいなと思ったら、いつでも本を開けるじゃないですか。見なくてもいいんですけど、見ない時には「そこにある」という安心感があるし、何かの時にふと本を手に取って2、3ページでもちょっと見て、またしまうこともできる。それが本のいいところですよね。

時々、昔読んでいた本を引っ張り出して読むこともありますよね。「あの時、こんなことを考えながら読んでいたな」とか、今の自分を比べてみて、「ちょっとだけ大人になったかな」とか、「ずいぶん自分は成長したな」とか、「年取ったな」とか(笑)。いろいろなことを感じることができるのが本の魅力ではないかなと思います。

 

 

――この本をどんな人に読んでほしいですか。

井上:本を通して一番伝えたかったのは、「井上和彦ができるまで」ということです。「井上和彦がどうしてこのようになったのか」というのを何となく感じてもらえたらいいなと思っています。

本にはお芝居のことだけでなく、仕事への取り組み方や人との付き合い方などに関しても書いてあります。何かの生きるヒントになればいいかなという思いで執筆したので、声優を目指す方だけでなく、いろいろな方に読んでもらえると嬉しいです。

――『風まかせ 声優・井上和彦の仕事と生き方』というタイトルについて、お聞かせください。

井上:『風まかせ』という本のタイトルは、ブログのタイトルにもなっていますし、ウィンドサーフィン(※1)をやっているというのもあります。ウィンドサーフィンは、見えない風を感じて進みます。風の力で進むんですけど、風が見えなくて、周りの揺らすものを見て、それを探して進んでいくんです。かっこいいふうに言うとね(笑)。

仕事に限っていえば、僕たちは仕事を選べないですし、来たお仕事をどれだけ一生懸命演じるかによって、次の仕事がいただける。そのことによって、また次につながっていく。自分で「これがやりたいから、やらせてよ」と言ってできる仕事ではないんです。

※1:風を使って水面を走るマリンスポーツ

 

 

――レジェンド声優の井上和彦さんでもそうですか。

井上:もちろんです。僕は「この役をやらせてよ」ということは、いっさい言わないですけど、でも「やりたいな」というという気持ちはあったとしても、できないことの方が100%ですね。

声優というのは、自分が選ぶのではなくて、他の人に選んでいただいて、仕事につけるという職業です。自分がこちらに行きたいなと思ったら、そういう方向でお芝居をしていくしかない。そうすると、誰かが感じ取ってくれて、キャスティングをしてくれる。そういうことだと思っています。

ブログを書いた時も、その思いで『風まかせ』というタイトルをつけました。ブログは最近ちょっとごぶさたして書いていないんですけど……(笑)。それもひとつの風まかせだと思って、とても自分らしいなと感じています。

それから、石ノ森章太郎先生(※2)のファンクラブ会報の名前が「風のたより」というんです。それは後で知って、僕のブログのタイトル『風まかせ』と似ていると思ったんですけど、石ノ森章太郎先生のおかげで、この世界での道ができたので、それも何かの縁だろうなと感じて、この言葉は自分なりに大事にしています。

「風まかせ」というのは、穏やかな風にまかせているわけではなくて、台風の時も強い風が吹きますし、南から吹いていた風が午後から途端に北風になることもありますし、急に風向きが正反対になることもあるんですよ。

南から吹いていた風がピタッと止まって、15分後に反対の方から風が吹いてくることもあります。天気の場合は予報を見ていれば、だいたいわかるんですけど、人生や仕事に関しては、そんな予報はないですからね。そういう意味では、『風まかせ』はいいタイトルかなと思っています。

※2:漫画家。代表作は仮面ライダーシリーズや『人造人間キカイダー』、『HOTEL』など。井上さんは『サイボーグ009』(1979年)の主人公・009(島村ジョー)を演じた。

 

 

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