秋アニメ『ネガポジアングラー』第12話上村泰（監督）×岩中睦樹（佐々木常宏役）振り返りインタビュー｜「釣りって何が面白いの？」という答えを常宏なりに見つけていた

一緒に釣りに行くなら藤代さん（岩中さん）とこずえちゃん（上村監督）

――ありがとうございます。ここからは作品全体の振り返りというか四方山話も少しお伺いしたいなと思っていまして。まずは『ネガポジアングラー』というタイトルの意図をお聞きしたいのですが。

上村：タイトルは作品が大分出来上がった時に考えたんですよ。

常宏と貴明の関係や、常宏が“ネガティブ”からちょっとずつ“ポジティブ”になっていく感じ。あとは10話11話あたりの常宏と貴明の立場が逆転するとまでは言わないですけれど、そういう“裏表”とフィルムのネガポジがかかって、多面的とか両面的な意味で『ネガポジ』となり、それに釣り人たちという意味の『アングラー』を足して『ネガポジアングラー』となりました。

――キャラクターたちの釣りの上手さはどんな感じなのでしょうか？

上村：恐らく1番上手いのはハナちゃんです。2番目が藤代さん。貴明が3番目か4番目ぐらいだと思いますね。こずえはなぜかサバを釣るのが異様に上手いっていう設定があります（笑）。アイスもすごいラッキーでやたら釣れますね。アルアはあんまり上手くないのかな。

岩中：町田が全然出てこない（笑）。

上村：町田は普通じゃないですか？　知識が豊富だから経験値で釣っているって印象です（笑）。

――お二人がキャラクターたちと釣りに行くとしたら、誰と釣りに行きたいですか？

岩中：僕が一緒に釣りに行きたいのは藤代さんですね。何を聞いても多分教えてくれると思うので。

上村：みんな魅力的ですが、強いて言えばこずえかな。他は思い思いに釣っていて、僕と喋ってくれなさそう。こずえだったら一緒に釣ってくれそうなので（笑）。

――制作する上で「ここはこだわった！」みたいな部分があれば教えてください。

上村：かなり初期段階の取材時にちょっと面白い話があって。釣りをまったくしたことのない制作スタッフが本作を「正解のあるファンタジーみたいですね」と言っていて、すごく面白いこと言うなと思ったんです。

大都会のすごく綺麗な景色が広がっていて、そこで釣りをするっていうことが釣りをしたことがない人から見ると、ファンタジーに見えると。でも、釣りという現実にある作法があって、現実の見たことがある魚もいる。ファンタジーで例えばドラゴンが出てくる場合、作品に合ったドラゴンをデザインできるわけじゃないですか。でも釣りには……極端な話、1メートルのサバなんて勝手に考えられないわけで、そこにはちゃんと正解があるんです。

そういった“正解”をきちんと描いていく、こだわって積み重ねていくことで面白くなる作品だと思い制作していました。僕自身も釣りが好きなので、その好きの強さ、思いの強さみたいなものをどれだけフィルムに焼き付けられるのかっていう思いはありました。

結果的には3Dで魚を表現することになり、長嶋さんというすごく素敵な作家さんにお願いできたことが本当にラッキーでしたし、しっかりと3Dを作り込むこともできました。そういう部分を見て「何か面白そうだな」って感じてもらえたら嬉しいですね。

――では最後に、ここまで見てくれた読者の皆さんにメッセージをお願いします。

上村：ここまで見ていただいて本当にありがとうございます。先ほども少しお話しましたが、常宏たちの物語はきっとこの先も続いていくと思います。

色々……貴明は就職しているんですよとか話しましたが、そんな設定は僕の頭の中でふわっと考えてるだけなので（笑）。皆さんいろいろ想像していただいて、この先も続いていくハナちゃんとか、常宏とか貴明とか、他のメンバーのこととかを思いながら、釣りもちょっと好きになってもらえたらありがたいなって思います。

岩中：僕も本当に、ここまで見てくださってありがとうございますっていう感謝の気持ちでいっぱいで。無理しない程度に人や自分と向き合うのがすごく大切なことだよって伝われば嬉しいです。

僕自身も釣りが初めてでしたが、実際行ってみて釣れると楽しいですし、釣れなくても水の感触や吹き抜ける風を感じながら物思いにふけるのも味わい深くて素敵でした。ぜひ『ネガポジアングラー』を見て興味を持っていただいた方はこれを機に釣りを始めてもらえたら嬉しいです。

――ありがとうございました！

　
［文・二城利月］

作品概要

あらすじ

多額の借金を抱え、さらに医者から余命2年を宣告された大学生、佐々木常宏。
鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。

ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。
ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。

手元に伝わるアタリは、生の実感――。

転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。
そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……？