秋アニメ『ネガポジアングラー』第11話 上村 泰(監督)×岩中睦樹(佐々木常宏 役)振り返りインタビュー|『ネガグラ』は1歩踏み出す話ではなく、0.5歩踏み出す話(上村監督)
毎週木曜22時よりAT-X・TOKYO MXほかにて好評放送中のオリジナルTVアニメーション『ネガポジアングラー』。自身も大の釣り好きである上村泰監督が、『BLUE GIANT』・『幼女戦記』を手掛けたNUTとタッグを組んでお届けする、「釣り」を題材にしたアニメとなっています。
不幸続きな青年・佐々木常宏が「釣り」を通じて、様々な出会いや経験を積んでいく様を描く本作。アニメイトタイムズでは、上村監督と佐々木常宏役の岩中睦樹さんに各話ごとの感想や収録エピソードなど、たっぷりとお話を伺ってきました! 毎話ごとの振り返りインタビューとして、各話放送後の金曜日に毎週更新中。ネタバレ満載となっていますので、ぜひ各話を見てからご覧ください!
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“人のために動けるようになった”常宏の成長
──常宏と貴明の喧嘩から続く11話となりますが、まずは見た感想からお伺いできますか?
岩中:ようやくと言っていいのかわかりませんが、自分と向き合うことができた回だったと思います。常宏が心の拠り所にしていた場所……というか人が出て行っちゃって、そこでようやく大事なことに気がついた。でも関係を元に戻したいけれど、今までそんな経験がないからその方法がわからず……って感じだと思います。
ハナちゃんと会話するシーンとかは演じてて楽しかったですね。ファイルーズさんと掛け合いをしていて。
──「だったら釣りしてる場合だろ。釣りをしてれば貴明に会える」「こういう時こそ、釣りをしてる場合か」というのはなるほどと思いました。
岩中:成長を感じましたね。ハナちゃんと話しているところもそうですけれど。この辺りからは声のトーンが1話の頃と全然違っています。
──監督はいかがですか?
上村:元々10、11、12話で一つのまとまったストーリーで考えていました。そんな中で11話では初めて常宏が”人のために動く”んですよ。心情だけのストーリーラインで話をすれば人のために動けるようになった、動いたっていう時点で常宏にとってはゴールなんですね。
僕の中でこの作品はマイナス0.5の人が0になる話というか、1歩踏み出す話ではなく、0.5歩踏み出す話なんです。それができたのが11話であり、”人のために動く”ということが結果的に釣りに繋がっているというところが『ネガグラ』としてうまくできたかなって思っています。
──お気に入りのシーンはありますか?
岩中:11話だと、エブリマート内で噂がどんどん飛躍していってアルアが「何言ってるかよくわからない」って言っているシーンとか後半の話を聞いてもらえないシーンとか好きですね。
上村:ちなみにこの話か前の話あたりからこずえが(佐々木さん呼びから)常宏さんって呼ぶようになっているんですよ。少しだけ距離が近くなっているんです。
※編集注:10話冒頭から呼び方が変わりました。
岩中:え、そうなんですね! それは監督の指示で?
上村:突然そうなのか、面白いからやるかみたいになったのかは細かく覚えていませんが、距離が近くなったことを表現したいよね、っていうのはありました。
岩中:今すぐ見直したくなってきました。
上村:あと、個人的にはこの話数からドリフト※っていうルアーのテクニックを使っているんですが、これは今までの釣りアニメで誰もやってないんじゃないかなと思っています(笑)。やっぱりシーバスを狙うんだったら、ドリフトは必要だろうなと思ってたので、そういうのはちゃんとこだわりたいと思って表現しています。
※川や潮の流れにルアーを乗せ、流されてきた小魚のように見せるテクニック。
──11話で他に好きなシーンがあれば教えてください。
岩中:僕は常宏が一人で黙々と勉強してるところが好きですね。
上村:この辺の音楽は音響監督の岩浪さんが作曲家の菊谷さんに「ここ、めっちゃいい音楽で!」って発注していまして、実際に音楽が上がってきた時はめちゃくちゃ良くてテンション上がりました。
岩中:そんなに感覚的な発注もあるんですね(笑)。
上村:作中通して一番長く常宏が映り続けているシーンで、しかも常宏自身の成長を描いていくシーンなので、音楽でも魅せたいなと思っていたシーンですね。
──監督の好きなシーンはいかがでしょうか?
上村:(Bパートすぐの)ハナとの会話シーンですね。画面としては大人しいというか静的な流れですけれど、背景の夕焼けもすごく綺麗で好きなシーンです。
[文・二城利月]
作品概要
あらすじ
鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。
ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。
ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。
手元に伝わるアタリは、生の実感――。
転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。
そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……?
キャスト
(C)NEGAPOSI-ANGLER PROJECT