音楽
ΛrlequiΩが注ぐ命のリアリティ「血ヲ通ワセロ、ソノ命全テニ。」インタビュー

ΛrlequiΩ(アルルカン)「血ヲ通ワセロ、ソノ命全テニ。」が、2025年の今、生まれた理由とは。そして彼らのルーツにある漫画・アニメカルチャーとは──暁(Vo)、來堵(Gt)、奈緒(Gt)、祥平(Ba)にインタビュー

ただ生きるだけじゃなく、自分の命を燃やして生きたい

──では、今回リリースされるシングル「血ヲ通ワセロ、ソノ命全テニ。」は、バンドにとってどんな立ち位置の曲なのでしょう?

暁: シンプルに「ライブで暴れたい!」っていう衝動から生まれた曲ですね。新曲で。最近は歌モノやバラード系の楽曲も増えていたんですが、「やっぱりライブで思いっきり暴れられるような、熱い曲がほしいな」と思って作りました。

──制作のテーマについても教えてください。

暁: 「未来」について考えていたとき、このタイトルが浮かびました。人は日常を送る上で、“暮らし”として生きていくことは難なくできるだろうなと思って。でも、それだけじゃなく「本能的に生きること」も大切だと思ったんです。要は、さっき言ってた心が動く瞬間ですよね。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、愛したい、愛されたい。そういう感情の動きが、人間らしさにつながると思っています。

アニメや漫画でも、キャラクターの心が大きく動く瞬間にこそ魅力があるように、音楽にもそういう力があると思うんです。でも、今の世の中って「失敗が許されない空気」がどんどん強まっていて、ちょっと怖いなと思うんですよね。本能的な部分って、本来は失敗したり、恥をかいたりすることで研ぎ澄まされていくと思うんです。ちょっとしたミスや言葉の選び方一つで叩かれたりする。そんな状況に、僕自身すごく危機感を持っていました。

──確かに、現代社会は「完璧じゃないと許されない」風潮が強くなっていますよね。私自身もその文化に窮屈さを感じることがあります。

奈緒:インターネットの普及で、ちょっとしたミスでもすぐに可視化されてしまう。昔は失敗しても、知られないままのことが多かったと思うんです。でも今は、失敗がすぐに広まり、「なぜ調べなかったんだ」って責められることもある。情報が多い分、調べれば分かるはずなのに、ミスをするのは許されない、みたいな空気になっている気がします。

暁: SNSやAIの発展で、どんどん便利になっている一方で、人間の感情や本能的な部分が置き去りにされている気がして……。最近よく言われるコスパとか、タイパとか。そういう効率的なものを気にしているうちは、自分の思う「命」はしっくりこないというか……。結局のところ、「君は何が好きで、何が嫌いなの?」っていうシンプルな問いを突き詰めていくことで、自分にとっての幸せや生き方が見えてくると思うものなんじゃないかなと。

もちろん、効率を重視することで上手に生きていく方もいらっしゃるとは思うんです。ただ、目的と手段がまぜこぜになってしまうと、なんのために効率を重視したんだろう?と。やはり僕は生活としての「生きる」より、本能としての「生きる」を大切にしたいなと思いました。誰かにとっての、正解・不正解じゃなくて、自分にとっての考えを伝えることが重要だなと。

そうやって考えたときに、このタイトルが思い浮かんだんですね。「血ヲ通ワセロ、ソノ命全テニ。」。ちゃんと「血を通わせる」というのは、ただ生きるだけじゃなく、ちゃんと自分の命を燃やして生きたいなと思ったんです。

──ジャケットしかり、曲の構成しかり、タイトルしかりですが、「未来」というテーマとともに、生々しさも反映されてますよね。

暁: そうですね。未来っぽいものを表現しようと思うと、『ブレードランナー』や『攻殻機動隊』みたいな世界観を想像するじゃないですか。それに、そっちを見たほうが絶対に未来っぽさがあると思うんです。そういうことを考えた時に、自分はどうしたいんだろうな、自分はどういう音を聴かせたいかな、と思いながら考えていきました。そういう話をざっくりと先に(奈緒に)していましたね。「こういう曲を作りたいんだ」と。

──曲先行の制作だったんですか?

奈緒: そうですね。というのも、もともと原曲はほぼ完成形に近い状態であったんです。選曲会をして「この曲が今回のテーマにいちばん近いよね」と選んで、そこからブラッシュアップして。僕としては、出来上がった曲をもう一度壊して、新しく作っていくので……メンバーからアイデアを募って、それを拾っていくという感じでしたね。それをめちゃくちゃ繰り返していきました。何度も破壊と再構築を繰り返しながら、最終的に今の形になりました。

──まさに、制作過程そのものが「未来」っぽいですね。

奈緒: そうですね、たまたまではあるんですけど(笑)。曲の全体像としては、ゴシックとメタリックが合わさったような、スチームパンク感のような雰囲気が良いなと思っていました。それも意図してというよりは、作っていく中で自然とそうなっていった感じです。尖ったサウンドだけど、しっかりキャッチーさも残したいという意識はありましたね。

──アイデアを募ったということでしたが、來堵さんや祥平さんは、制作にどんな形で関わっていましたか?

來堵: 基本的には、暁のビジョンをどう具現化するかという部分ですね。例えば、自分がインプットしてきた音楽の要素を取り入れたり、シーケンスのサウンドを工夫したりして、「ただ未来っぽい」だけじゃなく、今の時代にフィットする形に仕上げていきました。

さっき暁も言ってましたけど、例えば僕らが想像する「未来的」な要素をそのまま持ってきてもしょうがないと思うんですよ。自分たちならではの音として発信することが重要なわけで。そこを自分たちの今の感覚で、近年っぽい音の感触に仕上げていくことを考えていました。「これが今の俺等が想像する未来じゃないかな」ってところを想像しながら、形にしていったところがあります。

最初からある程度形になってはいたんですけど、それを客観視して、もう少しこうした方がいいんじゃないかとか、新しい要素を入れよう、といろいろと考えていって……ある意味、自分の見方を養ういい経験になったと思っています。

暁:僕はイメージはあるものの、メンバーに「もっとこう、もっとこう」ってニュアンスで伝えることが多いですね。でも、実際にどうすればいいのかの手段はわからないので、そこをメンバーに助けてもらっています。それこそ、一緒にバンドをやっているからこそ、互いに意見を出し合いながら形にしていく。それが、まさに“血ヲ通ワセル”過程なんじゃないかなって。そこに胸を張れるか、というのも大切なところのように思います。

──バンドのメンバー4人がそれぞれの血と肉を注ぎ込んでいく感覚ですね。

暁:そうですね。それが一番大事なところだと思っています。

──祥平さんは劇伴音楽の影響も受けているということでしたが、今回の楽曲にそれが反映されることはありましたか。

祥平:僕が好きな劇伴のタイプはオーケストラ的な要素が強いので、今回の楽曲にはそこまで直接は反映されてないかもしれません。それで言うなら、まだまだ僕自身、聞き込みが足りないなって思いましたね(笑)。

暁:次はオーケストラにしましょうか。

一同:(笑)

命を注いだことで見えたもの

──今回の制作を通して、皆さんの中で何か気づきはありましたか?

暁:僕は「やっぱりそうだよね」っていう感じでしたね(笑)。もともと僕らは出身もバラバラで、最初から密な関係だったわけじゃなくて。どちらかと言うと「なんとなくこうだよね」っていう感覚でなまじやれていたんです。でも、今回の制作では、お互いの温度感をちゃんと共有して、それを形にすることで、本当に「血が通う」ってこういうことなんだなって再確認しました。「やっぱりそうなんだな」と。

もともと僕は、人付き合いも得意じゃないタイプで、昔は全員敵に見えていたくらい(苦笑)。でも、敵より味方のほうが良いよなって。みんなが小学生のときには感覚的に気づいていたようなことを、僕は全然わからなかったんですよね。最初は拒絶していたものを受け入れたり、少しずつ受け入れられるようになったり……まだまだ、その途中ですけど……改めて、そういうことに気づいた感じはありましたね。みんなはどう? 

奈緒:僕は普段、一人で何でもできちゃうタイプなんです。他人となにかやるとなると、それぞれ「できること」のレベルが違うじゃないですか。すげえやつもいれば、自分より少し下にいる人もいる。そのバランスを取るのが本当に難しいなって改めて感じました。全員の意見を反映させるためには、誰かを置いてきぼりにしてもダメだし、優れたものだけを集めても偏りが出る。

人と何かを作るのって、めちゃくちゃストレスがかかるんですよ。でも、その過程を経て最後に出来上がったものが「これ、いいじゃん!」ってなった時の2%の達成感がすごい。それを求めて98%のストレスに耐えている、みたいな(笑)。

──その2%のために頑張る(笑)。

奈緒:そうなんですよ。基本的に人との摩擦ってめんどくさいもので。でも、その中でしか生まれないものがあって、それって結局、一人では生まれないものなんですよね。だからこそ、バンドとしてやっていく意味があるのかなって思います。「しんどい」「だるい」と思いながらも、完成して「良いじゃん」ってなる。

──ある意味、すごく器用でありながら……。

奈緒:器用貧乏だと思いますよ。基本的に、僕はすごく人間らしいというか……面倒なことは嫌いだし、楽(らく)して生きたい。だからこそ、使えるものは積極的に使うっていう考え方ですね。インターネットやAIもそう。僕はガンガン肯定派ですけど、使い方を間違えたら確実に終わるとも思ってます。でも、終わるときは終わるしな……みたいな、ちょっと達観してる部分もある。とはいえ、終わりたくないからこそ、ちゃんと考えて使おうっていう気持ちもあります。

たぶん(メンバーの)3人はもっと気を使って、人のことを考えて、「これを言ったらどうなるか」って慎重に動ける人たちですよね。僕はもう、そういうのを考えるのが疲れちゃって、「もういいや」ってなるタイプ。でも、結局は頑張らないといけないなって。自分が嫌なことをやらないと、欲しいものも手に入らない。「仕方ないですね、頑張ろう」って感じです(笑)。

──來堵さんはどうですか?

來堵:今回の気づきはシンプルですね。それこそテーマ通りじゃないですけど……。制作のやり取りを通して、「こういう考えがあってこうなったんだ」っていう流れを共有できたことが大きかったです。これまでって、完成形だけを見て「良い・悪い」で会話していたところがあったんですけど、そのプロセスを一緒に経験できたことで、「そう考えているだったら、こうじゃない?」って伝え合って、今までとは充実感が違ったような気がします。

よりメンバーの考え方も知れたし、自分自身についても新たな視点が生まれました。「じゃあ自分は?」ってところまで考えることができました。僕自身も、ちゃんと未来に進んだっすね。

──どんな答えが出ました?

來堵:まだまだこれからですね。作品として形になったので、ここからライブやインストアイベントやこういうインタビューなどを通じて咀嚼しながら、受け手の反応も見て、自分の次のステップに進んでいければと思います。

──よく「ライブで曲が育つ」と言いますが、逆に「曲に育てられる」こともあるのかもしれないですね。

來堵:今回はまさにそうですね。曲を作っていく中で、自分が何を大切にしているのかを改めて気づかされました。あとは、これを現場でどう表現していくかですね。すごく良いきっかけになりました。

──祥平さんは今作を経て、どのようなことを感じられましたか。

祥平:自分が考えていることやイメージを形にして、それがどう反応されるか、そのワクワク感を大事にしていきたいなって思いました。

──まさに「未来」ですね。

祥平:そうですね。例えば、来週のジャンプの発売を楽しみ、アニメの放送が待ち遠しいとか、そういう小さなワクワクでいいんです。改めて、そういう気持ちを大事にしようと再確認しました。

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