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『ウルトラマンアーク THE MOVIE』辻本貴則インタビュー【ネタバレあり】

【ネタバレあり】『ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク』辻本貴則監督インタビュー|「この作品を作っている間は、みんなが想像力を解き放っていたんです」

「もう地球を1周するしかないと思ったんです」

ーー辻本監督が担当された、ラスト2話(第24話&25話)についてもお聞かせください。演出するうえで、特に意識したことはありますか?

辻本:全体を通して主人公(飛世ユウマ)の物語を描いてはいるけど、1話完結型の話が多かったですし、そういう意味で「主人公の回」は結構少なかったと思うんです。だからこそ縦軸では、ユウマとウルトラマンをしっかり描くという意識でやっていました。

特に最後の2話に関しては、ユウマが「ウルトラマンとして生きていく」と決意する話を描きたかった。ウルトラマンは他人の体を借りて地球にいるわけですから、そのウルトラマンの気持ちをユウマに伝えるというか。ウルトラマンとユウマのコミュニケーションをしっかり描くことをテーマにしていました。

ーーラスト2話はどちらも夢の描写から、物語がスタートしています。第24話ではウルトラマンアーク(に化けたスイード)が「全ては夢だった」とユウマに語りかけていました。

辻本:どうしてもテレビシリーズのクライマックスってド派手な爆発とか、見るからに強そうな敵が出てくる展開が多いですよね。今後もそういう展開は王道としてあると思いますが、今回はどちらかというと主人公の内面を揺さぶるような、内向きな物語にしたかったんです。「地球が危ない!」という規模の大きい方向に持っていくと、より世界観を描く必要が出てくるので、むしろ主人公を描きづらくなります。

この作品の世界観は、第14話、第15話あたりで説明しましたし、もちろん更に補強は必要ですが、どちらかというと主人公のパーソナルな部分をしっかり描く方向でいきたいなと。そういった経緯から、「夢の中で攻撃される」という展開に持っていきました。あとは、「今までみんなしっかり観てくれてたけど、この物語は作り物で全部嘘なんですよ」って、一度、物語そのものをひっくり返す描写もやりたかった。

ーーそして、第25話の冒頭は、それを上回る衝撃的な画と言いますか。

辻本:あれをやってるのが萩原聖人さんというのが面白いですよね。あのシーンはハウススタジオで撮りました。家具は置いてあっても、本もなければ食器もなくて。本来なら全部、装飾で埋めていく必要があるんですが、「埋めたとて、ただ普通に見えるだけだよな」と、なんだかちょっと気がついて。

であれば、「むしろ物は埋めずに外側だけあって、中は何も詰まってない」状態にしようと。それこそスイードもそういう世界を準備はしたけど、全く想像力が足りてなくて間に合ってないというか。杜撰で強引な感じが出ると思ったんです。あとはやっぱり違和感ですよね。ちょっとしたファンタジー要素を常に匂わせるのが、この作品っぽいと思っています。

一つ思いついたら、連鎖的にどんどん思い浮かぶんですよ。「お箸とお茶碗持ってもらって、これでご飯食べるフリの芝居をしてください」とか。スタッフも空の醤油さしを置いてくれたり。実は新聞もありました。紙と枠線だけあって内容は何も書いてない白紙の新聞。お芝居の中には入れられなかったですけど、そういうアイデアも入っています。

ーー暗黒宇宙戦士スイードとの最終決戦では、地球を一周する「アークファイナライズ オーバーロードセンセーション」が視聴者の度肝を抜きました。

辻本:ウルトラマンが光線を放つ時に、気持ちが高ぶるとさらに強い光線を出せるみたいなシーンって結構ありますよね。加えて、その太いビームが出た時に反動で後ろに下がるという描写も。

その流れで「とにかく反動がすごいから、すごい距離を後ずさるんだ」という発想から始まって。ただ、ウルトラマンアークは想像力を解き放ったバトルをするわけだから、「人が思いつかない戦法でやっつけなきゃ駄目だ」と。ちょっと馬鹿馬鹿しい画になっても、こういう時はやりきった方がいいので、もう地球を1周するしかないと思ったんです。地球を1周する描写は、古今東西のSF映画にもありますよね。地球は丸いから。

ーー最終的には元の場所に戻れるという訳ですね。

辻本:更に言えば、1周すると相対していた敵とは背中合わせになるじゃないですか。ライバルと背中合わせで間合いを図るシーンも、よくアクション映画に出てきます。あの画が見たかったというのもありますね。

次があるなら、“ウルトラハグ”を超えたい

ーー作品制作の中では、一つのアイディアから連想していくことが多いのでしょうか?

辻本:最初から全部思いつくことはほぼ無いですよ。ウルトラハグもそうですし。

ーーウルトラハグも?

辻本:思いついたのは、脚本が出来上がってから……字コンテを書いている時だったと思います。

普通に変身をやっても、アイテムを掲げるだけだよなと思って、「何かないかな?何かないかな?」って。それこそ、打ち合わせの前日くらいにひねり出しました。

元々ウルトラマンアークは「光の巨人・ルティオンがユウマの中に居る」という設定で、声が萩原聖人さんじゃないですか。ユウマのお父さんと一緒なんですよ。それにはもちろん理由があって、「ユウマを助けるときにお父さんとお母さんの魂も一緒にハグした」という裏設定なんです。なので変身で現れた瞬間、「お父さんだったら息子をハグするだろうな」と。

ーー感動的ですね。TVシリーズのラストではSKIPの仲間たちもハグしていて。

辻本:あれも制作の途中で思いついたんですよ。変身者以外もハグできるなって。だから他の監督に対して、「誰もやらないで……」って念じながら(笑)。

でも結局、思った以上にどの監督もウルトラハグに興味を示さなかったです。内田監督の担当回ではよくやってくれていましたけど、それ以外の方はほとんどやってくれなくて、「もうちょっと興味持ってよ」という感じでした(笑)。でも合成カットって数は限られてますし、合成をどこに使うかは各話監督の采配なので、お任せするしかないのです。話を戻すと、最後にSKIPのメンバーをハグするというのは、必ずやりたいって思っていました。

ただ、もし次にメイン監督をやるなら、もうサラッと変身できなくなっちゃったので、「どんなアイデアにしようかな?」という気持ちもあります。

ーー逆に言うと、既に次のアイディアを考え始めているんですね。

辻本:いいえ!(笑)そこまで準備できる人間ではないんですけど、またその時にひねり出すんだろうなと。個人的にはウルトラハグを超えたいですね。でも、あそこまでハートフルな変身は思いつかないから、ド派手にするか、ギャグに振るか。でも、ギャグに振ったら円谷さん怒るだろうな……。

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