
文房具、ドーナツ、怪異──ファンだからこそ生まれた特別なイラストに会えるのはここだけ!〈物語〉シリーズ × Mika Pikazo POP-UP『ENCOUNTER 遭遇』特別インタビュー
「苦しいものは苦しい」と認める『〈物語〉シリーズ』の素晴らしさ
──Mika先生と「西尾維新作品」との出会いや思い出についてお聞かせください。
Mika:西尾維新さんとの出会いは『クビキリサイクル』でした。学生のときに本屋さんで出会ったのですが、「このタイトルは何!?」と惹かれて、明らかに異質に輝いてました。すぐ買って読んで、「この作品は普通じゃないぞ」と。
その後、高校生のころに『〈物語〉シリーズ』とも出会ったのですが、実はアニメより先に「君の知らない物語」や「恋愛サーキュレーション」を知って聴いていたんです。「staple stable」などは、学生時代の日常の曲といいますか、“あのとき”を思い出す曲だなと、いつも思います。自分の中にある“あのとき”を思い出す曲って、あとで振り返って何度でも聴いちゃうんですよね。
「これから始めるぞ!」と、エンジンをかけるために聴くことがあるのですが、制作に集中できますし、心が洗われる感じもしますね。
──『〈物語〉シリーズ』の楽曲が、Mika先生の原動力にもなっているのですね。先ほど、羽川翼のイラストを制作する際に感情移入という言葉も出ましたが、まさに“あのとき”のきらめきを、本作を通して見ていたのかなと。
Mika:『〈物語〉シリーズ』のヒロインたちが抱えているものは本当に重く、普通ではないし、尋常ではない……そんなバックボーンを抱えながら学生時代を生きるのは、とても難しいことだと思うんです。学生の自分にとっては、目の前のことがすべてですから。逃げられないし、理不尽だと思うんです。なんでこんなことになるんだろう、って。
大人になれば、目の前の問題に対して「こういう解決方法もあるな」「自分がこうやって考えれば楽になるな」と思いつくこともあるかと思いますが、子どものころはそれも難しい。苦しいことを、100%真に受けてしまって、「どうして自分は」と考えてしまう。誰かを悪者にしたくなるし、自分が被害者だ、と感じてしまう時期だと思います。
そういった問題に対して『〈物語〉シリーズ』は、“正義”のような解決で片付けないし、無理やり納得させるわけでもない。一人ひとりが問題を受け入れて、「苦しいものは苦しい」と認めていく……。そんな姿がアニメーションで提示されていて、見たときにビックリしたんです。
Mika:そして、ひとつの問題を解決したからといって、その人の人生が終わるわけでもなくて。新たに生まれてくる疑念や不安をも描くところが素晴らしいなと思っています。
人生はずっと順調なわけじゃなくて、思ってもいないような怪異が目の前に現れたりする……。だから、『〈物語〉シリーズ』の新作が発表するたびにすごく楽しみです。
Mika Pikazoが追い求める、新たなエンターテインメント
──イラストレーター・アートディレクターを志したきっかけをお聞かせください。
Mika:イラストレーターに関しては、本当に小さいころから絵を描いていたこともあり、「絵を仕事にしたい」と考えていました。無意識にそばにあった選択肢です。
アートディレクターに関しては、イラストレーターとして仕事をしていく中で生まれた道で、音楽がきっかけのひとつでした。
──音楽がきっかけだったのですか?
Mika:国内外問わず音楽アーティストのライブやミュージックビデオを見るのが好きなんです。
個人的に好きな音楽のライブ映像を見たときに、ただアーティストさんが歌っているだけでなくバックの映像や細かい装飾がたくさん合わさって、ひとつの空間が出来上がっていて。それを見たときに「ただ歌を聴いているだけじゃないんだ」「見ている人を感動させるために色々なものを作って、面白いと思ってもらうようにしているんだ」と感じました。
その空間にたくさんの人がいて、熱狂している。そして、それを体感している。イラストなどの制作物ひとつで完結するのではなく、様々な要素が集まってひとつの体験になる、その様子に憧れたんです。
イラスト一枚から得られる感動も好きなのですが、自分にとっては、もっとそれ以上のなにか、感情を湧き起こすような装置を作りたいと思いました。そう考えていくうちに、一枚一枚イラストを描いていくだけではなく、空間やコンセプトを作りたいと思うようになりました。自分の作品性が平面から飛び出た立体……装置……空間……そういうものをとにかく作ってみたいです。
──エンターテインメントそのものが、先生の原体験なのですね。
Mika:エンターテインメントが大好きですし、自分にとって一番のモノだなと思っています。ずっと憧れてる。
──Mika先生といえば、ビビッドで美しい色使いをイメージされる方も多いと思います。そのアートスタイルが確立された経緯についてもお聞かせください。
Mika:少し前に実家に帰ったとき、学生のころに描いたイラストを見たのですが、そのときにはもうカラフルだったんですよね(笑)。今の自分が描いているイラストの色彩感と変わらないんだな、ブレていないんだなと思いました。
──イラストを描いていて楽しいと思う瞬間というと、やはり色付けの工程になるのでしょうか?
Mika:うーん……色付けも含めて全部が楽しいのですが、ラフを作るときが最も集中して、気持ちがノッているかなと思います。
「コレを描きたいんだ!」という気持ちがブーストされている状態なので、気持ちが込もっているのかなと。とにかく自分にとっては、ラフのイメージをブラさないことを意識しているので、ラフと見比べて描くことを大事にしています。
──ラフを元に、完成まで走り抜ける制作スタイルなのですね。
Mika:制作の途中で要素を追加することもあるのですが、色や雰囲気、形はラフのままですね。なので、イラストが完成したあとに、「思ったのと違う……!」となってしまうときがありますが、そのときが一番焦るんですよ(笑)。「どうやって完成させよう……」と悩んだり……。
──そんなときは、どのように乗り越えているのですか?
Mika:音楽を聴きますね。とにかくその絵に向かえるような音楽を選んで、いかに気持ちを入れるか、集中するかを考えます。無理やり自分をゾーンに入れ込みます。
──アートディレクターとして、今後挑戦してみたいこと、あるいは密かに抱いている「野望」のようなものがあれば教えてください。
Mika:これまでは、イラストのテーマや展示会のコンセプトを表現するための空間づくりを意識していたのですが、それをもっと拡張して、作品が完結していない、お客さんがいることで成り立つ装置を作れないかと考えています。
自分のイラスト以上のパワーといいますか……イラストを飾るときはその一枚が綺麗に見えるようなディレクションが一番に来ると思うのですが、それだけではなくて。「こんなものは見たことがない!」というような体験をしてもらえる空間が作れるのではないか、と考えています。自分の作品性すらも、壊して作り替えるような、そういう体験をまずしたいのかもしれません。
──先生とお客さんで、ひとつの空間を作り上げるようなニュアンスでしょうか。
Mika:そうですね。私にとって展示会は、SNSでイラストを投稿するのとは違って、ファンのみなさんと対話できる場所であり感覚を同じ空気で共有できるところだと思っていますし、空間を通して日々無意識に過ごしてしまったものに意識してもらうような……そういったことをしてみたいです。
自分がライブを見て「面白い!」と思ったものを、きっとイラストでも新しい表現となって見せることができるのではないかと思っています。
──「イラストレーター・Mika Pikazo」としての展望についてもお願いします。
Mika:イラストに関しては……千本ノックといいますか。
──千本ノック?
Mika:直近の数年は、一枚一枚のイラストを大事に描いて、完成させることを大切にしてきました。それに対して、ただひたすら描くことで、色々な表現や描き方を試してみたいと思っていて。今までできなかったことをどんどん表現できればと思っています。とにかくたくさん量を描いて、今の自分がどれだけ描けるのかを試してみたいですね。感覚としては、「速く遠くまで走りたい」……みたいな感覚です。実際に走るのは苦手なんですが……(笑)でも、あの速く走って息が苦しくなる感覚が好きなんですよね、沢山の絵を描いてランナーズハイになりたいです。
──多作という意味での千本ノックなのですね。
Mika:そうですね。「たくさん描きたい」と「一枚の傑作を描きたい」の周期が定期的に来るんです。今は多作のときだ!! と脳内に電気が走ったので、挑戦していきたいと思います。
【インタビュー・撮影:西澤駿太郎】
〈物語〉シリーズ × Mika Pikazo POP-UP『ENCOUNTER 遭遇』イベント情報
場所:〒101-0021 東京都千代田区外神田 3-16-12アキバCOビル1F
主催:株式会社Helixes maxilla事業部
入場料:無料
会期
2025年5月3日〜5月15日
5月3日(土)・4日(日)・5日(月・祝):完全予約制
5月6日(火・祝)〜5月15日(木):フリー入場
開催時間
月〜金:10:00~20:00
土・日・祝:9:00~21:00
(C)N/K・A・S

















































