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『タコピーの原罪』上田麗奈×小原好美インタビュー|「救いは点在している」

アニメ『タコピーの原罪』上田麗奈さん(しずか役)×小原好美さん(まりな役)インタビュー|「心が苦しくなる覚悟を」オーディション秘話からアフレコ現場の葛藤、作品の魅力まで徹底解剖

タイザン5原作の『タコピーの原罪』(集英社ジャンプ コミックス刊)。2巻完結ながら発行部数145万部を突破した衝撃作が満を持してアニメ化。しかも今回は、6月28日(土)午前0時より、各プラットフォームにて配信がスタートし、それ以降、毎週土曜日に配信されるという。テレビアニメと違い、各話の尺の制約がないというのは、原作をアニメ化するにあたって、大きなメリットとなっているように感じた。

そんな本作のアニメの配信を前に、上田麗奈さん(しずか役)と小原好美さん(まりな役)にインタビューを実施。原作を読んだ際の衝撃、オーディション秘話、アフレコ現場での感情と葛藤、そして作品の魅力について、たっぷり語っていただきました。

 

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タコピーの原罪
ハッピーを広めるため地球に降り立ったハッピー星人のタコピーは人間の女の子しずかと出会う。ピンチを救ってもらったタコピーは、しずかの笑顔を取り戻すため不思議な力を持つハッピー道具で奔走する。しかし、しずかはおうちと学校で何か事情を抱えているようで・・・。これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語――。作品名タコピーの原罪放送形態配信スケジュール2025年6月28日(土)~2025年8月2日(土)Netflix・AmazonPrimeVideoほか話数全6話キャストタコピー:間宮くるみしずか:上田麗奈まりな:小原好美東:永瀬アンナハッピーママ:能登麻美子チャッピー:藤原夏海まりなの母:恒松あゆみまりなの父:川田紳司しずかの母:大地葉潤也:逢坂良太東の母:内山夕実スタッフ原作:「タコピーの原罪」タイザン5(集英社ジャンプ コミックス刊)監督・シリーズ構成:飯野慎也キャラクターデザイン:長原圭太プロップデザイン:10+10 中井杏2Dワークス:アズマ 10+10美術監督:板倉佐賀子色彩設計:秋元由紀CGディレクター:茂木邦夫カラースクリプト:大谷藍生撮影監督:若林優編集:坂本久美子音響監督:明田川仁音楽:藤澤慶昌アニメーション制作・プロデュース協力:ENISHIYA主題歌OP:「...

 

それでも、キャラクターの近くに救いは点在している

──原作を読んだ印象を聞かせてください。

上田麗奈さん(以下、上田):オーディションを受けるときは、タコピーというかわいい生き物が出てくるということくらいしか知らなかったのですが、受けるにあたり、マネージャーさんから「元気なときに原作を読んでください」と言われたんです。「もしかしたら苦しくなるかもしれないので、覚悟して読んでください」と。で、覚悟をしてから読み始めたんですけど、それでも「いったん休憩を挟もうかな」と思うショッキングなところはありました⋯⋯。

 

 
これはとんでもない作品に出会ってしまったなと思ったのですが、子供たちや親たちを見て、すごく胸が苦しくなる内容だったからこそ、タコピーや子供たちが、その先どうやって生きていくのか、生きていけるのかというのを最後まで見届けなければならないと思えてきて、それ以降は最後まで読み進めることができたという思い出があります。ただ、キャラクターの表情が左右で違ってみえるという特徴があったり、キャラクターのセリフや行動から、影の中にも光が見えるという物語にも受け取れたんですよね。善と悪とか、希望と絶望のすごくグレーなところを綱渡りしているけど、キャラクターのすごく近いところに救いが点在している感じがあって、そこは特に魅力的だと思いました。

小原好美さん(以下、小原):最初は、タコピーもかわいいし、ほっこりしたお話なのかなと思ったんです。ただ、私がオーディションを受けたタイミングでは、すでに声の入ったPV(上巻発売記念PV)が公開されていたので、それを拝見したら、かわいいとは?みたいな(笑)。とんでもない雰囲気だったので、これは原作を把握しておくべきだ!と思って読んでみたら、おそらく多くの読者と同じように衝撃を受けてしまいました⋯⋯。

個人的に、こういった題材の作品に出る機会がなかったですし、事務所から「まりなちゃんを受けてください」と言われたときも、これまでチャレンジはしたけど、受かったことがない系統の子だなと思ったんです。だからたぶん落ちるだろうなという気持ちがどこかにあったんですけど、受かったら私にとってチャレンジングなことになりそうだとも思ったので、いろいろと覚悟を持ってオーディションを受けました。結構メンタルも持っていかれる作品なので、決まったらいいなという気持ちと、決まったらどうしようという気持ちの両方ありましたが、それだけ、いろんな魅力が詰まった作品だと思いました。

 

 

──それぞれ、演じたキャラクターの印象はいかがですか? しずかは、タコピーに出会った人間の少女ですが、あまり笑顔を見せないキャラクターでもあります。

上田:しずかに関しては、自分が孤独であることがこびりついているイメージがありました。これまで、いろんな傷つくことがあったと思うんです。無邪気さだったり、無意識だったり、無関心だったり。利己的な人の心ない言葉にひとつひとつ傷ついて、そんな自分を自分でも守れないし、誰も守ってくれない⋯⋯。だから、自分にとって都合の良い・悪い相手はいるけど、心から信頼できる人はいないんだろうなと思いました。また、反対意見に過剰に反応したり、敵・味方の判断を急ぎがちだったり、思考の癖がすごくリアルだと感じました。そんな中で、ハッピーを広めるために地球に来たハッピー星人のタコピーと、いろんなドラマが繰り広げられていくので、そこから変化するのかしないのか⋯⋯とても難しいキャラクターだと思いました。

──まりなは、しずかのクラスメイトとなりますが、しずかをかなり敵対視していて、強く当たってくるキャラクターです。

小原:たった2巻のマンガで、ここまでのお話があるんだ!と、全部読み終えた上で、改めてまりなと向き合いました。あまりネタバレはできないキャラなのですが、読み始めたときのまりなの印象と、後半の印象が少し変わるんです。そう考えると、彼女も環境が良ければ、違ったんだろうなと思いました。それはしずかにも言えることで、恵まれた温かい環境で育っていたら、2人が仲良くしている未来もあったのかなと思うんですよね。そういう、生きている環境に左右されるというところには生々しさを感じました。

そんな子をどう演じていけばいいんだろうと考えたんですけど、この子って頼る子がいないんですよね。作中では母に寄り添いたかったんでしょうけど。ただ、演じるにあたっては私が軸というか、彼女の中に入るわけだから、想像の世界だけど、どれだけまりなに寄り添えるか⋯⋯だったんです。衝撃的なことは起こるけど、それでも寄り添っていかなければならないと思いながら演じていました。

 

 

──今、演じたときのお話が少し出ましたが、役作りという面では、どんなところを大事にしましたか?

上田:この作品の特報PVを収録したときのディレクションで、「諦めを強く出したい」という話があったんです。なので本編も諦めをベースにして、それを意識しながら演じていきました。とはいえ、しずかって表情が豊かなところもあるんですよ。飼い犬のチャッピーといるときは笑顔になっているし、自分にとって救いや希望が見えたときは、喜怒哀楽がさらに見えやすくなるんです。反対意見を言われたとき、ムッと過剰に反応しちゃうところとかもそうですね。意外と喜怒哀楽があるんですけど、そこを出しすぎず、でも無感情、無気力になり切らないところを狙っていけるように頑張りました。

あと、なるべく人の話を聞かない。相手の心の内を聞こうとしない、その感覚がそもそもないような感じになれば、人と話しているときの噛み合っていないチグハグな感じが出せるのかなぁと思い、そこも意識して演じていました。善・悪の悪に見える瞬間もあるけれど、彼女の言動はなるべく衝動的なものであり、グレーなものにしたかったので、善・悪をはっきり付けすぎずに演じられたらいいなと考えていました。

 

 

──例えば、上田さんとして、しずかを助けてあげたくなったりはしなかったですか?

上田:あぁ⋯⋯でも、「しずかの感覚もわかる」っていう感じだったかもしれないです。上手くいかなくて、コミュニケーションが成り立たない、ずっと地面を掘り続けているような時期は私にもあったから、わかるなぁと思って。もちろん、全部がわかると言ったら乱暴ですが、あのときの引き出しを引っ張り出して、こう思っていたなぁと思いながらやっていたので、光のほうから闇を見ている感じにはならなかったかもしれないです。

小原:私は、さっき寄り添わなければと言ったんですけど、正直何もかもわからなかったんです。実体験がないことですし、引き出しがなくて⋯⋯。で、まりなって感情的になるシーンが多いんですね。怒ったり、泣いたりするのって勢いが必要な感情なので、極端なことを言えば、どういう言い方でも成立はするんです。なので、家でひとりでたくさん練習するより、現場で掛け合ってみて、その場で出た勢いを大事にしたほうが生々しいのではないかと思ったんです。

ただ、その際の不安点として、怒りの感情をあらわにするキャラクターに必要なのは、強い音を出せる人なのではないかというのがあって⋯⋯。私はキーも高いほうなので、感情の起伏が大きい彼女の声になれるのだろうかと思ってしまって、第1話の収録では、そんな思いを抱えつつも一生懸命向き合っていました。ただ、普段はあまりないことなんですけど、「何で私になったんですか?」と、飯野慎也監督と音響監督の明田川仁さんに聞いてみたんです。そしたら、「アニメはデフォルメされた世界だから『こういう行動を取るにはこういう声質の人』というのがあるけど、実際の世界だったらそんなのないじゃん。だから、そういう行動をしなさそうな声の人がやるほうがリアルなのではないか、というのもあったんだよ」と話してくださって。そのとき、自分の不安がほどけていって、第2話以降、より挑戦していくことができました。だから、いろんな方にヒントをいただきながら演じることができたんです。

 

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