
『アクアリウムは踊らない』制作者・橙々さん×レトロ役・花守ゆみりさんインタビュー|レトロは最初「のじゃロリ」キャラだった!? ラストの“あの”名台詞に込められた想いとは?
それまでの全ての想いを込めた「もう溺れるなよ」
──収録で印象に残ったシーンはありましたか?
花守:やはり最後のお別れのシーンですね。今まで出したくても出せなかった優しさや愛しさ、スーズのことが本当に大好きだ、という気持ちを全部乗っけてあげたくて。
特に、スーズを助けて「もう溺れるなよ」と声をかけるシーンでは、それまでのすべての感情を込めようと、台本を最初にいただいた時からずっと心に決めていました。
そこにどれだけ気持ちを乗せられるかは、それまでのスーズたちとの交流次第だと思っていたので、中盤までのシーンでできるだけ気持ちの貯金をして、最後にそれを全て乗っけるような意識で演じさせていただきました。
──橙々さんご自身として、あのラストシーンを制作されていた際に印象に残っている思いやエピソードはありますか?
橙々:あそこの「もう溺れるなよ」の一言は、制作した当初から絶対に入れようと思っていたキメの台詞だったんです。あの台詞に繋げるために本編を作っていたところもあったくらいだったので、花守さんからこのようなお話をいただけて安心しています。
花守:そのお話を聞いて、またちょっとうるっときてます……!
……これは個人的に気になっていたことなんですが、最後にレトロと別れるという結末は、最初から決められていたんでしょうか?
橙々:一番最初から決めていました。複数エンディングを作っても、「レトロとスーズが一緒に助かるような展開は描かないぞ」と、心を鬼にして(笑)。
花守:『アクおど』って、「レトロが助かる結末がないのがすごい」というお話を現場でもしていたんです。その部分が私の中で、ひとつの感動ポイントでもあったので、今とても納得しました。やっぱり先生はすごいなと。
──そんなレトロですが、台詞は男性的な一方で、外見は女性らしさもありますよね。
花守:私の中でのレトロは、あまり男性・女性の括りで考えていなくて。レトロはレトロといいますか、男性的な面も女性的な面も、両方が入っている存在という認識でした。
そもそも人間ではなくサメですし、人の形に囚われない美しさや強さ、脆さを表現できればと思っていたので、あまり性別的なところは意識してなかったですね。
──実際に収録で花守さんのレトロを聞いた時、橙々さんはどのように思われましたか?
橙々:全キャラクターの中で一番最初に声を聞いたのがレトロだったんです。テストでお声を聞かせていただいた時が初めてだったのですが、もう……その時の衝撃ははっきりと覚えています。「ここにレトロがいるんだ」って、感極まって泣いてしまって。
レトロをはじめとしたキャラクターたちは、今まで私の手元で動いている存在だったわけですが、それがポンと現実に現れてくれた感覚がありました。花守さんにお願いしたいと思った自分の判断は正解だったんだと、あの時改めて思いましたね。
あと、「レトロの性別」のお話とも繋がるのですが、やはりそのお話は収録の時にも話題に挙がったんです。その際、「男性とか女性とかではなく、レトロは不器用な王子様なんです」という話をさせてもらったのを覚えています。
花守:そう、王子様なんですよね。私もそのお話を聞いて、すごく自分の中で感動して、その要素を絶対演技に落とし込もうと思って、大切にしていました。
──数いるキャラクターの中で、最初に収録したのがレトロだったんですね。
花守:ドラマCDのときは最初の収録組だったんです。その時はスーズ役の(黒沢)ともよちゃんとは一緒ではなかったのですが、クリスとルルとは一緒に収録できました。もともと、スーズとレトロの掛け合いからドラマCDが始まっているので、テストではレトロの声からスタートするような流れになっていましたね。
本編の収録も、その時期からあまり間を空けずに行われたので、ドラマCDでいただいた印象を持ったまま、スムーズに役作りをさせていただきました。
──橙々さんから見て、収録の中で印象的な台詞はありましたか?
橙々:最初にお声を聞いたドラマCDにおいて、冒頭でスーズが穴に落ちるシーンがあるのですが、その直前にレトロが「油断してると落ちるぞ」と注意する台詞が印象深いですね。
私の中では「おいおい」的な、軽いニュアンスを想像していたのですが、花守さんの演技では「落ちるぞ」の部分から、レトロの優しさが自然と伝わってくるようになっていて。その声を聞いた瞬間に「そっちの方がいい!」って、方向性が一発で変わりました(笑)。
台詞の一文字一文字に、すごく感情を入れてくださっているのが分かって、「やっぱりプロの声優さんってすごい!」と改めて感じた瞬間でした。
──花守さんが収録の日に、レトロが持っているような懐中時計を持ち込まれていたというお話も、先程小耳に挟みました。
花守:そうなんです(笑)。私物なのですが、本当に古いものなので、どんなにネジを巻いても正確には動かなくて。こんなところも、ちょっとレトロっぽいなと思いつつ、絶対に先生に見てもらおうと、ウキウキで持って行きました(笑)。
橙々:あの時は興奮しましたね。見せていただいた時「わー!」って盛り上がってました(笑)。















































