
『アクアリウムは踊らない』制作者・橙々さん×スーズ役・黒沢ともよさんインタビュー|スーズがいなければ『アクおど』は生まれなかった。開発中、大きく変わったシナリオのポイントとは?
『アクおど』が作られる前からスーズは存在していた
──スーズのキャラクター性は、どのように決まっていったのでしょうか?
橙々:実はスーズは『アクおど』を作る前に、知り合い5人と一緒に作っていたゲームの主人公として誕生したんです。
その時はスーズとルルだけキャラクターが出来ていた状態で、さらにゲーム制作自体がその後頓挫してしまったのですが、せっかく作ったのもあって、「このキャラクターを活かしたい」と思っていました。これが、『アクおど』を作る動機でもあります。
──当時から現在にかけて、スーズのキャラクター性に変更点はあるのですか?
橙々:細かいところは色々と変えてはいるのですが、見た目や性格は基本的にほぼそのままです。元々、スーズのキャラクターを活かすために考えたのが『アクおど』の物語だったので、大きく変えたりはしませんでした。
もしスーズがいなかったら『アクおど』を作ることはなかったと思うので、本当に特別な存在ですね。
──ちなみに、細かい変更を加えた部分は、どのようなポイントだったのでしょうか。
橙々:本当に細かい部分なのですが、制服・装飾品まわりを、舞台になる水族館に合うように調整しました。なので、ほとんどそのままですね。……例えるなら、拾った子犬を連れてきて、シャンプーして綺麗にしたくらいのイメージです(笑)。
──黒沢さんが、スーズというキャラクターに対して「ここが面白いな」と感じた点をお聞かせください。
黒沢:一見内向的に見えるのですが、実は人懐っこいところですね。私の中にいる“メンズの心”が「スーズみたいな娘が好きだ!」と、言っていて(笑)。個人的に、彼女にしたらすごく面白そうなキャラクターランキング一位です。
なんだか安心できる雰囲気もありつつ、突然甘え始めるような一面もあったりして。収録でも、該当するシーンは結構思い切って甘える方向に演じてみました。「大丈夫かな?」と思いながらやっていたのですが、先生が「うんうん」と頷かれていて、安心した記憶があります(笑)。
──様々な表情が魅力のキャラクターですよね。レトロのあだ名を「大佐」にしたところを見て、すごいセンスだなと思ったり。
黒沢:そこ! 先生に聞きたかったんです。どうしてレトロのあだ名は「大佐」なんですか?
橙々:あだ名を決めたのは、かなり初期の頃だったので曖昧な部分もあるのですが、実は私、『鋼の錬金術師』に出てくる(ロイ・)マスタング大佐が大好きでして……(笑)。レトロの服が軍服のようなデザインなのも、そのあたりにルーツがあったりします。
あと、レトロってサメじゃないですか。サメを真正面から見た時に、ちょっと軍服の帽子っぽく見えるなと思ったのも軍服にした理由のひとつです。
▲「大佐」こと、レトロ(CV:花守ゆみり)
──「大佐」にそんなルーツがあったとは。他に、黒沢さんが橙々さんにぜひ聞いてみたいと思っていたことはありますか?
黒沢:『アクおど』を制作するうえで、いちばん時間がかかったのはどの部分ですか?
橙々:シナリオ作りですね。私のゲームシナリオの作り方は、最初から全部ガチガチに固めていなくて。ゲームを作りながら都度SNSで発信して、その反応を受けて変更を加えていました。
黒沢:ええー! そうだったんだ……。
橙々:なので、キャラクター作りは最初の数年で終わっていたのですが、シナリオに関しては、ゲームが完成するまでの8年間、プレイヤーの方の反応を見ながら、作り直していました。
──シナリオが変更されたのは、具体的にどのような部分だったのでしょうか。
橙々:黒幕の存在です。実は最初、絶対にビックリさせるオチを作りたいと思っていて、もう一人新キャラクターを出すつもりだったんです。ただ、当時のバージョンではキャッチコピーを「裏切り者は誰だ」にしていて、ミステリのように「犯人は誰だ」という考察が飛び交っていたんですね。
──なんと。シナリオ的に核となる部分が変わっていたのですね。
橙々:クリスが裏で暗躍していたという設定は当初から変わっていないのですが、その背後でクリスを操っている、別のキャラクターを黒幕として考えていたんです。
ただ、いろいろな考察を拝見するうちに、それよりも既存のキャラクターを活かした方が面白くなると考え直し、最終的にはクリス自身を黒幕とする方向にシナリオを修正しました。
現在の『アクおど』のシナリオは、プレイヤーの皆さんからの影響を受けて完成したものになっています。
黒沢:このお話を聞いたら、当時考察していた方はきっと嬉しいでしょうね。お話をうかがって、『アクおど』はプレイヤーの皆さんも含めて、みんなで一緒に作り上げている作品なんだなと、改めて感じました。
橙々:かなり変わった作り方をしている、と自分でも自覚しています(笑)。
黒沢:ちなみに先生って、クリエイターとしては何屋さん……になるんですか? ゲーム作りだけじゃなくて、本当に色々なことに取り組まれているじゃないですか。
橙々:結構聞かれるんですけど、自分でもちょっとよく分かってないんですよ。だから自己紹介する時とか、自分のことをなんて言っていいのか分からなくて(笑)。ゲームも作るし、シナリオも書くし、絵も描くし、配信もするし……。
黒沢:『アクおど』の他に、ゲームを作りたいというお気持ちはありますか?
橙々:もちろんあります! ゲームクリエイターとして生きていきたいという気持ちは特に強いですね。死ぬまでこの仕事をやっていたいです。
──すぐに次の作品を作るモチベーションが湧いているのがすごいですよね。とくに『アクおど』みたいな大作は、一作作ったら燃え尽きてもおかしくないと思うんです。
橙々:実際、そういったお話はよく耳にしますね。そんな中で、私が「ゲームを作りたい」と思えるのは、皆さんが盛り上げてくださったおかげで、『アクおど』への熱が今も自分の中に残っているからだと思うんです。この気持ちを冷まさないように、これからも頑張りたいです。
黒沢:次回作もまた一人で制作したいですか?
橙々:絶対、一人でやりたいです。これだけはもう決めてます。
実はありがたいことに、「ウチの会社に来ませんか?」というお誘いをいただいたこともあったのですが、本当に一人でやりたいと思っているので、丁重にお断りしました。だからこれから出すゲームも、また「橙々」の名義でリリースされることになると思います。
黒沢:いや、もうとんでもないですね……。今、先生の存在が遠く見えます(笑)
















































