『忍たま乱太郎』ドラマCDシリーズ再販記念！　アニメーションプロデューサー・松山竜一郎さんインタビュー｜「ドラマCDではキャラクターを深堀りし、意外な一面をみせるなど遊び心も入れて制作しました」

音作りからキャラの深掘りまで。ドラマCD制作のこだわり

――今回、再販されるドラマCDシリーズの制作にあたって、当時こだわった点を教えてください。

松山：ドラマCDは当初、試行錯誤ばかりでした。キャラクターが同じでも、アニメとはできることが違う。音だけで何ができるか、ということを色々と考えました。

最初に「（アニメの）BGMは使えないかも」という話があった時、当時シリーズ構成のフォローをしてくださっていた望月智充さん（脚本・絵コンテ・演出）が、「あの音楽があるから『忍たま乱太郎』なんだ」と主張して、最終的に使えることになったのは大きかったです。第1シリーズでしか使われていないアイキャッチの曲を使うなど、ファンサービス的な遊びも入れることができました。

ドラマCDを聴いてくださる方は、すでに『忍たま』の世界観やキャラクターを知ってくださっている方が多いので、意外な一面を出しても受け入れてもらえるだろうという安心感もありましたね。

――「ここに注目してほしい」という点を挙げるとするなら？

松山：個人的には、ドラマCDだとしんべヱと喜三太のコンビと、伏木蔵の印象が強いですね。しんべヱと喜三太のコンビはドラマCDの中で関係性が築かれていきましたし、伏木蔵は原作のちょっとメタ的な部分を出したというか。

ドラマCDのキャラクター紹介で「愛されキャラの伏木蔵」という言い方をしたんですね。ちょっと不安もあったのですが、意外とすんなり受け入れられたのでホッとした記憶があります。遊び心を入れても大丈夫だと分かってからは、より自由に楽しんで作らせていただいたように思います。

例えば、置鮎龍太郎さん（善法寺伊作役）が初出演した時のこと。実は、置鮎さんの兼ね役・魔界之先生にも触れたいと思っていたのですが、「ちょっとどうかな」と遠慮していました。ところが収録後のキャストコメントで置鮎さんご本人が魔界之先生について話してくださっていたんです。

「それなら」と2作目の時に音響監督の大熊さんへ「兼ね役も出したい」と相談したら、あっさり「いいんじゃないですか」と（笑）。実際にやってみたらとてもおもしろく仕上がりました。声優さんたちもそれぞれ演じているキャラクターを愛しているので、ドラマCDでも張り切って臨んでくださいましたね。

――今聴いてみると、また新たな発見がありそうです。最後に、長年『忍たま乱太郎』を支えてこられた立場から、ファンやこれから作品に触れる方々へメッセージをお願いします。

松山：いろんな切り口があり、レンジの広い作品。キャラクターの個性という意味でも、年々世界が広がっているなと感じます。昨年、約13年ぶりに劇場版が公開されましたが、やっぱり定番の強さを実感しました。

実を言うと、こんなに幅広い層に人気があるんだと肌で感じたのは、その劇場版だったんです。応援上映を地元のさいたま市の映画館で観た時に、後ろに座っていた10代後半から20代くらいの女性のグループがタソガレドキの忍者についてすごく熱く語っていて驚いたんですよ。スタッフなど、クリエイター陣が話すようなことを普通の女の子が話しているのにびっくりして、こんなに皆さんに愛されているんだなと感じました。

今回のドラマCDでも、「久しぶりに『忍たま』に帰ってきた」というような楽しみ方をしてくださる方がいらっしゃるのかなと思いますし、どこからでも楽しめる作品ですので、改めて『忍たま』の世界を堪能してもらえたら嬉しいです。

取材・文／吉田光枝

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