
地に足ついたキャラクターたちの“半歩先”を描く。小林彩監督&白石プロデューサーが明かす、河原節をアニメに落とし込んだ『太陽よりも眩しい星』の映像作り【インタビュー】
主役のやりやすさを重視したキャスティング
──キャストについても伺えればと思います。朔英役の藤寺美徳さんは当時高校生でしたが、キャスティングにはどんな思いがあったのでしょうか?
小林:オーディションは不安もあったんですけど、藤寺さんは作り込みがすごく、一言目からぞわぞわしたことを覚えています。オーディションまでに自分なりに朔英ちゃんを解釈してきたことがすごく伝わってきて、この子しかないと確信しました。
白石:私もスタジオオーディションを鮮明に覚えています。当時の藤寺さんは高校生だったんですけど、誰よりも演技に芯があり、度胸もあったんですよね。緊張はしていたと思うんですけど、それを感じさせず、スタッフ一同、満場一致で藤寺さんに決めました。
でも、最初は大変だったと思います。この作品はほとんど朔英ちゃんが喋りますし、モノローグも非常に多く、藤寺さんも苦労しただろうなと。だからセリフとモノローグは別で録ったりと、こちら側でも工夫していたりします。
(C)河原和音/集英社・「太陽よりも眩しい星」製作委員会
──藤寺さんにインタビューした際、モノローグには苦労したとお話していました。
白石:子供の頃も、高校生の頃も、全部ひとりで演じていますからね。声のトーンだけではなく、その時の成長度合いに応じた心情を反映させないといけないので尚更大変です。
──演じるにあたって監督からどんなディレクションを?
小林:最初は自分の人生を俯瞰した感じで演じてほしいと伝えました。ただ、朔英ちゃんが再び走り出す過程を描いた作品なので、俯瞰しすぎもよくないんですよね。そこは都度、吉田音響監督と白石プロデューサーと相談しながら進めていきました。
──密にディレクションしていたのですね。
小林:第1話で掴んでからはそこまで時間が掛からなかったです。まだ経験が少ないということだったので、アフレコ時間を早めに設定して、トコトン藤寺さんがやりきるまで付き合う気持ちでいたんですけど、それも最初だけで…。彼女は世話を焼く前に巣立っていきました(笑)。
──(笑)。神城光輝役の小野友樹さんについてはいかがでしょうか?
白石:一言で言うなら、意外性でしょうか。小野さんはがむしゃらな男子とか大人の男性役のイメージだったんですけど、小野さんの神城は少年と青年が上手く混ざっていたんですね。少し身勝手さがある男子高校生感も自然で、オーディションでは逆にびっくりしました。
(C)河原和音/集英社・「太陽よりも眩しい星」製作委員会
──小野さんもあまり演じないタイプだとお話されていました。
白石:当初は藤寺さんと同じくらいの年代の方を考えていたんですけど、そこは気にせずにお芝居で選ばせていただきました。逆に、藤寺さんが新人だからこそ周りは安定のキャストで固めようと。藤寺さんが先輩たちに導いてもらえたらいいなという思惑もありました。
小林:白石さんもおっしゃっているように、経験の少ない藤寺さんに対応できる方として選ばせていただきました。オーダーとしては神城の年齢感があまり高くならないようにとお伝えています。
──そんな藤寺さんを軸としたアフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
小林:やはり主役のやりやすさを重視していたので、みなさんのおかげで上手くハマりました。
地に足ついたキャラクターたちの“半歩先”の日常を構成する
──お気に入りのキャラクターをお聞かせください。
小林:井沢(優心)は変化球を投げたり、話を締めてくれる存在なのでお気に入りです。話を締めてくれる存在としては香川(美織)さんも重宝しました。本編をご覧いただければ、このふたりのシーンは結構遊んでいることがわかるんじゃないかなと思います(笑)。
白石:私は原作を読んだ時から鮎川(陽太)がお気に入りです。応援したくなるんですよね。
──鮎川はミステリアスですが、知れば知るほど魅力が増すキャラクターですね。
白石:そうですね。最初はミステリアスに見えますが、実は淡々といいことを言っているんですよ。
小林:たしかに。アニメの鮎川くんは序盤から出番を増やして、ちょっとでも印象に残るように調整していたりします。
白石:そこはアニメ化の段階で気にしていたところですね。言葉数が少ないキャラクターなので、気づいたら喋っていないことが多々あったので、少し扱いに気を付けました(笑)。
(C)河原和音/集英社・「太陽よりも眩しい星」製作委員会
──改めて本作の見どころをお聞かせください。
小林:河原先生にご挨拶した時、アニメ化にあたって気にしているポイントを伺ったら“日常のあるある”を大事しているとお話されていて。つまり、(映像化においては)地に足ついたキャラクターたちの“半歩先”の日常を構成していくことが大事だと私は受け取りました。
アニメではそういった河原先生が大事にしていることを重視しつつ、漫画にはない彩りや音を加えて、小林なりの解釈を表現しています。アニメを見て、原作を読んで、と2倍楽しめる作品になったのではないでしょうか。
白石:シリアスなシーンはシリアスで見どころがあるんですけど、コメディは原作から、さらにパワーアップしているんですよね。そのおかげで男女、年代問わずに見やすくなっているんじゃないかなと。
あとは、朔英ちゃんがときめくシーンの演出にも注目していただきたいです。漫画からアニメにする時、通常なら線を減らしたりするんですけど、この作品はその流れに逆行していて。作画はもちろん、撮影など、小林監督をはじめとしたスタッフ陣が頑張ってときめくシーンに仕上げてくださいました。
──監督は映像から芝居まで、作品に付きっきりですね。
小林:そうですね。監督をやるとたくさん苦労があります(笑)。
──最後に、放送を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
小林:原作にある朔英ちゃんの魅力を全部取り入れようとした結果、収まりきらずに苦労しましたが、様々な手段を使って詰め込んでいます。本編が終わった後の提供画面まで見ていただけると幸いです。
白石:今回、映像はもちろん、音楽にもこだわりが詰まっています。オープニングの秦基博さん、エンディングの和ぬかさんは、おふたりとも原作を読み込んで曲を作ってくださいました。映像や歌詞との一体感をぜひ確かめてほしいです。
[インタビュー/MoA]
作品情報














































