
『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』岩見沢寧々役・上田麗奈さん×福山拓海役・岩中睦樹さん対談|拓海の告白の熱量を受けて生まれた寧々の2回の「なんで……?」に込められたニュアンス
累計発行部数300万部を突破し、昨年(2024年)完結を迎えた鴨志田一先生による小説“青春ブタ野郎シリーズ”。
2018年にTVアニメ化を果たし、2023年に劇場アニメとして公開された『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』をもってアニメも《高校生編》が完結しました。
そして、その続きとなる《大学生編》『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が、ついに完結を迎えました。
アニメイトタイムズではその放送に連動して、出演声優陣へのインタビューを実施。原作における『サンタクロースの夢を見ない』の最終回が放送される今回は、岩見沢寧々役・上田麗奈さん×福山拓海役・岩中睦樹さんが登場です!
これまでミニスカサンタ、霧島透子など別の名前で紹介されていた岩見沢寧々について語っていただける貴重な機会ということで、上田さんにはこの機会にキャラクターの印象からオーディション時のエピソードまでたっぷりと語っていただきました。
また、拓海はそんな寧々と付き合っていたという衝撃の事実が明かされたキャラクター。寧々に負けず劣らずこれまで話せなかったことがあるため、そういった部分も深堀りしています。
特に最終回での寧々と拓海の掛け合いシーンの収録裏話は必読ですので、ぜひ《大学生編》の最終回視聴後にチェックしてみてください。まだご覧になっていない方はネタバレが含まれますので、その点だけご注意いただければ幸いです。
最終回後の今だからこそ話せるキャラクターの印象や演技プラン
──《大学生編》の物語を振り返っての感想や全体の印象から伺えますか?
岩見沢寧々役・上田麗奈さん(以下、上田):元々キャラクターたちが現代的で共感できる悩みを抱えていることが多いので、そういった部分に丁寧に向き合ってくれる作品というイメージがありました。《大学生編》ではより関わる世界が広がったからこその悩みも描かれていて、既に社会に出ている人たちにも刺さるような内容になっていることも感じましたし、グサグサと刺さる名言も多かったです。
最終話で赤城郁実が「よくあることなんだと思った」という言葉を残していたのですが、私はそれがグサッと来ちゃいまして。寧々に感情移入しながら物語を追っていたので、みんなも同じように自分がみつからなかったり、自分を見失ったりしたことがあるんだという事実がとても辛く感じたんです。せめて特別な悩みであってほしかったというか、世界で一番苦しんでいるのは自分なんだと思わせて欲しかったみたいな。
寧々を通して見ているとそんなふうに感じてしまうけれど、同じように悩んでいる人がいるって心強いことだし、相談できる先輩たちがいっぱいいるということでもあるので、複雑な気持ちにさせられるところもあって。改めて人の心に切り込んでくるような凄い作品だし、好きだなって思いました。
──他にも刺さった台詞はありましたか?
上田:トップバッターだった『迷えるシンガー編』のづっきー(※広川卯月)から結構しんどかったのですが、そんなづっきーと話している時に咲太くんが「みんな何かになりたい」「これが自分だと誇れるものが欲しい」みたいな話をしていて、確かにそうだなって思いました。
づっきーの気持ちになっても辛いけれど、づっきーを見てる側の気持ちも考えると、そこにもまた誰かの悩みってあるよなぁって思ったり。づっきーがみんなについて話しているのを聞いていたら、何が自分なのかわからなくなってきたっていう台詞もわかるなってなりましたし。
だから、この《大学生編》は最初から刺激が強かったんですよね。そこから自分の気持ちはこれだって決めたものを大事にして前に進んでいったづっきーを見て、自分もこうなりたいなとも思わされました。たとえ悩んだとしても、づっきーみたいに自分はこれが好きなんだって前向きに進むことができるんだなというか。
自分もそうやって生きていきたいなって思わされたりしたので、グサッと刺さることもあるのですが、それをちゃんとポジティブに変換してくれるから救いがあるなって思いますね。
福山拓海役・岩中睦樹さん(以下、岩中):上田さんにほとんど喋ってもらった感がありますが、僕はまだ終わった感覚があまりないんです。本当に一瞬の出来事だったような気がしていて、この《大学生編》はそれくらい一瞬一瞬のシーンが充実していた印象があります。
僕は大学未経験なので、実際の大学生活もこうなのかなってちょっと想いを馳せたりもしました。この作品を通して大学生特有の悩みとか、そういう部分を見ていると上田さんが話してくれたように、こういうことって大人になっても確かにあるなとも感じていましたね。
やっぱり高校生とはちょっと違った悩みじゃないですか。大学生ともなるともうほとんど大人ですし。大人になってからの人間関係の悩みって、ざっくりとしたものではなくとも、その相手との人対人のものになる。そういうところを、僕自身もひとりの大人として感じる作品でした。
──おふたりが演じられたキャラクターについても掘り下げていきたいのですが、上田さん演じる岩見沢寧々は当初ミニスカサンタとして登場して、霧島透子を名乗り、そこから実は……という流れで正体が明かされたかと思います。どのタイミングからそういったキャラクターだと把握していたのでしょうか?
上田:オーディションがあったのですが、実はその原稿で岩見沢寧々としてのラストシーンを読んでいました。だから正体自体は最初からわかっていたのですが、何も知らない状態で演じてほしいというディレクションがあったんです。だからオーディション原稿から得た寧々の悩みやパーソナルな部分の情報を深掘りしないよう気を付けながら、その場その場で聞かれたことに答えることを中心にお芝居していこうと思っていた感じです。
──正体を匂わせるようなこともせずお芝居をしていた感じなんですね。
上田:そうですね。だから、「それだとわかり過ぎています」っていうディレクションを受けたこともあって。第8話でモンブランを食べに行くシーンだったんですけど、麻衣さんへの嫉妬心というか劣等感というか、オーディション原稿で寧々のそういう部分をなんとなくでも知ってしまっていたので、その気持ちが強く出過ぎちゃったのか、麻衣さんに何かをしそうな感じが出てしまったんだと思うんですよ。
あそこで先の展開や咲太が何を言いたいのかをわかりすぎないように、匂わせすぎないように、どちらなのかわからないミステリアスさを残そうと考えてなんとかお芝居しました。なるべくその場の会話だけにとどめようとか、麻衣さんへの気持ちを消せなくとも見えないところにちょっと隠しておこうとか、そうやって苦労しながらやっていた記憶があります。
──すべてが明かされた今だからこそお聞きするのですが、そんな寧々というキャラクターにはどんな印象を持っていましたか?
上田:まず、大学生になって世界が広がったからこそ挫折を味わい、それにとても苦しんでいる子なんだってことを凄く感じました。加えて、優劣の視点がとても強い勝気な人なのかなという印象を持っていました。
だからこそ誰かに恥を晒したりとか、傷ついたりした姿を見せたりしたくない。人より恵まれている、優れているっていうところに喜びや自分の存在価値を見出していたと考えると、そこが崩れるのは本当に許せなかっただろうなと。こんな惨めな自分は愛せないと思ってしまったが故に、霧島透子にならなきゃという考えに至ったのかなと思いました。
ただ、そうやって自己愛や自分らしさを見失いながらももがく姿を見ると応援したくなるというか、他人事には思えなくて。それに、他人のことをちゃんと大好きになれるところがとても素敵で。その相手である拓海の前では涙を見せたり、怒ったり、弱さや脆さが出てしまうところも、魅力的だなって思いました。
人間味が溢れているし、真っ直ぐだし、なんて可愛い人なんだろうって。最終話の「今は拓海で我慢する」というセリフとかも、勝気な寧々なりの精一杯の甘えなのかもしれないし、自分の人生をあきらめずに頑張ってみようっていう気持ちもあってこそなのかもしれない。これからもたくさん悩みながら、自分のことや拓海とのことに向き合っていって、この先もっともっと素敵な女性になっていくキャラクターなんだろうなという印象を受けました。
そんな寧々の気持ちが理解できる人って、視聴者の方の中にも実はいるんじゃないかって思ったりもしたんです。私も周りと比較して、自分なんてと思ってしまったり、落ち込んだ時に自分を許せない、愛せないモードに入ってしまうことがあります。
そんなスレスレのところで、なんとか自分を奮い立たせている人がきっと私以外にも一杯いるんだろうなって思えました。寧々は、色々な人に刺さるキャラクターなのかなって思っています。
でも、そんな腐りきらないスレスレのところで、なんとか自分を奮い立たせている人がきっと私以外にも一杯いるんだろうなって思えました。そのうちのひとりが寧々かもしれないから、懐かしさを覚えたり、もしかしたら嫌悪感をもたれたり。そうやって色々な人に刺さるキャラクターなのかなって思っています。
──寧々は誰もが覚えのある感情を持っているキャラクターなので、共感を呼びそうですよね。岩中さんは拓海役にどのようにして決まったのでしょうか?
岩中:テープオーディション用の音源を事務所で録ってもらったのですが、後日マネージャーさんから「受かりました!」という連絡をもらって驚きましたし、めちゃくちゃ嬉しかったです。作品自体は思春期症候群という不思議現象みたいなものがありつつ、誰もが共感するような悩みをテーマにした世界観だなと感じました。雰囲気的にはかなり現実味のある話なんだけど、そこで不思議な現象による事件が起きるので珍しいなとも思いましたね。
そんな思春期症候群が物語をより色濃くしているし、のめり込ませる感じもあって素敵だなと。シリアスなシーンも多かったですし、こういった作品の主人公の友人ポジションを演じる身としても珍しい作品に出会えて嬉しかったです。優しくて切ないような印象もあったので、オーディションに受かった時に「俺、この作品に出演できるの?」と思いましたし、凄く緊張しながらアフレコ現場に行った記憶もあります。
──以前、咲太役の石川界人さんにお話を伺った際に、拓海を注目すべきキャラクターだとおっしゃられていたんです。
岩中:本当ですか!? それは嬉しいですね!
──また、男性の出演者が増えて心強かったみたいな話もありました。
岩中:確かにこの作品は男性よりも女性のキャストさんの方が圧倒的に多いですし、僕もそういう意味では心強かったです。石川さんとは以前共演させてもらったことがあるので、面識もあるしとても話しやすかったんですよ。やっぱり石川さんは主演として現場を和ませてくれるというか。収録で誰かがちょっとしたミスしたとしても、空気を悪くしないように笑えるようなネタにしてくれるというか。
本当に気をつけなきゃならないことは制作陣からディレクションを受けるのですが、役者間では学生みたいなワイワイしたノリの楽しくて明るい現場でしたね。それがとてもありがたかったし、嬉しかったです!





















































