アニメ

2025-10-21 18:00

私が表情に乗せきれていなかった佐藤の想いをずっと滲ませてくれるんです──『笑顔のたえない職場です。』佐藤楓役・雨宮天さん×原作・くずしろさん対談インタビュー

「私、温泉に勝ったんだ！」

──せっかくお二人ご一緒の場ですので、雨宮さんから漫画家・くずしろ先生へ聞いてみたいことがあれば、ぜひこの機会にご質問してみてください。

雨宮：えー、どうしよう（笑）。3つ質問があるのですが……。

くずしろ：なんでも答えますよ！

──ちなみに、どのような質問でしょうか？

雨宮：1つ目は「作品の中に出てくる『頭痛』『ホットタオル』などの描写は、先生ご自身のリアル体験から着想を得ているのか」。

2つ目は「双見が描く漫画を“将棋モノ”にした理由」。

3つ目は、キャラクターたちがみんな個性的なのに現実にいそうなリアル感がある本作は、先生ご自身の中に色々な人の性格があるのかなと思っていました。そうしてキャラクターを描いていくと心が疲れる瞬間があると思うのですが「疲れたときはどのように回復しているのか？」と、結構重めの3本なのですが……（笑）。

──先生、いかがでしょうか？

くずしろ：全部答えます！　

双見の頭痛は、私自身似たようなことを何回か経験しているんです。そのたびにアシスタントさんに助けてもらったり、姉に支えてもらったりしていました。熱中症で目が完全に見えなくなったのに、「ネームしなきゃ」と机と全然違う方向に這いずって行って作業しようとしたことがありましたね……（笑）。「はい、休みましょう」「（編集に）電話しますね」と友達や姉に止められて。

その話を知った読者の方が心配して、ホットアイマスクをいっぱい差し入れてくださったこともありました。無茶しすぎて周りの方に迷惑をかけてしまったのは実体験でしたね。

雨宮：なるほど……！　ちなみに、はーさん（間瑞希 CV：伊藤美来）にはリアルモデルがいるんですか？

くずしろ：はーさんは、ウチのスタッフさんの集合体です。皆さん本当に優秀で……！　あとは、私が実際にアシスタントだった時期に感じていた「楽しかったこと」をはーさんに体験させたい気持ちもあって。それらの要素を合わせて作っています。

佐藤は、よりファンタジー寄りなイマジナリーの存在ですね。雨宮さんが演じてくださったことで「あのときの私は、こうしてくれる担当編集が欲しかったんだ」って気がつくこともあって（笑）。

雨宮：あの時のボロボロな自分が求めていた優しさ、といいますか。なるほど、面白い……！

──双見先生が描く漫画を“将棋モノ”にした理由というと？

くずしろ：他社で連載している将棋漫画（小学館ビッグコミックスペリオール連載『永世乙女の戦い方』）がありまして、それにも塔子ちゃんが出てくるのですがとても好きなキャラクターなんです。実際にその漫画の監修をしてくださったことでお知り合いになれた女流棋士の香川愛生先生がいらして、実際の私とその先生のやり取りも面白いなと思うことがたくさんあったんですね。せっかくだから、そのエピソードもストーリーに乗せられたらと思っていました。

雨宮：へぇ！

くずしろ：本当に塔子ちゃんみたいで面白いんです。私が将棋のルールをわからなかったときにも「可愛い！」って言って丁寧に教えてくださるんですよ（笑）。

ほかにも指導対局で私が変な手を指すと「目にゴミが入った！」って見ないふりをしてくださったり、考えて正解の手を指せたときには「そんな手を指されたらどうしよう！」なんて反応をくださったり（笑）。

雨宮：この点も、リアルな体験に基づいているんですね！

くずしろ：そうですね。でもなるべくそのままモデルにすることはなくて。私はドキュメンタリーや私小説、エッセイ、新書など色んなものを読むのが好きなんです。色々な人の思考といいますか、歩んできた人生によってひとつのワードに対しても発生する異なる捉え方を見るのが好きなので、キャラクター作りに活かしています。

なるべく私と同じ人間にならないように。気を抜くと全部自分になってしまうので（笑）。

雨宮：でも、そんなに色々な人の視点に触れていると……疲れませんか？

くずしろ：疲れます（笑）。

雨宮：心が疲れた時は、どうやって癒しを得ているんですか？

くずしろ：うーん……あまり「これをすると癒やされる！」ということがないのですが、それこそ『笑顔のたえない職場です。』の現場は本当に癒されましたね。逆にあの現場以外で、なにかあったかなぁ……。

雨宮：そんなふうに言ってくださるなんて……！　ほかには例えば「睡眠を取る」「強めのマッサージを受ける」「山に行く」「お花を見る」……とか？

くずしろ：温泉やマッサージに行っても、その直後に「この時間で仕事を進められたな」と思ってしまうんですよね（笑）。「何をしてたんだろう」みたいな気持ちになってしまうというか……。

雨宮：箱根に一人旅に行ったときの私と一緒だ！（笑）

くずしろ：（笑）。温泉に行ったとてスキルが上がるわけじゃないし、って思ってしまって。

雨宮：うわー！　わかります！　私も箱根のお風呂でお仕事のことばかり考えちゃってました。お風呂に浸かってるハズなのに、謎の時間になっちゃいますよね（笑）。

くずしろ：そうそう！（笑）　行きの新幹線ホームで「この行動は本当に正しいのか？」と思ってしまっていました（笑）。

雨宮：わかるー……！

くずしろ：ただ、『笑顔のたえない職場です。』の現場がそうだったのですが、素晴らしい人たちに関わっていただき、作り上げてくださいました。その熱量に触れると「私もこのまま止まっていられない」「次も頑張るか」と思えるんです。それが一番の癒しかもしれません。

雨宮：先生のモチベーションになれていたなんて……！

くずしろ：一人だけ仕事ではなくファンミーティングに行っている気分でした（笑）。

雨宮：（笑）。先生はグッズも買ってきてくださって、そのお話をしてくださっていて。

くずしろ：今日も持ってきてます！（カバンから雨宮さん関連のグッズを取り出して）

雨宮：わー！　ありがとうございます！　ぜひライブにも来てください。今ちょうどツアー中なので（笑）。（取材は9月中旬実施）

くずしろ：Blu-rayも楽しませていただいて、動画配信サービスでも再生させていただいて……。

──温泉より雨宮さんに癒やされているのですね（笑）。

雨宮：私、温泉に勝ったんだ！　いつでも浸かりに来てください（笑）。

くずしろ：（笑）。ありがとうございます！

──それでは最後に、今後の注目ポイントを教えてください。

雨宮：佐藤を演じる目線から言うと、話数が進むにつれて双見が初めての経験をしていく中で、佐藤に頼りたい、頼る場面が増えていきます。二人の会話の時間も増えて、不器用ながら少しずつ距離が近づいていくんです。

第3話の時点では、まだ佐藤が言葉にしきれていない場面が目立ちますが、徐々に佐藤も言葉にしていけるようになります。温かいようなちょっと恥ずかしいような、愛おしい気持ちが溢れてくるので、じれったいけれど愛おしい距離感をぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです！

【インタビュー：西澤駿太郎　撮影：胃の上心臓　編集：太田友基】

『笑顔のたえない職場です。』連載バックナンバー

｜01

夏吉ゆうこ×くずしろ

｜02

伊藤美来×くずしろ

｜03

雨宮天×くずしろ

｜04

小林ゆう×くずしろ

｜05

佐伯伊織×くずしろ

｜06

ハコニワリリィ

『笑顔のたえない職場です。』作品情報

放送情報

2025年10月6日（月）よりTOKYO MX、岩手めんこいテレビ、BS朝日、AT-Xにて放送中！

TOKYO MX：10月6日より毎週月曜 22時00分～
岩手めんこいテレビ：10月12日より毎週日曜9時30分～
BS朝日：10月6日より毎週月曜 23時24分～
AT-X：10月6日より毎週月曜 21時30分～
【リピート放送】毎週水曜 9時30分～　毎週金曜15時30分～

配信情報

DMM TV・Lemino・U-NEXT・アニメタイムズ・アニメ放題にて
10月6日より毎週月曜日 22時30分～配信中！

その他、各配信サイトでも順次配信！
※放送・配信日時は都合により変更になる場合がございます。

スタッフ

原作：『笑顔のたえない職場です。』くずしろ（講談社「コミックDAYS」連載）
監督：鈴木薫
シリーズ構成：井上美緒
キャラクターデザイン：宮井加奈
音響監督：田中亮
音楽：羽岡佳　土井宏紀
音楽制作：ポニーキャニオン
オープニングテーマ：HoneyWorks feat.ハコニワリリィ「絶対称賛！」
エンディングテーマ：Sizuk「Thankful」
アニメーション制作：Voil