音楽
ReoNa、3rdアルバム『HEART』に込めた“心”のかたち【インタビュー】

「心はこうあるべき」と言い切れたらどれだけ楽だろうなって――ReoNa、3rdアルバム『HEART』に込めた“心”のかたち【インタビュー】

2025年10月8日(水)、ReoNaが3枚目のフルアルバム『HEART』をリリースしたする。デビュー当初より“絶望系アニソンシンガー”と名乗り活動してきたReoNaは、痛みや孤独を原点に、いま“心”という命の核心に向き合った。ReoNaとの対話のなかで気付いたが、私たちは日常のなかで「心が傷ついた」「心にぽっかり穴が空いた」「心に刺さった」などと、あたかも実体があるかのように語る。心は目に見えないし、医療行為でもなければ、誰も心臓に触れることはできない。心に近づこうとする営みはいつだって手探りだ。それでも私たちは確かに心を感じて言葉にしてしまう。しかし、今日これだと思ったことが、明日には変わってしまうこともあるのが心である。心に受けた絶望は癒えるのか、時間が薬になるのか――そんなことさえ、誰にも言い切れない。『HEART』。とてつもなく身近な存在で、不確かで、小さくて、未完成で、壮大で、抽象的で、いびつで、もっともパーソナルな存在。だからこそ「心とは?」を真正面から捉えることは難しい。

私事ではあるが、ReoNaが精力的にライブを行いながら「心」と向き合っている間、私は新たに授かった「命」と向き合っていた。インタビューでも触れたが、絶望と希望は紙一重。新しい命を迎える喜びの一方で、迷いや不安に押しつぶされそうになる瞬間もあった。そんなとき、彼女のお歌が、そして存在そのものが、静かに寄り添ってくれていた。この7年、取材という形で彼女の歩みを見守ってきたつもりが、振り返れば、むしろ寄り添われていたのは自分のほうだったのかもしれない。

しかし、守るべき存在が増えても、年齢を重ねても、私自身は未だにしょうもないことで立ち止まったり、「余計なことを口走ってしまったかもしれない」などとくよくよしたり、学生時代の出来事をふと思い出しては胸がざわついたりする。そうやって、なにかが加わったり、減ったりしながら、心のかたちは変わっていく。いろいろな出来事を血と肉にしながら、きっとみんな今日を生きている。

とりとめのない話を綴ってしまったが、この『HEART』について語ろうとすると、どうしても自分の心とも向き合うことになるのである。しかし心にはとにかく“正解”がない。インタビューも、ディスカッションのような時間を挟んで、ときに脱線し、さらにはこぼれ落ち、ReoNaも私も、何度か言葉を探しながら考え込む場面があってと、気づけばかなりの長尺になった。しかし迷い、時に沈黙を挟みながら進んだ時間こそが、このアルバムの核心に触れている証のように思う。絶望を起点とした誰かの、確かにここに在る心の物語をひとりのボーカリストとして届ける『HEART』。さまざまな角度から心を捉えたこの作品は、聴く者それぞれの心の物語と交差するはずだ。

 

 

支えてくれる仲間がいるという安心感が私を変えた

──2ndアルバム『HUMAN』から約3年も経っていたということにまず驚きました。ReoNaさんの感覚としてはどうですか。

ReoNa:『HUMAN』をリリースしたのが日本武道館(ReoNa ONE-MAN Concert 2023"ピルグリム"at 日本武道館 ~3.6day 逃げて逢おうね~)の時だったのでそこから数えたら確かに……とは思いつつも、自分でもびっくりしています。振り返るとこの間に新曲もたくさん出していて、ワンマンだけでもものすごい数のライブをしてきたんですよね。

──その間、ライブもさまざまなスタイルで行われてきましたよね。夏のアニサマでは「GG」でアニサマバンド、そして荒幡亮平、Ommyと共にRoseliaから氷川紗夜(工藤晴香)、MyGO!!!!!から愛音(立石凛)、楽奈(青木陽菜)とコラボレーションがあったり、“AVATAR 2024や “Birth 2024”をいつものライブとはまた違う形でお届けしたり。

ReoNa:はい。とりわけ“AVATAR 2024”と “Birth 2024”は映像としてリリースしたり、はじめて映画館で上映したりということもあって、ついこの間の出来事のような感覚があります。でも、あらためて振り返れば本当にいろいろなことを行った期間でした。『SQUAD JAM』のオールスタンディングツアーをやったかと思えば、すぐに“ふあんぷらぐど2025”でアコースティック編成で全国をまわったり。決まったスタイルに縛られず、自分のいろいろな可能性を試し続けた2年半でした。そして、いろいろな可能性を模索できるアルバムになったなと感じています。

 

 

──そんな期間を経て、今回の3rdアルバム『HEART』へ。

ReoNa:実は、アルバムを出すのはもう少し先になるのかなって思っていたんです。新曲の制作を考えたときも「アルバムリリースはまだまだ先のことなんだろうな」と感じていて。でもこのタイミングで出させてもらうことになりました。それで改めてこれまでを振り返って「ああ、こんなにお歌をリリースさせてもらってきたんだな」と。

──怒涛の期間だったと思うのですが、ご自身の中にどんな変化がありましたか?

ReoNa:『HUMAN』を出してからの期間は本当にいろんなことがありすぎて……でも振り返ると、少しずつ、ちゃんと変わってきたんだなって感じます。ライブの時の心の持ち方も大きく変わりました。デビューしたての頃は、指先が凍りそうなくらいに緊張して、ステージに立つのが怖かったんです。でもずっと伴奏してくださっている荒幡(亮平)さんが「ReoNaのライブなんだから、なにがあっても俺達が助けるから」と言ってくださって。支えてくれる仲間がいるという安心感を、ライブを重ねながらいただいていったことも大きいと思うのですが、今は「やるって決めたらやる」と、落ち着いて挑めるようになりました。

 

 

──特に印象的な出来事はありましたか?

ReoNa:実は去年の『SQUAD JAM』札幌公演で、人生で初めて、ライブ当日に声が出なくなってしまって。当日、リハーサルではすべての曲でまるっと歌えず、途中で咳が出てしまったり、声が出なかったりして。「ちょっと(喉を)使いこなせるようになってきたかな」と思っても、サビで出なくなってしまう。「このままだと、はじめて自分の都合でライブを中止にしなきゃいけないかも」と頭をよぎりました。「セトリを減らしてみますか?」という案も出たんです。『SQUAD JAM』はヘヴィな曲が多く、今まで以上に叫んでいたので……。

──ファンの方と共に熱くなるような曲が多かったですよね。でもそれって喉にも負担はあるわけで。

ReoNa:そうですね。ただ、今回はそれが直接の原因というわけではなくて……体質的なものもあって、アレルギー的な反応だったようです。喘息のような状態でした。でも、どうしても来てくれた人のために全力で歌いたくて、リハーサルが終わったあとに「やりたいです」と(チームに)伝えました。そしたらチームのひとたちも「うん、できるよ」って言ってくれて。特にライブでも音響周りを担当してくださっているエンジニアのトシさん(渡辺敏広/binaural inc)が「リハを聴いてたけど、大丈夫だと思う。いけるよ」って力強く言ってくれて。自分ができないかもと思っていても周りの方が「できるよ」って声をかけてくれると「できるかも」と思えるんですよね。

そして、やるからには、札幌のひとたちだけになにかを欠けたライブを届けるのは絶対に嫌で「セットリストは減らしたくないです」と。本番では不思議と一度も咳き込まず、最後まで歌いきることができました。自分がこれまで培ってきた経験、チームとお客さんへの信頼が背中を押してくれた気がします。

 

聖地・アビーロードでのレコーディング

──はじめてだらけのアニバーサリーを経て、アルバムでははじめての海外レコーディングに。今回のアルバム制作では、ビートルズで有名なイギリスのアビー・ロード・スタジオでもレコーディングしたそうですね。ミュージシャンの憧れの場所でもあります。

ReoNa:私自身もずっと「一度は行ってみたい」と思っていた場所でした。実はいろいろな偶然が重なって実現して。アニバーサリーが一段落して、チーム全体が次の一歩をどう踏み出すかでもがいていた時期だったんですが、そのタイミングで、トシさんがロンドンへ行く予定があって。「せっかくだったらアビー・ロード・スタジオで録音しよう」という話になったんです。アルバムに参加してくださっているLEFTYさん(Ryo'LEFTY'Miyata)とともに、現地に行くことができました。

 

 

──新曲はすべてアビー・ロード・スタジオで収録されたんですか?

ReoNa:いえ、「HEART」と「オルタナティブ」を収録しました。

──アビーロードで歌ったことで、なにか感じたことはありましたか?

ReoNa:これまでのレコーディングと比べると結構緊張していたんです。初めての海外レコーディングということもあってドキドキしながらブースに入ったんですけど……場所が変わってもいつものReoNaのままでいることができたというか。それはエンジニアのトシさんが普段のReoNaのレコーディングに近い環境を作ってくれていたのも大きいかもしれません。その上で、録りたての温かい音と合わせて歌うことができました。これは余談なのですが、当時は意識していなかったのですが、私が見てきたスタジオライブがここで行われていたことにも気づきました。エド・シーランのスタジオライブとか、海外のアーティストの映像を思い出して「あ、ここで録ってたんだ」って。これまで自分が触れてきた音楽のなかに、実はずっとアビー・ロード・スタジオがあったんだなと感じました。

 

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