
個展『黎創』開催を記念して風李たゆ先生×えびも先生の初対談が実現! お互いの作風やキャラデザへの考え方や「絵描きあるある」を語り合う【対談インタビュー前編】
風李先生&えびも先生の創作におけるテーマとは?
──描きたいもののアイデア、インスピレーションはどこから得ているのですか?
風李:たまにふっとアイデアが降りてくる時もありますが……基本的には普段から色んなアイドルやアーティストの方のパフォーマンスやファッションを眺めたり、SNSで流れてくる時勢なども含めた様々なトピックやトレンドをチェックしていて、日頃からインスピレーションをいただいています。
えびも:私は、ここ数年は人間を見ていますね。
例えば、人と会ってご飯を食べている時などに相手が何気なく取っているポーズや、暇な時に自分がしているだらっとしたポーズを自覚して「……人ってこういうポーズするよな」と。
「頬杖を付く」という動作ひとつとっても、案外綺麗なポーズじゃないことが多いんですよ。気づいた時にメモをして、合いそうなキャラにそのポーズをさせると生きている感じが出て面白い絵になるかなと。
風李:わかります! 私は電車に乗った時に人がつり革をどう持つかを見てしまったり、足の組み方や立ち方の違いを見たりしています。あとは頭身のバランスなども見ることが多いですね。本当に様々な体格の方がいらっしゃるなと。
えびも:以前、大柄な男性と小柄な女性が並んで座っていることがあったのですが、ふと足元を見て「靴のサイズ、そんなに違う!?」と驚いたことがありました。
風李:服装から「この人はこういう背景を持っているのかな」と想像することもありますね。人間観察といいますか。
ポージングで言うと、お洋服屋さんのマネキンが取るポーズによって服のシワや質感が全然違うので「この服の素材はこういうポーズをした時に、こういうシワになるんだ」とふと納得することがあります。
えびも:(頷いて)たしかに、素材はよーく観察しますね。光沢のある素材だと光の反射で「ここが光って、ここが影になる」という発見があって。絵を描く上では、みんなが意識していないところまで見て描かないと、そのこだわりが気づかれないことがあるんです。成立しない質感といいますか。そこまで気づいていただこうとは思っていないけれど、その細かい描写があったほうが絶対に説得力がありますよね。
風李:えびも先生の絵を観察すると「この服、ここも光るんだ!」という発見があるんです!
えびも:この『HIGH CARD』のシリーズの絵はだいぶ遊びました(笑)。ベルベット生地の服を着せたり、私が作画担当をしたコミカライズ作品の原稿を、出版社に許可をいただいて服に貼り付けたり。
『HIGH CARD』ポップアップのイラストを描きました🤭
— えびも (@ebimoji3) April 25, 2024
いつもと違うスーツで!デザイン自由で!とのことだったので本当に自由に描いてしまいました。5/3からぜひベースヤードトーキョー行ってみてください。 https://t.co/iYsvvoPwzh pic.twitter.com/sccJMuOujE
風李:こういう遊び心はファンの方にとってもアツいですよね! 「あのシーンのコマだ!」ってなるから。
えびも:このコミック柄にするというアイデア自体は、どこかのブランドのコレクションを見て、こういうのがあったので面白いなと思って参考にさせていただきました。
柄って一見、模様として簡単に描きがちなんですけど、実際は「何でその模様が成り立っているのか」という素材感まで表現しないと成立しないんです。
風李:コラージュに見えてしまったりもするんですよね。
えびも:だから、すごく大変なんです。やりすぎるとただ貼り付けたように見えてしまう。なので、均等に描き込むのではなく、目立たせたい部分だけしっかり描き込んで、そうじゃないところはあえて抜く。そんなバランスを意識しています。
風李:いや〜! ここの襟のパイピングを見てください! 絵にするとパイピングは一見ただのラインに見えてしまいがちですが、えびも先生の描くパイピングは影と光の部分までしっかり描かれていて立体的に見えます…本当に細かいところまで「どういう立体感なのか」を考えて再現されている労力が凄まじいです。
♥️クリス🍫
— えびも (@ebimoji3) April 25, 2024
ラブリーなハートも刺激的に着こなす色男です。かっちり着込んだジャケットにシアーなインナーで駆け引きを楽しんで😉顔立ちがゴージャスなのでゴージャスな小物も似合うと思います。カロハイポシェットにはアホみたいなお菓子がぎゅうぎゅうに詰まっているかも。 pic.twitter.com/49b2B0J5PG
えびも:大変でした(笑)。テーマはなんとなく揃えつつ、衣装をバラバラにするのが好きなんですよね。
──クリエイターによって異なる「テーマ」について、お二人は創作においてどのように考えているのでしょうか?
風李:自分が創作をする上でテーマにしていることは「自分のルーツや内側から出てきたものに応える」です。近年はこれを徹底しています。
それは今、個展の絵を描いていることとも関係していて。自分の父方・母方がどのような家柄や家系だったのかについて、400年前まで遡って調べたりしました。
えびも:遡れるものなんですね……!
風李:代々お世話になっている菩提寺があって辿ることができました! 自分の元々の家に昔はどういう人たちがいたんだろうと調査をしました。
あと、私は昔から和風な絵を描くのが好きで、幼い頃から潜在的に「刀って、和服ってかっこいいな」と思っていたんです。日本人であれば、時代劇で刀や着物を見る機会が多いですし、一度はそんな感覚を持たれる方もいらっしゃるんじゃないかな。
好きなものを深めるという意味でも、アマチュアではありますが演劇を約9年ほどやっていたんです。その時も和物の舞台が好きで立つことが多かったので、自分で着物の着付けを覚えたり、舞台用の竹光や居合練習刀を購入したり、殺陣も最初は独学で覚えたりして……(笑)。
──殺陣まで!
風李:そのような経験を通して「日本人ならではの文化」に対する愛着や憧れが、自分には深くあるんだなと気づいたんです。自分が生まれた国の文化、自分の家のルーツに深く関わってみるといいますか。『自分のこれまでを振り返って絵を描く』ということを今は大きなテーマにしています。
えびも:すごい! 考えもしなかった!
風李:数年前までは自分のルーツに関係のないものを描いてみようと思うこともあって。「可愛いな」「好きだな」と感じたものを何でも描いていました。
私が絵を描き始めた2歳頃から、ずっとその感覚でイラストを続けていたのですが、最近になって「自分の中から出てくるものって何だろう?」と意識するようになったんです。
──えびも先生はいかがでしょうか?
えびも:いや〜……なんかこの後にテーマを言うのはハードルが……(笑)。
風李:いやいや!(笑)
えびも:私は「この人はこれが好きなんだろうな」と、すぐわかるような絵でしょうか。「服が好き」「人の動きを描きたい」「ここがフェチだ」という自分のストレートな好みがたくさんあるので「シンプルにわかりやすい絵を描こう」が私のテーマなんだと思います。
奥行きのある考察型の絵に憧れはありますが、自分にできるスタイルではないのかなとずっと感じています。だから自分の直感的に思う「好き」をストレートに出す。そういう絵は描いていて飽きないですし、飽きたら変えればいいと思います。
ただ、これまでずっとその「好き」を描いていても飽きないということは、やっぱりこれがやりたいことなんでしょうね。
──先ほど、足の筋肉のお話が出た時に私も肉体美を感じる絵だなと思いました。
えびも:人間に生まれたからか、人間のボディが好きなんですよね。
ほかにも身体に対するフェチは数えきれないほどあるんですよ。だからずっとフェチを描き続けていても描き終わることがないから、飽きるまで描こうって。
風李:飽きないですよね、「人間」。
えびも:飽きないですね! 「人間」。
構造が複雑ですもんね。手ひとつとっても、5本も生えていて関節もあって、握る順番は自然に小指側から力が入る……そんな細かい所作や動きの自然さを観察するのが面白いんです。逆に、あえてそれに逆らった描写を入れると違和感が生まれるから、見る人の目を引くことができるかな?って考えるのも面白くて。
風李:えびも先生は脱力が描けるのも凄いですよね……!
えびも:自然な絵を描く時と、違和感をあえて出した絵を描く時とで、描写を使い分けています。不安定さや違和感は上手く使うと「色気」や「魅力」に繋がると思います。
まだ気づいていないことがたくさんあるはずなので、今後も「人間」というテーマを深く掘り下げていきたいですね。
▼【後編】では個展についての対談をお届け!
【取材・文:笹本千尋 編集:西澤駿太郎】
風李たゆ初個展『黎創』開催概要

主催:株式会社アプリボット 株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ
開催日程:2025年11月22日(土)~11月26日(水)計5日間
開催場所:Studio Sola(東京都渋谷区神南1丁目3−10 神南アール B1F)
入場:入場無料
■個展『黎創』公式サイト
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