
「今回うまくいったのは、いろんな偶然と情熱が重なったから。だからこそキセキなんです」『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-』木村大プロデューサー/清水良太アニメーションプロデューサー/依田健プロデューサーインタビュー 今だからこそ明かせる舞台裏
共に10周年を迎えたバンダイによるメディアミックスプロジェクトの『アイカツ!』のあかりGenerationと、タカラトミーアーツ・シンソフィア原作の『プリパラ』。かつて同時代に“切磋琢磨したライバル”がスクリーンで夢の共演を果たすとは、当時、いったい誰が想像しただろうか……?
完全新作ストーリーとして制作された『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE ‐出会いのキセキ!‐』。作品、メーカーの垣根を越え、奇跡のコラボレーションが実現に至ったのは、作品への“愛”と、そして両作品を愛し続けるファン・関係者の存在があったからこそ。アニメイトタイムズでは先だって大川貴大監督にお話をうかがっているが、公開からしばらく経ったこのタイミングで、あらためて、バンダイナムコピクチャーズの木村大氏・清水良太氏、そしてタツノコプロの依田健氏に、本作誕生の“キセキ”の裏側を聞いた。
セットリストに対するポジティブな反応が嬉しい
──公開を迎えて、ファンの方々から「ありがとう!」という声がSNSでもたくさん届いています。皆さん、それを見てどんなお気持ちですか?
バンダイナムコピクチャーズ 木村 大さん(以下、木村):多分3人とも同じ気持ちだと思うんですけど……まずは「安心した」ですね。我々としてはファンの皆さんに楽しんでもらえるようにという想いで企画を進めてきたので、反応を見てホッとしました。
お互いの曲を交換留学で歌い合っていて、うちの社内でも、タツノコプロさんの社内でも「この曲やってほしかった!」という意見が出ていて(笑)。それはファンの皆さんにとってもあったと思うんです。だから「これじゃないんだよ」って声があったらどうしようという不安もあったのですが、セトリや組み合わせに好評なコメントが多く嬉しかったですね。
バンダイナムコピクチャーズ清水良太さん(以下、清水):正直想像以上の反響をいただいているなという所感がありまして。公開前は「もしかしたらマイナスの意見も出るかもしれない」と覚悟していたんですが、それを覆すくらいポジティブな反応ばかりで。木村が言った通り、まずは本当に安心しました。
タツノコプロ依田 健さん(以下、依田):僕も同じ気持ちです。特にセトリに関しては、クリエイティブに入る前の段階で我々プロデューサー陣が決めていった部分が多かったんです。お話が感動的になっているのは見て分かっていたけれど、だからこそ、もしセトリが不評だったら完全に僕らの責任だよなと(笑)。
木村&清水:(笑)
依田:だからこそ「セトリが良かった!」という声を多くいただいて、本当にホッとしました。
──大川監督がプロジェクトに加わる前にすでにセトリが決まっていたと聞いて驚きました。そんなに早い段階から決めていたんですね。
依田:そうなんです。やりやすい曲・やりにくい曲というのは3DCGデータの都合など、いろんな制約で決まってくるんですよ。なので、プロデューサー陣だけでなく、うちのCGチームにも早い段階から入ってもらって、一緒にセトリを組んでいって。まずは“実現可能なセトリ”を組む必要がありました。もしお話が完成したあとに「これできません」ってなったら全部ひっくり返りますからね(苦笑)。シナリオを作っていく中で変わっていったところはありますが、順番からいくと「まずは歌をどうしようか」というところからはじまりました。
木村:「キャラクター」「歌」「ドレス」「ステージ」が両作品の大きな要素なので、それぞれの組み合わせを前もって整理した感じですね。
依田:それに加えてコーデに関しては見た目のボリューム感や雰囲気があまりにも違うとな、みたいなところもあって、そのあたりもかなり慎重にやりました。クリエイティブ側に丸投げするのはさすがに忍びなかったので、できるだけこちらで整理しましたね。
──そのセトリ会議はどのように行われたのか伺ってもいいですか?
木村:まずはお互いの作品で「映画館で流れたら絶対盛り上がる」という曲を10曲ずつぐらい持ち寄ってそこから選んでいったんです。そのうえで、それぞれの曲が「何人までステージ対応できるか」「誰と誰が、どのようなドレスを着てるか」など、現実的な条件を突き合わせていった感じです。
もちろん音楽チームにも調整してもらいましたが、キーの問題やキャラクターのイメージなどもあって、自由に選べるわけではなくて。とは言え、「その組み合わせ、そう来たか!」という面白さや、「えっ、そことそこが組むの!?」という驚きがあったほうがいいよね、という話をみんなでして……すごく長くなってしまってですね(笑)。
依田:そうですね(笑)。
木村:答えがないものをずっと話し合っているわけですから。
──ちなみにお互いのチームにご面識はあったんですか?
木村:タツノコプロさんとのお付き合いという意味ではありました。例えば、現在フジテレビ系"ノイタミナ"で放送中で、大川(貴大)さんが監督を務められている『しゃばけ 』はCGレイアウトをタツノコプロさんにお願いしています。そういったお付き合いはあったんですが、『プリパラ』さんのチームとは直接の面識はあまりなかったですね。
とはいえ、クリエイターの方々はご一緒することがありましたし、CGチームの乙部(善弘)さんは元々サンライズ出身なので、僕自身はお名前を存じ上げているという状態でした。
──そういった状況の中で改めてご挨拶をして、セトリ会議が始まったわけですね。たしかに時間がかかりそうです。
依田:そして上映時間や予算などを考えたときに「20曲は無理だね」と(笑)。そこで新曲1曲+既存曲12曲で、13曲くらいかなとなったときに、それぞれ6曲ずつぐらいに絞り込みました。5曲ずつだと少ないよね、って。それと、うちのCG班には“超アイカツオタク”がいまして(笑)。何人かいるんですけど、そのうちの1人が本当にすごくて。「この曲にはこの衣装が絶対いいです!」っていう“衣装まとめ”の資料を自主的に作ってきたんですよ。
──衣装まとめ、すごい!
依田:例えば「START DASH SENSATION」なら、あかりのホワイトスカイヴェールコーデとデザインや色味が似ているのは(『プリパラ』で言うと)四季のコーデのドリームパレードプリンセスコーデだと思います……といった、めちゃくちゃ細かい考察付きで(笑)。
──そこでその案が!
依田:そうなんですよ。それを見ながら「これなら確かにいけそうだね」といったフィルターを一度噛ませて、「シナリオに入っていきますか」と。ここまでの作業だけでも、だいたい4か月ぐらいかかりました。
──インタビューや舞台挨拶などでお話をうかがっていると、意外と制作期間自体は長くはなかったような印象もあるのですが……。
清水:そうですね(笑)。具体的には言えませんが、かなり短い期間にギュッと詰め込んで、みんなで頑張っていた感じです。
──大川監督自身も両作品のファンだとおっしゃっていましたが、『アイカツ!』チームの中にも“プリティーシリーズ”のファンがいらっしゃったのでしょうか。
清水:もちろんいました。曲の選定をするときに、僕や木村は(当時、プリティーシリーズを)ガッツリ見られていたわけではなかったので、「どういうのが良いんだろうね」という話になっていたのですが……今の若い社員に、ちょうど『プリパラ』や『アイカツ!』をリアルタイムで観ていた世代が入ってきていて。ですので、その子たちにいろいろ教えてもらいながら「この組み合わせいい」「この曲は外せない」と話し合って、候補をあげていきました。
──たしかに、ちょうど社会に出始めた世代ですよね。感慨深いです。
清水:本当に。「そんなにときが経ったのか」と思いつつ(笑)。
依田:10周年ですからね(笑)。












































