
「ジャパンカップ」で実感した世界の壁。海外ウマ娘のキャストに「強すぎる」ーーアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クール 高柳知葉さん(オグリキャップ役)、香坂さきさん(ゴールドシチー役)、石上静香さん(オベイユアマスター役)インタビュー
カサマツ時代とは違うオグリの“苦しさ”
――オグリはこれで2連敗という結果になりました。連敗といっても2着と3着ではありますが、勝てなくなったのは演じていてもつらいですか?
高柳:つらいというより、“苦しい”ですね。走りたいから走ってきたオグリは、カサマツの頃からいろいろな壁を乗り越えて、普通ではありえないぐらいの速度で成長し続けてきましたが、思うままに走るだけでは叶わないところまで来てしまった。本能的にはすごくワクワクしているだろうし、走っている瞬間は何物にも代えがたい高揚感があると思うけど、それだけでは勝てなくなったんです。
タマや世界という大きな壁にぶつかって、答えが見えない。どうしていいか分からない。勝ちたいのに勝てなくて、走るってなんだろう? 勝つってなんだろう?という迷いやもどかしさ、モヤモヤしたものがずっとオグリの心の中にあって。先の見えない状況がすごく苦しいなと思います。身体的な苦しさもあるでしょうけど、それ以上にやっぱり精神的な苦しさを、ここまで走ってきた中で一番色濃く感じています。
これまでは、北原から選択を迫られた瞬間が自分的には一番苦しいシーンでした。あのシーンは、なにが正解か分からず、走りたいから走るだけじゃダメだという現実に対する苦しさだったんですけど、いまはまた違った苦しさだなと。
――その苦しさは、オグリだからこそなんでしょうね。香坂さんや石上さんにはどのように映りましたか?
香坂:トップを行く者にしか分からない苦しみなんだと思います。どんどん強いウマ娘が出てくるのに、先が見えない。オグリは自分の中で抱える悩みを周りに「聞いて聞いて〜」って言うタイプではないですよね。そんなオグリだからこそ、より深く悩んでしまうんだと思います。寄り添ってあげたいけど、オグリのいるステージに追いつくのは、どのウマ娘にとっても至難の業ですから……。
――そこはオグリがすごすぎるだけで。
高柳:ここまですべて掲示板内(5着以内)ですからね。感覚がおかしくなるぐらい、とてつもない世界だなと思います。
――オベイもオグリのような戦績じゃないからこそ、このレースにかける思いが強かったのかもしれないですね。そういう気持ちは共感できますか?
石上:そうですね。私たち声優も、オーディションである意味“1着”を取らないと受からないのはウマ娘と一緒で、常に競い合っている感覚ではあります。そう考えてオベイを見ると、自分はまだまだ努力が足りないなと思っちゃいますね。
彼女の勉強熱心なところとか、(勝つために)仮面を完璧に被っていたこととか。それって自分との戦いでもあるじゃないですか。勝負事は常に昔の自分を超えなきゃいけないですけど、レースは過去の自分より1秒速く走ったところで、相手がそれより速かったら勝てないですよね。だから、どうしても人と比べてしまいますが、(相手を研究したり自分を磨いたりする)努力を欠かしてはいけないと思うんです。
オベイは周りのウマ娘を本当に細部まで観察していて。タマちゃんの隣のデンジャラスゾーンに入ってはいけないことも意外とみんな分かっていなかったのに、オベイはテープが擦り切れるまで見て、ここより近づいたら逆鱗に触れる、ここまでなら彼女の負けん気は発揮されないと勉強して走っていたんです。その努力が実って良かったなと思いますし、報われることが体現されたレースでもあったなと思います。
トニビアンカは第一声から説得力を感じました
――海外ウマ娘は演じるキャストも豪華です。皆さんとはだいたい一緒に収録できたのでしょうか?
高柳:はい。大まかには揃って収録できました。スケジュールが合わない話数もありましたけど、どの方とも最低1回は一緒になれたと思います。
――海外ウマ娘以外も含めて一緒に収録してすごいなと思った人や、掛け合いで影響を受けた人などを教えて下さい。
石上:一緒に走ったタマモクロス役の大空さんも挙げたいですが、『ウマ娘』ですごく重要なポジションは“実況”だと思うので、1人挙げるなら実況の赤坂美聡役の明坂(聡美)さんですね。ご一緒してみて、走っているのと同時に実況を入れる技術が本当にすごくて。
しかも、走っている私たちはモノローグで演じることも多いのですが、実況は常に声を張っていて、例えば残り200mのところでモノローグが入ったら実況はまた残り200mのテンションから始まるんですよ。そこのテンションのつまみ方が明坂さんは本当に上手なんです。滑舌も勢いもすごいですし、勢いを作っているのは、ウマ娘たちを演じる人の演技もありますけど、半分以上は明坂さんの実況が担っているんじゃないかと思いました。
高柳:いまこんなに盛り上がっている状況なんだと空気感を生み出しているのは、間違いなく明坂さんですよね。本当にずっと喋りっぱなしですごいです。
石上:「残り◯◯m!」とずっと盛り上がっていながら、そこからゴールに向けてさらに盛り上げていくのは本当にすごい技術だなって。モノローグを挟んでもちゃんと違和感なく実況されていますからね。
高柳:明坂さんの赤坂さんとしてのキャリアの長さが説得力を生んでいるんだろうなって思います。説得力でいえば、トニビアンカの強者っぷりもすごかったです。甲斐田裕子さんが演じてくださるなんて、こんな贅沢な話があるのかと思いましたし、最初の登場からもう強者のオーラが半端なくて。一言一言に重みを感じました。
石上:ほかの海外ウマ娘とは一味違いますよね。
高柳:そうなんですよ。世界のハードルが高いという説得力を、トニビアンカは第一声から出していたと思います。あと、ミシェルマイベイビーも最高でした。高垣彩陽さんのお芝居がアメリカン! パワフル! ダイナミック! エキサイティング!って感じで。
香坂:そこに可愛さも兼ね備えていますよね。
石上:なんというか、陽キャですよね(笑)。
高柳:そうそう。陽キャの圧がすごかったです(笑)。いままでにいないタイプのキャラクターですし、タマちゃんとの身長差がえげつなくて。レース中の絵としても、キャラクターとしても新たな勢いをつけてくれる存在で、高垣さんのお芝居でさらに色濃くなって魅力増し増しになったと思います。
香坂:これはラフプレーじゃないの?となるシーンでも、彼女のキャラクターとお芝居のおかげで全然嫌味がないというか。わざとラフプレーをしているのではなく、闘志があふれて、気持ちだけじゃなく体もぶつかってしまうほどレースに対して熱いところも、ミシェルマイベイビーの魅力だなって思います。
高柳:海外ではこれだけパワフルな戦いが(日常的に)行われているんだって、それを自然と出しているキャラクターですよね。
石上:私は“ラフプレー”って言葉も『シンデレラグレイ』で初めて知ったんですよ。そういう走り方があるんだと勉強になりました。
高柳:本当に、ゲームにはなかったキャラクターといいますか、原作漫画担当の久住太陽先生がデザインされた『シンデレラグレイ』の世界だからこそ生まれたキャラクターたちだなって感じます。それがアニメになって声がつき、アニメらしい描かれ方をして、また新たな魅力を感じていただけたんじゃないかなと思います。
香坂:私がすごいと感じたのは、大空さんです。彼女は憑依型といいますか、今キャラが降りてきているなって、声からもお芝居をしている様子からも伝わってくるんです。大空さんはマイク前で結構体を動かして演じられるのですが、そこに本当にタマモクロスがいると錯覚してしまうぐらい、身も心もタマモクロスになっている。熱量を込めて演じてらっしゃる姿にいつも感動していました。
特に、ジャパンカップが終わったあと、(また走って欲しいとオベイユアマスターに言われて)「機会があったらな」と含みをもたせたセリフがあったじゃないですか。取り繕いながらも放ったその一言から、タマが抱える葛藤がすごく伝わってきて。本当に泣きそうになりました。
――モチーフになった競走馬のことを知っていれば、タマモクロス号を思い出して感じるところがあったでしょうね。
香坂:そうなんです。今後の展開を知っているから、いろいろと思うところがあって・・・。タマちゃんの決意や覚悟、寂しさ、そういったことが全部含まれた素敵なお芝居だったなと思いました。



















































